近年、障害者雇用も以前よりも一般的になり、令和3年からは、法定雇用率が2.3%(民間企業)になっただけでなく、精神障害者も法定雇用率の算定対象になりました。このように障害者が働く機会というのは、だんだんと増えていっているように思えます。(2018年後半には、行政の障害者雇用の水増し問題もありましたが…)
しかし、ここで気になってくるのが「障害者の平均年収」です。雇用の機会は、だんだんと増えていると言われておりますが、実際に障害者の平均年収もアップしているのでしょうか?
先に結論から言ってしまいますと、現状、多くの障害者が自立できるだけの収入を得ていません。そこで、今回は障害者の平均年収がいったいどれくらいになっているのか?をまとめてみました。
なぜ障害者の平均年収や月収が低いのかについての理由もお伝えしていきましょう。
障害者の平均年収は?
障害者の年収はいったいいくらくらいなのでしょうか?
調べてみると興味深い記事を発見しました。障害者団体「きょうされん」の地域生活実態調査(2016年)によると、障害者の98%が年収200万円以下で生活しているという結果になったみたいです。
ちなみに、この調査はきょうされんに加盟している作業所などに行われ、
- 男性:8865人
- 女性:5443人
- 平均年齢:41歳
の方々に実施されたものです。
障害別(重複も含みますが)でも統計をとっており、
- 知的障害:9381人(65%)
- 身体障害3861人(27%)
- 精神障害3641人(25%)
となっております。
この中で、生活保護受給者1677人を抜いた1万2531人の収入調査もされておりました。
その調査ではなんと、
- 年収200万円以下が98%
- 年収100万円以下が61%
といった結果になっていました。
こんなグラフもありました。
「障害のある人と国民一般の収入比較」
この図を見てもわかるかと思いますが、健常者と障害者にはこんなにも収入の格差が広がっている現状です。もちろんこの調査は、作業所などが対象となっており、障害者雇用されている方は調査の対象外となっているので、正確な結果ではないです。
収入源はどこから?
障害者の98%が年収200万円以下という結果が出ておりますが、その200万円はどのように稼いでいるのでしょうか?
この調査によると主な収入源は、
- 障害基礎年金2級:6111人(43.6%)
- 障害基礎年金1級:5263人(37.6%)
- 自治体独自の手当:1230人(8.6%)
となっており、ほぼ障害基礎年金に頼っている現状となっています。では、自分で稼いでいる収入は、いったいどれくらいになっているのでしょうか?
工賃の平均月収はどうなっているのか?
上記の調査はきょうされんに加盟している作業所がメインの対象となっていますが、そこではもちろん工賃をもらっているかと思います。厚生労働省から『令和2年度工賃(賃金)の実績について』の報告がありました。
これは
- 就労継続支援A型事業所
- 就労継続支援B型事業所
が対象の施設になりますが、工賃の平均月収を調べたもので、下の表のような結果とのこと。
施設種別 | 平均工賃(月) | 平均工賃(時間) |
就労継続支援B型 | 15,776円 | 222円 |
就労継続支援A型 | 79,625円 | 899円 |
まとめるとこんな感じです。
【就労継続支援B型事業所】
月収:15,776円
時給:222円
前年度比:96.4%
【就労継続支援A型事業所】
月収:79,625円
時給:899円
前年度比:100.8%
工賃の金額も徐々にアップしておりますが、工賃だけの収入では、まだまだ自立できるような金額を得ることは難しい現状です。
障害者雇用されている人の年収は?
これまで障害者の収入に関してお伝えしてきましたが、その調査も「作業所に通っている人」が対象なので、障害者雇用されている方の収入は入っていないのです。では、障害者雇用されている方の収入はいったいどのくらいなのでしょうか?
