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【中小企業向け】障害者雇用でうまくマネジメントする秘訣をプロにインタビュー|障害者雇用ドットコム

  • 最終更新日:
障害者雇用を成功させる秘訣

コロナ禍となり、障害者が働く環境も大きく変化しました。そして、2021年3月からは法定雇用率も2.3%へ引き上げられました。

 

そんな変化が激しい障害者雇用の領域で、うまくマネジメントされている企業もあります。

 

では、うまくマネジメントされている企業は何が違うのか?

 

そんな悩みを抱えている方のために今回は、障害者雇用ドットコム代表の松井優子さんに、

 

  • コロナ禍における障害者雇用の現状
  • 障害者雇用でうまくいく企業とうまくいかない企業の違い
  • 障害者の能力を引き出す仕事づくり

 

に関して、中小企業の観点からお伺いさせていただきました。

障害者雇用ドットコム代表の松井優子さん

「障害者雇用ドットコム」は、企業に対して障害者雇用に関するコンサルティングや、就職を目指す障害者の相談・サポートといった、「障害者雇用」全般を扱うwebメディアです。

 

松井優子さん

障害者雇用ドットコム

松井優子さん

 

プロフィール民間の教育機関で、知的、発達障害の教育、就労支援に関わったあと、企業の障害者雇用に関わる。特例子会社立ち上げ、200社以上の企業のコンサルティングや研修に携わり、現在、障害者雇用ドットコムを運営。企業視点からの組織づくり、職域開拓などを得意とし、著書に「障害者雇用を成功させるための5つのステップ」「特例子会社の設立を考えたら必ず読む本」「これからの障害者雇用はどうなるのか」等がある。

 

動画でもインタビューがご覧いただけます。

 

日野
では、さっそくインタビューに移りましょう!

 

障害者雇用に携わるキッカケ

日野
まずは、松井さんの経歴をお聞かせください。

 

松井
大学卒業してから、 民間教育のフリースクールのようなところで、知的障害や発達障害の方の教育や、就労支援に関わりました。

 

日野
そのときは、障害のある人の就職支援だけでなく、教育にも携わっていたんですね。

 

松井
そうですね。あるとき高校卒業したくらいのお子さんと接する機会があったんです。

 

日野
はい。

 

松井
そのころの私は、障害のある人も、社会性を身に着ければ就職できると思っていたんです。でも、実際は厳しくて・・・。

 

日野
そうだったんですね。

 

松井
障害者の就職の難しさを実感してから、障害者雇用に関わるようになりました。

 

障害者雇用の現場で起きた問題

日野
具体的には、どのように関わられたのですか?

 

松井
就労支援の一環で、企業の実習や面接に引率して、そこで企業の人事担当者や幹部の方と話す機会があるんです。

 

そのときに、「障害者雇用に関する法律もあるし、うちは障害者の雇用に積極的なので、どんどん連れてきてください』と言われて、私もその言葉を真に受けて、障害者をどんどん連れて行ったんですが・・・。

 

日野
何か問題があったのですか?

 

松井
採用や実習が決まって、いざ現場に行ってみると、現場の担当者の方がすごく戸惑っているんですね。『私が担当なの?』と困惑しているようすが、伝わるんです。

 

日野
現場に、障害者が働くことが伝わっていなかったのでしょうか?

 

松井
そうですね。会社として障害者雇用をしなければならない、という認知はしているけど、現場の担当者には伝わっていないとか、障害者雇用について社員全体で情報共有できていないという感じでした。

 

こういう企業では、障害者を雇用しても長続きしないんです受け入れる側の障害者に対する「理解」や「組織づくり」といった基盤づくりの方が必要なのではないかと感じたんです。

 

会社で情報共有

 

特例子会社の立ち上げで障害者雇用をする側の立場に

日野
企業側に課題がある、と感じたのですか?

