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地域と一体で取り組む障害者テレワーク雇用の先駆け|新英ホールディングス(愛知県安城市)

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ひまわりと空のイラスト

障害者雇用でテレワークを実施し、成功を収めている会社がある。愛知県安城市にある新英ホールディングスだ。

 

障害者テレワークを取り入れたいが、本当にできるのだろうか?と不安に思う人もいるかもしれない。しかし、新英ホールディングスでは、勤怠が安定し、信頼関係を築けている。この記事では、その秘訣をみていきたい。

新英ホールディングスでの障害者テレワーク雇用

新英ホールディングスでは、双極性障害の女性1名が、障害者雇用として、完全テレワークで自宅でデータ打ち込みの仕事をしている。新英ホールディングスは、愛知県安城市にある金属リサイクルを中心とし、幅広い事業を展開し、社会貢献活動の実績も豊富な会社である。

 

愛知県SDGs登録証

愛知県SDGs登録証

 

グループ内の複数の会社・部署からの3種類の依頼案件をExcelに打ち込んでいく。テレワーカーは勤怠も安定し、会社側との信頼関係が築けているのだという。

 

テレワーク自体は初めてで、開始時には不安もありましたが、今では自分のペースをつかんで業務ができ、気持ちも楽に、業務に集中できるようになりました。

 

長時間の通勤をして働いていた時は、休日も疲弊し、仕事の前日から体調を崩すこともありましたが、テレワークになってからはその負担や不安がほぼなくなっています。また上司が体調の心配をしてくださり、とても感謝しています。(障害者テレワーカー)

 

また会社側も、コアの業務に集中できるというメリットを感じているようだ。

 

コアの業務に集中できる体制づくりができました。現在データ入力業務をお任せしており、他社員の時間の効率化につながっています。(新英ホールディングス担当者)

 

 

金属リサイクル工場の様子

金属リサイクル工場の様子①

健康面や勤怠に不安は?

障害者テレワークは、コロナ禍の働き方の変化にともなって、社会的にも注目を集めている。しかし、実際には、障害者テレワークには、健康面や勤怠などに不安もつきまとう。

 

やはりテレワークならではの難しさがあります。1つ目は、過集中になってしまうことです。集中しすぎると疲れにもつながるため、意識的に休憩を取るようにしています。

 

2つ目は、離れて働いているために相手の様子をうかがいながらすぐに仕事の質問ができない難しさです。不明点も放置や自己解釈で進めず、質問はしたうえで、その間にできる所から業務を進めるといった工夫をしています。また質問もチャットで行うことが多いので、画像と文字を組み合わせるなどして伝わりやすさを意識しておこなっています。(障害者テレワーカー)

 

障害者が働きやすい環境づくり

そんな中、新英ホールディングスでは、障害者が働きやすい環境をつくる取り組みをしている。それは、

 

  • 伝達の仕方
  • 進捗状況の把握
  • 相談体制
  • 体調不良時のサポート
  • 採用

 

に要約できる。

テレワーカーへの案件の伝え方

仕事の指示を出す際は、あいまいな指示を出さないようにしている。これは、本人から、以前働いていた会社で、曖昧な指示をされた時や明確な指示がない時、対応に困った体験があることを事前に聞きとっていたからだ。

 

進捗状況の把握

また、障害者テレワークに取り組む企業であるD&Iの「エンカク」(障害者テレワーク雇用サービス)の画面キャプチャー機能を使い、業務の進行状況を確認している。

 

「エンカク」では、「エンカクトレーナー」が企業とテレワーカーの双方をフォローしている。ITリテラシーの習得やパソコンスキルアップのための研修や、業務の負担感や体調面等のヒアリングを実施している。

 

エンカクの特徴

引用:エンカク

 

テレワーカーへの手厚い相談体制

新英ホールディングスでは、相談体制が充実している。管理者である住山さんの他、会議や打ち合わせで対応できない場合は、総務部の従業員があたる。

 

また、テレワーカーが女性のため、女性社員が対応にあたる体制を整えているのは手厚い。

 

体調を崩した時のサポートが手厚い

障害者テレワーカーは、勤勉に業務にあたっているが、時には体調を崩してしまうこともある。特に季節の変わり目には体調不良になりやすく、納期を延長するなどの対応をとった。

 

納期は、余裕を持ったものにし、万が一の場合は、他の社員が対応できる体制をとっている。

 

採用は1人でも真面目にできる人

このプロジェクトを統括する住山さんは、障害者テレワークの成功の秘訣は真心だと話してくださった。目に見えない場所で業務するからこそ、お互いの信頼関係を築くことが大切だ。障害者テレワークの採用の際は、その点を重視した。

