あなたは発達障がいについて、どのようなイメージを抱くでしょう。
- 同時に複数のことができない、不器用な人
- 忘れ物が多くて、時間も守れない人
- 空気が読めなくて、周囲から浮いてしまっている人
人によってそのイメージはさまざまですが、『発達障がい』というキーワードが数十年前よりも出回るようになった今、そのイメージは一般的に固まりつつあるのではないでしょうか。
ところが、世間で考えられている発達障がいという枠組みから、微妙に外れてしまう人もなかにはいます。本人は発達障がいの症状に、とても苦しんでいるにも関わらず、です。
いわゆる、発達障がいのグレーゾーンに存在する人たちです。
発達障がいの症状が薄いのなら、その辛さも薄いのではと思うかもしれないですね。
ここでは、発達障がいグレーゾーン当事者や、その支援者・家族・知人友人の皆さんに向けて、
- グレーゾーンがなぜ辛いのか
- どのような対処法があるか
ということを、当事者の体験を元にシェアいたします。
お好きなところからお読みください
発達障がいグレーゾーンとは?全体における割合は?
発達障がいの傾向があるか否かは、医療機関で受診することにより分かります。
(診断に関しては、以下の記事に書きました。もしよかったらご覧くださいね)
ところが、その傾向があるにも関わらず、診断基準を全て満たさないために、診断されない人もいます。
それから、自分は該当するかもしれないと思いつつ、受診しない人もなかにはいます。
そういった、発達障がいの特性があっても、診断までに至らない人が、グレーゾーンに当たります。
さて、発達障がいのグレーゾーンに当たる人たちは、日本人全体の何割いるか。
アスペルガーの当事者でカウンセラーでもある吉濱ツトムさんによると、40~50人に1人(実感としては20人に1人)はいるとのことです。
グレーゾーンに位置するアスペの人は、文部科学省発表の数字からの推計や『ガイドブック アスペルガー症候群―親と専門家のために』(トニー・アトウッド著、東京書籍、1999年)などによると、日本人の40~50人に1人くらいとされています。でも、僕の実感としては、20人に1人くらいはいるように思います。発達障害の一種、ADHD(注意欠陥・多動性障害)も、診断がつくのは40人に1人ですが、軽度のADHDなら10人に1人くらいはいると言われています。
(引用:『隠れアスペルガーという才能』吉濱ツトム著)
発達傷がいグレーゾーンはなぜ辛いの?
発達傷がいの症状の強弱と、本人の辛さの大小は、必ずしも比例しないと、先ほど書きました。
一般の人を「定型発達」、症状が強い人を「非定型発達」とすると、グレーゾーンはどちらともハッキリ言えないということですよね。
(「定型発達者」「非定型発達」という言い方はあまり好きでないのですが、便宜上そう呼ばせていただきます)
- 曖昧で
- 不確定で
- どこにも行き場がない
ということも、とても辛いのだということを、まずは主張したいです。
そんなハッキリしない発達障がいグレーゾーンがなぜ辛いのか、お話いたします。
社会の枠組み(一般枠・障がい枠)に合わせるのが辛い
グレーゾーンの当事者の場合、定型発達の人たちにも、非定型発達の人たちにも合わせづらいというのが、まずあります。
たとえば、会社での就労について。
一般枠で働いた場合、当事者は困難を強いられると考えられます。
かと言って、仮に診断されて、障がい者枠で働くことができたとしても、当事者は物足りなさを感じることもあるでしょう。
つまり、一般枠でも障がい者枠でも、自分に当てはまらなくて辛いのです。
さて、「枠」という言葉が象徴しているとおり、日本の社会は枠組みというものが固いように思います。カテゴライズがしっかりしているとでも言うのでしょうか。
就労に関して言えば、基本的には一般枠と障がい者枠の二つしか選択肢しかありません。一般枠で働くには大変だし、障がい者枠でも働けないとなると、選択肢がなくなって、とても追いつめられているように感じます。
(もちろん、起業や家事手伝いといった、二者以外の選択もあります。話が長くなるので、ここでは触れないでおきますね)
そもそも人に合わせるのが辛い(対人ストレス)
当事者が定型発達側にも、非定型発達側にも合わせにくいことは、先ほど書きました。
そもそも当事者自身、対人ストレスを感じやすい特性があることが多いため、ますます生きづらくなることが考えられます。
こだわりが強いといわれている、自閉症スペクトラム(アスペルガー症候群)の傾向がある人は、特にそうですね。
ADHD(注意欠陥・多動性障がい)の傾向があって人懐っこいタイプの人でも、うっかりミスを連発して、悪気がないにも関わらず対人トラブルを起こすこともあります。
それから、グレーゾーンの人のなかには、定型発達者以上に空気を読むことに長けて、周囲に過剰に適応している人もいると言われています。
そういった、一見困っているように見えない当事者も、内面では相当ストレスを抱え込んでいると考えられるでしょう。
なのに白黒つけたがる(両極思考・完璧主義)
さらに、当事者のなかには白黒をハッキリつけたがる、両極思考が強い人もいます。
こちらも先ほどと同様、自閉症スペクトラム(アスペルガー症候群)の傾向がある人が、まさにそうですね。
「え?結局わたしは、発達障がいなの!?そうじゃないの!?」
と、グレーゾーンであるにも関わらず、定型発達なのか非定型発達なのか、オール・オア・ナッシングで決着をつけたくて、ますます自分を追いつめてしまうこともあります。
私自身は、発達障がいがあると疑っていたとき、とにかくパソコンにしがみついて必死に検索しました。
自分に障がいが有るのか無いのか、100%の答えを見つけて、落ち着きたかったからです。
ところがネット上には、自分に完全に当てはまる記事なんて、どこにも存在しないんですよね。
ディスプレイに映る説明文は、どこか微妙に違和感があって、しっくりくる言葉は見つかりませんでした。
グレーゾーンの辛さは悪循環することも
発達障がいのグレーゾーンがどうして辛いのかお話しました。
これまでの話をまとめると、
一般枠にも障がい枠にも合わせるのが辛い
↓
そもそも人に合わせるのが辛い
↓
なのに白黒つけたがる
↓
一般枠にも障がい枠もに合わせるのが辛い
(以下、くり返し)
という風に、悪循環に陥りやすい傾向があるのではないかと思います。
グレーで曖昧な状態にいるからこそ、思いが堂々巡りになってしまうんですね。
それだけ、当事者たちの悩みが多種多様だと、ご理解いただければありがたいです。
グレーゾーンの辛さの対処法は?