 

松井
はい。受け入れ側の障害者に対する理解や受け入れる体制づくりといった、基盤づくりが必要だと感じました。

 

日野
それで、受け入れる側にまわったのですね。

 

松井
そうです。私は、特例子会社を2社経験しているのですが、2つ目の会社は立ち上げに関わりました。そこでは、社内理解をどうやって進めていくかを試行錯誤しながらやってきました。

 

その経験も含めて、障害者雇用をこれからする企業のお手伝いをするようになってきました。

 

中小企業800社をヒアリング

日野
特例子会社に携わっているときの、印象に残っているエピソードはありますか?

 

松井
行政の受託事業を受けて、中小企業を800社くらいヒアリングしたんです。

 

日野
800社?すごい数ですね。

 

松井
これだけの企業をヒアリングして感じたことが、障害者雇用をどのように取り入れたら良いか分からない企業がとても多いということです。

 

日野
具体的にどのようなことがわかっていなかったのでしょうか?

 

松井
障害者雇用した際に、障害者に任せる仕事はこんなものが多い、といった一般論みたいなものってあるじゃないですか。

 

日野
障害者に任せる業務としては、封入作業やデータ入力が多い、みたいな感じでしょうか。

 

松井
そうです。でも、すべての会社にデータ入力業務があるわけではないですよね。

 

企業ごとに合った障害者雇用のやり方を考えていかないと、実際は難しいと感じました。

 

中立的な立場で考えるー障害者雇用ドットコムの立ち上げ

松井
送り出す側と受け入れる側を経験して、もう少し中立的な立場にいたいと思ったんです。

 

日野
それまでの経験が、今の障害者雇用ドットコムでの活動につながっているのでしょうか?

 

松井
そうですね。障害者を送り出す側、受け入れる側を経験して、中立的な立場で障害者雇用に関わりたいと思いました。

 

日野
いろいろな立場や関わり方を経験されてきた強みを生かして活動されているんですね。

 

障害者雇用ドットコムの素材

 

自社の強みを分かっている企業は障害者雇用もうまくいく

日野
今まで多くの企業を見てきたと思いますが、障害者雇用でうまくいっている企業とうまくいかない企業の特徴があれば教えてください。

 

松井
自分の企業の強みをしっかり分かっている企業は、うまくいっていることが多いです。

 

先ほども言いましたが、一般論をそのまま自社に当てはめようとすると、うまくいかず失敗しやすいです。

 

日野
なるほど。

 

松井
障害者雇用に関する情報が、行政や専門機関から出ていますが、そういった情報はあくまでも参考です。

 

参考にした上で、自分の会社ではどうやっていくかと考えることが大切です。

 

日野
たとえば、考えるときにどんな視点がありますか?

 

松井
職種や、企業の業種、人数、仕事内容など、考える要素はさまざまです。

 

会社全体で障害者雇用を考えることが大切

日野
企業から受ける相談は、どんなものがありますか?

 

松井
現場の担当者が障害者に仕事を頼めない、といった相談がありますね。

 

日野
現場で実際に障害者が働くとなったときに、仕事を振れない、ということでしょうか?

 

松井
そうです。これは、担当者や特定部署だけで考えようとするから難しいんです。

 

『組織全体で障害者雇用に取り組むんだ』という合意形成ができていないと、うまくいかないと思います。

 

日野
社員全員が、障害者雇用を自分事として考える必要がある、ということですか?

 

松井
はい。いきなり1つの部署に「今日から障害のある人が配属されます」と言われても、言われた方は「何でうちの部署だけ?」と思うかもしれません。

 

そうなったら協力は得られにくいですよね。

 

日野
確かにそうですね。

 

会社全体で協力する

会社全体の意識を統一する事例

松井
そういったことを回避するには、会社全体が「障害者雇用に対して前向きなイメージを発信し、社員の協力を得られる環境をつくっていく必要があるんです。

 

日野
たとえば、どんな方法がありますか?

