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障害の有無を超えて、着たいも着られるも実現したい|SOLITインタビュー

  • 最終更新日:
SOLIT

ファッション界に新しい風を巻き起こしたインクルーシブファッションブランド『SOLIT』

 

「誰も取り残さない」「どれも取りこぼさない」

 

一人ひとりの「違い」がありのままに受け入れられて、すべての人が健全に生きていける社会をつくりたい―

 

その思いを「ファッション」で実現すべく、SOLITは生まれました。

 

今回は、SOLITの開発段階から携わってきた理学療法士の大門恭平さんにSOLITの魅力や、開発秘話など余すことなくお話を伺いました。

ファッションブランドSOLITとは

「やばいじゃん、それ」というスラングからとった会社名、「SOLIT,Inc」。

 

冒頭にも記載したように「誰も取り残さない」「どれも取りこぼさない」。その「違い」もありのままに受け入れ、健全に共存できることに最大限注力し続けたい。という想いで展開されているファッションブランドです。

 

ファッション産業も課題は多くあります。

 

その中でもSOLITは、障害の有無やセクシュアリティに関係なく選択ができる衣服の開発から始めました。

 

第一弾として、特に身体障害のある方や特徴的な体型の方にフォーカスしたプロダクトを開発しています。

 

1600通り以上にも渡る組み合わせの中から自分の好みや体型に合った服をカスタマイズすることができます。

 

SOLITの理念・目指すもの

1) 多様な人も、動植物も、地球環境もどれも取り残さない「オールインクルーシブな社会」の実現
2) 必要な人に必要なものを必要な分だけつくる
3) 1人1人に選択可能な選択肢があり、自律的に選択ができること

 

SOLIT

 

このような素敵な想いで活動されているSOLIT。

 

日野
今回は、その中でも開発段階から携わっている理学療法士の大門恭平さんに、SOLITについてお伺いさせていただきました。

大門恭平さんプロフィール

 

大門恭平

プロフィール2021.4まで、岸和田リハビリテーション病院 科長 理学療法士。
2021.4以降、医療法人生和会 SDX研究所にて医療現場のDX推進、財務・企画局所属 畿央大学大学院修士、京都大学大学院博士後期研究指導認定。日本保健医療行動科学会理事、SOLIT株式会社プロボノ。

 

 

インタビュー内容は、動画でもご覧いただけます。

 

SOLIT開発では研究リサーチを担当

日野
今回お話いただく、大門恭平さんです。よろしくお願いします。

 

早速ですが、大門さんはSOLIT開発に関わるまで、理学療法士として現場で活躍されていたんですよね?

 

大門
よろしくお願いします。そうですね、理学療法士として10年以上、臨床の現場に携わっていました。

 

今は、病院を運営する法人グループの本部に勤務しています。

 

日野
SOLITには、いつから関わるようになったのですか?

 

大門
だいたい1年前の2020年から、主に研究リサーチの分野で関わらせてもらっています。

 

障害のある方や高齢者のファッションにおける3つの悩み

日野
なるほど。大門さんがSOLITに関わるようになったきっかけを教えてください。

 

大門
理学療法士として現場に出ているときから、障害のある方や高齢者のファッションに課題や悩みがあるな、と感じていました。

 

日野
どのような悩みでしょうか?

 

大門
大きく分けて3つの課題があります。

 

着たい服と着られる服が一致しない

大門
1つ目の悩みは、「着たい」と「着られる」のどちらも包括した服の選択肢が少ないということです。

 

リハビリや介護の現場で感じたのは、障害のある人、高齢者は「着たい服」と「着られる服」が同時に実現しないことが非常に多いということです。

 

日野
たしかに、おしゃれ・かわいい・かっこいいって思っても、障害の特性上、着るのが難しいデザインになっていることは、よく当事者から耳にしますね。

 

直接試着できない

日野
2つ目の課題感って何なのでしょうか?

 

大門
2つ目の課題は、直接試着できる機会が圧倒的に少ない、ということです。

 

障害のある方や高齢者は、外出の機会が少ないんです。

 

日野
なるほど。そうすると、必然的に試着する機会も減るということですね。

 

大門
そうです。

 

そして、ただでさえ外出する機会が少ない上に、障害があるから・・・とか、高齢で体の自由が利かないから・・・という理由で試着することを避けてしまう傾向があります。

 

車いす

値段が高い

日野
3つ目の課題は何ですか?

