静岡県伊豆の国市の温泉街にある放課後デイサービス「マゴコロ」。元割烹料理屋を改装したこの施設では、アートと料理を中心に地域との交流を深め、障害を持つ子たちを育てています。
今回は、その放課後等デイサービス「マゴコロ」を運営する川島さんにインタビューをさせていただきました。アートと料理がどのように心を育てていくのかを中心にお話を伺っています。
お好きなところからお読みください
川島庸さんについて
今、静岡県伊豆の国市というところで放課後デイサービス「マゴコロ」を運営させていただいております。
割合としてはほぼ9割5分くらい女性の方ですが、オンラインで主にカウンセリング、メンターみたいな形ですね。 その人の第二の人生をこれからどうやって歩もうかという人達をメインにカウンセリングをさせていただいております。 その前までは約20年ぐらい、大手の玩具物流会社の営業をやっていました。そして、ご縁がありましてこの伊豆の国市に2020年前に家族で移住してきました。
放課後デイサービス「マゴコロ」について
マゴコロの概要
そこにある伊豆長岡温泉の元割烹料理屋さんを借りさせていただいて、そこで放課後とデイサービスを開設させていただきました。特徴としては、元々割烹料亭なのでとにかく広くて、訓練室だけで畳で20畳ほどあります。 その他にも全部で3部屋があり、元々厨房だった施設もあるんですけど、厨房だった施設をアートのアトリエ工房に今しています。 それ以外は、お客さんがちょっと食べたり飲んだりとかするような場所をフリースペースとして活用させてもらって、かなり広い敷地で一応認可としてはギリギリ199平米のスペースでやらせてもらってます。
後は料理も元々割烹料理屋さんというところの特色があって、幸いにもスタッフも料理ができる方たちが集まってくれたので、子ども達の実習みたいな感じで物づくりをメインにしてやっていこうと思っています。
伊豆の国を選んだ理由
その時に友人が伊豆の国市で畑をやっていて、「川島さんこっちでいい環境のところがあるから来なよ。」と言われて行ってみたんですよ。 家族で一応遊びに行った感じでその畑に遊びに行ったんです。 うちの子は重度知的障害の息子で、なかなかこう新しい環境とか新しい場所、畑が一番なんですけど、足の深い感じとかすごい感触的に嫌がっていました。 だから、なかなかそういう新しい環境、畑ってなるとまず外に出て行かない子なんですよ。ですが、そこの畑行ったら自分から車の扉開けちゃって畑に飛び出していって。 そこでスナップエンドウを有機栽培地やっていて、そのスナップエンドウをみんなと一緒にもぎって食べて、なんかそれがとても美味しかったみたいです。 その様子を僕と奥さんと二人で見ていて「なんか不思議だね」って話になって、もしかしたらこういう子達が凄く居心地がいい所なのかなあっていう風に思いました。 それがまず最初のきっかけですね。
特別支援学校でその当時身体の支援学校というのがあるんですけど、そちらの先生とご挨拶することがなぜか出来ちゃって。 こっちの方でそういう放課後等デイサービスがなくて困ってるという風な話を聞いてたのと、その翌年に特別支援学校ができるって話を聞いたんですよ。 それを聞いた時にうちの子がそうやって住みやすい、暮らしやすそうな環境でかつ僕カウンセラーをやっていたので、心が病んでたりとか苦しんでたりする人たちが、すごく居心地のいい環境を作れるかなって僕自身もちょっとその時感じました。
ちょっとお世話になった移住者の方がいたんですけど、その方を中心に移住者のコミュニティみたいなのがあって、そこからどんどん輪が広がっていき、もう進むしかないみたいな感じになっちゃったんです。
マゴコロをはじめたきっかけ
埼玉にいた時にB型の施設の施設長を副業でやっていたんですよ。それで施設にいた人が大人になった時、B型の施設と、一般就労と、就労移行をくるくる回ってる方たちが結構いたんです。 なんで戻ってくるかって言うと、自分に自信がなかったり、自分が思ってた仕事の仕方が違うとかいうのが結構あって。 これって何なんだろう?って思ってた時に、B型の施設の仕事の仕方とか見てると、企業から受注はしてくるんだけど、その人に合った仕事の割り振り方に疑問を持ちました。 もちろん支援する人たちのスキルにもよると思うんですけど、本当にその仕事が将来ずっとやっていくような仕事として用意できるのかなって思ったんです。
その時に、企業から受注して仕事するするスタイルじゃなくって、自分たちで仕事を作り上げていくっていうスタイルを作っていこうと思ったんです。
それがマゴコロをつくるきっかけです。
地域との交流
割烹料理屋さんで敷地が広いので、そこの地域の子ども達とか親御さん向けに、ゼロから縁日をみんなで作っていこうみたいなイベントを開催したり、シャボン玉のイベントで、人がシャボン玉に入るにはどうしたらいいのかっていう、ちょっとしたワークショップをやり続けています。 子ども達も障害があるなし関係なく、誰でも来て遊べるよみたいな感じにしています。
他のイベントとしては、月に1回アートセラピーやクッキングを、第三土曜日にやっています。
放課後デイサービス「マゴコロ」の特徴
と3つの柱がありますが、一つ一つ詳しくお聞かせいただければと思います。まずは調理はどのような形でやられていますか?