 

松井
一例ですが、情報発信が上手な会社が、社員に向けて障害者雇用の取り組みについて情報発信したときは、『組織全体のことを考えて、皆さんのスキルアップを図りつつ、障害者雇用もやっていきたいのでやりますよ』といった内容で発信していましたね。

 

日野
障害者雇用が会社や自分たちにとってもプラスに働くんだ、という意識が持てる内容ですね。

 

松井
社内での情報発信の内容で、社員の協力や理解に大きな差がでると思います。

 

障害者がやりがいを感じられる業務を

日野
障害者を雇用し、彼らに仕事を任せるとき、障害者の一種の能力を引き出すような仕事を任せることも大切だと思うのですが。

 

松井
そうですね、とても大切です。

 

日野
松井さんの目線で、任せる仕事内容で工夫することなどは、ありますか?

 

松井
まず、定型的な業務や、納期がない業務、単純作業といった仕事ばかりを任せるのは避けるべきです。何故か分かりますか?

 

日野
つまらないから・・・とか?

 

松井
今挙げた仕事って、仕事をこなす側としては、やりがいを感じられないんですよ。

 

日野
確かに、そうですね。

 

松井
やりがいを感じられたり、自分が会社に必要とされていると感じられたりすることが大切なんです。

 

時間を埋めるだけの作業にしないことが大事ですね。

 

営業サポートや広報活動など成長できる仕事

日野
そういった仕事としては、たとえばどんなものがあるでしょうか?

 

松井
たとえば、営業サポートとかですね。お客様と直接やり取りするのは営業の人ですが、見込み客のリストアップや、アポイント取りなどは、営業サポートや補助の人が行っていることが多いです。

 

営業先を見つけてくるのだって、会社の売り上げにつながりますよね。

 

日野
そうですね。

 

松井
他には、企業の情報発信や広報活動もあると思います。営業サポートも広報活動も、何度も繰り返していく中で、クオリティが上がっていきます。

 

そうすると、その人の仕事ってとても価値のあるものになるんです。

 

日野
つまり、クオリティが上げられるような仕事、ということでしょうか?

 

松井
はい。クオリティを上げることで価値も高まっていく仕事です。一般雇用で働く人も、障害者雇用で働く人も、やりがいを感じられる仕事って同じなんです。

 

『障害者だから単純作業を任せる』という考え方は、今では古いです。

 

自分で試行錯誤しながら成長を感じられ、会社や周りの人に必要とされていると思えるーそんな仕事を任せてもらいたいと思います。

 

やりがいのある仕事

コロナ禍における障害者雇用の現状

日野
コロナ禍で、障害者を取り巻く環境も変わってきていると思うのですが、松井さんから見る障害者雇用の現状をお聞かせください。

 

松井
個別に企業の話を聞くと、どの企業も頑張っていると思います。

 

一方で、企業が障害者に対して良かれと思ってやっていることが、本人たちに伝わっていないということがよくあります。

 

日野
そうなんですか?たとえばどんなことですか?

 

松井
ある企業は、障害者を集めてチーム制で仕事を進めていたんです。

 

このチーム制というのが、本人たちにとっては、一般社員から隔離されていると感じたみたいです。

 

日野
な、なるほど・・・。

 

障害者への配慮を正しく伝えるには?

松井
ほかには、企業としては、障害のある彼らに配慮して、納期の少ない仕事や負荷の少ない仕事を与えたのだけど、『責任ある仕事を任せてもらえない』と捉えられてしまったということもありました。

 

日野
障害のある人を思っての行動が空回りしてしまったんですね。

 

松井
合理的配慮を取るよう言われているなかで、企業側としても障害者への配慮のつもりだったのでしょうが、全く逆に受け取られてしまう、といったことは、よくあります。

 

日野
こういったことへの対策としては、どんなものがあるでしょうか?

