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バリアフリー映画を当たり前のものに|パラブラ代表の山上庄子さんインタビュー

  • 最終更新日:
パラブラ株式会社

あなたは「バリアフリー映画」をご存知ですか?

 

この言葉を聞いて真っ先に思いついたのは、階段のない車いすが通れる映画館だったりしませんか?

 

私も最初は、それが思いつきました。

 

でも、バリアフリー映画ってそうじゃないんです。

 

  • 目の見えない方
  • 見えにくい方
  • 耳の聞こえない方
  • 聞こえにくい方

 

など、多くの方が楽しめる映画のことなんです。

 

字幕がついていたり、音声ガイドがついていたりするのは当たり前!

 

でもその前に絶対に必要なあることも含まれるんですよ。今回はそんな映画のバリアフリー版を制作しているPalabra株式会社(以下パラブラ)さんにお話をお聞きしました!

 

日野
バリアフリー映画を知っている人も、知らない人も「なるほど」とためになることがあるに違いありません。

 

ぜひ、最後までお読みいただければ幸いです!

パラブラの活動概要

日野
パラブラの山上さんにお越しいただきました。よろしくお願いします!

 

早速ですが、パラブラではどんな仕事をなさっているのでしょうか?

 

今回のインタビューは、動画でも視聴可能です。

 

 

山上
映画や映像の字幕や音声ガイドの作成が一番のメインの仕事になります。

 

文化芸術の関わる分野全般について、なるべく見れる人を増やしていく仕事をしている会社です。

 

日野
例えばどんな風にでしょうか?

 

山上
字幕とか音声ガイドって作るだけではなく、どういう風にお客様に提供するかまでやる。

 

そこまでしないと使っていただくことが出来なかったんですね。

 

日野
なるほど。

 

山上
今、スマホが普及している時代ですので「UDCast(ユーディーキャスト)」というアプリケーションの開発運営をしていたり、イベントの時に会場に行くためのアクセスだったりしますよね。

UDCastアプリロゴ

 

日野
確かに。マップはよく使います。

 

山上
そうですよね。

 

例えば、映画でいうとチケットって皆さんネットで好きな劇場で好きな時間で買うと思うんですけど。

 

日野
はい。買います。

 

山上
でも視覚障害者の方は、本編にきちんと音声ガイドが付いていたとしても、チケットサイトだったり映画のサイトのアクセシビリティがきちんとしていなければ、視覚障害の方は独自でチケットを取っていくことは難しいと思うんです。

 

日野
確かにそうですね。

 

チケットがとれなければ、映画自体に音声ガイドが付いていても観れないですもんね!

 

山上
そうなんです。

 

だから、そういったその周辺のこと前後を含めて「映画鑑賞」と捉えています。

 

 

ぼやけさせている映画館のチケット売り場の写真

 

 

バリアフリーコーディネートも

日野
最近はそういうお仕事が増えていたりするんですか?

 

山上
そうですね。全体のバリアフリーのコーディネートというか、コンサル的な仕事が最近増えてきていますね。

 

日野
コンサルのお仕事もあるのですね。

 

山上
主催者側も日常的にお客様は何に困るかとか、障害当事者との接点がなかったりすると何を準備したらいいかわからない場面は多いんです。

 

日野
確かにそうですね。

 

一緒にデザインしていったりした方が、イベントとしてもきちんと届けられる形になっていきそうですもんね。

 

仕事で握手する男女

 

 

「障害」という線をなくしたい

山上
また、高齢の方だったり、お子さんを連れてベビーカーをひいてる方だったり、いろんな人にとってのバリアというのもあると思っているんです。

 

日野
う~ん。確かに。バリアフリーなんて言葉は流行りだしたときは、お年寄りのためのご自宅リフォームって感じでしたからね。

 

今はそこから進んで、障害のある方にもバリアフリーは適用するとんだいう認知度が上がっていたり、ベビーカーに対してもベビーカーマークなんてものも出来ていますよね。

 

山上
そうですね。

 

でも、私たちとしてはあんまり障害というものに線を引いて何かしたいというわけではなくて、むしろそこを無くしていく事を目指してるというか、テーマにしてやっているんです。

 

 

河川敷を登っていく子供

 

パラブラを立ち上げるキッカケ

日野
そもそも山上さんがパラブラを立ち上げたキッカケというものは何だったんでしょうか?

 

山上
実家が映画の配給をやっていたこともあって私にとっては身近なものだったんです。

 

でも、こんなに楽しい映画をすぐに観れない。アクセスできない人がいるということを知って、そういうことを無くしたいっていう想いからですね。文化芸術こそ本当に誰に対しても開かれているものであるべきだと思うんです。

 

日野
う~ん、なるほど。深いですね。

 

山上
そこにアクセスできない人がいるという事自体が何かおかしいなというか、それは何か違うだろっていう風に思っています。

 

 

ぷんぷんした様子の両腕を組んでいる小さい女の子

 

観客を増やすのがバリアフリー映画の役目

日野
アクセス出来る人を増やすにはどういうことが大事になっていくと思いますか?