 

大門
服の値段が高い、ということですね。スーツ系は特に値段が高いですし、レンタルするにしても、やはり安くはないです。

 

日野
確かに、スーツ系は値段が高いですよね。

 

レンタルするにしても値段が高いと、なかなか手が出せませんよね。

 

大門
そうですね。こういう理由から、私たち医療従事者も、リハビリや介護、デイケアの場でも「ファッション」というものから遠ざかっていました。

 

患者さんから希望があって服を調達したくても値段が高くて手が出なかったり、服の構造的に無理があったりでやむなく諦めるといったことも多かったんです。

 

日野
なるほど。医療現場やリハビリの場面だと、「おしゃれする」とか「ファッションを楽しむ」といった感覚があまり浸透していない気もしますね。

 

大門
そうなんです。

 

そういった悩みを日々聞いていたので、ファッションについては何とかしたいと思っておりました。

 

SOLITに関わったきっかけ

日野
そんな風に課題を感じていたと思うのですが、大門さんが関わったきっかけを教えてください。

 

大門
元々ファッションに興味があったんです。それに、先ほども言った通り、現場でもファッションの課題がありました。

 

今まで目をそむけていたり、解決できないまま放置してしまっていた部分ですよね。そんなとき、『ファッションブランドを作る』という情報発信を偶然見かけたんです。

 

そのアグレッシブな姿勢と、『オンラインで作ろう』というスタンスにグッと惹かれました。『一緒にやりたい』と思ったんです。

 

自分の知識や経験を生かせる喜び

日野
実際に関わってみて嬉しかったこと、良かったことはありますか?

 

大門
そうですね。一番うれしかったのは、今まで得た経験や知識が生かせるということ。

 

実際に商品を作る際に貢献できたというのは嬉しかったですね。

 

日野
なるほど。ご自身の経験を生かせるというのはやりがいを感じますね。?

 

他分野同士が一つのものを作り上げる難しさ

日野
反対に難しかったことはありますか?

 

大門
私はリサーチチームで活動していたのですが、チームには作業療法士や医師もいました。

 

チームと言いますが、日中は皆本業の仕事をしていますし、やり取りは全てオンラインだったので、リサーチのゴールをどこにするかといった目的の共有やすり合わせにとても時間がかかりました。

 

日野
たしかに皆さん本業がある中で進めていくのは、大変ですよね。

 

そんな皆さんとの協力の中で出来上がったのがSOLITなのですね。

 

車いすでも立ち姿でも着れる

 

SOLITの商品開発で感じたこと

日野
大門さんの理学療法士としての知識や経験は、具体的にSOLITの開発でどのように生かされたのでしょうか?

 

大門
まず、「現場の課題が何なのか」ということをチームで共有していました。その上でそういった課題をどうやったら解決できるかアイデアを出し合いましたね。

 

例えば、ボタンをマグネットにするとか、ファスナーをなくすとか。そういう具体的な改善点を話し合っていました。

 

日野
マグネットのボタンって画期的ですね。そういったインクルーシブなデザインを軸とした商品の開発をやってみて感じたことはありますか?

 

大門
そうですね。

 

一番大きいのは、医療分野の人とデザイナーが連携して一つのものを作るということが、これまではあまりなかったことだと思います。

 

日野
確かに。関わる機会がなかったかもしれません。

 

大門
デザイナー視点と医療現場の視点では、同じものを扱っても見方が違っていたり、共通言語が違っていたりするんです。

 

なので、まずは意思疎通からでしたね。全く違った見方や価値観を持った者同士がお互い歩み寄って一つのものを作り上げるのは、大きなやりがいがありましたね。

 

1600通り以上の組み合わせが選べるSOLIT

日野
確かSOLITは、すごい数の組み合わせがあるんですよね。

 

大門
はい。

 

SOLITでは、1600通り以上の組み合わせの中から、一人ひとりの好みや体型、価値観、体の状態に合わせた組み合わせを選んでもらえます。

マグネットタイプのボタン

大門
たとえば、手先が自由に動かせない人は、マグネットのボタンにするとか。

 

マグネットのボタン

 

日野
ボタンかけってなかなか大変なので、マグネットのボタンって画期的ですね。

 

大門
そうですね。ボタンに関しては、実際に現場で、麻痺で手を動かすのが難しい人がいるたんです。そうした人はボタン一つつけるのに20分、30分ってかかっちゃうんですよ。

 

あとは、チャックやファスナーも同じです。練習するのに、猛烈に時間がかかってしまうんです。

 

麻痺の程度が軽い人なら、練習を重ねるに連れてボタンやファスナーにかける時間が短くなることもありますが、練習ではどうにもならない人もいるわけで。

 

そういう人たちは、ボタンをマグネットにすることで、日常生活が一気に楽になったと喜んでくれましたね。

 

日野
それは嬉しいですね。

 

ちなみに、健常者にとっても特に急いでいる時とかボタンかけってめんどくさかったりするので、マグネットタイプのボタンってとても嬉しいです。

 

大門
SOLITのコンセプト、「着たいも着れるも実現したい」を実現しているところになります。

 

袖口のリブも改善

日野
袖口のリブについてはどんな工夫をされたのでしょうか?

