もしかして私、スマホに頼りすぎかも。見る時間をもっと少なくしたほうがいいのかも。でも見たい。やっぱり見たい。
全盲の私もそんな悩みを抱えています。
「そんなにスマホばっかり見てたらスマホになってしまうよ」と夫に言われる始末(笑)
どうしてそうなるのか。
メッセージのやり取り、調べもの、読書に音楽鑑賞。いつだってスマホは大活躍。
それまで私にとっては不可能だったことも、この手のひらに乗る薄い板のおかげでどんどん可能になってきているのです。
私の生活を支えてくれる大切な道具なんですね。
ということでこの記事では、全盲の私が感じるスマホのメリット、視覚障害者の生活の助けとなるアプリなどについて紹介します。
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全盲の私のスマホデビュー
私がスマホデビューしたのは、2014年4月のこと。
ほとんど衝動買いのような形で手に入れたのが始まりでした。
最初は軽い気持ちでお店に入ったんです。
以前から気になっていたiPhoneを手に取ってみたくて。「今日は見るだけ」というつもりで、店員さんに詳しく説明していただきました。
そうしたらあまりに魅力的で、どんどんほしくなってくるではありませんか。
今日から使い始めたい!
よし、決めた!
という感じで、その場で購入してしまったのでした。
こうしてスマホデビューを果たすことはできましたが、慣れるまでは戸惑いの連続。
タップだとかスワイプだとか、そういった「ジェスチャー」をマスターするのに一苦労。
「ボタンが恋しい」と何度も思いました。
それでも練習を重ねているうちに少しずつ上達し、次第にスマホのとりこになっていったのです。
全盲の私が感じるiPhoneのいいところ
では、なぜiPhoneを衝動買いすることになったのか。私の感じた大きな魅力を紹介しましょう。
さまざまな状況に配慮されている
まず何よりありがたいところは、「VoiceOver」という画面読み上げ機能が搭載されている点です。
この機能のおかげで私もさまざまな情報を見る(正確には聞く)ことができるんですね。
何が嬉しいって、この機能、どのiPhoneにも最初から入っているんです!
特別なアプリを自分で追加するといった面倒な作業は要らない。
簡単な操作をするだけで丁寧に喋ってくれるんです。
これに限らず、アクセシビリティ機能は充実しています。
全盲だけでなくどんな状況の方でも操作しやすいよう配慮されている。こういうところ、すごく好きです。
同じものを使える喜びが得られる
それは私にとって気分の高揚する出来事でした。
何と言っても、多くの人と同じものが持てるんです。これ、とっても重要なこと。
それまでにも携帯電話は使っていましたし、それにも画面読み上げ機能は入っていました。
「視覚障害者や高齢者に優しい機種」を選ぶしかなかったからです。
目の見える同年代の友人たちと同じものが持ちたい。
ずっとあこがれを抱いていました。
その願いをかなえてくれるのがiPhoneだったわけです。
実際にiPhoneを手に入れてみると、やはりユーザー仲間は周りにたくさんいました。
視覚障害の有無や年代に関わらず。「スマホ一緒だね」という話で盛り上がれるし、不具合などで困ったときにも情報を得やすい。
VoiceOverユーザーも非常に多いので安心できました。「求めていたのはまさにこれだ!」という感じです。
VoiceOverって?
