私は2020年8月に新型コロナウイルスの陽性が判明し、無症状でしたが居住地外のホテルで療養しました。
「新型コロナウイルス陽性で隔離生活した持病のある視覚障害者のホテル療養体験記vol1」に続き、私がコロナ感染でホテル療養をしたときの体験をお伝えします。
今回は、私が考える新型コロナウイルスが満映している状況下でも「生き抜くための対策」として、
- 擬陽性について
- 基礎疾患の有無を確認しておく
- 病気の特徴を知っておく
- 医薬品や計測機器を準備しておく
などをお伝えいたしますので、持病のある方も、ない方も治療生活のご参考になれば幸いです。
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隔離ホテル滞在中の不安
私はホテル滞在中、糖尿病でお世話になっている主治医とメールや電話で頻繁に連絡を取っていました。ホテルでの診療経験がある主治医がこんなことを言いました。
「ホテルは、医者がいてもいないようなもんだよ。薬は市販薬だけだし、自宅にいるのと大差ないよ。元気な人が行くところだよ。」
主治医の言うことは本当で、ホテルの医師からは糖尿病の薬は処方してもらえず、主治医から郵送してもらいました。ホテルでは医師の診察、検査、薬の処方はありません。
私が滞在したホテルでは、健康観察は専用ウェブに送信するだけの一方通行。無症状だったせいか看護師からの電話などの確認はなく、健康状態を把握されているのか疑問でした。ナースコールの設備もありませんので、動けなくなったら連絡できなくなります。
新型コロナウイルスのホテル療養者が亡くなった
私は療養中に宿泊療養施設の運営マニュアルを読んでみました。宿泊療養は感染者の行動制限が目的の医療なき隔離施設だと理解しました。こんなところで発症したら死ぬかもしれない、いつか誰かが死体で発見されるだろうと思いました。
私の不安は的中しました。2020年12月、神奈川県のホテルで軽症の療養者が亡くなったのです。療養者の酸素飽和度が低下していたにもかかわらず、医師の診察は行われませんでした。療養者と連絡が途絶えた後、看護師が居室を訪問したのは4時間後。心肺停止で発見され、病院に搬送後に死亡が確認されました。死因は新型コロナによる急性肺炎とのことでした。
神奈川県は「マニュアルが整備されていなかったことが原因だった」としています。軽症者であれば体調が悪化しても自分で連絡ができるという認識でした。
コロナでは患者が低酸素状態になっても、呼吸苦を自覚しないことがありますが、職員がこの特徴を十分理解していなかったそうです。私は療養者自身が酸素飽和度の正常値や、コロナの特徴を知っていたら、もっと病状の深刻さを訴え、入院できたかもしれません。
ホテル療養の安全性に疑問を抱く
調べてみると他にもホテル療養の安全性に疑問を感じることがありました。看護師だけでなく医療職でない自治体職員が健康観察を行う自治体を見つけました。業務経験のない看護師も応募可能という求人情報もありました。
知識のないスタッフがいる最悪の療養先に隔離されことも想定し、「絶対生き抜くぞ」と、もがくような対策を考えてみました。
新型コロナウイルス陽性でも「生き抜くための対策」
このような体験をして私は新型コロナウイルス陽性であっても「生き抜くための対策」を9つほど、まとめました。
生き抜くための対策
- 偽陽性について
- 基礎疾患の有無を確認しておく
- 病気の特徴を知っておく
- 医薬品や計測機器を準備しておく
- 健康観察の時には、職員を観察すること
- 体調が悪いのに放置されるなら連絡を絶つ手も
- 助け合える仲間を作っておく
- かかりつけ医を持ち、コミュニケーションを取っておく
- ヘルスリテラシーを身につける
偽陽性について
PCR検査や抗原検査の結果が陽性であっても誤りの可能性があります。偽陽性の可能性が高いと感じる方は、再検査を申し出ましょう。
再検査できずホテル送りになったら、ホテル内で感染しないよう十分注意してください。
基礎疾患の有無を確認しておく
新型コロナは糖尿病や高血圧などの基礎疾患があると重症化リスクが高くなります。保健所は療養場所(入院、ホテル、自宅)の判断材料として基礎疾患の有無を聞き取ります。生活習慣病は気がつきにくい病気です。基礎疾患があるのに気付いていないと、入院できず命の危険にもつながります。
自分の健康状態を把握していない方は、発熱などでコロナの検査を受ける時に、血液検査もお願いしてみる事をお勧めします。なぜなら、ホテルに入ってしまうと検査が受けられないからです。
病気の特徴を知っておく
ホテルでは、コロナの特徴や注意すべき症状の説明は一切ありませんでした。入所先の医療従事者の質は分かりません。
患者自身が新型コロナ感染症の経過、重症化しやすい人の特徴、気をつけるべき症状などを知っておく必要があります。
最低限、以下のことを知っておけば、自分の状態がどの程度危険か、ある程度判断できます。
- 緊急性の高い症状 https://www.mhlw.go.jp/content/000625758.pdf
- 新型コロナ感染症では、肺炎になっていても呼吸困難を感じないことがある。
- 血中酸素飽和度の正常値は96%以上。93%以下は酸素投与が必要なレベル。
- 呼吸数が大人で1分間に20回を超えたら要注意。
- 悪化する時期は発症後1週間から10 日(療養解除の頃)が多いので軽快してきても注意。
参考サイト
以下は参考となるサイトと本です。
国立国際医療研究センターの忽那賢志医師の記事。分かりやすいです。
https://news.yahoo.co.jp/byline/kutsunasatoshi/20210124-00219177/
岡田晴恵著『新型コロナ自宅療養完全マニュアル』
ページ数が少なく、すぐに読むことができます。ホテル療養でも参考になります。
新型コロナウイルス感染症診療の手引き
