カナダには障害児を育てていくにあたって、嬉しい福祉制度があります。
日本円で約220万円ですね。
実際にそのような金額を一年間でどのように運用されたのですか?
こういった質問を受けました。
そこで今回カナダで自閉症児を育てている自分が実際に助成金を受け取った際に、過去どのように助成金を運用してきたのか簡単に解説してみたいと思います。
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カナダの自閉症助成金って何?
カナダでは医療専門家によるアセスメントにより、正式に自閉症と診断された児童には「自閉症助成金」が政府より支給されます。
移住している州によって助成金の額やサービス内容は異なっていますが、私の住むBC州では、0歳から6歳そして6歳から18歳で分類されており金額が異なります。
年齢 | 助成金額(1年間) |
0歳から6歳 | 2万2,000ドル (約220万円) |
6歳から12歳 | 6,000ドル (約60万円) |
診断がおりてまず最初に手続きをするよう進められたのが、この自閉症助成金プログラムだったのです。
プログラムについての資料を受け取り、同時に自閉症サポートについて詳しく詳細が書かれた資料を手渡されました。
この資料は、現在カナダ国内に住む第2言語を話す親達にもわかりやすいよう様々な言語に翻訳されています。
日本語もあります。
『親のための手引き:自閉症プログラムのガイド』
https://www2.gov.bc.ca/assets/gov/health/managing-your-health/autism/autism_handbook_japanese.pdf
当時は、助成金アカウントの設定はメールを通しての手続きでしたが、現在はオンラインで手続きが簡単に出来ます。
この助成金を運用する際、私も同じオンラインツールを使って助成金を運用しています。
簡単に手続きが出来るので本当に便利です。
カナダの療育については、こちらの動画でも一部語っていただいております。
自閉症助成金は親も使うことができる
ちなみに、この助成金は一年間で使いきらないと自動的に削除されます。
そして子供の誕生日の月に新たに6千ドルが支給。長男の誕生日は1月なので我が家は12月になると、毎年残りの金額をどう使うかを考えます。
助成金の20%以内であれば療育以外のモノ。例えば
- 療育用おもちゃ
- 教材
- 研修
等に使うことが可能です。
2020年は、コロナの影響とオンライン療育があまり浸透していなかったため、割合が30%まで引き上げられました。
このように運用方法によっては子供だけでなく、親の自閉症に対する知識を深めるオンラインコース等に助成金を使うことも出来ます。
毎年一年以内に助成金を使うという規則があることで、親たちは助成金を使い療育ビジネスにお金が流れます。
お金がうまく社会に流れこむことで経済が活性化し、療育ビジネス間でも顧客の獲得という競争が生まれるため、結果、療育ビジネスの質が向上。
助成金を運用しながらカナダ政府は、福祉の面でもお金の使い方が上手だなっと日々感じています。
療育はどうやって選ぶの?