 

だが、障害を持っていると言っても、新英ホールディングスでは、他の従業員と同じように、1人の仲間として、普通に接することを大切にしている。業務内容の伝え方を工夫することのほか、特に他の社員と同じように接している点も重要だ。

 

今後は、新英グループの運送会社のトラックのデジタコの内容を分析する業務を任せることも検討している。現時点の従業員がマンパワーでその分析業務をすることが困難であり、障害者テレワーカーが代行すれば、業務効率化が図れるという。

 

障害者テレワーカーを一人の社員と認め、仲間として接している様子が見て取れる。

 

また、新英グループの1社でブランド品の買取・販売を行う会社があり、その取り扱い商品をインターネットで出品する作業を依頼することも検討している。

障害者テレワーカーとの信頼関係も大切

 

上司から見ても、(部下の)仕事の任せ方から丁寧さを感じており、テレワーカーとしっかり信頼関係が構築できていると思います。

 

「テレワークであること」、「障害があること」に関係なく、これからも大切な社員の一人として、より強固な信頼関係を構築しながら、一緒に働いていければと思います。(新英ホールディングス)

 

新英ホールディングスが成功した秘訣は、障害者テレワーカーとの信頼関係が築けたことが重要だったといえる。そのために、さまざまな工夫や努力をしてきたことが成功につながった。

 

テレワーカーの勤怠は安定しています。一般的に障害のある労働者は「勤怠が安定しない」といわれていますが、弊社のテレワーカーは勤怠も安定しております。

 

突発的に休むことも少なく、テレワーカーにとっても働きやすい環境が作れているのではないかと感じます。(新英ホールディングス)

 

使用済み事務ブルゾンをリユース&リサイクル

使用済み事務ブルゾンをリユース&リサイクル

 

なぜ障害者テレワークを始めたか

新英ホールディングはなぜ、この取り組みを始めたのだろう?

 

障害者テレワークを取り入れたのは、愛知県安城市・ハローワーク刈谷・D&Iから声がかかったことから始まる。新英ホールディングスは「チャレンジ精神」「地域貢献の気持ち」から安城市と協定を結び、第一号になった。

 

新英ホールディングスは、リサイクルに取り組む会社であり、社会貢献活動の実績も豊富だ。会社として障害者テレワークという不安要素もある取り組みにいち早く取り組んだ。

 

新英ホールディングス株式会社は、愛知県安城市で80年以上続く総合リサイクル企業グループです。

 

「世の中が必要としていることに積極的に取り組んでいこう」という創業者の精神にのっとり、リサイクル業の枠を超えた課題解決を行い、産業の発展に貢献してきました。(新英ホールディングス)

 

CO2削減に貢献するGTl燃料の導入を検討

CO2削減に貢献するGTL燃料の導入を検討

 

ポストコロナと障害者テレワーク

ここからは障害者テレワークの全体像を見ていこう。

 

コロナ禍により、テレワークなどの新しい働き方が、急速に社会に受け入れられるようになった。

 

新英ホールディングスのように、障害者テレワークという新しい時代の風を取り入れる企業もある一方、取り入れるには障壁も存在する。では、どうすれば、障害者テレワークが広がるのだろうか。

 

総務省によると、テレワークを実施している会社は、新型コロナを契機に、5割から6割を超え、特に

 

  • 情報通信業
  • 学術研究、専門・サービス業

 

は高いテレワーク率となっている。

 

業種別・テレワーク実施率のグラフ

引用:総務省|テレワークの実施状況

 

そんな中、精神疾病者にとってもテレワークは現実的な選択肢になりつつある。精神が不調になりやすい人にとって、オフィスでの人間関係を避け、自分の部屋で働くことは、働けない理由を根本的に解決する手段となるからだ。

 

精神疾病者といっても、人それぞれであり、もともとは会社などでハードに働いていた人、パソコンを使った作業には高い適正があるものの人間関係が苦手な人など、テレワークに適している人も少数だが確実にいる。誰にでも精神疾病になる可能性がある時代、『精神病』といって一括りにしない発想が、テレワークなどの新しい働き方には大切なのかもしれない。

 

金属リサイクル工場の作業風景

金属リサイクル工場の作業風景

 

障害者テレワークのメリット

障害者テレワークのメリットは、最小限の設備で障害者雇用ができ、人材確保につながる点である。

 

障害者雇用をする場合、職場で行うならば、バリアフリー化やサポート器具が必要であり、費用もかかるが、リモートワークであれば、ノートバソコンがあれば足りる。

 

また、前述したように、障害を持たれている方でも、優秀な人やスキルを持っている人は確実にいるため、人材の確保や人材発掘につながる。

 

