自立できる障害者を増やしていくため、
- 重度身体障害者
- 福祉、医療従事者
- 家族
- 支援者
のチームで幸福度トップ3のデンマークへ行き、世界トップレベルの福祉を日本へ持ち帰る『ジャパン・ノーマリゼーション・プロジェクト「OTAGAISAMA」』というプロジェクトを株式会社LIFEクリエイト、八ヶ岳環境福祉デザイン室と一緒に企画しております。
今回のデンマーク視察の前から疑問に思っていた「デンマークでは離婚率が50%なのに、なぜ幸福度が高いのか?」の真相に迫ってみました。
現地の人・障害者の方などから聞いた生の感想から出した結論は、「職業や立場・地位など関係なく、自分の環境や今この瞬間を幸せだと感じていた!」ということ。
デンマークでは、どういった文化背景から多くの人が幸せだと感じているのかを、短い時間ながらも濃く感じてきました。
もちろん幸せに感じるかどうかは、学ぶものでもないので、人それぞれです。あくまでも、データとデンマークで体験してきたことをシェアいたします。(横山の主観でできています)
少し長くなってしまいますので、お気に入り登録やブックマークなどに保存して、いつでも見れるようにしておくと、理解が深まるかと思います。
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世界幸福度ランキングでトップクラスを維持しているデンマーク
国際連合の持続可能開発ソリューションネットワークが発行している「世界幸福度報告」というものがあります。これは、いわゆる「幸福度調査のレポート」なのですが、
- GDP
- 平均余命
- 寛大さ
- 社会的支援
- 自由度
- 腐敗度
といった要素を元に幸福度をリサーチしているものとなります。
毎年発表されているのですが、、2019年の国際幸福デーに発表された「世界幸福度ランキング2019」を見てみましょう。(世界156カ国を対象)
- フィンランド
- デンマーク
- ノルウェー
- アイスランド
- オランダ
- スイス
- スウェーデン
- ニュージーランド
- カナダ
- オーストリア
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58. 日本
※すべて英語です
上記のとおり、デンマークの幸福度が高いことは、もちろん知っておりましたが、デンマークへ行く前から私たちが疑問に思っていたことがあります。
ということ。これに関して、実際にデンマークを視察して感じたことをお伝えしていきます。
なぜ離婚率50%なのに幸福度が高いのか?
たまたまOTAGAISAMAのメンバーには、
- 未婚男性
- 既婚男性
- シングルマザー
という構成になっていたので、幸福度1位にもなったデンマークの結婚観に興味を持っていたのです。
デンマーク視察、初日にコーディネーターをしてくださった片岡豊さんのオリエンテーションにて、日本とデンマークの社会保障や文化・背景の違いについて、教えていただきました。
片岡さんは、障害者と健常者が一緒に学び・生活するエグモント・ホイスコーレンの教員(現在は非常勤)でもあります。
片岡さんによるオリエンテーション勉強会の様子
片岡さんプロフィール
1949年東京生まれ。1968年以来、デンマーク在住。国立オーフス大学人文学部思想史学科(学士)&哲学学科・組織倫理(修士)卒。1989年にDSSA(デンマーク社会研究協会)を設立し、デンマークの医療、福祉、教育事情を日本に紹介する活動を行なっている。同時に1997年より障害者と健常者が共同生活をしながら学ぶ成人学校エグモント・ホイスコーレンの教員として教鞭を執る(2014年に定年引退し、現在は非常勤勤務)。
2015年—2017年オープンダイアローグネットワーク・ジャパン(ODNJP)の共同代表、2017年9月以降、NPO法人ダイアローグ実践研究所理事として、北欧におけるダイアローグ実践を日本に紹介する活動を行なっている。
障害者と健常者がともに学び・生活するエグモント・ホイスコーレンについては、こちらで詳しく紹介しております。
デンマークでは結婚しないパートナー家族が多い
デンマークでは、若いときから同棲をすることが一般的で、
- 子供ができたら結婚しようか?
- 子供ができてもこのまま(籍は入れない)でいようか?