国の資料は少し古いものしかなく、「平成 30 年度障害者雇用実態調査結果」にそれが記載されておりました。事業所で雇用されている障害者の平均月収は、以下の通りです。
雇用されている障害者の平均月収
- 身体障害者:215,000円
- 知的障害者:117,000円
- 精神障害者:125,000円
- 発達障害者:127,000円
となっております。グラフで見るとこのようになっております。
2018年の末には、このようなニュースもあり、かなりネット上でも話題になっていましたからね。
「障害者雇用促進法では精神( #発達障害 を含む)・知的障害者の雇用も義務づけられているにもかかわらず、35道府県が身体障害者に限定していた。…障害者団体は「精神・知的障害者を行政が不当に排除…」と批判…」正職員採用 35道府県が「身体」障害者に限定 – 毎日新聞 https://t.co/U66Kdw3P8f
— ASAMI Masao (@Asami_Masao) 2018年11月30日
ちなみに、常用労働者の平均月収は、264000円ですので、身体障害者との差は少ないですが、知的・精神障害者との差は2倍以上になっておりました。もちろん作業所よりかは収入が多いですが、まだまだ少ない金額となっております。
それと、このようなデータもあったので、シェアします。障害者の就職・転職・求人応援サイト「たんぽぽ」さんのデータによると、
- アルバイトやパート
- 契約社員や嘱託社員
- 正社員
の3つのケースで平均年収の統計データが記載されておりました。もちろん働く形態によって、給料も変わってきますので、1つずつ説明していきましょう。
アルバイト・パートの障害者の平均年収
まずはアルバイトやパートの障害者の平均月収から見ていきましょう。1番多いゾーンは、「100万円〜199万円」で半数以上がこのゾーンになっております。
契約社員・嘱託社員の障害者の平均年収
次に、契約社員や嘱託社員の障害者の平均月収を見ていきます。ここで1番多いゾーンは、「200万円〜299万円」のゾーンです。
正社員の障害者の平均年収
最後に、正社員の障害者の平均月収を見ていきます。正社員となってくると、給料は高くなってきますが、金額としては平均的にバラバラに散らばっております。
いかがでしょうか?
すべての統計を合わせてみますと、このような結果になっております。
合計
- 99万円以下:15%
- 100万円〜199万円:24%
- 200万円〜299万円:25%
- 300万円〜399万円:16%
- 500万円以上:11%
全体的な障害者で見てみると98%が年収200万円以下となっておりましたが、雇用契約を結んで働いている障害者の方となると、52%が年収200万円以上をもらっています。働く企業によっても異なってきますが、契約社員や正社員の場合は、段々と年収もステップアップされているケースも少なくないみたいですね。
【障害者雇用の現状は?】
なぜ障害者の平均年収は低いのか?
障害者の平均年収や月収についてお伝えしてきました。
雇用契約を結んで働いている人の場合でも、年収300万円以下が70%以上もいるのが現状です。では、なぜ障害者の平均年収は健常者の方たちと比べて、低くなっているのでしょうか?
考えうる理由としては、以下の3つが挙げられます。
- 正社員の障害者が少ない
- 週に働いている時間が少ない
- 給料がアップしにくい
厚生労働省が行った「障害者雇用実態調査」の事業所によるアンケートを元に1つずつ説明していきますね。
1:正社員の障害者が少ない
まず第一の理由としては、正社員になっている障害者が少ないという理由です。障害者の雇用形態がいったいどのようになっているのかもアンケートを取っておりましたので、1つずつ見ていきましょう。
身体障害者の雇用形態
まず、身体障害者の雇用形態から見ていきましょう。このようなアンケート結果となっております。
- 無期契約の正社員:48.1%
- 有期契約の正社員:7.8%
- 無期契約の正社員以外:6.5%
- 有期契約の正社員以外:37.3%
- 無回答:0.4%
知的障害者の雇用形態
次に知的障害者の雇用形態について。知的障害者は、このようなアンケート結果となっております。
- 無期契約の正社員:16.9%
- 有期契約の正社員:1.9%
- 無期契約の正社員以外:26.5%
- 有期契約の正社員以外:54.7%
- 無回答:なし
精神障害者の雇用形態
最後に精神障害者の雇用形態について。精神障害者は、このようなアンケート結果となっております。
- 無期契約の正社員:32.0%
- 有期契約の正社員:8.8%
- 無期契約の正社員以外:11.1%
- 有期契約の正社員以外:47.8%
- 無回答:0.2%
「無期契約の正社員」が一般的には1番給料が高いですが、この形態で約50%なのは、身体障害者のみです。知的障害者・精神障害者になると、全体の20〜30%となっていることがわかります。「正社員以外」で働いているのが、知的障害者では全体の80%、精神障害者では全体の60%となっています。
2:週に働いている時間が少ない
