「自分としては合理的配慮を求めているのに、相手にはわがままと受け止められたみたいで、何だかスッキリしない……」
こんな風に思い悩んだことはありませんか?
この記事では、発達障がい(ASD)を持つ私が、身体・知的・精神障がいを抱えている人達に向けて、合理的配慮について語ります。
- 合理的配慮とわがままの違いは何か。
- どうすれば合理的配慮を求めやすくなるか。
以上の2点を知りたいあなたに、読んでほしいです。
お好きなところからお読みください
合理的配慮を求めやすいバリアフリーな社会を願って
まずは前置きとして、日本に障がい者がどれくらいいるか、お話しします。
「平成28年生活のしづらさなどに関する調査」(厚生労働省)によると、障がい者の総数は936万人。全人口の約7.4%が何らかの障がいを持っていることになります。約14人のうち1人が障がい者だとすると、なかなか無視できない存在ですよね。
多数派から少数派を切り捨てるのではなく、誰もが生活しやすい社会を実現するために、一人ひとりが声を上げるのは、とても大切なことだと思います。
合理的配慮とは、障がい者が社会において感じるバリアを、無理のない範囲で取り除くこと。車いすを利用する人が電車に乗るために、簡易ゴムを使って段差を解消することは、まさに合理的配慮の一例です。
物理的なバリアだけでなく、心理的なバリアも溶かしていくことも、生きやすい世の中にするためには必要ですね。
「困っているから助けて」
「何を手伝えばいいですか?」
こんな風に、配慮を求める声を発しやすく、なおかつ聴き入れやすい雰囲気が、もっと世の中に満ちればいいのにと思います。
合理的配慮が世間に行き渡っていない…差別の例
ところが、合理的配慮という言葉や考え方は、まだまだ世間に浸透しきっていないのが現状です。
障がい者にとって、自分の弱みをさらけ出して助けを求めるのは、ある意味勇気が要ること。配慮をお願いするのは、他の人と平等な位置に立つためのものであって、決してわがままではありません。それにも関わらず、正当な理由なく差別をされて、切なくなる人も少なくないでしょう。
差別は決して望ましいことではありませんが、ここで例をいくつか挙げてみますね。
不当な障がい者差別の例
- 盲導犬と共に飲食店に行ったら、一方的に受け入れを拒否された。
- クレジットカードの申込書を記入するのに、目が不自由だから家族の代筆でいいか質問したところ、本人の直筆でないと駄目だと拒まれた。
- アパートを借りたくて不動産屋へ相談に行ったところ、精神障がいを理由に対応してもらえなかった。
これらの例に共通するのは、障がい者側と事業者側のコミュニケーションが充分にされないうちに、関係が遮断されていること。事業者側が偏見というバリアを外して、もっと障がい者側の声に耳を傾けてくれたらいいのにと思います。
私が障がい者雇用で配慮されなかった例
発達障がい(ASD)を持つ私の例についても、お話ししますね。
合理的配慮といえば、当事者が障がい者雇用制度を利用して働くときに、企業側にお願いする配慮を連想する方も多いと思います。私も2015年に、初めて障がいをオープンして事務職として就職したときに、上司に配慮をいろいろとお伝えしました。
一度に複数の仕事をこなすのが難しいので、ひとつの仕事に集中させてください。
これらの配慮をお願いしたとしても、できる事務はいくつかあるはずです。ところが、私に用意されていたのは、清掃とシュレッダー作業ばかり。聴覚過敏の障がいがあるにも関わらず、掃除機とシュレッダーの騒音に延々と悩まされながら、私はフルタイムで作業し続けました。
上司に合理的配慮をお願いしても、わがままと思われたのか聞き入れてもらえず。上司としては、簡単な作業を回して配慮しているつもりだったろうし、聴覚過敏まで障がいだとは信じられなかったのかもしれません。
結局、体調をいちじるしく崩して、私は試用期間でこの会社を退職することになりました。現在は別の会社で、合理的配慮を受けながら働いていますが、当時を思い出すだけで苦しくなります。
合理的配慮とわがままの違いは?
では、ここで、合理的配慮とわがままの違いを整理してみますね。
思いやりの有無が、両者の線引きとなります。
違いを簡単に説明すると…
障がい者にとって合理的配慮とは、社会生活において感じるバリアを、取り除いてもらう対応のことを指します。その対応をお願いする相手は、お店や交通機関や勤務先など、時と場合によってさまざまでしょう。
ここで重要なのは、相手の負担にならない範囲で依頼すること。その範囲を超えると、わがままになります。
比較すると、以下の通りです。
わがまま:相手を全く配慮せず、自分だけが求める配慮。
自分も相手も歩み寄って、心地よい着地点を見つけるのが、理想的ですね。
違いを具体的に比較すると…
では、私の障がい者雇用の話を例に、合理的配慮とわがままの違いを比べてみます。
自分の障がい特性に合わない仕事を、上司に対して断りたいとき、伝え方ひとつでこんなにも違ってきます。
合理的配慮
PCを使った表作成は得意なので、何か資料作成する必要があればお任せいただけますか?
