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団地弁当で障害のある人の活躍を!村上団地のB型事業所を運営する板屋佑実子さんインタビューvol.2

  • 最終更新日:
板屋さん2

千葉県八千代市にある村上団地。その一角にあたたかな雰囲気のお弁当屋さんがあります。

 

この団地弁当では、一般企業で働くことが難しい人たちが、様々な目標を持って働いています。

 

その団地弁当を運営する板屋佑実子さんにお話しを伺いました。

 

ジュン
第2回目の今回は、就労継続支援B型事業所に関する考え方などをお聞きしました。

 

第1回目の記事

就労継続支援B型事業所のあり方

団地弁当

就労施設の収入について

ジュン
就労継続支援B型事業所についていろいろお伺いしたいと思います。

 

就労型では収入が低いなどの問題も言われておりますが、その辺り板屋さんはどのように考えられているでしょうか?

 

板屋
就労継続支援B型事業所の全国平均工賃は、月額15,776円/時間額222円となっています。(令和2年度)

 

各都道府県の最低賃金と比較すると、たしかに就Bの収入は少ない現状。

 

誤解を招く表現かもしれませんが、上記の事実を考慮した上で、私個人としては就Bの収入面について、現状のままでもいいのではないかと考えています。

 

参考

 

ジュン
それはどういった理由からでしょうか?

 

板屋
理由としては、高学歴/高収入を目指すレースから能動的に外れて就Bを利用することで、自分なりの生きる楽しさを感じれるようになると考えているためです。

 

日本の教育では、勉強して良い学校に入って、大企業に就職して…というのが理想とされることが多いです。今回は、この理想を「高学歴/高収入レース」と呼ぶことにします。

 

このレース自体が、本当に幸福かどうかは謎です。日本全体の秩序を保つために言っているのかもしれないし、本当にそれが幸福だと信じているのかもしれないし、それが日本にとって都合がいいから言っているのかもしれない…。

 

ただ、間違いなく1つ言えることは、「高学歴/高収入レースに全員が参加するなら、1人ひとりに順位がつけられ、勝つ人/負ける人が出てきてしまう」ということです。

 

ジュン
たしかに、競争型社会の問題はいろいろ言われています。

 

競争自体は決して悪いものではないですが、それだけですと世の中が疲弊してしまいますからね。

 

その人に合った働き方を提供

板屋
人には向き不向きがどうしてもあります。中には、高学歴/高収入レースに向いていない人もいます。

 

そういった人たちが、自分に向いていないレースに参加するのは非効率ですし、そもそもそのレースで勝つことが幸せかどうかも分かりませんよね。それなら、いっそレースからあえて外れましょうというのが就労施設だと私は考えています。

 

レースから外れてしまえば、自分が本当に楽しいと思えることに取り組むことができるのです。

 

一般企業では、多くの人がお金のために仕事をしているため、たとえ嫌なことがあってもお金のために我慢を強いられることがよくあります。我慢しすぎて、自分の好き嫌いや価値判断さえも分からなくなってしまう人もいます。

 

ジュン
「お金のための我慢」は、お金だけを目的としてしまいがちですね。

 

板屋
一方、就労施設の場合は、お金という縛りから解放されているので、「自分は何をしている時が楽しいのか?」ということを発見するのが容易になります。

 

世間体とかお金とか、そういった要素を取り除いたまっさらな状態で、自分自身と向き合えるようになります。

 

ジュン

あくまで、就労施設はお金を稼ぐ目的から離れて、「自分を見つめる場」という役割ということですか。

 

板屋

ここで、就労施設の収入が少ないことについて再考してみると、収入が少ないことがむしろメリットにもなりうるので、就労支援の収入面について現状のままでもよいと結論づけることもできるかと思います。

 

お金という縛りから解放されるからこそ、自分なりの生きる楽しさを見つけることができ、レースで他人と競う必要もなくなります。このように、高学歴/高収入レースから外れた場として、就労施設は存在していると個人的には思っています。

 

こういった選択肢があるということを、日本の教育やメディアで取り上げられる機会が増えれば、レースで生きづらさを感じている人が、多少は心にゆとりを持てるようになるのかなとも思っています。

 

就労施設という場の役割

ジュン

就労施設の目的は、利用者の楽しさという、心に対するアプローチという感じですか?