では、このようなグレーゾーン特有の辛さを受け入れていくには、どのような方法があるでしょう。
当事者としての体験から、提案したい対処法が3つあります。
私自身は、発達障がいを自覚してから約2年間医療機関に行かず、グレーゾーンにいた経験があります。現在は診断を受けていますが、症状は軽い方です。
自分の悩みについて整理してみる
発達障がいグレーゾーンにいると、自分の心も混乱しがちですよね。
まずは自分のなかにある、ぐちゃぐちゃした思いを、整理してみるのはいかがでしょうか。
- 自分にはどんな特性があるのか
- 自分はどんな環境にいるのか
- 自分はどのようなことで悩んでいるのか
このようなことを紙に書いてぶちまけて、あとはちょっと俯瞰してみるといいです。
自分のありのままの状態を見て、気持ちをスッキリさせるのが目的です。
(もし鬱状態で苦しくなるようなら、紙に書くことは無理におすすめしません)
もし自分の思いを言語化することに、苦手意識を感じている場合は、信頼できるカウンセラーや支援者、理解のあるパートナーや友人などに、悩みを打ち明けてみるのもいいですね。
自分以外の当事者の体験談に触れてみる
自分以外のグレーゾーン当事者の体験談を見聞きすることも、心が楽になるきっかけになるかもしれないです。
グレーゾーンの当事者会に行ってみるのも手ですね。
たとえば、生き方に悩んだとき、自己啓発の本を100冊読んでも、何も答えを見いだせなかったとします。
ところが、1冊の小説を読むことで、自分とはかけ離れた体験が書かれているにも関わらず、心理的に共感して、癒されることがありますよね。
それと同様に、誰かの血の通った物語は、どんな完全なマニュアルよりも、心の支えになることがあります。
余談ですが、私が発達障がいの情報についてネットで漁っていたときに、何よりも参考になったのが体験談でした。
当事者の体験談に限らず、発達障がいの子どものママの話や、カサンドラ症候群に悩む方の話も、貪るように読みました。
自分とはちょっと違うけれど、心の奥底で響きあうものがあったんですよね。
孤独が癒されるのを実感しました。
体質改善を試してみる
発達障がいというのは、脳の器質から生じていると言われています。
定型発達者と比べると、グレーゾーンにいる人は身体のつくりが微妙に違うことが予想されます。
心理的なアプローチだけでなく、身体的なアプローチを試みることで、意外と精神的にも落ち着くかもしれないです。
たとえば私の場合は、食物アレルギーがあったり、ちょっと気を抜くと姿勢が乱れてしまうということがあります。
それに対して、
- ローカーボ(適度に糖質を抜いた食事)を心がける
- マルチビタミン剤を服用する
- 姿勢を正すことを意識する
- 運動や深呼吸、ストレッチをして身体をほぐす
以上のような体質改善を試みることにより、だいぶ不調が緩和されました。
【まとめ】発達障がいグレーゾーンから楽になるために
発達障がいのグレーゾーンがなぜ辛いのか、どのような対処法があるのかついて、お伝えいたしました。
グレーゾーンの対処法
- 自分の悩みについて整理してみる
- 自分以外の当事者の体験談に触れてみる
- 体質改善を試してみる
いかがでしょうか。
障がいの有無が曖昧で、その答えを必死に求めてしまうから、よけいに苦しくなってしまうのですね。
当事者としては、こういった悩みに対して、具体的に動いていくことで楽になれるのではないかと思います。
例えば、自分の気持ちを言葉にしたり、誰かの血の通った体験談を見聞きしたり、食事や姿勢に気をつけるなどです。
100%解決しようと思うのではなく、曖昧なままでいいから楽になろうとすることが、かえって光が見える近道になるのではないでしょうか。
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