2018年4月に障害者雇用促進法が改正されましたが、障害者雇用の問題は未だに多く、障害者法定雇用率の達成率も50%前後をさまよっているような現状です。
実際にウェルサーチでも、「障害者を雇いたい気持ちもあるけど、最初はやっぱり不安です…」というご相談もいただきます。そんな中、事業主として気になることの1つが、
ということです。結論から言いますと、障害者雇用の場合、最低賃金の適用を除外することができるケースがあるのです。ただし、条件や注意点もあるので、障害者雇用を考えている方は、知っておくべき内容があります。
そこで今回は、障害者の最低賃金について、まとめてみました。障害者雇用の制度をうまく活用し、雇用主も障害当事者も働きやすい環境を作るために、ぜひ参考にしていただければと思います。
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障害者雇用で最低賃金を除外できるってホント?
雇用をされている事業主の方にとっては、周知の事実かと思いますが、まず現状の日本には「最低賃金制度」というのがあります。これは、「最低賃金法」に基づいて、国が賃金の最低額を定めています。
そして、事業主はその最低額以上の賃金を労働者に支払わなくてはならないといった制度のことです。この最低賃金には、2つあります。
2つの最低賃金とは?
最低賃金には2つあるとお伝えしましたが、
- 各都道府県に1つずつ定められた「地域別最低賃金」
- 特定の産業に従事する労働者を対象に定められた「特定(産業別)最低賃金」
の2種類となっております。
「特定(産業別)最低賃金」は「地域別最低賃金」よりも高い金額水準で定められています。つまり、関係性を見ると特定>地域ということですね。
ちなみに、地域別と特定(産業別)の2つの最低賃金が同時に適用される労働者には、高い方の最低賃金額以上の賃金を支払う必要があります。対象となるのは、毎月支払われる賃金です。なので、
- 賞与(ボーナス)
- 時間外勤務手当(残業)
- 通勤手当(交通費)
などは対象外となっております。
では、ここで本題。障害者雇用の場合、最低賃金の適用を除外することができるのか?冒頭でも結論はお伝えしましたが、答えは、
です。これは実際に雇用をされている事業主の方にとっては、驚くべき事実かと思います。ただ、どの障害者にも適用できるというわけではなく、条件があったり、申請が必要などありますので、そこら辺を詳しく見てみましょう。
障害者雇用で最低賃金の適用除外をするには?
上記でお伝えした通り、現状の日本では、障害者雇用では最低賃金の適用を除外することができるようになってます。では、どういった場合に、最低賃金の適用を除外できるのでしょうか?
それは、最低賃金を一律に適用してしまうと、逆に雇用の機会を狭めてしまうケースだと「都道府県労働局長」が認めたら、最低賃金を適用除外することができます。
と思うかもしれません。例えば、一般労働者よりも著しく労働能力が低いケースです。このような場合に、最低賃金を一律に適用してしまうと、逆に雇用機会が狭まってしまう可能性が出てきます。
ただ、誰でもかんでもそれが適用されるということではなく、条件があります。その条件とは、厚生労働省の「最低賃金の適用される労働者の範囲」では、以下の5つとなっています。
- 精神又は身体の障害により著しく労働能力の低い方
- 試用期間中の方
- 基礎的な技能等を内容とする認定職業訓練を受けている方のうち厚生労働省令で定める方
- 軽易な業務に従事する方
- 断続的労働に従事する方
これらのいずれかに当てはまる労働者については、都道府県労働局長の許可を受ければ、個別に最低賃金の減額の特例が認められています。では、特例が認められたら、どのようにして賃金が決められるのか?
それは、業務内容や労働者の能力などによって、賃金が決められます。ちなみに、企業側が求めている労働ができると判断された場合、障害者でも一般労働者と同じ賃金で働くこともできます。
手続きの方法
最低賃金の減額の特例許可申請書2通を作成してから、お近くの労働基準監督署経由で都道府県労働基準局長に申請する流れとなっております。ちなみに、申請の際に必要な「最低賃金の減額の特例許可申請書様式」は以下からダウンロードできます。
障害者雇用では全員適用できる?
障害者だからといって、誰しもが最低賃金の減額の特例許可を受けられるということではないです。あくまでも都道府県労働局長の許可を受けて、「個別に」最低賃金の減額の特例が認められます。
また、この特例は、ずっと効力があるわけではありません。有効期間が定められており、対象の労働者が期間内に労働能力の向上が見られない場合は、この特例を延長することとなります。
その場合には、有効期間内にもう1度、許可申請をする必要があります。また、許可の期間中に最低賃金が改訂されるケースもありますので、その場合には、改訂された率に応じて、賃金も調整する必要があります。
このことも注意点として、頭にいれておいてください。
【障害者雇用の現状】
編集後記
いかがでしたでしょうか?障害者雇用の現場にもいろいろな問題が出てくるかと思いますが、最低賃金の適用を除外することもできます。新たな取り組みをするときは、いろいろと知識が必要になってきますが、知っているか知らないかだけで、選択肢がかなり変わってきますからね。少しでも参考になれば幸いです。
障害者雇用の制度を知ることによって、企業も障害者を雇いやすい・障害者も就職しやすい環境を雇用主も作ることができ、本当の意味での障害者雇用が普及される流れになることを祈っております。もちろん障害者だけでなく、「誰もが働きやすい職場」がどんどん増えていくことを願ってます。
ちなみに、2018年4月の法定雇用率の変更については、以前の記事で特別支援学校の教員でもある柳澤さんがご紹介されておりますので、詳細を知りたい方は、こちらをご参照ください。
また、障害者雇用についての相談などありましたら、お気軽にお問い合わせからご相談ください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。あなたのご意見や感想などもぜひお聞かせいただけますと幸いです。
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日野信輔
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日野信輔さま
身体障害の者です。大手入社前に部長待遇の約束で入社したのですが、最低賃金のままで昇給もなく、平の社員のままです。会社にずっと履行を求め、会社から対応するする言われ、9年が経ち、婚約者とも経済的に見込みがないので別れました。その間にスポーツ指導、学術的にも身体新理論を発表し、世界の第一人者になりましたが、会社からは無視されており最低賃金のままです。どうしたらいいですか?教えて下さい。
コメントがだいぶ遅くなってしまい申し訳ございません。
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身体障害者になりやっと働く意欲が体を動かそうとしています。これまで建設業の肉体労働でしたが最近のめざましい1Tを使った仕事に興味を持ち気持ちを動かされました❗
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