自閉症助成金の手続きが終わり、自分のアカウントに助成金が支給されると療育選びの開始です。
自閉症助成金を使用するためには、療育機関も行政から認定を受けていなければいけません。
療育を選ぶ主導権は親が握っていますが、支払いは助成金のシステムから直接、療育機関に支払いが行われます。
認定を受けていないと、システムの関係で支払いが行われない仕組みになっています。
「自閉症というものが何かわからないのに、療育をどうやって選ぶんだ?」と疑問に思われる方もいるかもしれません。
リサーチの方法は様々です。
自閉症助成金プログラムのサイトをクリックすると、「RASP (Registry of Autism Service Provides )」というサービスプロバイダーのリストが出てきます。
そのリストの中から選択するという方法が一般的かもしれません。
主な専門家として、ここでリストアップされているのは、
- Behaviour Consultants (行動コンサルタント)
- Speech Language Pathologists (言語療法士)
- Occupational therapists(作業療法士)
- Physical therapists(理学療法士)
自閉症児のR&Rという療育に出会う
長男の場合、言葉に支障があったこと、そして話しかけても反応がない。反応をつかめたとしても会話が成り立たない症状があったので、言語に強い行動コンサルタントを私は探していました。
そこで見つけたのが、当時お世話になっていた言語療法士さんに教えていただいた「Reference and Regulate(R&R)」という療育です。
長男を知る言語療法士さんが、「これはABAプログラムと違って一般的な療育ではないので、あなたが決断するべきだと思うけど、こういうオプションもあるのよってコトでお伝えしておくわね」と紙に一枚ペラっと書いてくれました。
サイトで調べてみると、
Learn to Look, Look to Learn
直訳すると、「見るを学ぶ、見て学ぶ」というキャッチフレーズです。このキャッチフルーズを見た時に自分の中でコレかもしれない!というワクワク感を感じたのを覚えています。
しかしながら、行動コンサルタントというとABA療育がカナダでも主流で、R&R療育はまだ当時はよく知られていませんでした。
他の親御さん達やお世話になっている先生方にも相談して3つの業者さんを選択し、各担当の方に家に来てもらうことになりました。
一つは地元でABA療育を行っている地域のABA業者さん。そして、もう一つは長男が当時日本語に興味を示していたので、日本語が通じるABA業者さん、そして紹介していただいたR&Rの業者さんです。
R&Rはキャッチフレーズの通り、見て学ぶを習得するというシンプルな説明で自分の中で納得したというかコレだというふうに思えたのです。
親が選択することで、100%正しい療育が選べるとは限りませんが、親が内容を把握し自分で選択することで納得出来る療育を自分の子供に受けさせることが出来る。
選択肢がたくさんあることで個人が納得できる療育を選択することができる。
個人のニーズを大切にした療育サポート。それがカナダの療育サポートだと思っています。
民間も協力して支えるカナダ療育
様々な民間サポートグループが存在しており、ひとつひとつが素晴らしい活動を行っています。
私がひとつ紹介したいのが、「Canucks Autism Network (カナックス自閉症ネットワーク)」です。
出典:https://www.canucksautism.ca
この民間サポートグループには、長男が3歳の時からお世話になっています。
カナックス自閉症ネットワークを運営しているのは、プロアイスホッケーチームのバンクーバーカナックスです。
アイスホッケーは、国民スポーツとしてカナダでは大人気のスポーツです。
そのスポーツチームがスポンサーとなって自閉症児を支える様々なプログラムを運営してくれているのです。
自閉症の長男もこのプログラムを通して、スイミングレッスンやスケートレッスン。そして、マルチスポーツレッスン等さまざまなスポーツアクティビティに参加することが出来ました。
ファミリーイベントもあり、コロナ直前まで行われていた年一度のスポーツイベントには、
- アイスホッケー選手
- フットボール選手
- サッカー選手
などが参加して子供たちと一緒にスポーツを楽しんでいました。
いつもテレビで見ている選手達が目の前で障害児達に優しく接している姿は、カナダ社会の優しさを象徴するというか見ていて涙が出るくらい感動するものでした。
自閉症児のサポートも環境で変わる
楽しいところには、楽しい人たちが集り、そして優しい人のところには優しい人たちが集まる。
長男も12歳を迎え、カナックス自閉症ネットワークの方々に出会ってから約10年の月日が流れようとしています。
もうすぐクリスマスです。
先日カナックス自閉症ネットワークからクリスマスイルミネーションイベントのお知らせが届きました。バンクーバー郊外のドライブスルークリスマスイルミネーションイベントです。
コロナの影響で以前のように直接スタッフの皆さんとお会いしてイルミネーションを一緒に楽しむというイベントではありませんが、とてもありがたいと思います。
ドライブスルーで今年も長男を支えてくださった皆さんに感謝の気持ちをいだきながら、クリスマスイルミネーションを楽しみたいと思っています。
皆さんも良いクリスマスをお過ごしください。
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