2番目の理由としては、働いている障害者の平均的な勤務時間が少ないという点です。「週所定労働時間別(1週間の勤務時間別)」のアンケート結果もありましたので、見ていきましょう。
これは、週5日勤務で1日6時間以上勤務しているケースだと、通常(週30時間以上)勤務としている内訳となっています。
身体障害者の平均勤務時間
まず、身体障害者の平均勤務時間から見ていきましょう。このようなアンケート結果となっております。
- 通常(週30時間以上):81.8%
- 20時間以上30時間未満:12.0%
- 20時間未満:5.5%
- 無回答:0.7%
知的障害者の平均勤務時間
次に知的障害者の平均勤務時間について。知的障害者は、このようなアンケート結果となっております。
- 通常(週30時間以上):62.0%
- 20時間以上30時間未満:26.5%
- 20時間未満:10.4%
- 無回答:1.1%
精神障害者の平均勤務時間
最後に精神障害者の平均勤務時間について。精神障害者は、このようなアンケート結果となっております。
- 通常(週30時間以上):68.9%
- 20時間以上30時間未満:26.2%
- 20時間未満:4.2%
- 無回答:0.7%
身体障害者では80%以上の方が通常勤務で働いておりますが、知的障害者、精神障害者の場合は60~70%と下がっており、その分「20時間以上30時間未満」で働いているのが30%近くという結果になっております。
3:給料がアップしにくい
3つ目の理由として、それぞれの障害をお持ちの方がどのような職種で働いているのかについても、アンケート結果を見ていきましょう。
身体障害者の職業
まず、身体障害者の職業から見ていきましょう。このようなアンケート結果となっております。
- 事務:31.7%
- 専門・技術分野:14.3%
- 販売:13.6%
- 工場などの生産工程:11.4%
- その他
知的障害者の職業
次に知的障害者のについて。知的障害者は、このようなアンケート結果となっております。
- 工場などの生産工程:25.6%
- 運搬・清掃・包装:21.9%
- サービス業:20.5%
- 販売:10.7%
- その他
精神障害者の平均勤務時間
最後に精神障害者の平均勤務時間について。精神障害者は、このようなアンケート結果となっております。
- 事務:32.5%
- サービス業:15.1%
- 工場などの生産工程:12.9%
- 専門・技術分野:11.3%
- その他
知的障害者では工場などの生産工程や運搬・清掃・包装の割合が多くなっています。身体障害者・精神障害者では事務の仕事をしている方が圧倒的ですね。
この事務という仕事は、この仕事だけで利益を出していくような職種ではないので、ほとんどの企業では給与面では低いケースが多いだけではなく、仕事の評価が難しいので、昇給もしにくい職種となっています。
このように見てわかるとおり、障害者が就労する職種は、給与のステップアップが難しい職種なので、平均年収も上がりにくいというのも、平均年収が低くなってしまう理由の1つとなっていると考えられます。
年収が少ない理由
- 正社員の障害者が少ない
- 週に働いている時間が少ない
- 給料がアップしにくい
以上、これら3つの理由が障害者の平均年収や月収が低い理由だと考えられます。
上記は、働いている障害者に関してのアンケートをまとめました。施設に通所している障害者の場合は、最初の方でお伝えしたように
- 就労継続支援B型事業所:月14838円
- 就労継続支援A型事業所:月66412円
とかなり低い現状となっております。やはりこのような現状なので、自立している障害者も少ないです。きょうされんの調査で、障害者が「誰と暮らしているか?」の実態も報告されておりましたので、最後にこちらを紹介していきます。
障害者の生活の現状
上記でお伝えしたように、障害者の平均年収が低く、特に施設に通所している方は、給料だけでは生活できない現状です。このような
現状なので、障害者の方は親や家族と同居している人がほとんどです。こちらのグラフも上記と同じきょうされんの調査でわかった「誰と暮らしているか」の実態です。
※友だち=グループホームなど施設入居者を含む
こちらは年代別の「親と同居している割合比較」となっております。
これらの図を見てわかる通り、親と同居していないと、生活ができないという方がほとんどです。その理由としては、やはり先ほどお伝えした「給料(工賃)の低さ」が主な要因となっています。つまり、親の収入に頼らないと経済的な部分で1人で生きていくには難しいということです。
編集後記
いかがでしたでしょうか?
障害者の平均年収の実情を知ると、自分の知り合いにも
と聞くと、だいたいが「15〜20万円くらいじゃない?」と答え、現実の年収や月収を教えると、とても驚きます。
でも、そこから「障害者って何ができるの?」と聞かれ、ご自身の事業などの経験からいろいろなアイデアを提案してくれる人も多く、新たな気づきを与えてくれる方もいます。少しでも多くの方が、この現状を知り、改善のためのアイデアを出し合っていけば、自立できるまでの収入を得ることも可能になってくるのではないでしょうか?