医療従事者向けですが、参考になる部分もたくさんあります。
https://www.mhlw.go.jp/content/000712473.pdf
医薬品や計測機器を準備しておく
ホテルでは血圧計や体重計は貸してもらえません。薬も解熱剤すら簡単にはもらえません。
新型コロナウイルスの検査で病院に行った時に、療養に必要そうな薬を多めに処方してもらうと良いでしょう。血中酸素飽和度を測るパルスオキシメーターは自分で購入しておいた方が良いと思います。
また、個人に1台配布されない施設もあり、測定が必要な体調悪化時ほど測定できなくなる恐れがあるからです。
パルスオキシメーターの注意点
今回、体験記執筆にあたりメーカーに問い合わせ、ようやく原因がわかりました。自己測定と対面測定を切り替えるボタンがあったのです。
ホテルの測定マニュアルには切り替えボタンのことは書かれていませんでした。商品に添付されているマニュアルではなく、施設が独自に作ったものだったのです。
私は気が付かないうちにボタンを押していたのでしょう。1台を複数人で使っていたことも、毎回表示の上下が違っていた原因かもしれません。
現在、自宅療養者が増加し、パルスオキシメーターが不足しています。個人での購入を控えるよう呼びかけられています。しかし、医療従事者の指導を受けずに使う事を考えると、購入して練習しておいた方が良いでしょう。
パルスオキシメーターは数字の表示の点が粗いとOCRアプリで読み取ることができません。OCRアプリで、ネットショッピングサイトに掲載されている商品の写真を読み取ってみると、アプリが使えるかどうかの判断材料になると思います。友人知人で1台買ってシェアしてはいかがでしょうか。
健康観察の時には、職員を観察すること
私のいたところは健康観察の情報はウェブに送信するだけで、基本的に電話もかかってこない一方通行の健康観察でした。ウェブが使えない人は電話で報告可能でした。
会話をすることで相手が看護師かどうかや、能力チェックもできると思います。酸素飽和度の意味や入院の判断基準など、試しに聞いてみてはどうでしょう。
体調が悪いのに放置されるなら連絡を絶つ手も
かなり体調が悪いのに「様子を見て」としか言われない場合は、定時の健康状態報告をしないという方法もあると思います。看護師が来るまで内線電話にも出ないようにします。
「連絡が取れなくなっているので、看護師に確認に行ってほしい」と家族や友人から施設に電話してもらうのも手です。
助け合える仲間を作っておく
具合が悪い時に、検査してくれる病院を探したり、入所準備をしたりすることはとても大変です。家族も感染していたり、濃厚接触者となって身動きが取れなくなっている可能性もあります。
感染を隠さず、連絡を取り合える人の存在は本当にありがたいです。不自由でストレスの多いホテル生活で、愚痴が言える相手は貴重な存在です。連絡を取り合うことは健康観察の補助にもなります。ホテルでは健康観察があるといっても1日にたった2回です。
電話やメールでも良いですが、顔色や表情の分かるビデオ通話は更に良いと思います。ホテルで配布される資料もメールで送り情報共有しておくと良いです。
かかりつけ医を持ち、コミュニケーションを取っておく
健康な方は予防接種や健康診断などの機会を使って、かかりつけ医を探すことをお勧めします。
私はホテルに入った日に主治医にメールで状況を伝えました。「困った時にはいつでも連絡していいよ」と、言われていたからです。療養中は疑問にもすぐ答えてもらった上に、応援メールまでいただきました。
主治医とは長年の付き合いで、電話であってもしっかり状態が把握されている安心感がありました。そこは一度も顔を合わせることのない、信頼関係のないホテルの医療者とは全然違いました。
ヘルスリテラシーを身につける
健康情報を入手し、理解し、評価し、活用する能力のことをヘルスリテラシーといいます。私は難病の疑いで様々な情報に振り回され悩んだことがあります。その時、ヘルスリテラシーというものを知り学びました。時間はかかると思いますが、健康や生死について考える良い機会になるでしょう。
(参考サイト 健康を決める力 https://www.healthliteracy.jp )
ホテル療養を体験した障害者のホンネ
ホテルに入ればお金もかからず最低限の生活ができます。家庭内感染も防げます。自宅療養より安心だと感じる方もいるでしょう。
ホテルでも自宅でも、重症化を早期に発見できるよう、血液検査やレントゲンなどの医療を提供してほしいです。また、希望する障害者がホテルを利用できるよう、バリアフリールームの確保や生活のサポート体制を整えてほしいです。
もし、もう一度コロナになったら、私は入院できなければ自宅療養を選びます。主治医はコロナ患者の依頼に応じ、往診をしたり、夜間にクリニックで検査をしたりしているからです。クリニックは徒歩3分の場所にあり、ホテルよりずっと安心です!
参考サイト
最後に神奈川県のホテル療養者の死亡事件関連の報道資料と、航空会社のスカイマーク株式会社の佐山会長の闘病記をご紹介します。入院された方の検査や酸素飽和度のチェックの頻度、医師の迅速な対応の様子がわかると思います。
県の宿泊療養施設における入所者の死亡について(第2報)
https://www.pref.kanagawa.jp/docs/ga4/prs/r9209324.html
神奈川県が運営する宿泊療養施設で発生した療養者死亡事案に関する報告書(中間報告)
https://www.pref.kanagawa.jp/documents/71631/20210205_tyukanhoukoku.pdf
スカイマーク佐山会長に聞く「全コロナ闘病記録」と そこから見えたこと
https://www.businessinsider.jp/post-229155
鈴木弘美
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