 

板屋

先述のように、就労施設は「高学歴/高収入レースから外れた場として、利用者やその関係者に対して、生きる楽しさの選択肢を与える」役割があると考えています。

 

また、国からも必要とされていることも明らかです。福祉予算は平成30年度で1兆3000億円(実際には自治体が同額負担しているので、合計は2倍の2兆6000億円)もあります。

 

一般会計歳出総額がおよそ100兆円であることを考慮すると、全体の約1.3%もの予算が福祉に費やされているということになります。

 

就労施設という場は、利用者やその関係者にとっては「生きる目的を見つける場」として機能し、さらには国からもすべての人の基本的人権を尊重するために必要とされているということが分かるのかなと思っています。

 

ジュン

障害を持つ方にある「生きつらさ」。一般企業にいるとどうしてもその部分が強くでてしまう。

 

そういう部分から抜け出して、障害がある方が「生きる」ということに焦点を当てる、そのような役割ですね。

 

お金を稼ぐこと自体悪いものではないですが、それから離れることで見えるものはたしかにあると思います。

 

団地弁当の今後について

ジュン

団地弁当についてですが、今後どのようにしていきたいかなどのビジョンはどのようなものがありますか?

 

板屋
数字としては、まずは村上団地の1店舗目で、利用者20名を目指していきたいです。弊社では、利用者数をKPIとして設定しています。

 

多くの利用者さんがいるということは、事業所が利用者さんに対して、先述の就労施設としての場を十分に提供できており、それほど利用者さんに必要とされているという証明になるためです。

 

ジュン

利用者さんが多く、その方たちが楽しみを見つけられる場であれば、必然的に必要とされますね。

 

団地弁当の皆さん

 

板屋

作業内容としては、利用者さんと手探りで見つけていきたいと思っています。個人単位で見ても法人単位で見ても、出来ることが増えるというのは、生きていく中で楽しい瞬間だと考えています。

 

まずは目の前のできることを少しずつこなしていき、出来ることを増やしていき、その過程で目指していく方向を利用者さんと一緒に決めていきたいと考えています。

 

今個人的になんとなく考えているのは、PC周りの作業です。今の世の中は、インターネットの流行のおかげで様々な情報/人に触れられるようになりました。

 

今は団地内のコミュニティのみに限定されていますが、今後はもっと広い世界に対して貢献できるような作業を取り入れてもいいのかなと考えています。

 

いずれにしろ、利用者さんと一緒に決めていきたいです。

 

読んでくださる皆様へ

ジュン

最後に、この記事を読んでくださった方へメッセージをお願いいたします。

 

板屋

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。読んでくださった多くが、障害福祉関係の方かと思います。

 

【私と同じように事業所運営をされている方へ】
私自身まだまだ駆け出しですが、まずは就労施設を3事業所持つことを目標に動いています。

 

いろいろな方と繋がり、情報共有をし、お互いにとってより良い関係を築ける会社様と出会えたら嬉しいです。

 

お気軽にフォローのほどよろしくお願いします!

 

【障害のある人へ】
もし弊社や私個人の考え方に共感していただける方がいらっしゃったら、ぜひ見学等来ていただけると嬉しいです!

 

今回は記事なので少し堅くなってしまいましたが、実際の事業所はかなり自由で、初めて来る方は驚かれる方が多いです。

日常を少し変えてみたいといった方がいらっしゃったら、ぜひご連絡ください!

 

ジュン

ありがとうございました。

 

インタビュー第2回を終えて

障害福祉の場として、また団地の憩いの場としての団地弁当。今回は、就労支援B型のあり方などについてお話をうかがいましたが、収入を重視しないからこそ見える面、生きがいとしての場所という立場。

 

就労支援にはいろいろ問題も聞きますが、それぞれの立場があるからこそ重要性がそれぞれ違ってくるのだと感じました。

 

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。

 

第一回目は、下記になります。

団地弁当で障害のある人の活躍を!村上団地のB型事業所を運営する板屋佑実子さんインタビューvol.1

 

団地弁当について

団地弁当ホームページ:https://danchi-bento.com/

板屋さんTwitter:板屋佑実子/団地弁当🍱🌽🥕🍅さん (@murakami_bento) 

 

 

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久田 淳吾

発達障害(ADHD・ASD)と吃音を抱える40代男性。今まで発達障害の事は知らずに生きてきたが、友人の話を聞いて自分にも当てはまる事が多すぎる事を実感し、病院にて診断を受けると見事に発達障害との認定を受ける。自分に何ができるかと考えた時、趣味の写真でプロの先生に話を聞く機会があり、吃音が強く出ていたことに気がついた先生が『君は吃音持ちだね。だったら吃音の方の気持ちがわかるはず。それを活かして吃音の方の気持ちがわかるカメラマンになったらどうか』という言葉を思い出し、発達障害者として同じ気持ち、舞台に立てる人間として趣味のカメラ、動画編集技術を活かして情報発信をする事を決意。


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