調理を通じてチームワークを
偏食で、自分の家のご飯もやおやつも食べられない子達がゆっくりでもいいので、素材から自分達で見て作業訓練的にスタッフと一緒に料理しています。
あと自分たちの手の感触を楽しんだりとか、作業作業療法的なちょっと体の動かし方とか、どういう風に体の見立てをしていけばいいかとかというのを見ながらやっています。
料理だとみんなで作って、みんなで美味しいねっていう状態を作れる。これは療育がやりやすいコンテンツですし、その時の体験がやっぱりすごく楽しかったですよね。 スタッフのモチベーションもすごく上がるし、お母さんたちとか地域の方達とかも参加しやすくなるだろうなって思ったので。
自信がない子が多いと思うので、そういう場を通じて自信をつけるのが大切ですね。
アートセラピーを通じてわかること
特に見てるのは、臨床美術のところから独自の感じでやってますが、身体の動きやその人の興味目線とか、周りとの関わり方とかにその子の特徴が見えてくるので、アートセラピーをやってる感じですね。
何か絵を描かせるというよりも、流れに沿っていくと絵が描けちゃったみたいな。元々、認知症予防の方法をそのまま障害者向けにやっている感じです。 特に学校での美術の勉強とかだと、この絵を書きなさい!みたいな感じで、それが描けないとトラウマになったりとか、うまく書けなかったってなっちゃうんですけど、そういうことは一切ないです。 自分で手を動かしてたらその手が動きがそのままお芋になっちゃったとか、空になっちゃったみたいな感じでやってます。
そして、その子の持ってる体の動き、関わり方というか居場所の持ち方みたいなことを注視する。絵を描くことがゴールではなくって、むしろその子の居場所を探してあげるっていうのがゴールという感じですね。
そこはプログラムの一つになってるってだけで、スタッフたちが工夫していただいて、その子なりのプログラムや過ごし方を作ってくれてるのですね。
地域との交流の中で
音楽イベントで、ボランティアとして、交流をするための癒しの環境を作るという感じですね。 気軽にそこにいてもらえるような環境を作るイメージです。
障害を持ってる方たちは、自分で関係を持つことができない、難しいと思うから、関係の持たれ方を作るところから始めていきたいなって思ってます。
障害のある方の仕事に対する訓練の一環というか。
親御さんへのアプローチ
親御さんに対してマゴコロからどんなアプローチをしたいですか?
子どものことが重荷だと思っている親御さんがご自身の人生を歩んでなかったりするケースもあるので。 その時に一番解放してくれるのって、やっぱり子どもからの「ありがとう」っていう気持ちだと思うんですよ。 障害を持ってるからというわけではないんですけど、親御さんがずっと欲しいものって、お子さんからの愛情だと思います。その表現がどんな形でもいいからマゴコロから届けられたらいいなと思っています。
親御さんに、この子が作ったんだよということが分かるように渡せたりして、マゴコロの活動を通して定期的にしてあげたいなと思ってます。
その時に、「パパ」とか「お父さん」ってその子は言ってくれって、愛情がでてくるってことがありますが、障害を持つ子達はそれが言えなかったり、伝える表現を持ってなかったりするので。 それが表現としてお父さんの所に入ると、シングルマザーにならなくて済んだりとかも思ってます。
今後のマゴコロの目標
放課後等デイサービス、障害者施設としての認知ももちろんですが、子どもたちが地域の中であそこに楽しい遊び場があるよみたいな感じで見つけてくるんですよ。 それで見つけてもらえる、この地域で一番楽しい場所になるのがまずは最初の目標と思ってます。
そこが出来上がったら次の段階で、仕事を見つけていく、仕事を作っていくステージに入っていけるのかなと思っています。
ここで遊ぶというよりも仕事なのか遊びなのかわからない。その中で自分の得意分野を見つけてもらえると思うんですよね。遊んでるうちに仕事になっちゃったみたいな感じで。
そういう部分で、心の部分を頑丈にしてあげるというか、柔らかくしてあげるって言うか。その子なりの感じ方で大丈夫なんだよっていう風な生き方を作って育ててあげたいなと思ってます。
インタビューを終えて
マゴコロ代表の川島さんのインタビューでした。
仕事やその他でも、やはり人との交流は欠かせません。アートや料理を通じて、決して義務ではなく、楽しく多くの人と交流する中で社会にでる技術を身につけるマゴコロの思いはとても素敵なものでした。
最後までお読みいただきありがとうございました。
放課後等デイサービスマゴコロについて
ホームページ:放課後等デイサービスマゴコロ
ブログ:伊豆の国市 伊豆市 元老舗割烹 児童放課後等デイサービス『マゴコロ』
住所:〒410-2211 静岡県伊豆の国市長岡188−12
電話:055-947-6800
アクセス方法 :伊豆箱根線伊豆長岡駅、伊豆箱根バス「長岡駅温泉循環/[温泉場西]から徒歩3分」
久田 淳吾
最新記事 by 久田 淳吾 (全て見る)
- 障害がある方の避難所生活|障害や病気を抱える方への災害避難マニュアル|第3回 - 2024年8月15日
- 障害がある方の災害時の注意点!障害や病気を抱える方への災害避難マニュアル|第2回 - 2024年8月5日
- 災害には備えが肝心!障害や病気を抱える方への災害避難マニュアル|第1回 - 2024年7月24日
この記事へのコメントはありません。