「Harvard Business Review」2017年11月号、『「出る杭」を伸ばす組織』の特集にて、自閉症やADHDなどの人材を活かす先進企業の事例が紹介されていました。世界の先進企業では、自閉症やADHDの方たちの才能を活かして、どのように仕事を進めているのでしょうか?
ここではまず、その中で重要なキーワードとなってくる「ニューロダイバーシティ(脳の多様性)」とは何なのか?ということをご紹介します。そして、世界の先進企業が、なぜ非定型発達者たちの雇用を積極的にしているのか?実際に雇用したらどのような結果がもたらされたのか?をご紹介していきます。
日本では、障害者雇用の水増しの問題などもあり、まだまだ障害者雇用に関しては、発展途上国といっても過言ではありません。ですが、その分、チャンスがあるということでもあります。世界の先進国の事例を知って、ぜひ障害者雇用、自閉症やADHDなどの方たちの才能を活かすことの参考にしていただければと思います。
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ニューロダイバーシティ(脳の多様性)とは?
まず、重要なキーワードとなってくる「ニューロダイバーシティ」について説明していきます。ニューロダイバーシティとは、「脳の多様性」と訳されます。つまり、幅広い性質の異なる脳の状況ということになります。
もっと具体的に例を出しますと、
- 自閉症
- ADHD
- 統合運動障害
- 失語症
- 計算障害
などがそれに含まれます。これは、「非定型発達者」と言うときもあります。ニューロダイバーシティと言われる人たちは、人よりもある才能が特化しすぎている場合が多いので、「普通じゃない」と思われることが多いです。
研究でも自閉症や失読症などの障害は、パターン認識、記憶、数字といった分野の特殊な能力と表裏一体である可能性が高いことがわかっています。(そもそも「普通」とは、大多数の人がそうであると思っていることなので、普通である必要はないと思いますが、それに関しては、話がそれますので割愛します。)
しかし、ニューロダイバーシティという考え方には、そもそも障害というマイナス的な要素で見ているのではなく、一種の才能として見ています。あくまでも脳の状況が違うので、治療を行う必要はないという考え方があります。むしろ、支援者や周囲の人たちによる
- 少しの支援
- 協力
- 理解
があれば、才能が開花されるケースが多いです。実際にニューロダイバーシティの考えを大切にしている方たちの多くは、「脳の多様性の人材が必要とすることは、治療ではなく適切な支援や受容だ!」という認識を持っています。
ニューロダイバーシティは可能性を秘めている
ニューロダイバーシティという概念を持った人たちは、この多様な脳を、人類の能力の可能性として見ているのです。この概念のもとでは、障害のある人という認識ではなく、極端に能力が高いために、いわゆる「普通」ではない人たちを指します。
ある能力が尖っているので、今回ご紹介する『Harvard Business Review』の事例のように、「出る杭」と表現するのもわかりやすいかもしれませんね。多様な脳の人たちの思考によって、この世は進化したり、科学が進歩したり、創造的な芸術が生まれてきます。今まで見えてこなかった・イメージできてなかった世界が広がるのです。
その際に、有名な高須院長も「その時代に理解されない人が天才になる」とおっしゃっており、いかに人と違ったアイデア・考えを拾えるかどうかがキーになってきます。
『Harvard Business Review』で紹介されていた、世界の先進企業がそのニューロダイバーシティ(脳の多様性)をうまく活用した事例を今回はお伝えしていきます。
ニューロダイバーシティを活用した先進企業の事例
世界の先進企業では、上記でお伝えした「ニューロダイバーシティ」という考えが広まっており、必要な配慮や支援をして、非定型発達者が活躍できる場が増やす活動が増えてきております。例えば、一部を紹介すると
- SAP
- ヒューレット・パッカード
- マイクロソフト
- フォード・モーター
- IBM
- JPモルガン
などの誰もが知っているような世界的企業が初期ないし、試行段階の取り組みを進めています。大手企業で先陣をきったSAPでさえ、まだ開始から4年しか経ってないですが、会社の名声だけでなく、それを遥かに超える成果がすでに得られているとのことです。例えば、
- 生産性
- 品質
- 革新性の向上
- 広範囲に渡る従業員関与の増大
といったところです。では、実際に先進企業がどのようにニューロダイバーシティの活動をしているのかの事例を紹介していきます。
SAPのケース
まず最初に、ヨーロッパ最大級のソフトウェア会社である「SAP」の事例を見ていきましょう。SAPでは、自閉症の方々を積極的に雇用するという方針を打ち出しております。応募してきた人の中には、
- 生物統計学
- 電気工学
- 文化人類学の修士
- コンピュータ科学
- 応用数学
- 経済統計学
- 電気工学
など成績が優秀で賞などの受賞歴がある人材が多数発掘されました。このような自閉症者が実際に仕事に入ったら実力を発揮し、今までにない成果を上げる人も多かったという結果になりました。
さらに、SAPだけではありません。パソコンで有名なHPE(ヒューレット・パッカード・エンタープライズ)は、上記の施策を通して、脳の多様性を持った人材たちがいるテスターチームを構成しました。
その結果、テスターチームの生産性が他のチームより30%も高い結果が出たのです。次にもう1つ事例を紹介しましょう。
オーストラリア防衛省のケース
もう1つの事例は、オーストラリアの防衛省。オーストラリアの防衛省は現在、脳の多様性を持った人材をサイバーセキュリティ分野に活かす施策をHPEと共同で立案しております。
この施策の参加者は、優れたパターン認識力を活かしてコンピュータのログなど雑多なデータから侵入や攻撃の釣行を探るような業務を遂行することになると言われております。
自閉症の方々がいるグループでは、他のグループでは見抜けないパターンを認識することがすでにわかっています。障害者の特化した才能の1例ですが、動画がありましたので、ご紹介します。
【発達障害者の驚異的な絵の才能】
今回は、先進企業の事例のみを紹介しましたが、
と思う方も多いでしょう。そこで、別の記事では実際にどのように自閉症やADHDなどの非定型発達者の人材を活用しているのかをご紹介したいと思います。
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編集後記
いかがでしたでしょうか?
日本では、障害者雇用に関しては、まだまだ先進国と言うことはできないですが、世界の先進企業が非定型発達者の人材をうまく活用する「ニューロダイバーシティ(脳の多様性)」という概念が広まってきています。
今回の事例のように、個々人の能力を最大限に発揮するために、脳の多様性を持った人材を支援する動きは、今後ますます広まっていくかと思います。この流れにいち早く乗っておくといいでしょう。
日本は、ノウハウ・考えも含め障害者雇用の環境が整っていないのです。いち早く、このような事例を参考にして、自社に取り入れることにより、日本における障害者雇用の先進企業となる可能性を秘めています。
彼らの才能をうまく見出して、それを最大限に発揮させることができれば、今までにないイノベーションが生まれるのではないでしょうか?ぜひ先進企業の事例をもとに、日本でも障害者雇用の先駆者として、発展していただければ幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。あなたのご意見や感想などもぜひお聞かせいただけますと幸いです。
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日野信輔
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