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精神疾病者にとっての「新しい働き方」!肉体労働か失業かを超えて

  • 最終更新日:
ノーマライゼーション

コロナ禍によって、新しい働き方が増えています。

 

「精神しょうがい者」と「新しい働き方」は相性が良いと言われ始めているのをご存じでしょうか?

 

私は精神疾病を持ちながら、田舎の実家で文章に携わる「新しい働き方」に挑戦しています。新しい働き方は、コロナだけでなく、精神状態の安定にも繋がり再発予防にもなると考えています。

 

また、一般的な就職が難しい、あるいは就職の意思がない人でも、「新しい働き方」ならその人なりの可能性を追求し、自分らしく働くことができると考えてます。

 

精神疾病の持ち主のなかには、精神疾病を持っていない人と変わりない能力の持ち主も多くいるからです。

新しい働き方

私は不思議に感じていました。精神保健福祉の分野では「一般雇用」を最終ゴールと定めてることが多く、そのことは疑われてきませんでした。

 

「一般雇用」できない人が、就労継続支援A、B型や就労移行支援、地域活動支援センターを利用します。

 

しかし、「一般雇用」されたからといって、すべてが解決するわけではありません。多くの精神疾病者は「一般雇用」に生きづらさを感じています。

 

そして、世の中も「一般雇用」が働き方の全てではなくなっています。そういう状況で、精神保健福祉の目指す働き方も「新しい働き方」を積極的に取り入れていくと良いと考えています。

 

コロナ禍によって、例えば、精神疾病者が一般雇用された場合でも、在宅勤務をしなくてはいけない場合が多くなりました。

 

フリーランスとして「新しい働き方」をするのも現代の働き方と大きく解離しているわけではないし、精神疾病者にはかえって良い時代なのかも知れないと思うことがあります。

 

彼らは自分の世界を持っていることが多く、フリーランスになることを頭から否定しない時代が訪れているのだと思います。

 

 

色々な花

 

 

社会的入院と薬漬け

皆さんは、社会的入院という言葉をご存じでしょうか?

 

社会的入院とは、病状ではなく受け取り手がいないなどの理由で長期入院することを言います。

 

  • 家族に受け取り(退院)を拒否される。
  • 長期的な入院により社会性や生活習慣が衰え退院できなくなる。

 

このような理由から社会的入院は生まれますが、これは精神疾患を持つ方だけではなくご老人にも当てはまるそう。

 

これら解消され、地域で生きることが選択できるようになったのはつい最近のことなのです。

 

薬を服用しないと再発率が大きく上がり、薬によって人間性を奪うことが少なからずあるでしょう。

 

だからこそ薬に頼りきりにならず、福祉サービスを受けながら地域で過ごすことが大切になってきているのです。

 

夏目
実は「(田舎で)新しい働き方」をすることが、今、社会的に注目を集めているんです。

 

地域に戻り、会社勤めや単純作業に就くのではなく、その人の個性が生きる働き方をする選択肢があること。

 

それは何より大切だと私は感じています。

 

回転ドア

私が精神疾病者に「新しい働き方」の選択肢があると良いと思う理由は、精神病の「回転ドア」の現実にもあります

 

回転ドアとは、一度精神病院を退院してもまた再入院し、そのまま病状は治りにくくなり、人生の長期間を精神病院で過ごすことです。

 

再就職というプレッシャーのなかで、体調を崩しやすい環境に逆戻りする現状があるのではないでしょうか。

 

「新しい働き方」は人間関係のストレスがかかりにくいですし、比較的マイペースに仕事ができます。高収入にはならないかもしれませんが、再発をしないことが一番の目標です。

 

現在、就労継続支援A型、B型であっても、地域活動支援センターでの工賃であっても、非常に低い水準になっています。就労継続支援A型では月に1人あたり、8万円代、就労継続支援B型では1万数千円、地域活動支援センターでは数千円の現状となっています。

 