 

山上
福祉として何かやっていくというよりも、観客を増やすということだと思っています。

 

日野
観客を増やすというのは?

 

山上
はい。例えば、字幕音声ガイドがないことで自分たちが行けるものではないと判断してしまう。

 

最初から映画って聞くだけでも観れないし、いいよって断ってしまいますよね。

 

日野
最初から線を引いてしまうということですね。

 

山上
そうです。

 

そこから、「観れる」という選択肢になった時に初めて観客になりえる人が入ってくるわけじゃないですか。

 

日野
確かにその通りです。

 

山上
そうなった時に結局やっていることは、お客さんを増やすことであって、興行側の人たちにもそう思いながらやってもらうのが大事で、そこの視点を持つことなのかなって思います。

 

山上さんと日野

山上さん(左)と日野

 

 

バリアフリー字幕と普通の字幕との違い

日野
バリアフリー映画と普通の映画の字幕に違いってあるんでしょうか?

 

山上
そうですね。翻訳字幕とは違う点がいくつかあります。

 

話者名の表記

山上
1つは話者名の表記です。

 

日野
話者名?

 

山上
誰が話してるかって()でつけるんです。

 

日野
へえ~!

 

山上
聞こえている人にとっては声色の違いを聞き分けられるので会話の成り立ちも判断出来ます。

 

さらに男性の声だな、女性の声だなとかさっきの人と同じ声だなとか、声のサインが耳にちゃんとインプットされていると思うんです。

 

日野
あ~!確かに、言われてみればそうですね!

 

山上
でも、その人物の正式名称を伝えるのが目的ではないんです。

 

あくまで聞こえている人達が声色の違いを聞き分けているものになるんですけど、その話者名でネタばれさせてしまったりとかとかも結構あるんですよ。

 

日野
それはちょっと残念ですよね。

 

音情報・音楽情報の文字化

山上
2つ目は、音情報や音楽情報を文字化することです。

 

これは、見ただけではわからない「音」の情報や作品の中で重要な音を文字にします。

 

日野
これは具体的にどういうものでしょうか?

 

山上
入れる情報量や内容も難しい部分がありますが、例えば、無音なシーン。

 

「無音」と字幕をつけるのではなく、音の変化によって感情が高ぶったり変化することを狙った演出を文字で表現します。

前後に大きな喧騒がある中で、パッと音がなくなったときに無音ができる。

 

前後の”喧騒”について説明してから、表情を見せるためにあえて、「無音」と字幕に書かなくても演出の意図を表現するケースがあったり、「無音」という文字が逆に邪魔になるケースもある。

 

 

簡易な説明になりましたが、どんなものなのか、実際の作品を見てみましょう。

 

【音声ガイド・日本語字幕付き】『明日をへぐる』予告編

 

 

映画監督の意向も出せるように

山上
でも、映画監督に制作作業に参加していただくと、わかってもらえる、改善されていくこともあるんです。

 

日野
と、言いますと?

 

山上
皆さん口をそろえて言うのは「自分は本当に一人でも多くの人に自分の映画が観てほしいと思って作ってきている」ということです。

 

その時にこのままでは観られないという人がいるということを初めて知るということによって「当然のことながら次回以降はもう絶対につけなきゃって思いますよ」と言って頂けることですね。

 

日野
それは頼もしい。

 

 

青空とひまわり

 

 

映画への想い

山上
おこがましいかもですが、文化芸術の分野の作家側からすれば当然の事という気がしていて、だからこそ誰を観客として見ているのかといういう話だと思うんですよね。

 

日野
はい。

 

山上
たとえば自分が字幕ユーザーで聞こえなくなって字幕版で映画を見ることになった場合に、勝手につけられた字幕よりは映画の一部として監督が演出した字幕であってほしいなって。

 

日野
そうですね。

 

監督本人が意図したものとちょっと違ってしまうところだってあるんでしょうからね。

 

山上
はい。だから、そこはやっぱり当然の事としてあってほしい部分じゃないかなって思います。

 

 

カチンコを鳴らすところ

 

バリアフリー映画への理想

日野
山上さんにとって、どんなバリアフリー映画が一番理想的ですか?

