そんな私は現在、在宅勤務で契約社員として働いています。
「どうしてこの働き方を選択したのか」
それは、自宅で仕事がしたかったから!
コロナ禍だからとか、通勤のリスクが人より高いからとか、そういうことは関係ないんです。こっちのほうが自分に合っていると考え、あえて選んだのです。
今の会社で働き始めたのは約8年前。
当時は在宅勤務なんてあまり一般的ではありませんでしたが、このところずいぶん広がってきていますよね。私の周りでもこの働き方に関心を持つ人が増えてきています。
そこでこの記事では、視覚障害者の私が今の会社に出会うまでの経緯、働き始めて感じることなどをお伝えします。
視覚障害者の方で、就労を考えている方にとって、就労までのイメージが掴めるようになるかと思いますので、ぜひぜひご覧ください!
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全盲の私が在宅で働きたいと考えるようになるまで
在宅で働きたいと考えるようになるまでには、思い返すと学生時代からの仕事に関するエピソードがあります。
どのような変遷を経て、在宅で働きたいと思ったのかを時系列で紹介していきますね。
高校時代
小学校から高校まで、私は盲学校に通っていました。卒業後の選択肢としては、
- 盲学校の専攻科
- 一般の大学
- 職業訓練施設
などがあります。
先輩の多くは盲学校の専攻科であん摩・はり・きゅうを学び、その仕事に就くという道に進んでいました。だから私は思ったのです。
とは言っても、そうしたくはなかったんですよね。もちろんマッサージなどが素敵な仕事だというのは知っていました。
資格を取ってたくさんの患者さんを癒している先輩方の話を聞くと羨ましく思うくらいでした。でも、自分には向いていないような気がしたのです。
人見知りの激しい私にとってコミュニケーションの多い仕事はハードルが高いかなと。それに、「多数派の道なんて選ばないんだもんね」みたいな気持ちも実はありました。
・・・ちょっとひねくれた性格の持ち主だったもので(笑)
そこで、具体的に何がやりたいかははっきりしていませんでしたが大学に進むことを決意したのでした。
大学時代
大学では社会福祉を学びました。なぜ社会福祉を選んだかと言うと、視覚障害当事者の私にとって身近な分野だったから。
大学は当然盲学校とは大きく環境が違い、戸惑いの連続。それでも貴重な経験がたくさんできました。
周囲の方々にいろいろと相談してアドバイスをいただきましたが、なかなか決められずにいました。本当にやりたいことは何なのか。というより自分にできる仕事なんてあるのか。
あれこれ悩みました。そんなとき、偶然見つけたのです。
その仕事は私の経験を活かせそうな、点字に関わる仕事でした。臨時職員という形ではあったものの、ぜひ挑戦したい。
これはもう、幸運だったとしか言いようがありません。
臨時職員として働いた日々
というわけで私は、卒業後1年間、点字関連の仕事に従事しました。データ化された点字図書の内容をチェックし、不備があれば修正する。そういった業務に取り組みました。
本が好きだったので。
ただラッシュ時の通勤が大変でした。職場に向かうだけで激しく消耗してしまいます。肝心の仕事に注ぐエネルギーなどなくなるんじゃないかというくらい。
この頃はまだ、在宅で仕事をするという選択肢は頭になかったんですよね。そんな世界があるなんて想像もしていませんでした。
視覚障害者対象のテープ起こしとの出会い
臨時職員生活終了後は働く場が見つけられず、インターネットでいろいろと情報を集めることとなりました。
悪戦苦闘するなか、出会ったのが、視覚障害者対象のテープ起こしの講座です。
テープ起こしは、会議やインタビューなど録音された音声を文字に起こす仕事のことです。その講座を修了すると、請負契約という形でお仕事をいただけるようになるとのこと。
講座を受けてわかったことですが、テープ起こしって単純に見えて意外と大変な作業なんですよね。かなりの集中力が必要になります。
会議の場合、専門用語がバンバン登場したりして一苦労。耳慣れない言葉ってうまく聞き取れないものです。
でも普段耳から情報を得ることの多い私にはこういう仕事はぴったりなのかも、という気がしました。
講座を終えて仕事としてテープ起こしに取り組み始めると、新たな発見がありました。この働き方は自分に合っていると気づいたんです。
家で働けるっていいな。通勤がないし、オフィスで人との関わりに頭を悩ませなくていいし、好きな環境で働けるし。
人と話すのがとっても苦手な私にとって、コミュニケーションに使うエネルギーを減らせるというのはかなりの魅力でした。
在宅で働ける今の会社に出会うまで
仕事のありかたに関して考える時間がたくさんありました。思い切って転職を決意した、そんな経緯に関してお話します。
「在宅で契約社員として働く」という選択肢を発見
テープ起こしの仕事は好きだったのですが、いいことばかりではありませんでした。業務量が安定しないというのが悩みの種。
全く仕事がない時期もありました。
もっとたくさん仕事がしたい。できれば安定した仕事がしたい。だけどそんなことは難しい。悶々とする日々……。
そんなとき、知り合いから連絡がありました。障害者の契約社員を募集している会社があるというのです。
その具体的な内容を聞いて驚きました。
何と条件が「在宅勤務」だというではありませんか!