合理的配慮の例では、自分ができないこと(騒がしい機械の操作)を伝えたうえで、自分ができること(PCを使った表作成)を伝えています。できないこと・できることを具体的に表現しているため、相手も私の特性を想像しやすくなります。その結果、上司も仕事を回しやすくなりますね。
わがまま
他にもっと、やりやすい仕事はないですか?
わがままの例では、掃除やシュレッダーが辛いことしか訴えていないので、どうしてこの仕事が無理なのか、上司に伝わりにくいです。しかも、やりやすい仕事という抽象的な表現だと、上司も別の仕事を探すのに困ってしまうでしょう。
合理的配慮を求めやすくなる3つのポイント
合理的配慮は、配慮をお願いする側もされる側も、お互いに思いやることで成り立ちます。では、当事者としてどうすれば合理的配慮を求めやすくなるでしょう。3つのポイントを紹介します。
自分の障がいと改善案を伝える
自分にとって何が障がいで、どうすれば改善できそうなのか。それを相手に伝えられるようになるのは、とても重要です。自分の説明があいまいでは、相手がどんなに気配りしたいと思っていたとしても、どう対応すればいいか分からないからです。
ここでポイントなのが、障がいはもちろん、改善案もセットで伝えること。困っていることだけを訴えて、対策を考えるのを相手におまかせしたら、それこそわがままです。
改善案まで話せるようになるのは、場合によって難しいかもしれませんね。でも、なるべくそこは譲歩して、自分からコミュニケーションできるといいです。
相手の負担にならないことをお願いする
配慮を求める際には、相手にとって負担がない範囲でお願いしましょう。相手も得する提案だと、さらにいいですね。
たとえば、盲導犬を連れて飲食店に入ることは、自分がお客さまになるということ。飲食店も対価をもらえることになるので、どちらも得をすることになります。車いすで電車やバスに乗ることも、クレジットカードの申込書を代筆で提出することも、そうです。
相手が自分を手伝ってよかったと思えるように、感謝を込めて配慮をお願いするといいですね。お互いが笑顔になれるようなイメージです。
合理的配慮の具体例をイメージする
合理的配慮と一口で言っても、なかなか想像しづらいもの。自分と似たような悩みを持つ人が、どのように配慮を求めているのか、具体例を調べてみるのをおすすめします。ネットで検索してみたり、当事者や支援者に相談してみるのもいいですね。具体例をイメージできるようになれば、いざ自分が困ったときに、配慮を求めやすくなるでしょう。
以下、参考になるサイトを紹介します。
内閣府
内閣府のサイトでは、合理的配慮に関するわかりやすいリーフレットや、具体例データ集を公開しています。
▼参考▼
WelSearch
当サイトでは、障がいのある人もない人も助け合って生きている事例を、数多く紹介しています。当事者によって書かれた記事もありますよ。
▼参考▼
障がい者と家族、福祉・医療従事者、支援者……日本の6名が1つのチームとなって、福祉最先端国であるデンマークに視察に行った際の、報告会のレポートです。障がい者が自立している幸福度の高い世界を、体感することができます。
合理的配慮は民間事業者にも義務化される
なお、障害者差別解消法が2021年5月に改正・可決されたことはご存知でしょうか?
合理的配慮を行うことは国や自治体に限らず、民間事業者にも義務付けられるようになりました。この改正法は、2021年6月4日の公布日から起算して3年以内に施行されます。
つまり、障がいのある人がお店や会社などに対して配慮を求めることは、法律面でも後押しされるようになったんですね。当事者はこのことを頭の片隅においておくと、いざ配慮をお願いするときに、気持ちが楽になるかもしれません。
まとめ
合理的配慮とわがままの違いは、思いやりが有るか無いか。
配慮を求めやすくなるためには、以下の3つを心がけるといいです。
- 自分の障がいと改善案を伝える
- 相手の負担にならないことをお願いする
- 合理的配慮の具体例をイメージする
誰もが生きやすい社会になるために、どんな人も声を発しやすく、聴き入れやすい空気が広がっていくといいですね。
物理的にも心理的も、バリアフリーが進むことを願っています。
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