最後に、リモートならではの場所を選ばない働き方ができる点が挙げられる。障害者雇用を実施している企業は地方にはまだ少なく、都市部に集中している。リモートワークによって、地方在住の障害者も、都市部にある会社とリモートでつながり仕事を見つけ、働くことできる。企業は人材を確保し、障害者は働く場を見つけることができる。

 

金属スクラップの積み込み風景

金属スクラップの積み込み風景①

 

障害者テレワークに適している仕事内容

障害者テレワークは、年々、増加している一方、今まで障害者に与えられてきた仕事は、製造、印刷業務や清掃、接客などだったため、リモートになることでできなかったり、リモートにすることで選択できる仕事が減っている現実もある。

 

実際には、障害者テレワークでは、どんな職種が採用されているのだろうか。

 

厚生労働省が例として、

 

  • リクルートグループが運営するサイトの情報審査
  • インターネット上の求人広告の収集及びリスト作成
  • 基幹システムの入力業務や市場調査やメーカーのリスト作成
  • 商品名のルビの入力
  • サイト巡回
  • 文字起こし
  • 画像加工
  • サイトの更新
  • バナーやポスター制作
  • 会員の入退管理
  • 請求書の確認
  • 支払・発注申請
  • ドラッグストアのチラシの集計作業
  • 電子コミックサービスやブログサービスのモニタリング業務
  • その不適切なレビューやコメントの削除
  • ブログの記事内容や投稿欄のコメントが、サービス利用の基準に適しているかの監視業務

 

などを上げている。

 

そのいずれも、生活支援センターや就労移行事業所、就労継続支援B型を通して会社と契約している。

 

出典:厚生労働省|都市部と地方をつなぐ障害者テレワーク事例集

 

新英ホールディングスでは、工場勤務の障害者雇用を検討していたが、危険を伴うためリモートでのデータ入力の仕事に変更した。仕事内容が変わることで、障害者テレワーカーのストレスが減ったり、安全面が整ったり、働きがいや働きやすさが向上する側面もある。

 

金属スクラップの詰め込み風景

金属スクラップの詰め込み風景②

 

障害者テレワークの始め方

また、企業にとっての心配な点に、採用方法はどのようにすれば良いのだろうか?という点もあるだろう。次に、そのことについて解説したい。

 

支援機関、ハローワーク、自治体などの関係者と協力、連携体制を構築することが、障害者テレワークを実際に始めるには重要だ。支援機関等に、テレワークでの働き方に関する説明や、支援機関等の実施する支援内容について相談する機会を設けることで、円滑な採用活動が促進される。

 

採用活動では、地域の医療機関、福祉機関、教育機関に周知を行い、会社説明会や面接等を行うと良いだろう。支援機関の登録者を対象に採用することも有効な採用法である。ハローワークの合同面接会、テレワークを推進している自治体の開催する面接会、テレビ会議などで面接をする選択肢もある。

 

本人の作業適正を判断するために、自宅での作業環境を確認することも大切である。障害特性によっては、作業を補助するための機器が必要である可能性があることから、支援機関と連携し、会社と本人との間で調整が必要となる。

 

障害者テレワーク採用後は?

採用後は、支援機関と会社の間で、体調や健康などの生活面、業務で発生した困りごとなど職場定着に向けた課題を整理、共有し、相談体制を作ることが必要になる。支援機関は、定期的にテレワーカーと面接し、定着に向けた課題を整理し、テレワーカーと会社の面談に同席し、必要な配慮を会社側と調整することで、本人の環境作りを援助してくれるため、支援機関を通した採用が望ましい。

 

また、災害時の対応、緊急時の自宅訪問や病院の受診動向など、必要な支援について、会社と支援機関の間で役割を明確にすることもすることもすると良いかもしれない。必要な場合は、業務委託契約を締結しておくと良いだろう。

 

就労支援機関を活用

企業が障害者テレワークを取り入れる場合、採用の際に、就労支援機関を活用するという方法がある。では、就労支援機関とはどんなものなのだろう?