そんな私に毎日語りかけてくれる、VoiceOver。
どれほど素晴らしい機能なのか、紹介しましょう。
iPhoneに喋ってもらうのは簡単。「設定」 >「アクセシビリティ」>「VoiceOver」と選択し、この機能をオンにするだけです。
VoiceOverをオンにすると、画面の操作方法が変わるんです。
画面の操作方法が変わる
例えば
- 1本指で1回タップ(触ってから離す)すると選択されている項目の読み上げ
- 2回タップすると項目の決定
少し画面に触れただけで操作が実行されてしまうといったことは起きないんですね。
文字の入力も、VoiceOverのおかげでスムーズに行えます。
絵文字や漢字の説明などしっかりしてくれるんです。
また絵文字の場合、笑顔だけでもさまざまなものがありますが、どんな笑顔なのか細かく説明してくれます。
- 微笑んでいる顔
- ニコニコ笑っている顔
- 笑い転げる顔
というように。
自分の気持ちにより近いものを選ぶことができるわけですね。
絵文字をふんだんに使ったメッセージのやり取りはやはり楽しいものです。
ちなみに文字を打つことに関しては、iPhone本体でも問題なく行えますが、恥ずかしながら私はあまり得意ではありません。
そのため外付けキーボードを活用しています。
パソコンと同じ感覚でローマ字入力できるので長文を打つときには重宝しています。
視覚障害者の生活を支える3つのアプリ
スマホアプリには、私の「1人でできる」を増やしてくれるものがたくさんあります。その中から代表的なものを紹介しましょう。
AI画像認識アプリ
書類が郵便で届いたけど、何が書かれてるんだろう。
友達から画像がLINEで届いたけど、何が写ってるんだろう。
そんなときに便利なのがAI画像認識アプリ。
カメラで写した風景や色、文字、顔や物体などを認識して音声で教えてくれるんです。
代表的なのは「Envision AI」というアプリ。有料です。そして、少しお高め……。
似たような機能のアプリに「Seeing AI」というものもあります。こちらは無料です。
紙に書かれた文字をかなり正確に読み上げてくれるんです。
人の目を借りることなく、点字ではない文字を手軽に把握できるなんて「画期的!」と初めて使用したときは感激しました。
またSeeing AIには、音の高さで明るさを教えてくれる機能もあります。
光を感じない私も、「電気消し忘れてないかな?」などと自分自身で確認できる。ありがたい機能です。
Envision AI
iOS
https://apps.apple.com/jp/app/envision-ai/id1268632314
Android
https://play.google.com/store/apps/details?id=com.letsenvision.envisionai&hl=ja&gl=US
Seeing AI
iOS
https://apps.apple.com/jp/app/seeing-ai/id999062298
ビデオ通話でのサポートを依頼できるアプリ
AIは優秀だけど、やっぱりここは人の力を借りたい。そう感じられる場面もあるものです。
そんなときはこのアプリ、「Be My Eyes」の出番です。
「この調味料は何だろう」「このお弁当の中身は何だろう」などと見てもらいたいものがある場合、アプリを通じて依頼します。
そうすると手の空いている登録ボランティアさんにつながり、ビデオ通話ができるんです。
晴眼の方はどなたでもボランティアとして登録できるのですが、多くの方が登録してくださっているそうで、本当に心強い限りです。
困ったときは家族など親しい人に連絡してお願いするという手もありますが、それは意外とリスキーな選択。
つながるかどうかわからないし、つながったとしても「今忙しいのに」と嫌な顔をされてしまう可能性もあります。
でもこのアプリを使えばその心配は要りません。
そこだけが難点です。
Be My Eyes
iOS
https://apps.apple.com/jp/app/be-my-eyes-helping-blind-see/id905177575
Android
https://play.google.com/store/apps/details?id=com.bemyeyes.bemyeyes&hl=ja&gl=US
映画を音声ガイド付きで楽しませてくれるアプリ
私は子どもの頃から映画が好きで、家族や友人とよく見ていたのですが、時々もどかしい思いをしていたんです。
何が起きているのかわからないシーンがあって。
「今誰も喋ってないけど、どうしたんだろう?」と頭の中がはてなマークでいっぱいになったものです。
見たい映画の音声ガイドをアプリを使ってダウンロードしておけば、イヤホンでそれを聞きながら映画を楽しむことができます。
スマホのマイクが拾う映画の音に合わせ、適切な説明が流れるようになっているのだそう。
映画館で見るときも、DVDや動画配信サイトで見るときも、これがあれば「置いていかれてる……」という寂しい感覚を味わう必要はないんですよね。
UDCast
iOS
https://apps.apple.com/jp/app/udcast/id899342269
Android
https://play.google.com/store/apps/details?id=jp.co.palabra_i.udcast&hl=ja&gl=US
視覚障害者の生活もより便利に
ここで紹介したもの以外にも、視覚障害者にとって便利なアプリはたくさんあります。
ロービジョンの鈴木さんもiPadやiPhoneの活用術を紹介してくださっておりますので、参考にしてみてください。
『ロービジョンの私のiPad・iPhone活用術!おすすめ機能とアプリで生活が便利に!』
私はまだ使ったことがないのですが、移動時に使えるナビアプリもあるのだそう。
今とても気になっています。
そんな時代がもうすぐやってくるのでしょうか。夢のような話ですが、私は心待ちにしています。
ここ10年ほどで、私の生活は大きく変わりました。技術はどんどん進歩しています。
今後どうなっていくのか、楽しみですね。
スマホがもたらしてくれるさまざまな幸福に、今日も感謝です。
お読みいただきありがとうございました。
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