こんにちは。夏目です。
私は今、ピアスタッフとして就労して数年が経ちますが、昔働けなかった時期があります。
社会復帰できるまで、働くことは怖いことだと思っていて社会に出るのが怖くなってしまっていました。
その経験などをこれからお話させて頂きます。
この記事を読むことで、病気を持つ人も健常者と同じような「生きづらさ」を持っているのだということを感じていただければと思います。
そして、精神病によって苦しむ多くの人に何かしらの参考になったら幸いです。
お好きなところからお読みください
精神疾患を持つ私の傷つき体験
皆さんの中には、「精神疾患を持つ人が働かないのは自分の意思でしょう」と思われている方もいると思います。
しかし、本当にそうでしょうか?
「労働力商品化」という言葉を聞いたことがあるのでしょうか?
これはマルクスという経済学者が提唱した言葉です。
共産主義は疑問ですが、経済学者としては優秀な人で、資本主義の「本質」を言い当てた言葉だと思っています。
誰もが「就職」か「夢」かという葛藤があり、それが社会の複雑な構造を作っている。
精神疾病者も全く同じ悩みを抱え込み、マルクスのいう「労働力商品化」で成り立つ社会のなかで、精神病で弱っている自分がサラリーマンという組織の一員になることに不自由さを感じています。
また、傷ついた経験から働くこと自体が怖くなっているんです。
実際の私の体験として大学で経験したアルバイトと、その失敗談をお話させていただきます。
失敗からのトラウマ
私が初めてアルバイトをしたのは、機材運びの仕事でした。
仕事先でひどく怒鳴られ、傘も忘れてしまったので、雨の中をびしょ濡れでバスを待ったことが初めてアルバイトした時のトラウマ体験です。
それからいくつかバイトもしましたが、社会に出ることに怯えていた頃の自分には、労働市場は冬の海のように解釈されていました。
私の場合、アルバイト経験だけではなく、部活でのトラウマ体験も大きかったと思います。
スポーツは好きだったけれど、とても無理していたのだと思います。
今では部活も変わってきていますが、好きで勝ちたいからこそ、当時私は無理してしまっていました。
働くことと、部活を同一視し、ある意味、「合理的」に避けていたのです。
小説家を目指していた頃
大学で身体を壊し、精神疾病の当事者になってから文学に出会いました。
小説家を真剣に目指していた頃があり、書いたり、読んだりしていました。
それから、私は小説では食べていけないなと思い、資格取得のための勉強を始めました。
小説家になるという道は諦めてしまいましたが、今でも仕事をしながら聞き書き、小説、随筆、短歌、詩をいろいろな媒体に載せています。
創作の道でうまくいかなくても、その後、何らかの形で生きることはあるし、それは誰にも分からないことです。
芸術を諦め、「応用芸術」と呼ばれる経済に近い形で制作をすることになるかもしれません。
私の経験から得た就労のコツ
兄弟の勧めもあり、資格の勉強の他、アルバイトも始めました。
ライターでは、自分の体験的によく知っていることなどをテーマにしています。
コロナを機に福祉施設でのピアスタッフに仕事を変えるまで、クラウド経由で仕事をしていたのですが、3年目くらいにコロナ禍がおとずれ仕事が途切れてしまいました。
仕事がなくなり、元旦の郵便局の年賀状の仕分けのアルバイトの面接を受けて、楽勝だろうと思っていたら、落ちてしまいました。
コロナ禍でとても多くの人が殺到したそうです。
そんな時、FaceBookで近隣の福祉施設でのパート職を見つけました。自分の経験が活きると思ったんですね。
喫茶店や塾や郵便配達便のアルバイトも考えましたが、最初はハードルが高いと思っていた支援員の職場がとても自分に合っていると今では思っています。
簡単でストレスフリーだろうと思っていると、かえってとてもストレスフルになるかもしれません。
傷ついたときの心理
ここまで、自分の体験について書かせて頂きましたが、私自身そうだったように精神疾病者はコミュニケーション能力が低下し、より傷つきやすくなっています。
精神状態が悪いために集中して聞けなかったり、妄想に囚われてしまったりして、相手の話を聞いていてもあまり理解できていないことや曲がって捉えてしまうことが精神疾病者には多いです。
だからか、コミュニケーションを取るのが難しくなってしまいます。
聞くことができないので、上司には反抗していると思われ、指示が聞けないと言われます。そして、さらに否定され、働くことがさらに怖くなっていきます。それが分かっているため、自分から労働市場から離れようとします。
お金がなくても、それが「ベスト」であり、「合理的」な判断なのです。しかし、その「合理的」だと見られるのは、当事者の本当の願いでは決してありません。
正しく労働したい
「社会のために役立つことをしたい」「自分の夢を追いかけたい」という気持ちは誰もが持つものですよね。
私は当事者スタッフとして多くの精神疾病者と日々接しますが、精神しょうがい者などが芸術や文化的な夢を持っている人が多いと感じます。
支援者としては、その夢を全否定しない姿勢を保ちつつ、しょうがい者が作品を発表できる場もたくさん準備されているため、それらを探したり、就労継続支援A型などで賃金を得ながら創作をする道を一緒に模索することが現実的ではないかと思います。それは今、説明したような心理状態に置かれているからです。
働きたくない気持ちのなかには、むしろ「正しく労働したい」気持ちが根底にあることが多い気がします。
それが「芸術家の夢」として語られるのです。それは時に、非現実的でも、サラリーマンではない働き方としての私たちの気持ちなのです。
