NPO法人 日本障害者アイデア協会の本郷です。
当協会はバリアフリーアイデアに関する研究および情報発信を行っている団体です。
「夢の国」といったら、ほとんどの方があのテーマーパークを思い浮かべるかと思います。
そう。
ディズニーランドです。
そこで今回は、ディズニーランドが採用している夢の国のイメージを壊さないアイデアとバリアフリーのアイデアについて、2つの事例を紹介します。
このアイデアは、ディズニーランドだけでなく、皆さまの仕事で役立つ「おもてなし術」として応用できるので、是非ご一読ください。
お好きなところからお読みください
ディズニーランドは「アイデアの王国」でもある
年齢に関係なく楽しめる夢の王国「ディズニーランド」。
この夢の王国ディズニーランドは、実は「アイデアの王国」でもあります。
その中でも仕事にも役立てることができる2つの事例を紹介していきます。
2つの事例
- 夢を壊さない時計と鏡の秘密
- 行列待ちを回避するバリアフリーアイデア
上記について1つずつ説明していきます!
ディズニーランドの時計と鏡のお話
ディズニーランドにはこんな噂があります。
ディズニーランドには「時計」がない。
ディズニーランドには「鏡」がない。
本当でしょうか?
時計や鏡がないと困るからです。
しかし、ディズニーランドでは、時計を極力目立たないよう周囲の雰囲気に溶け込むようにしています。鏡も極力その数を少なくしているそうです。
そこでクイズです。
なぜディズニーランドでは、時計や鏡を目立たなくしているのでしょうか?
(少し考えてみて下さい)
…
…
…
夢の国を壊さないアイデア
「お客様を夢の世界に誘う。お客様を現実に引き戻さない工夫・アイデア」なのです。
どういうことかと言いますと。。。人は、時計や鏡を見ると、現実を思い出す習性があるのだそうです。
現実を忘れて「夢の王国」を楽しんでいる人が、ふと時計や鏡を見ると、現実を思い出してしまう。
- ふと時計を見ると「もう帰らないと…」
- ふと鏡を見ると「帰ったら宿題やらなきゃ」「明日は大事な会議がある。緊張するなぁ。」
そんな風に考えてしまう習性が人にはあります。
せっかく夢の国で現実を忘れて楽しんでいるお客様を、現実の世界に引き戻してはいけない。思いっきり楽しんでほしい。そんな配慮からディズニーランドは時計や鏡を極力目立たないようにしている。
考え抜かれたプロ根性を感じさせる素晴らしいアイデアです。
そんな、夢とアイデアの王国「ディズニーランド」…実は、バリアフリーのアイデアも素晴らしいのです。
次は、ディズニーが採用するバリアフリーアイデアを紹介します。
障害当事者の行列待ち負担を軽減するバリアフリーアイデア
ディズニーランドに限らず、テーマパークの人気アトラクションには、ながーい行列ができます。
心身に障害のある人なら尚更です。
そこで、行列に並ぶことに関し、障害のある人に対してはある程度の配慮が必要となります。
しかし、その一方で、障害のある人に過度な配慮を行うと、悪平等になってしまい(健常者の利益を大きく損ねてしまい)、トラブルの原因になります。
そこで、2つ目のクイズです。
ディズニーランドでは、そのようなトラブルが生じない配慮を障害のある人達に提供しています。
健常者の利益を大きく損なわない範囲でありながら、障害のある人達に喜ばれる、非常にバランスの取れた配慮措置です。
さて、その配慮とはどのようなものなのでしょうか?
(少し考えてみて下さい)
…
…
…
・障害のある人であっても、健常者と「同じ時間」待たなければならない。
・しかし、その一方で、障害のある人は行列に並ぶ必要がない。屋内や広いスペースなど、心身が休まる別の場所でゆっくり待つことができる。待ち時間が経過してそのアトラクションに出向くと、すぐにアトラクションに乗ることができる。
という配慮措置です。
私はこれを初めて知ったとき感激しました。
「他の人と同じ時間待つ」ことで公平性を確保し、その一方で、行列に並ぶ苦痛を取り除いてくれる…素晴らしいアイデアです。
実際にどんな配慮(サービス)なのか?