といったように話し合うのです。
18歳のときからデンマークに住んでいる片岡さんも、「私もデンマーク人の妻とはパートナー関係。結婚はしていないからね。でも、何十年も一緒にいるし、子供も孫もいる。これは、デンマークでは当たり前だよ!」と、オープンに話してくれました。
その他に、エグモント・ホイスコーレンの若い男性の講師の方にも結婚観を聞くと、「パートナーがいるよ。結婚は子供ができたら考えるよ。」といった答えが返ってきました。
ちなみにですが、エグモント・ホイスコーレンの元校長は3度の離婚を経験しているとのこと。(もちろんこれに関してもオープンでした)
婚姻届も離婚届もネットで完結できちゃう
驚いたことにデンマークでは、婚姻届や離婚届けも、なんとネットで完結できてしまうということ。
結婚していても結婚していなくても、人それぞれ。だから、そのことを個人の評価として見られることはないんです。
財産相続を視野に入れて結婚したり、国際結婚という方法をする人もいます。
つまり、「パートナーと今幸せかどうかが大切」という価値観なのです。だから、結婚しているとか離婚したというのは、問題視していないという文化。
エグモント・ホイスコーレンの全校集会
日本で結婚すると妻としてのメリットが多い
日本の制度を見てみましょう。結婚すると妻として、会社などから
- 扶養家族としてお金がもらえる
- 家賃補助がある
- 結婚お祝い金
- 出産お祝い金
- 医療控除が世帯合算金額
といったようなメリットが多い日本。(もちろん会社によって異なりますが)
また、旦那が万が一、先立ったとしても、残った家族の住む家にもなるから、保険も兼ねて35年ローンで家を買う。
そういったことも含めて、家に入るという習慣が日本にはまだあります。
もちろん、旦那の親の面倒を見たり、母親が専業主婦で子育てをするといったような、昔ながらの妻の仕事の対価として支給される日本の社会構造というのもあるかと思います。
結婚することによって、一家の大黒柱となり、家族を支えているということは、大きな誇りと自信になるのではないのではないでしょうか?
親御さんも喜ぶケースが多いでしょうし、「結婚はまだ?」と周りから言われることもなくなる。
保障などは、会社や地方自治体によっても変わってきます。
デンマークの結婚制度は?
一方、デンマークの結婚制度はどうなっているのかをお伝えします。
デンマークでは、家族ではなく個人に支給される仕組みになっています。だから、書類上の家族であっても、パートナーであっても個人への保障は一緒。
結婚による保障の違い
- 日本
→国や働いている会社から「家庭」にお金などの保障あり - デンマーク
→国から「個人」にお金・社会の保障あり
この大きな差が日本では、家族になることが大きなメリットになるのです。
一方デンマークでは、書類上の契約で個人への法的権利は変わることはないので、契約してもしなくても変わらない。しかも、シングルの親の負担も日本よりは少ない。
こういった背景があり、
- 結婚しても
- 離婚しても
- パートナーで一緒にいても
そんなことを評価されることはないのがデンマーク。
ということが「離婚率50%もあるデンマークで、なぜ幸福度が高いのか?」という疑問のヒントになったのではないかと思います。
ちなみにこの話については、2019年4月1日にデンマークで新離婚法が施行されたのですが、こちらの記事がとても参考になりましたので、載せておきます。
デンマークでは離婚した親へ子供はどう考えるの?
こういったことを聞いてくると、疑問に思ったことがありました。
明確なデータはないとのことですが、視察させていただいた小学校の生徒に質問してみたところ、実の両親と一緒に住んでいる生徒は5人しかいないという驚きの回答が。
残りの子供は、義理の親(新しいパートナー)あるいは、片親とともに過ごしているみたいです。
シングルの親は、1週間ごとに交互に子供の面倒を見るケースもあれば、LGBTの家庭の養子になっているケースもあり、多様な家庭環境になっているとのこと。
もちろんそのことに対して、否定をしないし、社会も受け入れる。
さすがダイアローグ(対話)先進国でもあり、デンマークでは離婚、親権についても子供とも話し合い、子供の意見も尊重されていました。
視察させていただいた小中学校
子供の養育費も日本とは違う
離婚したときに子供に払われる養育費についても日本と違ったので、シェアします。
例えば、子供を養育する人の収入が少ないケースだと、収入が多い方が少ない方へ支払います。でも、デンマークでは1回、市町村を通すのが違うところ。
日本の場合、直接のやりとりなので、支払われないケースや泣き寝入りするケースもあります。でも、市町村が間に入ってくれることで、払いやすいし、もらいやすい仕組みなんだと感じました。
だって、子供の権利だもんね。
デンマークは高負担・高福祉だから幸せなのか?
