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失敗しないバリアフリー洗面台の選び方〜障害者や高齢者を困らせている事例紹介〜

  • 最終更新日:

NPO法人 日本障害者アイデア協会の本郷です。

当協会は、バリアフリーアイデアの研究および情報発信を行っている団体です。

 

仕事柄、私は障害者施設や高齢者施設を訪問することが多々あるのですが、それら施設には障害者や高齢者を困らせる不便なバリアフリー洗面台が意外なほど多く存在します。

 

洗面台選びをする際のリサーチ不足・確認ミスが原因で

 

  • 洗面台を使う度に不便を感じる。
  • 結局、洗面台の買い替えることになった

 

などのもったいないケースがあるのです。

 

そこで、今回は皆さまに失敗しないバリアフリー洗面台の選び方をクイズ形式で3つの事例を元にお伝えします。

 

バリアフリーの洗面台を設置する際に陥りやすい失敗を理解して、誰もが使いやすいものにできますので、ぜひご一読ください。

車椅子ユーザーを困らせるバリアフリー洗面台の事例

写真は、ある障害者施設に実際に設置されたバリアフリー洗面台です。

 

車椅子ユーザーに合った高さに設置され、一見すると車椅子ユーザーが便利に使えそうです。

 

しかし、この洗面台には重大な欠点が隠れているのがわかりますか?

 

下の写真をよ〜く見てみてくださいね。

 

 

どこにその欠点があるかお分かりになりますでしょうか?

 

本郷
ヒントは、写真に写っている男性が手で示している場所です。

 

 

 

 

 

 

答えは、

 

排水管に車椅子ユーザーの足が当たってしまい、車椅子ユーザーの手が蛇口に届かない

 

ということです。

 

なぜ車椅子ユーザーを困らせる洗面台なのか

車椅子ユーザーの足は意外なほど前方に位置します。

 

一方、写真の男性が示す通り、この洗面台の排水管は真下に伸びています。

 

なので、排水管に車椅子ユーザーの足があたってしまい、それ以上前進できません。

 

これによって、車椅子ユーザーが前に屈まないと蛇口に手が届かないという問題が発生してしまいます。

 

良い例(下の写真)と比較すると分かりやすいので、これとの比較で具体的に説明します。

 

引用:Lixilホームページ

 

この洗面台は、排水管が奥(写真では右側)に収納されているため、車椅子ユーザーの足があたらず、車椅子ユーザーが洗面台の奥まで入ることができます。

 

このケースだと、車椅子ユーザーの手は容易に蛇口まで届きます。

 

一方、上の写真の排水管は真下に伸びているため、車椅子ユーザーの足が排水管にあたってしまい、奥まで入れません。

 

このケースでは、車椅子ユーザーが前屈しないと蛇口まで手が届かないのです。これでは使い勝手が悪くなってしまいますよね。

 

本郷
バリアフリー洗面台の選定・設置の際は、排水管の位置に注意しましょう!

 

高齢者を混乱させる洗面台の事例

下の写真は某高齢者施設に「実際に設置されている洗面台」です。

 

高齢者施設は殺風景になりがちなので、このような洒落たデザインの洗面台は必要です。

 

しかし、この洗面台を高齢者の目線で見た場合、2つ重大な欠点があります。

 

1つ目は、先程説明した排水管の位置です。これでは車椅子ユーザーの足が排水管にあたってしまい、車椅子を使用する高齢者が困ります。

 

2つ目は、この洗面台の形状に問題があるのですが、この形状によりどのような問題が生じるかお分かりになりますでしょうか?

 

 

少し考えてみてください。

 

 

 

 

 

 

何かに似ていませんかね?

 

高齢者が○○と勘違いする洗面台に

答えは、

 

小便器に似ている

 

ということです。

 

公衆トイレなどに設置されている男性用の小便器に似ているので、「認知症の高齢男性が、これをトイレと勘違いしてオシッコをしそうになり、介護職員が慌てて止めた」という事例が本当にあるのです(もちろん、すべての高齢者が勘違いする訳ではありませんが…)

 

お洒落も大切ですが、便器に似ていては困りますね。

 

本郷
高齢者施設等で洗面台を選定・設置する際は、その形状にも注意しましょう!

 

◆この記事の一部はYoutube(動画)でも解説しています。

 

一歩足りないバリアフリー洗面鏡の事例

最近のサービスエリアのトイレは、本当にきれいで清潔。バリアフリー設備も非常に充実しています。

 

下の写真は、某サービスエリアの「誰でもトイレ(バリアフリートイレ)」です。一見、良さそうなのですが、このバリアフリートイレは残念ながら「一歩足りないもの」でした。

 

 

さて、どこが一歩足りないのでしょうか?

 

本郷
ヒントは、写真に映っている洗面鏡です。

 

 

 

 

答えは、

 

鏡の位置や角度が悪いため、車椅子ユーザーの顔が映らない。です。

 

なぜこの洗面鏡が使いにくいのか?

下の写真は、この鏡を車椅子ユーザーの目線で見た場合の写真です。これだと顔が映りません。

 

鏡の下端の位置が高すぎるのです。車椅子ユーザーの座高や姿勢にもよりますが、「おでこ」の部分がやっと映る程度です。

 

 

つまり、下の写真の赤丸のあたりまで鏡がないと顔が映らないのです。

 

バリアフリートイレで鏡が使えないと絶対に困る!ということはありませんが、せっかく清潔で立派なバリアフリートイレを作ったのですから少々残念。非常にもったいないです。

 

 

いいバリアフリー洗面鏡の事例

ちなみに、下の写真は鏡が下まで伸びているものです。

 

こちらの場合、顔がしっかりと鏡に映るのでOKです!

 

 

 

また、下の写真は他のバリアフリートイレの鏡で、傾斜がついていて下向きになっています。

 

これも顔がしっかり映るのでOKです!

 

 

 

本郷
バリアフリー洗面台を選定・設置する際は、鏡の位置や傾斜に注意しましょう!

 

洗面台などのバリアフリー器具選びで失敗しないために

本郷
バリアフリーに詳しくない人がバリアフリー器具の設計や選定を行うと、机上の空論になりやすく、このような問題が生じます。

 

バリアフリー器具を選ぶ際は、充分なリサーチと確認作業が必要です。当事者(障害者や高齢者)・介護ヘルパー・バリアフリーの専門家などに意見を求めましょう。

 

当事者や介護ヘルパーへのリサーチが難しい場合は、当協会でもリサーチや助言を行っていますので、コチラからお問い合わせください。

 

本郷
充分なリサーチを行えば、高齢者や障害者も便利に使えますし、設備の不備や買い替えロスなども防止できます!

 

なお、当協会のブログでは「一歩足りないバリアフリー」というテーマで、このような事例を紹介しています。こちらもぜひ参考にしてください。

 

◆バリアフリーアイデア研究所(NPO法人 日本障害者アイデア協会内研究機関)のブログ

企業利益につながるバリアフリーアイデア&ユニバーサルアイデア「一歩足りないバリアフリー」

 

 

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NPO法人日本障害者アイデア協会 理事長。バリアフリー技術に特化したアイデアコンサルタント。20年の特許実務経験と、2000人の高齢者のお尻を洗った介護経験と、21年間の知的障害者療育経験とを併せ持つ男。障害児を授かったことを機にバリアフリー技術の研究を開始。2012年NPO法人を設立し、バリアフリー商品の開発支援等を行う。【講演実績】株式会社JTB、株式会社ニチレイ、築地ロータリークラブ、商工会議所など多数。バリアフリーアイデアブログ


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