ウェブ上のバリアフリーである「ウェブアクセシビリティ」。
このウェブアクセシビリティが法律で民間も義務化されるとも言われておりますが、厳密にいいますと「合理的配慮が義務化になる」ということになります。
もともと公的機関に対して義務化された取り組みだったウェブアクセシビリティですが、2021年に改正された法律によってどう変わるのか。
どのような義務が生じるのかを、今回は記事にさせていただきますので、今後の方針の参考にしていただければ幸いです。
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合理的配慮が義務化されたのはいつ?
令和3年5月に障害者差別解消法が改正されたことで、公布日である2021年6月4日から起算して3年以内に、民間企業でも義務化されることとなりました。
これまでは障害者が他の人と平等に生活できるようにする、いわゆる合理的配慮という法的義務は国や自治体のみに対するもので企業においては努力義務だったんです。
もちろんこれは、ウェブ上にも適用されるので、ウェブアクセシビリティも関わってきますが、ウェブアクセシビリティが義務化になるという訳ではございません。
例えば、画像のaltが入ってなくて、視覚障害がある方がその内容を聞くのは合理的配慮にあたります。
でも、これを「サイト自体の内容が把握できないからウェブアクセシビリティの対応してください」というのは、多大な予算がかかることもあり、過重な負担の要望となるからです。
なぜ法的義務なの?
ではなぜ、今までは努力義務だったのになぜ法的義務になったのでしょう?
1つは、2019年度のダボス会議で発足した世界最大規模の企業ネットワーク組織「TheValuable 500」。
ここの取締役会のアジェンダに障害に関する内容が盛り込まれもあり、障害やインクルージョンに関連した活動を行うことに合意した企業が署名されています。
また、東京オリンピック・パラリンピックが開催されたことや、2025年の大阪・関西万博が開催されることによるダイバーシティ&インクルージョンの高まりも影響があるでしょう。
※ダイバーシティ&インクルージョンとは、性別、年齢、障がい、国籍、ライフスタイル、職歴、価値観など、それぞれの個を尊重し、認め合い良いところを活かすことを言います。
そもそも、障害者差別解消法は2013年6月に制定されました。
2020年の東京パラリンピックが決まったのは2013年9月でしたので、関連はあるんじゃないかなと推測してます。
障害者差別解消法は2分類ある
改正以前からですが、障害者差別解消法では差別の解消措置として差別的取扱いの禁止と合理的配慮の不提供の禁止の2つに分類されています。
「差別的取扱いの禁止」に関しては、改正以前より国や地方公共団体、民間事業者など共に法的義務として定められていました。
でも、「合理的配慮の不提供の禁止」は民間事業者にとって努力義務だったわけです。
なぜでしょう?
それは、事業における障害者との関係が状況などによって様々で、求められる配慮の内容・程度も多種多様であるからです。
しかし、先述したダボス会議や、パラリンピック・大阪万博が背中を押して、こうしてより良い未来のために改正されたのでしょう。
合理的配慮は何のために必要なの?
そもそも、合理的配慮ってなんぞ?
と、思われる方もいるかも知れないですね。
合理的配慮は、社会的障壁によって生まれた不平等を少しでも埋めるためのもの。
例えば、車いす利用者が入口にスロープがなかった場合、その方はどんなに良いお店だな。入ってみたいなと思っても、入店できません。
目の不自由な方が、お店に入って食事をしたくてもメニューに点字がなければお店の方に聞かなければなりません。
社交的な方だったら朝飯前かも知れませんが、内向的な性格な方はちょっと聞きにくいですよね。
こうした背景から、障壁を作っているのは業者側だという考えも出来るのです。
それを取り除いていこうねというのが、障害者差別解消法であり、合理的配慮なのです。
そして、それをウェブ上でも行いましょうというのが、ウェブアクセシビリティなんです!
▼参考記事▼
合理的配慮はわがまま?障がい者が配慮を求めやすくなる3つの心構え
合理的配慮を提供する側は何をしたらいいの?
では、合理的配慮って実際どうしたら良いの?って思いますよね。
うち、飲食店やってるんだけど絶対に点字付けなきゃいけないのかな?