 

松井
こういった意思疎通の問題は、日頃からお互いにコミュニケーションを取ることである程度解決できるんです。

 

どんな仕事がやりたいか、何が得意で何が苦手なのか、どんなスタイルで働きたいか、といったことを聞いて、仕事内容や働き方に反映させていけば、彼らにも伝わると思うんですね。

 

日野
コミュニケーションは、障害者雇用の現場でも大切なんですね。

 

松井
そうです。むしろ障害がある分、よりコミュニケーションが重要となってきます。

 

いろんな方法を試して、会社と障害者間できちんと意思疎通が取れるやり方を見つけていくことが大切ですね。

 

障害者雇用ドットコムの今後の展望

日野
松井さんの中で、今の活動を通じて、今後どういう風にしていきたいといった、目標や展望はありますか?

 

松井
個別に企業の取り組みを聞いていると、企業ごとの強みや、業種の特徴を生かした雇用をしている企業が多いです。

 

どの企業もよく頑張っているなと感じます。そういった企業の努力や、どんな雇用スタイルを取っているのかを、もっと知ってもらいたいと思っています。

 

自社の強みを生かした雇用スタイルを提供するサポート

日野
なるほど。

 

松井
それから、企業に対しては、他社と比べるのではなくて、『自分の会社ならどんな雇用ができるか』を考えてもらいたいと思います。

 

自社ならではの特徴や長所を生かした雇用スタイルを提供するためのポートをしていきたいと考えています。

 

日野
障害者ドットコムには、企業ごとのオリジナルな障害者雇用のスタイルを相談できるんですね。それは企業にとって心強いのではないでしょうか。

 

松井
そう思ってもらえたらうれしいです。

 

働き方の面からも障害者の就職をサポートしたい

日野
働き方という面では、昨年からテレワークに取り組む企業が増えましたよね。こういった働き方も、障害者雇用に影響がありますか?

 

松井
そうですね。精神障害や発達障害の人が多い企業では、テレワークがすごく好評だと聞きます。

 

通勤に対するストレスがなくなったとか、テレワークになってから仕事の段取りが分かりやすくなった、といったメリットを感じている人が多いようです。

 

日野
今までにない働き方が増えたことは、障害者にとって良い傾向のようですね。

 

松井
さまざまな働き方が取り入れられることで、「働きたい」と思う障害者が増えたらいいなと思います。

 

テレワークのように在宅で働けるようになることで、地方や田舎にいながら働けるチャンスも広がっていくのではないでしょうか。

 

そういう方面でも、障害者が広く仕事に携われるようお手伝いしていきたいですね。

 

日野
ありがとうございます。最後に企業や障害者にメッセージをお願いします。

 

松井
企業の方には、自社の強みやメリットを生かした障害者雇用のやり方を見つけていきましょう、と伝えたいです。

 

私たちは障害者雇用のコンサルです。自社に合ったやり方を探すお手伝いができればと思います。

 

求職中の障害のある方には、コロナの影響で採用が厳しい傾向はありますが、できることをしっかりやっていけば、自分に合ったところに採用されると思います。途中で諦めず、できるところからやっていきましょう。

 

障害者雇用ドットコム松井優子さんとの対談を終えて

今回、松井さんには、障害者を送り出す側、受け入れる企業側の両方を経験したから気づいた視点や考え方をお話していただきました。

 

日野
まだまだお伝えしきれないところも多かったので、もっと詳細を知りたいという方は、下記にある障害者雇用ドットコムのメディアや無料のオンライン講座を受講してみてください。

 

障害者雇用ドットコムでは、企業、求職者それぞれに向けた障害者雇用に関する相談やコンサルティング、研修などを行っています。

 

オンラインセミナーは、実際に障害者雇用に取り組んでいる企業の例や、雇用計画のプランニングを学ぶことができると大変好評です。

 

日野
無料で視聴できる体験動画もご用意されているとのこと!

 

セミナーの様子や効果を無料で実感したい方は、こちらからお申込みできます。

 

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日野信輔

日野信輔

株式会社Nextwel代表取締役。Welsearch編集長。ソーシャルビジネスに特化したWebマーケター。障害者プロデュース・福祉事業所やNPOの伴奏支援などしております。得意分野:工賃アップ/障害者の仕事づくり/集客。詳しいプロフィールはこちら→日野信輔


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