東京・原宿に本店を構える株式会社ローランズは、「みんなみんなみんな咲け」の願いを込めたスローガンを掲げ、障害者雇用の新しいモデルを切り拓いています。
従業員の約7割が障害のある方々という同社では、花屋事業を軸に、就労継続支援A型事業所の運営、企業向けの障害者雇用サポートなど、多岐にわたる事業を展開しています。
代表の福寿満希氏が花を選んだ理由、そして植物の成長から学んだ「人を咲かせる」支援の哲学とは何なのでしょうか。
障害ではなく「その人自身」を見るという姿勢が、どのように職場環境に反映されているのでしょうか。前編では、ローランズの事業内容と支援の考え方について、福寿氏に詳しくお話を伺いました。
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ローランズの事業概要と「花」を選んだ理由

—— まず最初に、ローランズ様の事業について簡単にご説明いただけますでしょうか。
福寿満希(以下敬称略)
ローランズでは現在、花屋事業を中心に展開しております。
店舗での花の販売のほか、就労継続支援A型事業所の運営事業を行っております。
現在、約140名のスタッフが働いておりまして、そのうちの約7割が障害のある方々です。
花屋事業を軸としながら、企業の雇用サポートなども行わせていただいております。
—— 障害者雇用を推進する事業はさまざまありますが、花屋を選ばれた理由を教えていただけますか。
福寿
大学時代、私は特別支援学校へ教育実習に行きました。
特別支援学校の先生から「ほとんどの子は働くことができません」という言葉を聞いて衝撃を受けたのですが、一方で子どもたちは将来なりたい仕事を目を輝かせながらたくさん語ってくれました。
その夢の職業の中に「お花屋さん」があったんです。
また、私が社会人になった後、少し心が疲弊していた時期がありまして、通勤途中で目にする花屋に心が癒されるという経験を重ねたことから、花を選んで事業をスタートしました。
—— 障害者雇用にはさまざまな事業形態がありますが、花を扱うことで、働く方々の精神状態にも良い影響があるのでしょうか。
福寿
花が好きで入ってくるスタッフが多いこともあり、花に触れることで心が癒されるという状態の方が多いと働く上でも実感しています。
季節ごとに入荷してくる花が変わったり、色の変化や香りの変化など、そういった要素がスタッフたちへの良い刺激になっていると感じています。
その記憶が、ローランズ設立の原点になっているんですね。
花は人の心を癒す力を持つと同時に、障害のある方々が「なりたかった仕事」を実現できる場でもあります。
従業員140名、そのうち7割が障害のある方々という規模は、福祉と事業の両立が十分に可能であることを示していると感じました。
多様な仕事内容と「その人自身」を見る配置
—— ローランズで働く障害を持つ方々の作業内容は、どのようなものがあるのでしょうか。
福寿
かなり多岐にわたっています。
主なものとしては、フローリストとしてフラワーギフトの製作、ドライフラワーの制作、ブライダル装花商品の制作、植栽管理では屋外の植栽メンテナンスやインドアグリーンのメンテナンス、カフェの仕込み、そして花屋店舗での接客業務など、多様な仕事を担っていただいています。
—— 店舗は現在、原宿と天王洲にあるのでしょうか。
福寿
原宿と晴海フラッグに店舗があります。
天王洲は今回リニューアルをして「LORANS Bloom Factory-Green-」という、企業向けレンタルグリーンの母艦店になっており、一部フラワーギフト商品の購入もできる場所になっています。接客を伴う店舗としては二つになります。
—— 原宿と晴海では客層もかなり違うと思いますが、店舗の雰囲気も変わってくるのでしょうか。
福寿
客層は全く異なっていますね。
地域によって求められる商品も変わってきますので、置いている商品や品揃えもお客様の需要に合わせて変えています。
—— 店舗ごとの商品選定などにも、障害のあるスタッフの方々が参加されているのでしょうか。
福寿
全商品が基本的に当事者のスタッフが関わって作っている状態です。
原宿店にはこの商品を置く、晴海店には別の商品を置くといった、地域の需要に合わせた商品の選び方はもちろんあります。
ただ、すべての商品は弊社のメンバーが作り、デザインなどにも障害のあるスタッフに参加してもらいながら商品づくりを行っています。
—— これだけ幅広い仕事があると、障害の種類によって向き不向きもあると思いますが、選択肢が多いというのは大きな利点ですね。
福寿
障害の種類による向き不向きというよりは、その人自身の向き不向きを大切にしています。
一口に障害と言っても、その人の性格やその人が得意とすること、苦手とすることは人それぞれです。
同じ障害名で診断されているからといって、接客が苦手になるのか、製造が苦手になるのかは必ずしもイコールではありません。
ですから、その人にとってどの仕事が合っているのかを見極めたり、本人と相談したりしながら仕事を決めるようにしています。
—— さまざまな障害のある方が働いているとのことでしたが、どのような障害をお持ちの方が多いのでしょうか。
福寿
一番多いのは精神障害の手帳を持っている方で、割合としては8割ぐらいになります。
—— 精神障害のある方は近年増えている印象がありますが、実際にはいかがでしょうか。
福寿
私たちは就労継続支援A型事業所でもありますので、就業にあたり、何らかのサポートがあれば就労が可能な方と雇用契約を結んでいます。
身体障害の方などは比較的企業に採用されやすい状況がある一方で、精神障害の方は就労の機会を得にくい面もあり、結果として私たちのところで多く受け入れをさせていただいています。
また、働ける年齢層で見ると、精神障害の手帳をお持ちの方が一番多いという社会的な状況もあり、その割合が反映されているとも考えています。
同じ障害名でも得意なこと、苦手なことは人それぞれ。
フラワーギフト製作からブライダル装花、カフェ運営、植栽管理まで、業務の幅が広いからこそ、一人ひとりに合った仕事を見つけられるのでしょう。
原宿・晴海・天王洲という立地の異なる3拠点で、地域特性に合わせた商品展開を行いながら、全商品に当事者スタッフが関わっている。
その体制が、本当の意味での「参加」を実現しているように思います。
植物に学ぶ「人を咲かせる」支援の哲学