表現することで社会復帰を目指す
また、精神疾病者が表現したい気持ちの根底には、苦しみを癒したい、浄化したいという気持ちもあるのだと思います。
そのため、精神疾病者の表現を周りが奪ってはいけないのです。
むしろ、芸術などで表現すること自体は体調管理に役立ちます。
ここが人生の大きな転換点だったな、と私が思い当たるのは大澤真幸『ナショナリズムの由来』を読んだときでした。
あまりにも面白く、一生読書だけしたいと思いました。
孤独のなかで、読書だけをしていたい。
しかし、そこからピアスタッフとして就労できたことは、私の人生の大きな一歩であり、大転換地点だったと思います。
支援員として、そして病の当事者だった私の立場から少しアドバイスさせていただきます。
精神疾患の方が社会復帰をする方法
精神疾患を持ったれている方に、地域活動支援センターやデイケアや作業療法室から始め、就労継続支援や障害者雇用にステップアップするなど、少しずつ自信を取り戻すことをおすすめします。
また、ボランティアもQOL(生活の質)を上げながら、人間関係を取り戻すきっかけになり得ますね。
精神疾患者に足りないのは「実力」よりも、「自信」であることが多く、「自信」や「社会への信頼」を取り戻すことで、自ら気づいた壁を壊すことに繋がります。
就労移行支援などで収入を得つつ、表現もできるという、『中間点』を探っていくことが、とても大切だと支援経験から思います。
また、自分に合った働き方というものも重要になってくるでしょう。
今は在宅ワークなどが盛んにおこなわれていますよね。
私もその働き方をしていましたが、コロナ禍でいつの間にか「新しい働き方」がさかんに言われ始め、「田舎でフリーランス」を世間が認め始めてくれました。
最初は、「田舎でフリーランス」という意識もなくやっていて、自分だけ会社員になっていないことがコンプレックスでしたが、今は不思議な気持ちです。
人生、どう変化するかは分からないんですね。
障害がある方にも対応する新しい働き方
新しい働き方といっても種類はさまざまです。
- フレックスタイム制
1日の労働時間ではなく、1カ月以内の一定期間(清算期間)における総労働時間を定めることで、労働者が各日の出勤時間と退勤時間を自分で自由に決められる制度。
- テレワーク
「労働者がICT(情報通信技術)」を利用して、オフィスから離れておこなう勤務体制のこと。
- 短時間正社員
フルタイム正社員と時間当たりの基本給や賞与・退職金の算定方法を同等とし、無期労働契約を継続しながら、1週間の所定労働時間を短時間にできる働き方。
それ以外にも副業・兼業、業務委託化などがあります。
在宅ワーク
新型コロナで増えた在宅ワーク。
情報通信機器を活用して在宅形態で自営的に行われる働き方のうち、請負的にサービスの提供を行うものなどと定義されます。
在宅勤務の場合は、会社に雇用され、出社する代わりに家で行うことを指します。
種類としては、
- パソコンを使ったデータ入力など
- プログラミングやデザイン
- 翻訳やライティングや編集業務
- 封入作業などの軽作業
などがあります。
通勤しなくていいため、ストレスを避けることができます。
障がいの特性によって、自己管理が上手い人に向いていると言えるでしょう。
ただし、コロナ禍で仕事への応募数が増えている場合が多いことと、仕事を選ぶ目が必要です。
ウェルサーチを運営している会社でも在宅ワークに特化して、ITスキルを身につけることができる在宅通所型の就労移行支援事業所があります。
▼参考▼
石川県の在宅ワークスクール加賀!家にいながら利用できる就労移行支援事業所とは?
※条件が合えば、全国から通所できます
ソーシャルビジネスに関わる
テレワークや在宅ワークなら、自然が豊かな場所でも仕事できますね。
現在では障害者雇用も在宅ワーク化されているため、障害者雇用でも田舎などで仕事ができます。
ノマドワーカーといって、喫茶店や旅先などで仕事することもよく見かけるようになりましたよね。
また、ソーシャルビジネスやNPOなどに関わることは「生きづらさ」を根本から解決してくれるかもしれません。
私の務める施設はNPO法人なのですが、生産性を会社よりは求められないため、『生きづらさ』が感じにくいのかな、と思うところがあります。
その代わり『関係性』についてはとても教えられます。
福祉業界に就職する
私は精神疾病を抱えながら、ピアスタッフをしています。
クローズで入職したのですが、途中で病気のことを知られてしまいました。
ですが、上司が理解のある方で仕事を続けることができました。
上司、先輩や同僚は精神保健福祉などのプロや経験者のため、とても理解のある方たちばかりです。
病気をオープンにして福祉業界に一般雇用されるのは理解をしていただきながら、安定した収入も確保できるいい道だと思います。
実は、精神保健福祉の業界では「ピアスタッフ」と呼ばれる当事者のスタッフを積極的に採用するという動きがあるんです。
精神疾患の私が体験した働き方
いかがでしたでしょうか?
私事の体験談ばかりで少し恥ずかしいですが、少しでも皆さんの役にたてていたら幸いです。
紹介させて頂いた障害者の働き方の他にも、就労移行支援で働くなど色々な方法があります。
今、福祉業界のキーワードとなっている農福連携、林福連携という就労方法などもありますよ。
福祉の間でも新しい改革がされてきています。
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夏目作弥

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