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精神障害者と経済的『自律』ー『自立』しなくても『自律』したいー

  • 最終更新日:
河川敷を登っていく子供

突然ですが自立と自律の違いって分かりますか?

 

自立は自分だけの力で物事を行っていくことで、「自律」は自分で立てた規範に従って、自分の事は自分でやって行くことだそうです。

 

この記事では、精神障害がある方が経済的に自立していなくても、限られたお金の中で、経済的な自由を感じられることについて述べたいと思います。

 

夏目
私自身の経験を踏まえながら、親の立場から見たことも綴りたいです。

『経済的自律』とは

ここではあえて「自立」ではなく「自律」表記で書かせて頂きます。

 

経済的自律に関して、極端な束縛や極端な放任はあまり意味を為さないのではないでしょうか。

 

経済的自律については、常に支援者と障害者との「コミュニケーション」が主な舞台となります。

 

支援者はあくまで障害者の経済的な自由、自主性に重きを置きながら、現実的かつ冷静な判断のなかで落とし所をみつけていくことになると思います。

 

そこで支援者側に必要になってくるのは、相手の立場に立って、相手の気持ちに共感しながら理解しようとする姿勢が大事になってくるでしょう。

 

 

夏目
障害者をコントロールするのではなく、コミュニケーションの場に引き出し、対話を大切にすることが求められているのではないでしょうか。

失敗する権利は平等に

親などの支援者が不安なのは、障害のある子が多額の買い物や借金をしたり、だまされて大金を失ってしまったり、欲望の赴くままに浪費してしまうことではないでしょうか。

 

夏目
だけど、どんな人でも多かれ少なかれ失敗があるなかで経験を重ねていく。

 

それは健常者でも障害者でも変わらずあることです。

 

失敗する権利は誰にでもあり、それは例えば買い物の結果もそうですが、買うという行為そのものが経験になり、勉強になっていきます。

 

失敗する権利は「生きる権利・生きる経験」でもある。

 

それを奪ってしまえばそんな経験すら失ってしまいます。

 

 

 

 

お金のこと

また、精神を患っているといっても症状の度合いはさまざまです。

 

経済的自律をするのに十分な精神的な状態にまで体調が戻っている人はいます。

 

夏目
精神疾患という「名前」にとらわれ、全ての人をまとめて考えることは良くありません。

 

精神疾患、精神障害といっても、その病状は個性豊かです。

 

ある部分には弱くても、お金の管理は厳密に行える方もいますので、もしその人がお金の管理ができる場合は過保護になることは慎むべきでしょう。

 

私が考える経済的自律とは、すべてのことを支援者が管理することと、全部一人で管理(自立)することの間に存在すると考えています。

 

例えば私の家では、通帳は母親が管理し、自分の通帳には数万円しか入っていません。

 

月々、1万5000円のお小遣いのなかで自由に買い物します。

 

パートの仕事をする前は、Amazonの買い物も全て母親に申告していましたが、抗議してそれはなくなりました。

 

ネットショップではクレジットカードの使用は極力避け、基本的に代金引換かコンビニ払いをしています。

 

 

精神疾患がある方を理解すること

親にとって精神疾患のある子供が「かわいそう」な存在であると助けてあげないといけないという強い思いのなかで過保護になりやすいのではないでしょうか。

 

「働かない人はダメな人だ」という「能力主義」的な考え方も、子供との関係においては逆効果です。

 

親にとって、歳をとっていく自分が子供を養えるかが現実的な苦悩としてありますよね。

 

しかし、親の問題は親の問題であり、子の問題は子の問題です。

 

夏目
子供が経済的自律をすることに介入しすぎることなく、「彼には彼の人生がある」と大人扱いすると、関係はずっと改善されます。

 

そして重要なことは、自分が攻撃的な態度でいると、相手も攻撃的な態度を返してくるということです。

 

傾聴を大切にし、穏やかな【対話】ができるよう努めましょう。

 

「してあげている」という態度や「だめな子供を叱って更生させる」という態度も福祉界においては成功しにくい話し方です。

 

そして忘れてはいけないことは、親には親の人生があり経済的権利があることです。

 

大人になった子供が自立して欲しいのは当然ですし、子供が大借金をしたら自分の経済的権利が侵されますよね。

 

夏目
だから、それは絶対に子供も理解しなくてはいけないことです。

 

 

 

 

手続きは基本的に本人に任せてみよう

「経済的自律」の大切な部分として、手続きを自分でするということがあげられます。

 

手続きは、本人も「めんどくさい」と思っています。

 

そこで親が手を貸してしまうと、「自立したい気持ち」と「依存心」が対立し、親との関係は必ず悪くなります。

 

夏目
親御さんは心配でしょうが、手を出すことをぐっと我慢しましょう。

 

「失敗する権利」を選べば失敗する大変さはありますが、結果的にはうまくいきます。

 