そのためには、まず知ってもらう「きっかけ」が大事ですね。改善できそうな何かいいアイデアなどご存知であれば、ぜひお問い合わせください!みんなで協力しあっていけば、よりよい世の中へなっていくと思ってます。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。あなたのご意見や感想などもぜひお聞かせいただけますと幸いです。
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日野信輔
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B型すら行けない人は一日4時間作業(内職)して週5で月800円程度
内職作業は健常者がやっても疲れるレベル
1日300円の昼ご飯代金にもならない
日本の企業は弱者を奴隷扱いして成長してる。
障害者の賃金アップに取り組まれている社会起業家夏目さんのインタビュー記事です。こちらの事例を参考にされるかもです!
http://yumecho.com/stories/forum_140716_03/
http://quon-choco.com/project/
各種控除で優遇されてる措置があって、収入低くても問題ないオチとかありませんか?
税金や医療費の割引はじめ公的な助成制度をすべて含めた障碍者の収入事情を知りたいです。
また十分な収入があれば自立できる障碍者ばかりではないと思います。
ホント、そこですよね。
単純な”平均値”や”収入”だけでなく、個々の生活水準を知りたいですよね。
そこには絶対に障害者内の「格差」があると思います。
それと健常者のワーキングプアは税金面などの優遇は皆無ですから、
場合によっては障害者よりも生活水準が低いこともあります。
そりゃサイレントテロリストになったり自殺したりホームレスになったりする人が増えるわけですよ。
私は精神障害者3級ですが、精神が法定雇用率に入っていないとは思いませんでした。障害者求人で普通の会社に7時間勤務してますが、ここでいわれていることはよくわかります。3級の年金はもっと上げて欲しいです。
そうですか、僕は2017年11月から広告代理店で勤務を始めてから等級が2級から3級に降格、障害者年金もカットされました。しかし…企業は2022年2月に倒産しましてその後は派遣労働でつないでいる状況です。現在は求職活動をしていますがもう50社以上、見送りや不採用を喰らっています。年齢が50歳と言うのもありますし、ペーパードライバーですので…統合失調症歴28年のそんな人材は殆ど社会から疎外を受けているのが実情です。派遣労働では一日最大13時間労働の経験もあるのですが…本当は健常者の方と互角に働いているのですけど。でも現実はとても厳しいです。
多いのが年齢を重視されて不採用と言うパターンが…何故か正直疑問に感じています、普通に働くことが可能な人材、戦力なのに…?
健常者でも最低賃金どころか障害者よりも収入の少ないワーキングプアはたくさんいますよ。
自分は知的障害B2、精神障害、発達障害があります。
障害者だって健常者女性と結婚したいが、養っていける収入もないので
ある。
障害者が一般的な暮らしが出来たらどれだけ幸せだろうかと思う。
私は61歳で精神障害2級ですがどういう方法で仕事を探せるのでしょうか?
>一谷雄二さん
今でしたら、インターネットなどで検索するのもおすすめですよ。だけど怪しいところもあるので、賃金や待遇のことはしっかり聞いておいた方がいいかもしれません。
また、各自治体のハローワークなどでも、事業所等を紹介してくれたりすると思います。
無理せずに頑張ってくださいね。
優遇って?
税金の控除はあるが、その程度なら元々非課税(に近い)収入だし、
医療費も普通に3割負担。
精神科は1割(住んでる大阪府は条件によっては負担無し)だが、
内科等は気軽にかかれない。
動物園とかが無料の「優遇」はあるけどね。
障害者の優遇という事ですが、障害者と一括りにされても……
A身体障害者手帳保有
B知的障害者手帳保有
C精神障害者保健福祉手帳保有
三障害全く一緒の優遇とかありません。
雇用のされやすさとかはA>B>>>Cです。
Cは最近まで障害者の法定雇用率カウントに無いのでCは雇わなくても企業に罰則はありませんでした。
ABだけで法定雇用率を充足させている企業も多いです。
運送関係、JR、長距離バス、航空会社等殆どの運賃割引はAとBだけです。
Cは介護が付いていても、例え車椅子に乗ってもCの手帳しかなければ健常者と同じ運賃です。
実際私はCで通院補助等をつけていますが大人2人分払ってます。
AやBなら介助者と本人で大人1人分です。
心身障害者向け医療補助これもAとBが主でCはほぼありません。
最近Cの1級のみ補助をするようになりましたが。
公営住宅、ABCどれもまぁ…優遇はあります。
(倍率は3桁と異常に高いですがバリアフリー住宅や独身世帯向けに応募出来ますから)
ただし、公営でないとCの場合私が住む政令指定都市では入居不能の場合が多いので、お助け制度があるぐらいです。
因みに低所得者向けのサービスは健常者も使えるので棚上げします。