 

山上
そうですね…。

 

「今日の音声ガイドはどうだったね」とか「字幕こうだったね」という感想が出てしまうと、それは失敗だなと思っていて、あくまで映画の感想が一番に出てくるような映画が理想だと思います。

 

日野
なるほど。

 

山上
結局、やっぱり字幕とか音声ガイドって通訳でしかないので、字幕の感想が出てきたってことは何か悪目立ちしたんだなとか…。

 

本来は作品を楽しむものなので、字幕を作るときも作品より前に出るようなことはしたくない。

 

日野
はい、そうですね。

 

 

楽しそうに話す3人の女性

 

今後の展望について

山上
その映画をどう解釈するかって結構その人にもよると思うんですけど、余地を残しておくってこと自体もすごく大事で。

 

全部説明するとそれは音声ガイドじゃなくて、むしろ解説になってしまう。

 

日野
確かに!その通りですね。

 

山上
字幕や音声ガイドの質によってその作品の伝わり方って全然変わってしまうので、そこのプロをきちんと育てていく。

 

本当の意味でのバリアフリースタンダードにしようと思ったときに、やっぱりそこはきちんとビジネス化して制作者の質を上げていくということをしないとと思うんです。

 

日野
う~ん。感服です。

 

山上
いやいや。…でも、観ている側に対しても凄く失礼だなという風に思います。

 

だから、映画のスタッフがいるのと同じように「字幕音声ガイドの制作者」がきちんと仕事をして成り立っていて、きちんとプロが育っていって、映画を製作する一環として当たり前にその役割に入っているというイメージを持っていきたいんです。

 

 

映画のイラスト

 

 

印象に残っているエピソード

日野
今までお仕事をされてきた中で、印象に残っているものって何かありますか?

 

山上
演劇の公演もサポートさせていただいたんですけど、「生の演劇自体始めてきました!」と当事者の方に声をかけていただけると「いやぁ良かった」って思いますね。

 

日野
そうですよね。

 

山上
こんな楽しいことに対して、第一歩を踏み出してもらえたっていうのは凄く嬉しい!

 

仕事の中で一緒に接点を持っていけること自体、私やスタッフにとってはとても大事なことです。

 

日野
大事なこととは?

 

山上
身近に当事者がいると生活の中でも色んな気づきがあるんです。

 

知らない事とか理解されない事とかが一番のバリアでしょうか。

 

一緒に協働していく、サポートしていること自体も凄くありがたい場面だなと日々感じます。

 

 

青空とピンクのバラ

 

 

 

この活動を通じて実現したいこと

日野
最後に、何か実現していきたいこと、今後の目標などはありますでしょうか?

 

山上
「バリアフリー」という言葉自体が世の中からなくなるような社会を目指したいです。

 

わざわざバリアフリーって言葉を使うとか、わざわざその話題を出さなきゃいけないということではなくて、そんな言葉もなくなるような社会にしていかないといけないとすごく思っています。

 

日野
なるほど。

 

山上
やっぱり認知されないことには人は来ないので、結構配給会社さんから「じゃあ何人来ますか?」といわれることがあるんですよね。

 

でも、その尺度自体が凄くズレてしまっているというか、何人のためにやっているとではなくて。

 

日野
ベクトルが数字のためではないということですよね。

 

山上
作品を発信する、その先にいる人たちを想像するという事なので、「バリアフリー対応したのに一人も当事者が来ませんでした…」と、そこに対してマイナスに考えちゃうこと自体がまだまだかなって思っていて。

 

日野
そうですね。

 

山上
だれがいつ来ても楽しめるようになっていた方が当然良いことじゃないですか。

 

だからこそ、コンテンツの製作側にもきちんと知ってもらうということも、当事者への広報というのも、もちろんそうですけど作品を発信している側の方々にも知ってもらいたいと思います。

 

 

ガッツポーズの女性

 

 

パラブラ山上さんの取材を終えて

バリアフリーという言葉自体を発する機会がないくらい、バリアフリー映画を当たり前のものにしたいと語る山上さん。

 

この活動、そしてバリアフリー映画というものをより多くの方に知っていただきたいと思いました。

 

山上さんのそのプロ意識。誰に対してでも映画を楽しんでいただきたいという制作サイドの熱い想いが伝わるインタビューだったのではないでしょうか。

 

ぜひ一度、バラブラのアプリUDCastを使ってみてください。

 

UDCast

UDCast

iOS
https://apps.apple.com/jp/app/udcast/id899342269

 

Android
https://play.google.com/store/apps/details?id=jp.co.palabra_i.udcast&hl=ja&gl=US

 

 

実際にUDCastの利用している全盲の方の記事もありますので、参考にしていただければ幸いです。

 

『【視覚障害者】全盲の私が感じるスマホのメリットと役立つiPhoneアプリ3選!』

 

 

障害のない方もバリアフリー映画というものを是非知っていただき、一度ご観覧頂ければと思います。

 

僕もお話を聞いて情熱をかけて作られているバリアフリー映画を観てみたくなりました。

 

きっと気づきがあるはずです。

 

パラブラ公式HP:https://palabra-i.co.jp/

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日野信輔

日野信輔

株式会社Nextwel代表取締役。Welsearch編集長。ソーシャルビジネスに特化したWebマーケター。障害者プロデュース・福祉事業所やNPOの伴奏支援などしております。得意分野:工賃アップ/障害者の仕事づくり/集客。詳しいプロフィールはこちら→日野信輔


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