ディズニーランドに行き、障害があることを告げると障害者パスのようなもの(正確な名称が分かりません。ごめんなさい。)をもらうことができます。
アトラクションの行列の最後尾に行き、そのパスをスタッフの方に見せると、
「いまは1時間待ちなので、1時間後に再度お越し下さい」と告げられ、スタッフの方がそのパスに時間を記入してくれます。
その後、我々は他の場所で待ち、1時間経過後にそのアトラクションのところに行ってパスをスタッフの方に見せると、優先的にそのアトラクションに乗せてくれます。
◆動画解説はコチラ↓
悪平等の弊害
障害がある人が、何から何まで優遇されるべきであるとは思いません。
もちろん、生活する上での様々な配慮措置は必要ですが、テーマパークのような誰もが平等に楽しむべき施設で、障害のある人達に過度の配慮を行うと、健常者との間で悪平等になってしまいます。
それにより、バリアフリーへの反感が生まれ、バリアフリーへの理解が一向に進まなくなってしまうからです。
このサービス(配慮措置)を実際に利用した感想
私の息子は重度の知的障害を持っています。
息子とディズニーランドなどのテーマパークを訪れ、何度も行列に並びました。
長い時間行列に並んでいると、次第に息子は落ち着きがなくなり、私は前後に並んでいる他の人に迷惑をかけないかヒヤヒヤします。
現実的で役立つアイデアだと実感します。
障害者割引よりもアイデア溢れる配慮を
最近、ディズニーランドが障害者割引を採用するとの報道がありました。
確かに、障害者割引はありがたいです。しかし、それよりも「周囲の人に、息子が迷惑をかけないかヒヤヒヤする必要がない。」というこのアイデアが本当にありがたいと思うのです。
ディズニーランドへのお願い
ディズニーのこの配慮は非常に優れていてありがたいのですが、1つ欠点があります。
それは、
行列に並んでいた人達と「同じ時間」ちゃんと待っていたことを、行列に並んでいた人達が知らない。
という点です。
私はこのサービスを何度も利用したことがあります。このサービスのお陰で、行列で長時間待つ負担がなくなりました。息子と一緒に別の場所で待ち、待ち時間経過後はすぐにアトラクションに乗ることができ助かります。
しかし、ちょっと困るのが、アトラクションに乗る際「横入り」のような感じでアトラクションに乗り込むことです。
行列に並んでいる人をスタッフの方が制止して、我々が横入りのような形で乗り込むのです。
「あれ?」
という表情で見られてしまい、少し気まずくなります。
SNSでも同じような意見の人が
このことをTwitterで投稿したところ、同じような経験のある人から以下のご意見を頂きました。
ディズニーのこの制度、利用したことがあります。
聴覚過敏のため、屋外の静かなところで座って待っていました。
でもわたしが利用したときは、この制度の認知度があまり高くなくて、同じアトラクションに乗車する方々ににらまれたこともあったので、苦い思い出になりました…。 https://t.co/JuqFPT0h5r
— ASDものくろ🌈求ム語学力 (@asdadhdmono96) June 23, 2020
この方の場合は睨まれてしまい、苦い経験になってしまったようです。
なので、「同じ時間ちゃんと待っていた」ということを何らかの形で周知してもらえると非常にありがたいのです。
あまり贅沢はいえませんけどね。。。(^o^;)
バリアフリー目線によるおもてなし術
これから本格化する「超」高齢化社会。心身に障害を持つ人は増える一方です。
今後、あなたが仕事をしている際に(例えば、あなたのお店に行列ができた際に)高齢の方や障害のある人を待たせてしまうこともあると思います。
それは、
「待ち時間が30分くらいなので、ベンチなどで休憩して30分後に起こし下さい。」
などと声をかけ、整理券のようなものをお渡しすると良いかもしれません。
高齢化の時代、そんな「おもてなし術」が他店との差別化を生みます。あなたのお店が長く愛される1つの要因になるかもしれません。
ディズニーのこのホスピタリティ精神が社会全体に広まれば、誰もが暮らしやすい社会に大きく一歩前進します。
皆さまに、ディズニーのこのホスピタリティ精神を参考にして頂ければ、私はとても嬉しいです。
リンク
(1)当協会のブログでは、このようなバリアフリーに関するアイデアを多数紹介しています。こちらもぜひ参考にしてください。
【企業利益につながるバリアフリーアイデア&ユニバーサルデザインアイデア】
(2)今回の記事に関連するブログ記事
ディズニーランドのバリアフリーアイデア 〜障害者の行列待ち負担を軽減する配慮〜
最新記事 by 本郷隆之 (全て見る)
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