ここで、デンマークの税金や制度について、さらっと見てみましょう。
デンマークでは、消費税が25%で国民負担率は約70%となっております。つまり、国民からの税金によって、
- 教育費
- 医療費
- 出産費用
- 社会保障費
などを賄っているのです。だから、デンマークでは無料なものや手厚いサービスが多いんです。例えば、
- 医療費が無料
- 出産費が無料
- 義務教育から大学教育までの教育費無料(しかも返済不要の奨学金が多い)
- 残業がほとんどない
- 有給休暇も年間で6週間
- 訪問看護、高齢者や障害者の無料サービスが充実
- 福祉用具も市から必要な数、必要な期間を無料でレンタル可能
といったように、保障がかなり手厚いです。しかも、デンマークのすごいところは、これが無料になるだけじゃないというころなんです。
視察させていただいた福祉用具レンタル
無料だけじゃない手厚い保障
なんと、お金ももらえちゃうんです。
例えば、子供手当があり、18歳以上の学生には最高で月に10万円が支給される。さらに、介護している家族には所得保障があって、国民年金は全員がもらえることができます。
- 年に5週間の有給休暇
- 産休は18週(1年半)
- パートナーは性別関係なく2週間
- 育休も32週間を2人でシェアできる
皆さん!有給休暇取ってますか〜?
デンマークでは、ほぼ100%こういった制度を利用して、プライベートも充実させています。例えば、4週連続で有給休暇を取得して、いろいろな国へ行って、バカンスが普通の暮らしでできちゃうんです。
こういった保障がたくさんあるデンマークですが、いろいろと調べている際に、よく耳にしたことが、
「税金が高いから社会保障、福祉制度も手厚い。でも、それって幸せなのか?」
ということ。この真相について、現地の方の感想や調査をしてきました。
デンマークの現地の人から聞いた実態は?
でもね、デンマークの方はこれをすごいなんて言いませんでした。現地の人に聞いた感想を一部シェアします。
「税金は、お金を一度国に貯金するイメージ。それが私たちに還元されているのよ。だから無料という感覚はないわね。バランスが取れているうちは文句はないわね。」
「デンマークは、俺の金で動いているんだよ!給料の半分を納税してるんだから、政治はみんな自分ごとに考えているよ!」(ちなみにデンマークの投票率は90%です)
給料の約半分を国にひとまず預ける。独身の人も、お子さんがいる人も、介護をしていない家庭の人でも、自分たちが、みんなで子供の成長する環境を整えて、日々の生活を安定・充実させ、老後でも安心できる環境を整えている。
こういった自覚があり、政治関心度の高さには、とても驚きました。
これは幸福度トップクラスの国から参考にできる幸せになるヒントになるのではないでしょうか?
デンマーク第二の首都オーフス
デンマークでは障害者の幸福度も高いのか?
さて、今回のデンマーク視察は、障害者が自立するためのプロジェクトですので、障害者の「幸福度」についても、現地で感じたことをシェアしてきましょう。
デンマークの自立している障害者は幸せなのか?
その要因の1つとなっている障害者が自立していくための参考になるシステムも多いです。
障害者が自立するためのパーソナルアシスタント制度
まず、代表的なのはパーソナルアシスタント制度。これは、障害者が自立するための権利を保障する制度で、特徴としては、
- 障害当事者が雇用主になる
- ヘルパーへの給与は地方自治体が負担
お金の流れ:地方自治体→障害当事者→ヘルパー - ヘルパー資格がない方でも雇用できる
といった制度です。(詳しくは別途、記事でお伝えします)
たとえ、障害者が自立しやすい国だとしても、幸福度が高くても、障害児の親は落ち込むし、不安になります。これは、やっぱり世界共通の親の思いとのこと。
親の会や当事者団体も活発
デンマークでは、親の会や当事者団体もとても活発でした。
国は子どもに障害があってもなくても関係なく、18歳になったら親の育児義務はなく、社会に義務が出てくる。だから、障害者でも自立する流れですし、親が障害児をずっと面倒みることはほとんどないみたいです。
つまり、学校で学んだり、社会へ出て働くといったことに、障害者も健常者も関係ないのです。金銭的・社会的サポートを国がすることによって、自立した生活を過ごしていく。
- シングルの親の子
- 貧困家庭
- 障害児がいる家庭
こういった環境でも関係なく、すべての国民が一定の生活水準がキープできるよう必要な福祉サービスを受けることができるのです。
障害者が働くための制度
デンマークでは、障害者が働くための制度も整ってました。まず障害者が実際に働く前に「判断基準の認定」を行います。これは、どのようなサポートがあれば就労できるかをヒアリングして、判定するのです。
パーソナルアシスタント制度を使って、ヘルパーにサポートしてもらいながら出勤することも可能です。今回、視察させていただいた「Huset Venture」という障害雇用率90%以上の企業でも、介助が必要でないとき(勤務中など)に介助者が待機できる部屋があって、驚きました。