店のウェブサイトがあるけど、すぐに何か対策しなきゃダメ?
そう思ってしまいますよね。
でも、絶対に今すぐにそうしろというわけではないようなんです。
障害者側からなんらかの配慮を求められた場合、それを取り除く義務が生じるよということなのです。
というのも、実は、国が発表している過重な負担の基本的な考え方というものがあるから。
過重な負担の基本的な考え方
(2)過重な負担の基本的な考え方
過重な負担については、行政機関等及び事業者において、個別の事案ごとに、以下の要素等を考慮し、具体的場面や状況に応じて総合的・客観的に判断することが必要である。
行政機関等及び事業者は、過重な負担に当たると判断した場合は、障害者にその理由を説明するものとし、理解を得るよう努めることが望ましい。
- 事務・事業への影響の程度(事務・事業の目的・内容・機能を損なうか否か)
- 実現可能性の程度(物理的・技術的制約、人的・体制上の制約)
- 費用・負担の程度
- 事務・事業規模
- 財政・財務状況
ですので、先程お伝えしたようにウェブアクセシビリティを整えること自体が義務化されるという訳ではないのです。
具体的には?
過度な負担がない範囲でと言われても、じゃあ実際何をしたらいいの?と思われるかもしれません。
私だって、実際じゃあやってくださいと言われても、どんな範囲で行えばいいのか迷ってしまいます。
例えば、車いすの方がいてお店のハンバーグを食べたいんだけど階段があって入れない。
でも、今すぐに階段を取り除いてスロープを付けるなんて無理ですよね?
スロープを付けるのにもお金がいるし、工事も必要。時間がかかってしまう。
そんな時は、お客様にテイクアウトを提案するといったイメージです。
一時的にでもハンバーグを食べたいという要望に応え、その後お金が溜まったり、工事をする日程が調節出来たらすればいいのです。
そうすれば義務違反にはならないし、要望にも応えられる。要望の裏にある、お店に入って食べたいという真の願いにも時間はかかっても応えることができるわけです。
違反した場合の罰則は?
では、もしも違反してしまったら罰則はあるのでしょうか?
実は、現状では罰則に関する見直しはまだ内閣府から発表されていません。
改正前における罰則規定は定められていますが、改定後の罰則規定は今のところ発表されていないのが現状です。
ちなみに改定前の罰則規定は、このように定めらています。↓
民間事業者などによる違反があった場合に、ただちに罰則を課すことはしていません。
ただし、同一の民間事業者によって繰り返し障害のある方の権利利益の侵害に当たるような差別が行われ、自主的な改善が期待できない場合などには、その民間事業者が行う事業を担当している大臣が、民間事業者に対して報告を求めることができることにしており、この求めに対して、虚偽の報告をしたり、報告を怠ったりしたような場合には、罰則(20万円以下の過料)の対象となります。
ウェブアクセシビリティの義務化ではない
ウェブアクセシビリティの観点から合理的配慮の義務化に関して少し書かせて頂きましたが。。。
お店ならお店で、公共機関なら、公共機関で。
ウェブならウェブで。
みんなが閲覧したり、共有したり、みんなで美味しいものが食べれらたら良いねという指標が、これまでは努力義務だったけれど、これからはみんなで目指して行きましょう。そういう方針になったのだということでしょうか。
これからのより良い未来のために変わっていく法改正なら、快く受け止められますね。
ウェブアクセシビリティ特化型のウェブ制作
ウェルサーチでは、企業と一緒に障害者就労の社会課題を解決するために、SDGsに特化したウェブ制作をしております。
多くのウェブアクセシビリティ構築では、決められた基準に合わせるもので、当事者の使い勝手のテストはしておりません。
障害当事者だからこそ気づくことができる、ウェブ上の使いにくさを当事者たちが診断し、誰にとっても見やすく・使いやすく・売上に繋がるものを制作いたします。
それが障害当事者たちの新たな仕事にもなります。
ウェブアクセシビリティを整えて、一緒に社会課題を解決しながら、収益をあげる活動をしていければ幸いです。
ウェルサーチ 障害者・編集チーム
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