「支援される側」から「支援する側」へ|積極的障がい者雇用のススメ
【連載3回目】「障がい者が企業の戦力的なパートナーになる」というと、驚く方がまだまだ少なくありません。本連載では、福岡で障がい者メンバーとチームを組んでITを活用した仕事を続ける就労継続支援A型事業所「カムラック」を運営する賀村さんの書籍『日本一元気な現場から学ぶ 積極的障がい者雇用のススメ』から、障がい者とのパートナーシップの実践をお伝えします。
本連載は書籍『日本一元気な現場から学ぶ 積極的障がい者雇用のススメ』(著:賀村研/2016年9月発行)の一部を抜粋・再編集し収録しています。
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企業が障がい者を雇用するメリットとは
今回は雇用する側の企業担当者の方に知っておいていただきたい「障がい者雇用のススメ」についてお話します。
障がい者雇用は、「法定雇用率を守るためにするもの」ではありません。企業が障がい者を雇用することには、企業にとっての大きなメリットがあるものなのです。もっとも大きなメリットは、障がい者雇用を実現することでCSRを重視している企業であることを内外に訴求しながら、働く戦力を得られることです。実際に、ダイバーシティを謳い多様な人材を雇用している企業は、今大きな注目を集めています。
これまでこの連載では、企業と障がい者がお互いのことを知ることで、障がい者雇用が有益なものとなると述べてきました。
しかし、「どのように障がい者のことを知ればよいかわからない」という戸惑いもあるかもしれません。
まず、障がい者就労支援施設と協働する機会を持つとよいでしょう。協働するにも「業務を発注すること」や「障がい者就労支援施設と提携している企業と取引を行う」などいくつかのパターンがあります。
企業が障がい者のことを知る術とは?
最近カムラックでは、企業と人材の交流を行っています。近年、精神疾患で体調を崩す方が増えています。いったん快方に向かって職場に復帰しても、またぶり返してしまう方も少なくありません。
こうした社員を雇用している企業から、「一時的にカムラックで働かせてほしい」という要望をいただいたのです。優秀な社員に企業はそう簡単に辞めてほしくはありません。そこで、環境を変えて本人の症状に合わせた形で働けるよう模索しています。その選択肢の一つが、カムラックだったのです。
当然のことながら、カムラックには福祉の専門家が常駐しています。不安なことがあれば相談ができますし、症状を診る専門知識も兼ね備えている。そこで、一時的にカムラックで働いていただき、リズムができたり本人に働く自信が取り戻せたりしたら、会社に戻っていけるようにしているのです。
企業と障がい者就労支援施設の間にこうした関係性を築くことができれば、体調が優れない社員が出た場合の相談役としても機能できるでしょう。
また、企業の一部メンバーが障がい者就労支援施設で障がい者とともに働いてみるというのも一つの手です。もちろん障がい者と接する上での最低限のルールを踏まえてということになりますが「障がい者のことをもっと知りたいので、席を並べて働かせてほしい」と伝えれば扉を開く事業所も少なくないはずです。
社員全員を受け入れてもらうことは難しいでしょうから、雇用する障がい者のOJT担当者やチームリーダーなどが体験してみるとよいのではないでしょうか。
雇用した障がい者には企業としての要望を伝えよう
企業が障がい者に歩み寄るだけでは、障がい者雇用においては十分ではありません。障がい者に企業のことを知ってもらうことも重要です。
「法定雇用率で定められているから」「上司に障がい者を雇うようにいわれたから」といった理由で障がい者を雇用すると、障がい者を「お客様のように扱う」状況からは抜け出せません。これでは、企業にとっても障がい者にとってもマイナスしかありません。
企業がしなければいけないことは、障がい者を「戦力になる」と捉えて雇用することです。それには、新入社員の採用と同じように障がい者を雇用する必要があります。「伸びしろ」に期待して、力を伸ばすにはどうしたらよいかを考え、ステップアップさせていく計画を立てるのです。
「障がい者だからこの程度の仕事」と決めつけるのはなく、本人のスキルを推し量り、希望も鑑みて、仕事にトライさせていきましょう。「会社としては、こういう仕事をできるようになってほしい」ということを伝えていくことが重要です。
もちろん障がい者にとっては、ストレッチが必要な目標もあるでしょう。しかし、そこは新入社員と同じ。周囲が適切な職能支援をして、スキルを伸ばしていきます。
もちろん、症状について不安を抱いた際には、医療機関などと連携して、極端に無理をさせることは避けなければなりません。そのため、障がい者が気兼ねなしに、精神状態や健康状態について相談できる人材をそばに置く配慮が欠かせないのです。
そして、障がい者を雇用する際には、企業が求めるレベルを達成することができるのか、達成するためにいかに努力ができるのかを面談で探る必要があります。企業としての合格ラインを設けることで、障がい者にとっても明確な目標ができます。
具体的にパソコンスキルを身につけるために努力をしたり、本を読んで専門知識を身につけようとしたりすることができるのです。一般就労を目指して努力を重ねることが、結果として障がい者を自立へ導くことにつながります。
(次回に続く)
本連載シリーズの記事一覧はこちら。
「支援される側」から「支援する側」へ|積極的障がい者雇用のススメ
障害者雇用は経営課題だった! 失敗事例から学ぶ、障害者の活躍セオリー (NextPublishing)
提供:企業が知っておきたい「積極的障がい者雇用のススメ・障がい者を知り共働する方法」(連載3回)(biblion)
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