それなら、それらを続けるなどしながら、自分の「ストリングス(その人の強み)」を活かして、「新しい働き方」をすると良いと思います。もちろん、それに専念するのも選択肢としてあっても良いのではないでしょうか。

 

 

 

再入院率のグラフ

 

 

 

下記PDF、6ページより工賃作業減額について書かれています。↓ご参考までにどうぞ。

https://www.kyosaren.or.jp/wp-content/uploads/2021/02/7dbda508aedb310d836ae8f0a4c9d2a5.pdf

 

 

 

離職率の高さ

「回転ドア」の他にも、「離職率の高さ」が挙げられます。

 

職場定職率のグラフ

 

頑張って障がい者雇用で就職しても非常に高い離職率の壁が待っています。

 

グラフを見て頂ければ分かる通り、1年以内に半数が辞めてしまっています。

 

夏目
会社側が障がい者に対しての扱い方が良く解らず、小さな誤解などから障がい者側が「傷つき体験」をしてしまうことで、さらに再就職、社会参加が難しくなってしまうのではないでしょうか。

 

 

精神疾病者の特性

精神疾病者が働きにくいと思ってしまうのは、障害者に用意された数多くの仕事が「単純肉体労働」しかないという現実です。

 

例えば、統合失調症の人は、集団に参加することが難しいことがあります。

 

本来、フリーランス気質の素質である方が多く、そちらの方面に力を発揮する可能性があります。また、細部の注意力が高く、几帳面な仕事に向いているという面があります。

 

逆に、会社などでチームで柔軟に動くのは苦手なことが多いように感じます。

 

また精神障害の人には、芸術などに適性を示す人が多くいます。

 

その収入だけで生活するのが難しくても、障害者雇用や就労継続支援A型で働きながら、フリーランスで副収入を得ることは、「QOL(クオリティー・オブ・ライフ)」の側面からも、精神の健康の面からも良いのではないかと私は考えています。

 

夏目
QOLとは「生活の質」の意味です。

 

自分のできる範囲でも良いから、何か仕事をすることで自尊心や充実感が持てるようになり、どんな自分になりたいか、これまでの自分はどうだったか、何ができたかを考えることができる機会が得られ、お金が入ることによって心に少し余裕が出来、恋愛しよう、旅に出よう、美味しいものを食べようなど、「障がい者のQOL(生活の質)」がどんどんと伸びる可能性があると私は考えます。

 

その可能性

その際、「関心」「強み」「得意なこと」「長所」を生かすことが大切です。

 

例えば、小説を書いている人なら、ネット経由で文章を書いて小銭を稼ぐ方法はたくさんあります。一度、サラリーマンをしていて調子を崩された方は、同系列の仕事を在宅勤務ですると良いかもしれません。

 

趣味が高じてという点では、珈琲好きな方が喫茶店を経営するという話もあるのでそういう道もあるかも知れません。

 

福祉業界に就職することは、自分の人生にとっても意味あることですし、経験がいかせます。

 

「病気」が「経歴」に。また、オープンにした場合は、精神疾病のプロに理解されながら、働くことができます。

 

福祉業界に一般就労で病気についてオープンにして働くのはオススメです。

 

また、ネットを使ってフリーランスなどをすれば、人間関係にストレスを感じなくなるのではないでしょうか。

 

人間関係の負荷が苦手な疾病者にとって、適している方法といえると思います。現在は、いろいろな方法で、ネットを使って仕事をすることができます。

 

某サイトで占いをする。イラストを描いて受注を受けるなどの話も聞きます。

 

参考

 

 

イラストを描くイラスト

 

福祉などに頼る

A型事業所などに通いながら創作活動をするという手もあります。

 

精神疾病者のなかには、さまざまな創作活動をしている人がいるのですが、それ独自では収入として不足しても、A型事業所などに通所しながら、自分の創作を極める道もありだと思います。

 

また、農福連携や林福連携が現在注目を浴びています。農業では人手不足や手間賃を浮かしたい、福祉では農作業は健康に良い、比較的しょうがい者でも取り組めるという理由から、全国的に広まっています。