 

就労支援機関とは

 

  • 就労移行支援事業所
  • 障害者就業、生活支援センター
  • 地域障害者職業センター
  • 特別支援学校

 

などが、挙げられる。

 

就労支援機関によって、採用者の情報が教えてもらえる他、問題や課題が起きた時に、よく知っている支援者からのアドバイスがもらえる。

 

新英ホールディングスでは、ハローワーク刈谷のほか、愛知県安城市とD&Iという障害者テレワークを推進する企業を通じて障害者テレワークを行なった。新英ホールディングスと障害者テレワーカーは、テレワークの周知・説明会やテレワーク雇用ノウハウの提供、雇用後の就業サポートを受けることができている。

 

新英ホールディングスの障害者テレワークの特徴は、支援機関であるハローワーク刈谷だけでなく、提携を結んだ企業や地方自治体を通じて行なった点にもある。

 

安城商工会議所主催「障害者雇用促進セミナー」の様子

安城商工会議所主催「障害者雇用促進セミナー」

 

愛知県安城市で第一号に

障害者テレワークは、今や、国を上げて推進されている。厚生労働省では、環境面と制度面の整備と在宅勤務での障害特性にあわせた雇用管理という、障害者テレワークをするにあたって起きる2点の主な問題の解決に向け、総合的な支援事業を行なっている。

 

障害者テレワーク(在宅勤務)導入希望会社の開拓や導入支援や、障害者雇用導入に関するセミナーやPRをしている。また、既に雇用している障害者に対して在宅勤務を導入したり、障害者の新たな在宅雇用としての雇い入れへの支援もしている。また、具体的な方法や雇用管理のノウハウ等を整理したマニュアルを作成し、事業主に広く周知もしている。

 

新英ホールディングスでの障害者テレワークでは、愛知県安城市とD&Iとの間に「障害者の在宅雇用(テレワーク)に関する包括協定」が結ばれ、また、安城市とハローワーク刈谷の間に、安城市障害者雇用提携協定が結ばれ、その第一号として新英ホールディングスが手を上げた。

 

安城市からは、障害者向けテレワーク障害者雇用説明会を開催する際に、会場手配や参加者募集などのサポートを受けることができたのだという。また、D&Iからは「エンカク」での進捗状況の把握のサポートを受けている。

 

安城市では、地方自治体として障害者テレワークの推進の先駆けとして協定を締結した。それには、障害者雇用の企業の受け入れ体制などの課題から法定雇用率が満たされていない問題が背景にある。

 

住山さんは、インタビューの最後に、こんなことを語ってくださった。

 

(障害者テレワーカーが広まっていくには)まずは、多くの人、企業、地方自治体の方がこういった働き方があることを知っていただくことが大切だと思います。

 

そして、実際に取り組んでいくためには、企業だけの力ではなかなか広がっていかないとも感じています。やはり国や都道府県、市区町村の支援のもとで企業と協力して進めるのが理想だと感じています。(住山さん)

 

障害者テレワークを推進することは、障害者雇用の法定雇用率の問題解決に向けて、新鮮な一手なのかもしれない。それには、地方自治体や推進企業、支援機関が一体となって後押ししていくことが望まれる。

 

愛知労働局主催「障害者雇用促進トップセミナー」の登壇の様子

愛知労働局主催「障害者雇用促進トップセミナー」

 

結びにかえて

新型コロナウィルスの蔓延により、テレワークや新しい働き方が脚光を浴びた。そして、障害者であっても、新しい働き方をすることはできる。いや、障害者だからこそ、新しい働き方を選択できる社会になる必要がある。

 

障害者にとっては、コロナ対策になることはもちろん、人間関係やそのストレスに弱いという弱点を補いつつ、作業への緻密さなどの長所を活かすことができる働き方だ。企業にとっては、職場を大幅に工事する必要なく法定雇用率を達成することができ、また優秀な人材確保につながる。

 

しかし、障害者テレワークには雇用側にも不安が付きまとう。

 

そのヒントになるのがその先駆けとなる新英ホールディングスの成功例だ。

 

その裏には様々な社員の努力と工夫があった。見えないところで働くからこそ、信頼関係が築けるかが決定的な分かれ目であり、新英ホールディングスでは、障害者テレワーカーを支える地道な努力により、安定した障害者テレワークが実現されていた。

 

金属リサイクル工場の様子

金属リサイクル工場の様子②

 

新英ホールディングス概要

法人名新英ホールディングス株式会社
所在地愛知県安城市住吉町2丁目1番1号
電話番号0566-98-2211
Instagramhttps://www.instagram.com/shinei_holdings/
Facebookhttps://www.facebook.com/shineiholdings/

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夏目作弥

精神疾病の当事者であり、ピアスタッフを経験。精神疾病の日々の人気エッセイを作業療法室に連載しています。精神保健福祉ライターの他、文芸創作もしている。支援者と当事者の両方の立場から見えてくるものを、客観的な視点と体験談から綴らせて頂きます。自身の経験から精神疾病者の新しい働き方をご提案します。雑誌『シナプスの笑い』にて夏目作弥としてエッセイや小説を掲載しています。こちらもぜひご覧ください。詳しいプロフィールはこちら→夏目作弥


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