TV制作の会社を経営しながら、「障害者と健常者が一緒に暮らす」がコンセプトの川崎市にあるシェアハウス「MAZARIBA」を運営されている内田勉さん。福祉の専門家や当事者が発信するWebメディア「Welsearch(ウェルサーチ)」の編集長である日野。
『ウェルトーーク!』とは、この2人による、一般的な福祉の支援とは、ちょっと違った福祉のアウトサイダーの2人が提供するによる参加者も一体なって進めていくトークライブです。
2019年4月21日(日)に、「ウェルトーーク!」の第4回目を開催しました。この記事では、YouTubeでライブ配信した動画だけでなく、トークライブの書き起こしをしております。当日、見れなかった、参加できなかったという方も見れる・読めるようにしました。
第4回目のゲストは、海外との繋がりも多く、日本初の障害者が障害者の起業支援をするNPO法人BPKS-JAPAN理事長の野田さんをお呼びして、あまり知る機会が少ない「日本の福祉と世界の福祉」について、いろいろと質問させていただきました。
長くなってしまいましたので、前編・後編の2つの記事でご紹介しておりまして、今回は最初の記事です。前編では、野田さんの自己紹介から日本の福祉と世界の福祉との比較について、語っていただきました。
多くの国を渡り歩いて、障害当事者にインタビューをしている野田さん曰く、「日本の福祉は最優秀国」という驚きの言葉がありました。バリアフリーが整っていない、障害者に厳しいと言われている中、なぜ日本の福祉は世界の福祉と比べて、最優秀国なのか?今回のウェルトーークでは、その真相に迫ってみました!
お好きなところからお読みください
ウェルトーーク!vol.4
「ウェルトーーク〜vol.4」のゲストは、日本初となる障害者が障害者の起業支援をするNPO法人BPKS-JAPANの理事長「野田 徹」さんです。海外との繋がりがたくさんあり、母体のBPKSというNGOは、国連のESCAP障害者人権向上委員会で、最優秀賞を受賞されたバングラディッシュの障害者支援団体です。
野田 徹(のだ とおる)さん
プロフィール
2011年の東日本大震災で、障害者4級の当事者となる。多くの大使とも繋がっており、通訳、翻訳講師、外交なども手がける。2017年にNPO法人BPKS-JAPANを立ち上げ、日本初となる障害者が障害者の起業支援・生活支援をする活動をしている。
- 2016年:国連障害者の生き方会議(アイルランド)に参加
バングラディシュで障害者TVに出演 - 2017年:国連障害者の生き方会議(イギリス)に参加
- 2018年:国連障害者の生き方会議(ウィーン)に参加
まず最初に「ウェルトーーク〜vol.4」の動画になります。聴覚障害者の方や動画よりも文章の方がいいという方のために、書き起こしの文章もありますので、お好きな方でご覧になっていただければ幸いです。
第4回目のウェルトーークの動画になります。
出演者の自己紹介
なぜやっているのかと言うと、福祉業界はITがすごい弱いのですが、素晴らしい活動や専門的な知識を持っている方が多いので、そういう人たちの発信する場を提供しています。
では、内田さんもお願いします。
障害がある人とない人が一緒に住むというテーマのシェアハウスを運営しています。本業はテレビディレクターで、いろいろなニュース番組を作っています。よろしくお願いします。
BPKS-JAPANとは
上手くいっていないのは当たり前で、国会議員に障害者がいないという部分からして僕ら、障害者の実情を分かっていないのです。だから健常者でものを考えているので、どうしてもミスマッチが出てきます。
当団体でもう1つ強いのが、外国で起業することや外資系で就労することです。外国人と仕事をしようということがメインなんです。障害者、特に特別支援学級に通ってる障害児は、一般的な教育を受けていないから意外に何にも知らなかったのです。
それも小学校4・5年生ぐらいのものから教えています。あ、バングラディッシュにも今繋がってきましたね。この人、日本語分かる人なので大丈夫です。
海外の障害者との繋がりが強いBPKS
何年か前に安倍首相が「障害者差別禁止法」という罰則のない法律を作りましたが、あれは実は国連が動いているんです。日本が勝手に作ったものではないんです。
生活まで面倒見るのはなかなか大変なので、すみませんが当団体ではこれは、まだできていないです。もう1つは、外国の障害者が日本で働きたいという時の窓口もやっています。
バングラデシュのBPKS代表と
外国の障害者が日本で働きたいときの窓口
東南アジアの英語ってすごいですからね。何を言っているかわからないんです。
当団体は、私もバングラディッシュ英語に慣れています。もう1人副理事長はベトナム英語に慣れていて、向こうの英語が分かる為、窓口になれるということです。
起業する時に問題なのは、ビジネスマナーがまったく分かっていないことです。それは最近の健常者も一緒です。20代30代のマナーがまるでなっていないので、今は健常者にも教えています。
iPadで海外にも放送しながら語る野田さん
身体障害者4級でもできることがたくさんある
【参加者】
僕も左手は、動かないんですよ。僕の場合は、脳の病気なんですが、温度感覚もないですね。
【参加者】
右脳ですね。だから、左手と左足が不自由です。
野田さんが障害者になったきっかけ
【参加者】
手は、どのような後遺症あるんですか?
