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【海外のインクルーシブ教育】カナダのインクルーシブ教育を自閉症児の親が解説

カナダのインクルーシブ教育

あなたは、インクルーシブ、インクルージョンという言葉を聞いた時に何を思い浮かべますか?

仲間はずれにしない。みんな一緒に。障害のある子供達も健常な子供たちと一緒に学ぶ環境?

 

2017年カナダのブリティッシュコロンビア州で開催されたインクルーシブ教育サミットでは、インクルージョンは障害のある子供達だけのものではないっとうたわれています。

 

Inclusion is not just about kids with disabilities. It’s about the whole stream of student diversity

出典:https://inclusionbc.org/wp-content/uploads/2018/11/Implementing_Inclusion_Education.pdf

 

直訳すると、”インクルージョンは障害のある子供たちだけのものではありません。すべての子供たちの多様性を引き伸ばすものです”

 

朱美
カナダは多様性教育に力を入れていくというふうに私は受け止めました。

 

今回は、カナダに住む私が日々、体感しているカナダのインクルーシブ教育について、お伝えしていきます。

 

日本でインクルーシブ教育を取り入れる際の参考にしていただければ幸いです。

そもそもインクルーシブ教育とは何なのか?

カナダのInclusive Education Canadaサイトによると、インクルーシブ教育は下記のように定義されています。

 

Inclusive education means that all students attend and are welcomed by their neighbourhood schools in age-appropriate, regular classes and are supported to learn, contribute and participate in all aspects of the life of the school.

日本語訳

インクルーシブ教育とは、すべての生徒が年齢に応じた定期的なクラスで近隣の学校に通い歓迎され学校生活のあらゆる側面を学び貢献し参加出来る教育システムです。

 

出典:https://inclusiveeducation.ca/about/what-is-ie/

 

ここで出てくる”歓迎”という言葉ですが、長男が就学した際、親として最初に感じた事は学校や先生方が自閉症を持つ長男の就学を歓迎してくれているという事でした。

 

朱美
私の長男は自閉症です。就学した際には、ほとんど言葉を話さず他の人と目を見て話すことが一切できませんでした。

 

カナダは、インクルーシブ教育が定着しているため先生方やスタッフの心構えも、そして学校自体のシステムも様々な障害のニーズに対応出来るよう設定がされている印象があります。

 

しかしながら、その設定が100%完璧という事ではありません。

 

子供達は予想外の行動に反応することもありますし、対処が遅れてしまうと問題行動に走ってしまう事もあります。ただし、そういう対処を毎日くりかえしていくうちに学校側でも学習し、そういった問題行動が減っていき子供たちも確実に成長していきます。

 

朱美
私の中ではインクルーシブ教育は、子供たちだけでなく学校も一緒に成長出来る最強の教育システムだと思っています。

 

では、このインクルーシブ教育ですが、いったいどのように始まったのでしょうか?

 

カナダの国旗

 

カナダのインクルーシブ教育のはじまりは?

カナダのインクルーシブ教育は、1950年代に障害児を持つ親達が声をあげたことから始まりました。

 

1971年、現在のカナダ首相であるジャスティントルドーのお父さんピエールトルドー首相が多文化主義宣言を行ったことでインクルーシブ教育は、さらにカナダ社会に浸透していきました。

 

トルドー首相は、ケベック生まれのフランス系カナダ人でありながら、ケベック独立に反対し多文化国家であるカナダ社会をひとつの国としてまとめた最強なリーダーとしてうたわれています。

 

同時に障害児の親達の間では、トルドー首相はカナダにインクルーシブ教育をもたらした英雄的な存在として語られています。

 

朱美
私もトルドー首相のお話を聞いた時は感謝の気持ちでいっぱいでした。

 

トルドー首相ありがとう!!

 

カナダのインクルーシブ教育ってどんな感じ?

カナダでは同じ地域に住む全ての子どもを同じ地域の学校で受け入れるとされています。障害があっても英語を話さなくても地域に住んでいる子供たちは、その地域の学校の普通学級に在籍します。

 

ここで気になるのが障害を持つ子供をどう教えるのか?

 

ここで大きな役割を果たしてくれるのが、EA(エデュケーションアシスタント)と呼ばれる先生方の存在です。EAをどう配分するのかは学校側が子供たちのニーズを見極めてその都度、配分してくれる印象があります。

 

長男の場合は小学校に入学した際に言葉をほとんど話さず環境によっては問題行動に走ってしまう傾向があったため、学校側は長男にEAを専門で配分してくれました。

 

朱美
校長先生のお話では長男にぎっちりとEAをつけるのではなく、EAには他のクラスメートもサポートするような形で常にクラスにいてもらい、長男が必要な時だけサポートしていくというものでした。

 

学校が始まる前に長男に関する様々なレポートを提出したのを覚えています。

 

アイデア豊富なカナダの先生

就学前、長男がお世話になってきたすべての方々(主にプレスクールの先生、療育の先生等)にお願いして長男に関するレポートを書いていただきました。

 

先生方とも前もって面談し、どのような環境が長男にとって最適か、どのような際に問題行動に走ってしまうのか、どのような形でコミュニケーションをとるのがベストか等たくさん話し合った記憶もあります。

 

ここで素晴らしいと思ったのが先生方のアイディアの豊富さ。

 

  • こういう絵カードを使ったらいかがでしょうか?
  • こういうエリアをクラス内に作ってみたいと思います。お子さんに役に立つとおもいますか?
  • クラスの子供たちに自閉症について説明したいと思いますが、親御さんは了承していただけますか?