夏目
私の場合はどうだったか、親にどうして欲しかったのかを書いてみますね。

 

 

私(精神疾患)の場合

精神疾患がある私のケースを4つの事例をもとに紹介させていただきます。

例1:キャッシュカードの場合

私が初めてアルバイトでキャッシュカードを用意した時、母に相談したところ、全て母が決めて手続きも済ませてしまいました。

 

相談することは「答え」や「援助」を求めているわけではないことも多く、この場合、助言を求めているのであって、全てやって欲しいわけではありません。

 

例2:スマフォの購入の場合

また私がスマートフォンを購入した時、全て母が情報を集め、父に伝えて、私は非常に不愉快な想いをしました。

「自立」と「自律」の間の「対話のなかでの自律」が大切になります。

 

例3:外出時

また外出時でも、出かける前に子供のように「何々は持ったか?」「ルートは把握してるの?」と言われるのは子供扱いされとても嫌です。

 

それは親の自己満足ですらあると思います。

 

例4:大きな買い物の色や柄の選択

また、大きな買い物をする時、色や柄の選択を親がしてしまうことは「自由」を決定的に冒してしまいます。

 

子供の自由と親のパターナリズムは、このような具体的な線引きのなかでいったりきたりします。

 

 

否定しない

ストリングスという言葉をご存知でしょうか?

 

たとえば、精神疾病者の子供が「やりたいこと」があった場合、その「強み」を引き出して支援した方が、結果的にうまくいくというやり方です。

 

もちろん、夢がそのまま実現するには難しくても、その「強み」や「興味」を活かし、あった環境におくほうが、ずっと成功しやすいのです。

 

また、頭ごなしに夢を否定しないでください。

 

私は産業翻訳者になる夢があり勉強中です。

 

もしこの夢を頭ごなしに否定されたら、それは暴力だと感じます。

 

夏目

自分が悪いのではなく、一方的な決めつけによる否定だと感じてしまいます。

 

それは十分に気をつけた方がいいと思います。

 

 

精神疾患がある方の新しい働き方

ありとあらゆる人が、「働く」という問題で哲学的な悩みに直面します。

 

そしていろいろな反応をします。

 

ある人は働くことは自分の肉体と時間を売り捌くことと、真正面からぶつかります。

 

その誰もが抱く根本的な問題が横たわっていることを理解し、温かく見守りましょう。

 

また、今の時代は「普通の会社員」になり、大企業に勤め、終身雇用するスタイルはなくなってきています。

 

働き方はさまざまです。

 

精神疾病を持っている人にこそ「新しい働き方」は突破口かもしれません。私はそうです。

 

以前の記事でもご紹介しましたので、参考にしてみてください。

 

 

当事者のための「親撃退」法

最後に当事者の方に「親撤退」法を伝授したいと思います。

 

夏目
当事者は「敬語」をつかっておもいっきり冷たくしてみよう。

 

私がよくやるのは、経済的なことなどで過干渉なとき「敬語」を使います。敬語は、距離をとるのにとても有効です。もう自分は自分で、怒らないようにしています。

 

怒ればまた親との依存的な関係に逆戻りするからです。

 

また「夢」か「商売」かという深い悩みに対面したとき、私はパートで地域活動支援センターで働きながら、文筆業をしています。A型雇用所や障害者雇用で働きながら、音楽や芸術などの活動をすることはおすすめできます。

 

また、障害のことをオープンにして福祉業界で働くことも大賛成です。

 

とっかかりとして、在宅でできるアルバイトをしてみるといいかもしれません。

 

「働きたくないなあ」と思っていても、意外と働くと不安が消え、状態が安定するかもしれません。私の経験上、働くことは精神上とても良いです。

 

 

 

 

精神障害者の経済的自律まとめ

「経済的自立」にまで至れなくても「経済的自律」を勝ち取れるよう、一歩、一歩自分の自由を勝ち取っていきましょう。

 

親に自分の管理できるところをアピールし、現実的な自由を一つ一つ積み上げていきましょう。

 

自律することで、生きることが少しは楽になるのではないかと思います。

 

まずは自分でどこまでできるか把握し、「ここまでなら出来るから手は出さないで欲しい。見守って欲しい」とご両親に伝えることから始めてみてください。

 

夏目
経済的自由はあなたのものです。

 

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夏目作弥

精神疾病の当事者であり、ピアスタッフを経験。精神疾病の日々の人気エッセイを作業療法室に連載しています。精神保健福祉ライターの他、文芸創作もしている。支援者と当事者の両方の立場から見えてくるものを、客観的な視点と体験談から綴らせて頂きます。自身の経験から精神疾病者の新しい働き方をご提案します。雑誌『シナプスの笑い』にて夏目作弥としてエッセイや小説を掲載しています。こちらもぜひご覧ください。詳しいプロフィールはこちら→夏目作弥


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