【参加者】
感覚がないんですか?
【参加者】
私も左手で物を持っていると、よくポロッと落としてしまいます。
お札も出せないので、お財布の中に1,000円札がたくさんあるとしても1枚で取れないです。
【参加者】
野田さんの場合、両手がそうでしたか?右手は普通なので、右手でなんとかなります。だから、左手でしかできなくなった状態なんですね。
障害を抱えながらも
さまざまな場所へ行く野田さん
身体障害者で危なかったエピソード
失敗したのは一昨年、真冬の北海道でいつの間にか靴が脱げていて凍傷の寸前でした。怖かったです。気付いたら後ろに靴があるんです。「あれ!?」と。地面は氷点下ですよ。
【参加者】
痛さも感じないのですか?
そこから腐ってしまって、私今、足がこういう状況です。指は3本切断しました。えらい目にあいました。
使いやすく杖も改造した
これどうやって持っているかと言うと、この手の登山用のものって普通こう持つでしょう?そうじゃないんです。僕は実はこういう持ち方をしています。
野田さんが使っている改造した杖
自動販売機で何か買う時に入れたままこうやって物を持てて買えるので、けっこう楽です。なんと言っても手を離しても支えられるというのが便利。これは楽でいいです。
これで1回取材が来ましたよ。面白い杖を持ってますねと。
【参加者】
改造はしてないのですか?
杖に滑り止めもつけている
これは何をヒントにしたかと言うと時代劇で忍者が吊着(つるぎ)に真田紐を巻くと滑らないというのを見て、「これだ!」と思いまして。それで見事に滑らないですよ。
なぜ杖の取っ手の部分にいろいろと巻いてるかと言うと、手首が擦れてきて、その内赤切れになっちゃうんです。だから、真夏でもサポーターを付けているんです。どうせ暑さを感じないですから。
汗びっしょりでもわからないからいいやと。感覚のない便利性はすごいです。そう嫌なことばかりじゃない。何でもプラス思考に。
世界の福祉と日本の福祉を見てみる
今日は、海外の福祉の状況などを聞ければと思ってます。ちょうど先月ですかね、イギリスに行かれたとのことですので、その話を聞かせていただければと思います。
それで2007年から海外に行って、向こうの福祉を聞いているわけです。その辺の横断歩道を渡っている現地の障害者を捕まえて聞くんです。関西なので、赤の他人に普通にもの聞けるんです(笑
【参加者】
めっちゃわかります(笑
今まで、アイルランドとイギリスとバングラディッシュと行って、障害者を捕まえて、「あなたどうなの?」と聞いてきましたよ。今生活どうなの?仕事どうなの?とたくさん聞くわけですよ。
関西人はいかに相手の言葉を引き出すかっていうが、たぶん得意なんだと思います。
すると、まずイギリスの話をすると、よくイギリスとか北欧、北ヨーロッパっていうのは福祉が進んでるって言いますよね?
日本の福祉はトップレベルで充実している?