在宅で契約社員として働く。
光が見えてきた気がしました。私が求めていたのはこれだ、と。ただ、どうも踏み切れない。
応募したい気持ちはありましたが、結局行動に移すことはありませんでした。その代わり、当時私と似たような状況にあった夫に「受けてみたら?」と勧めました。
すると夫は軽い気持ちで応募したのです。が、何と合格したんですよね。
在宅勤務のできる会社を探して今の会社に
ネットで検索したりハローワークで相談したりして、在宅勤務で働ける会社について情報を集めました。
ところがなかなかこれという情報がないんですよね。またその頃、視覚障害に特化した就労移行支援事業所があると知り、就職への近道になるかなと考えて通い始めました。
原則2年という期間の中で、就労に関するさまざまな訓練が受けられるというものです。
私はそこで履歴書の書き方や面接作法など学びました。良い経験をさせていただいたとは感じています。ただ、「思ってたのとちょっと違うかな」という気がしたのですぐにやめてしまいました。
それから数ヶ月経った頃、夫の働く会社でまた求人が出たんです。しかも、テープ起こしのできる人を探しているという、私にとって耳寄りな話。
思い切って応募しました。「合格」のメールを受け取ったときはもう感激。飛び上がって喜びました。
やっぱりこれも、幸運だったとしか言いようがありません。この会社と出会わせてくれた知り合いには、本当に感謝しています。
思えばその方が求人情報を教えてくれたのは、たぶん私があちこちで「家で働けるって最高!でももっとたくさん仕事がしたい!」というような話をしていたから。
たくさんの人とつながる。やりたいことは言葉にしてみる。それが夢を実現するカギなのかもしれません。
在宅で働くメリット・デメリット
働いていくうちに、感じたことがたくさんあったので思い切って紹介させていただきますね。私自身が感じたメリットやデメリットに関してもお伝えしたいと思います。
働き方と担当業務
2014年2月。私はついに契約社員となりました。さまざまな障害を持つメンバーで構成される在宅勤務チームの一員として、新たなスタートを切ったんです。
夫と同じ職場で、同じ仕事をすることになりました。不思議な感じです。時々会社に行くこともありますが、ほぼ通勤はありません。
上司などとはメールやweb会議システムで連絡を取り合っています。適度な距離感で関われるので気が楽です。
始業・終業時には以前はメールで上司に連絡していましたが、今は会社のパソコンを開いてログオン・ログオフするだけです。
私が担当する業務は主にテープ起こし。これまでの経験を活かすことができています。
在宅勤務のメリット
満員電車でエネルギーを消耗することはありません。
朝はのんびりと準備して仕事モードに切り替えて出勤。終業後は一瞬でお家モードに切り替えてまったり。
お家好きの私としてはとても幸せです。家事や趣味に充てる時間も十分に取れます。
災害時など移動が難しくなったときにも、在宅で仕事ができるありがたみをひしひしと感じます。
周囲に気を使う必要がなく、ほとんどストレスを感じません。一人で黙々と取り組めるので、ものすごい集中力を発揮できています。
在宅勤務のデメリット
ただ、運動不足になりがちというのは注意が必要なところです。
私の場合、集中しすぎて時間を忘れ、長い間座り続けて作業することがよくあるんですよね。
タイマーなどで時間を管理して適度に休憩をはさみ、意識して体を動かすことが大切だなと感じています。
私が直面している課題
たくさんのメリットを感じている私ですが、今大きな課題に直面しています。
やっぱり視覚を必要とする業務が多いようです。ネット上での情報収集やデータ入力を行うこともありますが、私の主な業務はテープ起こし。
業務依頼がたくさんあるときは充実しています。時々忙しすぎてあたふたするほどです。
でも仕事の全くない日々が続くことも少なくありません。
上司と相談して改善を試みてはいますが、まだ解決の糸口は見えておらず、ほかにどういった業務ができるのか、長年探り続けている状況です。
十分に貢献できていないなと切ない気持ちになる時もあります。
視覚障害者の私が在宅で働いてみて
数年前、「在宅で働いています」と話すと、「体調など悪いんですか?」と尋ねられたことがあります。
在宅勤務と言うと「何か事情があって仕方なくするもの」という印象を持たれがちだったんですよね。
でも私にとっては、自分に合うだろうと考えて選んだ働き方。今は私のように、あえて選ぼうと思われる方も珍しくないのではないでしょうか。
もしかしたら私、時代の最先端を行っていたのかもしれません。なんて調子に乗りすぎでしょうか(笑)
自分だけの空間で作業したい人。
たくさんの人の中で働きたい人。
いろいろな人がいます。
最後になりましたが、私の会社員生活も、実はあと少しの予定。ほかにやりたいことが見つかり、その道に進もうと考えているところなんです。
振り返ってみると、こうして新たな選択ができるのも今の会社で働けたから。
とても意味のある8年間だったと思っています。
私の個人的な経験をまとめただけの記事になってしまいましたが、少しでもどなたかのご参考になれば嬉しい限りです。
お読みいただきありがとうございました。
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元マッサージ師です。コロナ化で、業務が増えてしまい、体調を崩しました。現在は在宅勤務で、就労継続支援Aがた事業所と雇用契約を結び、ウェブライティングや文字起こし、ブログ記事などの業務を行っています。インターネットでリサーチするのが大変です。音勢ブラウザがしゃべらない箇所もあるし、視覚障がい者は一人だけ。職員の理解が進まないことも有ります。マッサージに戻りたいなーと思うことも有りますが、体調に波があり、自信がないことも有ります。独り暮らし30年です。就労継続支援のAがた事業所にチャレンジするのはどうですか?在宅勤務を取り入れてるところも多くなっています。ただ、ライティングや文字起こし、ブログ記事の作成など業務の幅は広がるかと思います。また、エクセルなどの業務はできないので、できないことは視覚障碍者以外の障碍者に左京を割り振ることも有ります。