 

大門
リブに関しては、車いすに乗る人たちが発端です。車いすに乗って移動すると、タイヤでどうしても袖が汚れちゃうんです。

 

あとは、手を洗う時に袖がおりてきちゃって濡れてしまったり。

 

日野
確かに、不便ですね。

 

袖口

 

大門
この袖口のリブに関しては、リサーチチームに当事者がいたんですよ。

 

その人が袖口の課題を強く語ってくれて。やっぱり当事者がいると強いですよね。

 

それから、協力施設の脊髄損傷の方々の声も参考にしましたね。

 

日野
なるほど。本当にユーザーの声から生まれた製品なんですね。

 

ファスナーなしのパンツ

日野
ファスナーなしのパンツがあると聞きました。これの開発背景をお聞きしたいです。

 

大門
これも今までファスナーだった部分を見た目はファスナーがあるように見えるまま、ファスナーそのものをなくしてしまいました。

 

ファスナーをなくすことでグッと着脱が楽になりましたね。それから、こういった製品は認知症の方にも使いやすいと思います。

 

ファスナーを上げる、という義務感や使命感がなくなって気楽に服を着れるようになりますから。

 

パンツ

 

日野
実際にSOLITの服を購入した人からは『着やすい。履きやすい。軽い』といった感想を多くいただいているそうですね。

 

大門
本当に嬉しい限りです。実は私もSOLITの服を着ているのですが、とにかく楽ですよ。

 

着やすくておしゃれで、仕事にも集中できるし、おすすめです。

 

SOLITの注文の流れ

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話を聞いている中で、障害のある人や介護が必要な人は「おしゃれは二の次」という風潮を一掃したのがSOLITだな、と思っています。

 

大門
そうですね。SOLITは、誰でも自分の好みや体型に合わせてカスタマイズできる新しいファッションブランドです。

 

日野
SOLITはWebサイトから購入できるファッションブランドですよね。どうやって注文するのでしょうか。

 

大門
注文は3ステップです。

 

まず、服の種類を選んで、次に丈の長さなど、服の仕様を自分の好みにカスタマイズします。そして注文で完了です。

 

注文の流れ

 

日野
たった3ステップで注文できてしまうんですね。楽ちんですね。

 

大門
そうですね。これまでは既に販売されているものの中から選択しなくてはならなかったところを、自分だけのセミオーダーメイドファッションが手に入るんです。

 

SOLITで「できる!」を多くの人たちに体験してもらいたい

日野
本当にいたるところに素晴らしい工夫がされているんですね。今後のSOLITの展望をお聞かせいただけますか?

 

大門
私個人としては、今まで本当に多くの障害のある人や高齢者と関わってきたので、まずは障害のある人や社会的マイノリティに属するような方やその周りで支えている人たちにまず知ってもらえたら嬉しいです。

 

その上で、健常者も含めて、SOLITのファッションを「誰にでも」届けたいですね。

 

日野
SOLITの商品を通じて、どんな世の中を実現したいですか?

 

大門
自分ができるところから、自分が携わりたい、良くしていきたいと思うところを追求していきたいです。

 

大げさかもしれませんが、リハビリ業界や介護業界に長く携わってきたので、そういった方々の命の尊厳を支えられる社会にしていきたいと思っています。

 

日野
ありがとうございます。

 

今回は、新しいファッションブランド「SOLIT」の開発から携わって来られた大門さんに、SOLITの魅力とSOLITへの想いを語っていただきました。

 

誰も取り残さないファッションブランド

障害のある人や介護が必要な人たちに長く関わってきた大門さんだからこそ、インタビューを通してそういった方々の抱える課題に向き合い解決したいという熱い気持ちが伝わってきました。

 

大門さんの熱い想いが込められたファッションブランド「SOLIT」。

 

「誰も取り残さない」「どれも取りこぼさない」

 

一人ひとりの「違い」がありのままに受け入れられて、すべての人が健全に生きていける社会をファッションで実現する―

 

そんなインクルーシブデザインを取り入れたSOLITのファッションを、ぜひ体感してみてください。

 

「SOLIT」の商品などは、こちらのHPからご覧いただけます。

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日野信輔

日野信輔

株式会社Nextwel代表取締役。Welsearch編集長。ソーシャルビジネスに特化したWebマーケター。障害者プロデュース・福祉事業所やNPOの伴奏支援などしております。得意分野:工賃アップ/障害者の仕事づくり/集客。詳しいプロフィールはこちら→日野信輔


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