その観点から言いますと、国連の目線から見て日本って最優秀国なのよ。
イギリスには障害者手帳がない
これ級によって保障があるわけです。例えば、○○がタダだったり、税金免除、タクシー券はもらえるとかあるんです。これは日本だけです。こういう交通系の支援に関しては、日本はたぶん世界のトップですね。
【参加者】
電車も半額ですよね。
【参加者】
僕も青春18切符は、買ったことないです。
イギリスのバリアフリー事情
イギリスはどうなっているかと言うと、手帳はない代わりに「交通福祉カード」というものがあって、障害者だという証明書、要は診断書ですよね。それがあれば、交通福祉カードを買えます。
【参加者】
そうだと思います。僕は今まで大阪と京都に住んでいましたが、バスカードはありました。
ロンドンは、交通福祉カードっていうものを年間160ポンドで買います。年間22,000円くらいします。ところが、完全タダにはなりません。なんと3割引だけ。どう思いますか?
ところが1日券も1,000円だけれども、一週間乗っても1,000円なんです。
だから、向こうの身体障害者は腕力がすごくて、がっちりしています。この石畳に関しては、変えようとしないんです。なぜかは知らんけど景観や歴史を重んじるんですね。
北欧の車椅子ユーザーはどうしてる?
【参加者】
車に乗られますね。私、ワーホリで働いていた時に副社長が車椅子の方で。その方は、会社と家の行き来しかしないです。絶対車で移動して、出たらすぐ車でしたね。
車椅子を畳んだりする人はお手伝いでしたので、あまり道端歩いてるということはないです。
こういう交通サービスは海外にはないので、日本っていいなと思いきや、日本の問題は就労の部分です。
後編もお楽しみに
第4回目の『ウェルトーーク!』前編となります。前編では、野田さんの自己紹介から日本の福祉と世界の福祉について、語っていただきました。世界の福祉の情報というのは、あまり聞く機会もないので、とても新鮮でした。
野田さん自身、身体障害者で方から先が麻痺している中、努力をして車の運転やピアノの演奏などができるようになり、世界も渡り歩いて、障害者の現状を街頭インタビューされております。前編でお伝えした世界の福祉についてまとめますと、以下になります。
世界の福祉
- 障害者手帳がある国が珍しい
- イギリスの地下鉄はバリアフリーが整っていない
- 日本は保証が手厚い
- 欧米は石畳が多い
前編では、世界の障害者にまつわるバリアフリーや交通事情がメインでしたが、後編は「就労」がメインとなります。バリアフリーや交通に関しては、世界の福祉の先進国と言われている北欧などよりも整っているとのことでしたが、就労に関しては、世界の福祉と比較して、日本はどのような状況なのでしょうか?
では、第4回目の後編は、こちらからどうぞ。
一緒にパーソナリティーをしている内田さんが運営しているシェアハウス。川崎市にある障害者も健常者も一緒に住める「MAZARIBA」も随時、見学は無料で受け付けております。福祉とはかけ離れたテレビ業界で活動されており、少し違った目線から障害者福祉のことを知ることもできるでしょう。
次回もスペシャルゲストをお呼びしております。次回のウェルトーークの詳細は、こちらからどうぞ。
→ ウェルトーーク!
『ウェルトーーク!』も皆さんと一緒に作り上げていきたいと思っておりますので、「こういうトークが聞きたい」・「○○さんとのトークライブが聞きたい」といったご要望がありましたら、お問い合わせからいつでもリクエストしてください。
日野信輔
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たしかにハード面そうでしょうね。ちょうど敗戦後の国の再生、高度成長、ハード面でのバリアフリーの思想が奇跡的にっ重なったのだと思うのですよ。とはいえ、ソフト面でのバリアフリー、またバリアフリーの思想の浸透はまだまだ、だと感じています。自分は高次脳機能障害者(記憶障害が主)です。僕らが必要なのは「ソフト面でのバリアフリー」なのです。言い換えれば「わかりやすさ、知のバリアフリー化」とも言えます。
*塩と砂糖のビンをどうやって見分けますか?記憶がやられるとそういうのが見分けられなくなります。あと停まっている電車がどちらに動くかとか。みな記憶に依存なんです。
そんなことで、上記サイトで細々と情報発信しています。
ケータイだって福祉ツールなんですよ。私の母は後天性の聴覚障害者です。ケンカはケータイを使ってやるのです。若い頃はわずかに聴覚はあったのですが。オッサンなのに声は高校生なのか?それともオッサンの声を想像しているのかわかりませんが。父と母はセミ筆談です。母は話す。父は書く。そんな一家です。