—— 精神障害のある方への接し方がわからないという企業の悩みをよく聞きますが、ローランズではどのような配慮をされていますか。
福寿
私たちには「人を咲かせる、人であれ」という行動指針となるバリューがあります。
植物が教えてくれることを、人が咲くことに置き換えて考えた「人を咲かせる人になるための指針」です。

ローランズは花屋としてスタートして、今では花だけでなくグリーン事業やカフェ事業、さらには企業の障害者雇用サポートなど、花屋の領域を越えて人を咲かせる取り組みを広げています。
その中で、花が教えてくれたことが私たちのサービス提供に大きく影響していると感じています。
人数が増えていく中で同じ行動をみんなでしていけるよう、花が教えてくれること、人を変えていく力を九つのバリューとして定めました。
例えば「種を見る」では、ないものではなくあるものを見つめる。
あるものこそその人の可能性である、としています。植物も種の特性をしっかり見極めて、どういう環境で育てていくのかを考えますよね。
種が持っている力を信じて、秘められた可能性をしっかり見ていく。
人も同じで、その人にあるものをしっかり見つめ、それを伸ばしていく。
足りないものを頑張って補っていくために無理なトレーニングするのではなく、あるものをぐんぐん伸ばしていくようなサポートのあり方を大切にしています。
「土を選ぶ」は、相手に合う環境を整えるということです。
植物によって、日当たりの良い場所がいいのか、湿気のある場所がいいのか、栄養豊富な土がいいのか、水気の少ないサラサラした土がいいのか、最適な環境は変わってきます。
その人の強みが一番伸びていくための要素は何かを考えて、そのための環境を準備していくということを、花屋がやってきたことにヒントを得て、人に対しても同じように考え実行しています。
花が咲くときに大切な要素は、人が咲くときに大切な要素と同じだという考えです。
具体的には、定期的な面談を行ってその人の強みを探っていったり、思考が堂々巡りになっているときには面談やモニタリングで「風を通す」ように物事を整理していったりしています。
「咲く」という項目では、咲くまでの全ての変化を楽しむ。
悩む姿も美しい、としています。咲きそうになって止まったりするなど、悩む姿は、変わろうとしている姿そのものであり、それって素晴らしいことだと思いますし、美しいことだと、と伝えています。
「命」では、命を吹き込む。何度も命(工夫)を吹き込む続ける、としています。
どんな困難があっても、必ず突破するための手段があると信じて、何度でも、何度でも工夫していくことの大切さが書かれています。
向き合っていく過程で、あるスタッフには会話やコミュニケーションがもっとスムーズになるように、筆談ボードを用意しよう、となったり、数字が読みずらいなら目盛りで商品の分量を測れるようにしよう、といった具体的な配慮が、現場でも随時生まれています。
ローランズ独自のサポートがこうです、というものはなくて、花が教えてくれたことを、人を咲かせていく力に置き換えていくというのが根底にあります。
意図的に作ったものではく、花が大好きなスタッフたちが、自然に実行してきたことを言葉にしたものです。
それをもとに、人が増えても大切なことがブレないよう、文化が消えないようにしています。
—— 障害を見るのではなく、その人自身を見るということですね。
福寿
その通りです。
「種を見る」「土を選ぶ」「風を通す」といった九つのバリューは、すべて植物の成長過程から学んだもの。
足りないものを補うのではなく、あるものを伸ばしていく。
花屋だからこそ生まれたこの支援哲学が、ローランズの取り組みの根幹を成しているのだと感じました。
インタビュー前半を終えて
植物の成長に学んだ「人を咲かせる」支援の哲学。
それは、足りないものを補うのではなく、あるものを伸ばすという考え方でした。
では、この哲学は実際の現場でどのように実践されているのでしょうか。
業務の細分化によって「できる」を増やす工夫、グループホームでの自立支援、そして商品価値へのこだわりなど、ローランズの具体的な取り組みについて、後編で引き続き福寿氏にお話を伺います。
【後編に続く】
久田 淳吾
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