 

コロナによる「新しい働き方」によって田舎で暮らす人が増えていますが、健常者同様に自然環境の良いところで暮らすことは心身共に良いことだと思います。都内に比べ家賃もとても安く、物価も低いことが多いのも魅力のひとつです。

 

 

田舎の風景

 

障害者総合支援法

ご存知の方も多いと思いますが、軽く障害者総合支援法(障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律)について触れます。

 

それに伴う色々なサービスについても触れたいと思います。

 

障害者自立支援法はすでにありましたが、障がい者への負担、自立を重んじる体制でした。それを改正する形で、この法案は成立しました。

 

改正された部分は主にこのような点です。

  • 重度訪問介護の対象に「行動障害」「重度の知的障害者」「精神障害者」が追加されました。
  • 障害程度区分の名称変更→「障害支援区分」になりました。
  • 併せて定義も変更され、 共同生活介護(ケアホーム)が共同生活援助(グループホーム)に一元化されました。

 

夏目
では、障害者総合支援法によって、どのようなサービスを受けられるのでしょうか?

 

介護給付のサービス

介護給付とは、障害年金または傷病年金の受給者のうち、重度の精神神経障害・胸腹部臓器障害があり、介護を受けている場合に支給されるものです。 ※業務災害の場合は介護補償給付と言います。

 

このような方々は一人では生活が困難なため、生活をサポートしてもらうためのサービスになります。

 

以下が、介護給付で受けられるサービスです。

 

  • 居宅介護
  • 重度訪問介護
  • 同行援護
  • 行動援護
  • 重度障害者等包括支援
  • 短期入所(ショートステイ)
  • 療養介護
  • 生活介護
  • 施設入所支援

 

 

ハートを持つ手

 

訓練等給付のサービス

訓練等給付とは、障害がある方が自立した生活を送るために訓練する機会を提供するサービスのことです。以下のような、就職のために必要となるスキルを身につけるための訓練を行えます。

 

  • 自立訓練
    障害のある方が自立した生活を送ることができるように訓練を行うサービスです。

 

  • 就労移行支援
    一般企業への就職を目指す方を対象に、就職に必要なスキルを身に着けるためのサポートをおこないます。

 

  • 就労継続支援(A:雇用型 B:非雇用型)
    一般企業への就職が困難な方へ働く機会を提供するサービスです。

 

  • 就労定着支援
    障がい者が働く際に生じる生活面の問題を支援するサービスです。

 

  • 自立生活援助
    ひとり暮らしなどを始めた障がい者に対して、自分で解決できるように援助するサービスです。

 

  • 共同生活支援(グループホーム)
    障害のある方の孤立の防止などのため、共同生活を行います。

 

 

その他サービス

その他にも、こんなサービスがあります。

 

  • 相談支援
    • 計画相談支援
      障害福祉サービスを利用するためには、自治体へ利用申請を行います。その際、必ずサービス等利用計画を作成しなければなりません。でも、作成することが難しい人もいますよね。
      そういう時に必要となる計画案を作成したり、作成した計画が利用者にとって適切であるかを確認してくれるサービスです。
    • 地域移行支援
      障害者支援施設に入所、あるいは精神科病院に入院している人に対して、地域生活へ移行するための支援を行うサービスです。
    • 地域定着支援
      単身で生活している障害者等を対象に連絡体制を確保して、緊急時には必要な支援を 行うサービスです。

 

  • 自立支援医療
  • 更生・育成医療
    障害を除去・軽減する手術等の治療によって効果が期待できるものに対して提供される自立支援医療費の支給を行うものです。
  • 精神通院医療
    治療にかかる医療費の自己負担を少なくする制度です。 通常の医療費が原則3割負担なのに対して、自立支援医療制度を利用すると原則1割負担となります。 自立支援医療制度には精神疾患のある方、身体障害のある方、身体障害のある子供の3種類があります。