 

朱美
親と学校が一緒になって、その子供に適した環境を見出していく。

 

そんな印象です。

 

先生

自閉症児の対応で他のクラスメートにも恩恵が

特別待遇に思われる方もいるかもしれませんが、長男がクラスにいることで他のクラスメート達も恩恵を受けて、親御さん達に感謝された事があります。

 

絵カードは他の子供達にとっても分かりやすく楽しいもの。教室のすみに設置された大型クッションは他の子供たちにとっても楽しい場所。

 

ある日、届け物をしにクラスを訪れた際、長男を囲んで大型クッションの上でみんなが一緒に絵本を読んでいました。

実際の社会を構成するのは健常者であり、障害者であり様々な人間、全員です。

 

朱美
インクルーシブ教育は、様々な人間がお互いを理解し、幸せに共存するためのスキルを子供たちに教えてくれるものだと私は思っています。

 

カナダのインクルーシブ教育については、こちらの動画でも一部語っていただいております。

 

カナダのインクルーシブ教育の個人指導計画書って何?

カナダは幼稚園から高校まで義務教育です。

 

障害がある子供達も高校まで卒業できるよう、毎年、子供の成長に合わせて個人指導計画書(Individual Education Plan )というものが作成されます。

 

この個人指導計画書ですが、長男の学校の場合はインクルージョン担当の先生が、クラス担当の先生、エデュケーションアシスタントと相談しながらドラフトを作成します。

 

その後、IEPミーティングという形で、親、校長先生、副校長先生を含んで話し合いが行われます。

 

障害児の親にとってありがたいミーティング

朱美
このIEPミーティングですが障害児の親にとっては本当にありがたいミーティングです。

 

長男が学校でどのような成長をとげているのか、どのような内容で勉強しているのか、そして親として家庭で何ができるのか改めて学べる場所でもあります。

 

2021年9月に長男のIEPミーティングが行われました。長男はエレメンタリースクールを卒業し、2022年ハイスクールへと進みます。

 

今回のミーティングでは長男の学校での現状に加えて、来年ハイスクールへ進学することで今後どのようなスキルを主に強化していくのか、サポートの引き継ぎも必要であれば今後どのようにおこなわれていくのかっという基本的な流れを教えてもらいました。

 

個人指導計画書があることで親と学校とのコミュニケーションも充実し子供がさらに成長するために、お互いどのように支えていくべきなのか共通のゴールを設定することが出来ます。

 

IEPミーティングゴール設定表

IEPミーティングゴール設定表。項目別に親と学校が話し合いをして子供にとって最適と思われる共通のゴールを設定していきます。

 

 

カナダのインクルーシブ教育で私が思うこと

It takes a village to raise a child.

 

直訳すると、子育てには村が必要。

 

朱美
「子育ては社会でするもの」という意味にも捉えられますが、私は子供だけでなく人間というのは社会でお互いがお互いを支え合うことで成長していくものっと思っています。

 

障害児の子育てに慣れていない頃、私は常に長男の障害で周りに迷惑をかけることを気にしていました。しかしながら、ある先生の言った一言で気持ちが変わりました。

 

なんで申し訳ないと思うの?人は皆、ささえあって生きていくものでしょ。それが当たり前でしょ。

 

朱美
自閉症という障害を持つ長男を親として支えている自分ですが、実は、私が長男に支えられているのかもしれません。

 

長男の障害に向き合うことで、学び、成長している自分を感じ、感謝の気持ちでいっぱいになります。

 

 

こうやって記事を書かせていただく機会に恵まれたのも長男のおかげですね。笑

 

感謝する日々です。

 

カナダのインクルーシブ教育についてお伝えさせていただきましたが、いかがでしょうか?

 

国の制度や文化など違うので、すべてを取り入れるのがベストではないですが、カナダのインクルーシブ教育の事例を参考にして、いい部分を日本にも取り入れていただければ幸いです。

 

インクルーシブ教育について話します

朱美
カナダのインクルーシブ教育や療育について、お話させていただきます。

 

無料で参加できますので、ぜひ一緒にお話できれば幸いです。

 

詳細は下記になります。

 

 

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マーセラス朱美
岩手県大船渡市出身。短大在籍中一年間休学、イギリスのロンドンへ語学留学、留学をきっかけに海外生活に可能性を見出し短大卒業後そのままカナダへ移住。2児の母、長男自閉症。障害児の子育てを通してカナダの多様性社会での気づき、インクルーシブ社会の素晴らしさを改めて学ぶ。現在は、インクルーシブ環境で得た自分の体験、事例等、様々なSNSで発信。


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