ヘルパーなどが待機する部屋
デンマークでは、週37時間がフルタイムなのですが、フレックスジョブ制度といって、上記の判定で「この人の障害特性では、週●時間まで働ける」と決められ、残りの労働時間分を国が負担する制度があります。
例えば、週20時間の場合。
20時間(働けると認定された時間)+17時間(国が会社へ支給する賃金)=37時間(実質フルタイムでの正規雇用)
つまり、働くのは週20時間だけど、フルタイム分の給料がもらえるということ。
ちなみに、外見では判断できない障害者が多いとおっしゃっていました。フレックスジョブ制度を使うことにより、障害者でも収入が安定するので、生活費だけでなく、休日も娯楽ができたり、週末は大好きなパーティーに行くこともできるのです。
「障害者が自立しやすい制度があったとしても、障害者の悩みは常にあります。健常者だって変わらず悩みはある。時には幸せじゃないときもありますよ。」と、障害当事者の方もおっしゃっていました。
でも、就労や教育に対しての選択肢があるのは、デンマークから参考にできる幸福へのヒントになりますね。
毎週末のパーティー。この日のテーマは、男性が女装・女性が男装をするパーティーでした。
障害当事者の家にもお邪魔させていただきました
今回の視察では、実際に障害当事者で自立をされている方、2名のお家にもお伺いさせていただきました。おふたりとも駅から徒歩圏内で、マンションの共有スペースも静かで
と、声に出してしまったくらいです。
上記は、フレックスジョブ性をと利用して、エグモント・ホイスコーレンの講師をされているミケエルさんのお宅。またパーソナルアシスタント制度も利用されており、23名のヘルパーさんを雇用しながら自立生活をしております。
ミケエルさんのヘルパー。趣味の時間を有効に使いたいので、ミケエルさんのヘルパーとして、働いているとおっしゃっておりました。ちなみに、パーソナルアシスタント制度を使ったヘルパーは、大学生や時間を有効に使いたい人に人気!
日本の障害者の自立生活については、OTAGAISAMAプロジェクト代表の山口さんが、重度身体障害者のぶっちゃけシリーズを公開しておりますので、参考にしてみてください。
人は評価されるものではない!
最後に横山の心を打たれたエピソードを紹介します。
と言った際に、「…?意味がわかんないんですけど…」とまさかの返答で、お互いに「キョトン?」状態。
もう少し話してみると、「デンマークでは、職業によって社会的地位の差はあまりない。」とズバリ。
「人は評価されるものじゃないし、仕事もどれが地位が高くて、どれが地位が低いなんてないよね。だから、地位向上なんて発想にならない。」
また、介護者、医療、教育などは公務員(プロ)として自覚があり、誇り・責任を持って働いています!と堂々とおっしゃっていたのが、胸に響きました!
それと同時に、けっこう混乱もしました。と言いますのも、「社会的地位を得たいからこの職業に就こう!」といった思考は、デンマークにはあまりいないからです。
賃金の格差も少なく、就業時間もほぼ一定です。自分の好きな仕事、得意なことを活かせる職場で働く!
デンマークの幸福度が高い理由まとめ
デンマークの幸福度について考えるにあたって、結婚観、高福祉・高負担から障害者の幸福度という観点からお伝えしました。
結論は、障害者も健常者もみんな「自分が置かれている環境や今を幸せだと感じていた!」ということ。(もちろん数日間の滞在で見たデンマークです)
他人からどう見られているのかといった他者評価は、気にすることなく、「自分はどうなのか?どうなりたいのか?」がハッキリしていることが重要!
横山も幸せの定義する方法が、デンマークへ行く前とちょっと変わりました。
みんなが心地よく過ごしていくために、
- 職業
- 住んでいる地域や建物
- 衣服
- 障害の有無
- 国籍
といったすべてが同じでないことを尊重し合う。そして、すべて一人ひとりが主体となって、お互いを助け合える生活大国を作ったのでした。
以上が横山が見た「幸せの国デンマーク」でした。
一緒に創っていきませんか?
『ジャパン・ノーマリゼーション・プロジェクト “OTAGAISAMA”』のFacebookグループでは、
- メンバー同士の情報交換
- デンマークの情報で知りたいこと
- 日本の福祉の良い点や問題点
など、皆さんとやり取りしながら企画を進めています。こちらのグループにて、皆さんの意見をいただきながら、みんなでプログラムを創り上げていこうといったものだからです。
もちろん参加は無料ですので、ぜひこちらのグループでも情報交換できれば幸いです。(もちろん情報を得るだけの参加でも大歓迎です)
デンマーク渡航では、最先端の福祉を学び取り、日本版のノーマリゼーション「OTAGAISAMA文化」を作っていきます。そして、真のユニバーサル社会を実現できるように動いていきます。
ぜひ一緒に作り上げていきたい方がいらっしゃいましたら、Facebookグループに参加したり、お気軽にお問い合わせください。
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