 

  • 地域生活支援事業
    地域生活支援事業は市町村事業と都道府県事業に分けられており、相談支援や障害者支援に関わる人員の派遣や養成、研修などの間接的なサービスです。

 

  • 補装具費支給制度
    必要になる補装具の購入、借受け、修理に関する費用も自立支援給付の範囲内となっています。補装具の種類は、義肢、装具、車椅子などが対象になり、利用の際にはお住まいの町などに費用支給の申請を行います。

 

 

 

 

 

 

 

精神疾病者にも「できる人」はたくさんいる

精神疾病のある人が「新しい働き方」をする。

 

自己管理するなど、無理だという声もあるかもしれません。しかし、精神疾病者と一括りにすることはしないで欲しいのです。

 

同じ精神疾病者の中にもいろいろな人がいて、全員違います。病気になる前の時間を全ての人が持っているのだ、という視点をもって欲しいと思っています。

 

今の時代、精神疾病は誰でもなり得ます。

 

鬱病は4人に1人がかかかると言われており、国内で約420万人にのぼります(平成29年)

 

この数字は日本人のおよそ30人に1人の割合となり、生涯を通じて5人に1人がこころの病気にかかるともいわれています。

 

「できる人」「頑張る人」が燃え尽きることはよくあることです。

 

そして、その人たちを全て福祉的な就労の場や単純肉体労働にだけ従事させるのは、本人の実力に見合っていない可能性があるのです。

 

夏目
病気にかかる前に戻ることがリカバリーではありませんが、「質」的に精神疾病を持つ人は全員違うのだ、ということを認識することが大切だと思います。

 

「精神疾病者」という「名札」がついた時点で、「あなたはこのくらい」「障害者として」という暗黙の壁が精神疾病者を囲みますが、それこそが「障害」なのです。

 

精神疾病者のなかにも、以前はバリバリ働いていた人や独自の才能を持っている人はいます。

 

また、精神疾病者は独特な分野に非常に向いている資質を持っていることが多くあります。

 

私は高校時代、進学校で、学級員や野球部も頑張っていました。

 

大学も順調に進学できたのですが、そこで病気になってしまいました。今は、地域活動支援センターでパートをしながら、文筆の「新しい働き方」に挑戦しています。

 

コロナが広がってから、世の中でも「新しい働き方」がしきりに言われるようになりました。今では、社会的にも認められた働き方ができているという安心感があります。

 

だから決して障がい者だから出来ないという決めつけはしないで欲しいのです。

 

 

毛布にくるまり手を伸ばす猫

精神疾病者にとっての新しい働き方まとめ

この記事では、しょうがい者も新しい働き方に取り組んだらどうだろうか、ということを取り上げました。

 

福祉の現場では、まだまだ、就労継続支援、就労移行支援、地域活動支援センターを経て、障がい者雇用や一般就労を目指すのが一般的になっています。

 

障がい者に自立して働いてもらうのは無理だ、とか、なかなか仕組みが整えられないという意見もあると思います。

 

しかし、作業所で行っている作業を、ひきこもりやコロナの影響で来所できない人のために、在宅も可にすることからでも始めてみてはいかがでしょうか?

 

また、企業でも、十分、在宅勤務など新しい働き方ができる障がい者がいることを理解し、仕組みを作っていくことはとても先進的だと思います。

 

夏目
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

この記事が皆様の何かしらの役に立つことを願って。

 

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夏目作弥

精神疾病の当事者であり、ピアスタッフを経験。精神疾病の日々の人気エッセイを作業療法室に連載しています。精神保健福祉ライターの他、文芸創作もしている。支援者と当事者の両方の立場から見えてくるものを、客観的な視点と体験談から綴らせて頂きます。自身の経験から精神疾病者の新しい働き方をご提案します。雑誌『シナプスの笑い』にて夏目作弥としてエッセイや小説を掲載しています。こちらもぜひご覧ください。詳しいプロフィールはこちら→夏目作弥


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