「障害がある人もない人も誰もが平等に当たり前の生活ができる社会を実現させる」という概念。ノーマライゼーションが、なぜデンマークでは国民が当たり前のように浸透しているのか?
現地に渡航する前に、現地の教育者からその真相に迫ることができるチャンスが巡ってきました。
それは、北欧デンマーク教育者Momoyo T. Jørgensen (モモヨ・タチエダ・ヤーンセン) 氏、来日特別セミナー 『hygge&幸せの国 デンマークの対人力 ソーシャルペタゴジーとは?』(主催:フィーノ株式会社)に参加させていただいたのです。
以前からウェルサーチでもご紹介しておりますが、幸福度トップ3のデンマークへ行き、世界トップレベルの福祉を日本へ持ち帰る『ジャパン・ノーマリゼーション・プロジェクト「OTAGAISAMA」』の一環として、デンマーク渡航メンバーと一緒に、渡航前の勉強会。
デンマークでは、子どものときからの教育の根本的な考えが日本と異なっており、現地の教育者がデンマークの教育を「ズバリ」と教えていただきましたので、セミナーレポートとして記事にさせていただきました。
そして、本場のノーマライゼーションも体感することができましたので、こちらの体験もシェアします!
福祉・教育関係のみならず、すべての方に当てはまるコミュニケーションをとる上でも、とても重要な考え方となります。本当は現地でしか聞けないような貴重な情報をたくさん聞けましたので、ぜひ参考にしていただければ幸いです。
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デンマークのノーマライゼーションを確立する教育の土台
デンマークは、民主主義が土台となっており、子どものときから話し合い・対話、そしてみんな平等という概念が備わっております。
つまり、職だったり、人種などで人を差別したりしません。先生と生徒も役割は違うけど、上下関係がなく、関係性が近いとおっしゃっていました。
でも、あくまでも友達感覚ではなく、その専門家・役割には、しっかりとリスペクトがある。例えば、休憩中は、友達みたいな会話もするけど、授業となった瞬間にパチっと切り替わり、先生のリスペクトが出る。
デンマークでは、そんな雰囲気になっているとのことです。これが土台にあり、子どものときから対話を重要視し、平等の社会の中で教育が展開されています。
これを日本で浸透させるには、いったいどのようにしたらいいのかということも、気になりますよね?
これもデンマーク人は、揃って同じことを言うみたいなんです。
みんな平等!という子ども時代からの教育
と、デンマーク人に聞くと、みんな揃って
「母乳に入っているから!」
と言うみたいです(笑
つまり、赤ちゃん・子どものときから「対話・平等」が主軸になっているんです。小さい子どもでも、しっかりと自分の言葉で言語化し、伝えることができる。
多様性への対応が子どものときから始まっているのです。なので、いろんな人がいて当たり前という概念が基本的に備わっている。
では、子ども時代から「対話・平等」が主軸になっているデンマークでは、いったいどのような教育概念となっているのか?
講師のモモヨさんから、驚くべき回答が返ってきたのです。
デンマークの教育とはズバリ!
最後の締めで、デンマークの現役教育者でもある講師のモモヨさんが、「デンマークの教育とはズバリこれ!」という概念を教えていただきましたので、シェアします。
講師のモモヨさんいわく、
デンマークの教育とはズバリこれ!
↓ ↓ ↓
「木登りをすれば、落ちるかもしれない。でも、落ちないかもしれない。だから、落ちないのです!」
終了!
自分も含め、皆さん一瞬「?」マークが飛び交って、時間が止まってました(笑
もちろん、その後に解説してくださったので、シェアします。
デンマークは自然豊かな国なので、周りにはたくさんの木があります。幼稚園にいる子どもたちは、けっこう高い木に木登りしていて、日本から見学に訪れた方たちが、
親からクレーム来ないんですか?
と質問したら、先生が「木登りをすれば、落ちるかもしれない。でも落ちないかもしれない。2つに1つ。だから、落ちないのです。」と答えて、スタスタと次の場所へ移動したという。
要は、落ちるかもしれないし、落ちないかもしれない。その確率は50:50。落ちない方を選んでいるだけなのです。
日本では、大多数の人が「落ちるかもしれない」を選び、リスクヘッジをする。子どもが危険な体験をしなくなる一方、チャレンジや登ったという達成感・もしくは危険な体験は、奪われてしまいます。
デンマークでは、「落ちないかもしれない」を選び、リスクはあるかもしれないが、子どもに多くのチャレンジ・体験をさせる。
これが、日本とデンマークの人間づくり・教育の大きな違いだとおっしゃっていました。
そして、このデンマークの教育の背景には、ソーシャルペタゴジーという、子どものときから「対話・平等」の概念が備わる、大切な教育があったのです。
ソーシャルペタゴジーとは
今回のセミナーのテーマの1つである「ソーシャルペダゴジー」とは、日本語で言うと「社会教育」・「社会における子育て」と約されます。つまり、子ども福祉と教育が交差しあっているのです。
日本では、まだあまり浸透されていないですが、北欧では、子どもたちを教育していく上で、とても大切な理念となっており、子供の教育分野では、社会的養育にも役立っています。
今回のセミナーのテーマ
ソーシャルペタゴジーをする上で大切なこと
デンマークの対人力・ソーシャルペタゴジーを実践する上で、そして、人と出逢ったときに大切にしていることは、「哲学を共有している」こと。
- 肉体的
- 精神的
- 文化的
- 社会的
コミュニケーション・対話をする上で、この4つの相互作用を考えながら、その人の背景までを知るようにしているのです。どこか1つだけに特化して見ることはない。
講師のモモヨさんが事例として、おっしゃってくれました。
誰に「こんにちは」を言っているのかを哲学的に共有しており、人は1人ひとり違うので、その人にフォーカスを当てているのです。
例えば、特に専門職の人に多いのですが、「こんにちは、認知症!こんにちは、半身麻痺!」ってなっちゃう人が多い。(もちろん意識上では、そんなことは思ってないかと思います)
要は、「こんにちは、佐藤さん!」というその人を見ていないのです。
ソーシャルペタゴジーでは、哲学を共有し、その人個人を見ることがプロの絶対条件になるのです。つまり、誰にでもある潜在能力をしっかりと認め、褒め、発展する環境を作るのがプロとおっしゃってました。
このようなことを単語でお伝えすると、デンマーク語で『Menneskesyn』(発音は、ミニスカシュン?)。直訳すると人間視。あえて日本語に意味が通じるように言うなら『人間観』みたいなものだそうです。
デンマークの教育では、この「Menneskesyn」を大切にしており、人と出逢ったときに相手をどう見るかが根本的にあるのです。
主語がすり替わっていないか?
もう1つ事例を出してくれました。例えば、話していて「問題・問題行動」という言葉が出てきたとき、1番重要視していることが「主語が誰なのか?」ということ。
- 主語は誰なのか?
- 環境はどうなっているのか?
こういうことを意識し、主語が途中ですり替わっていないかを見ています。
例えば、利用者の問題なのに、いつの間にか主語が自分の事情にすり替わっていないか?
主語が誰なのかを常に意識して、その人の限界ではなく、可能性を見ながらコミュニケーションを取る。だから、その人の才能を見つけるのが上手になってくるのです。
日々、利用者と接していると、その人の障害・病気にばかり目が行ってしまいがちになってしまいますからね…
その人の才能を見つけて、その人に合った指導・コミュニケーションを取ることで、生徒も伸びてきて、それが自信にも繋がってくるのでしょうね。
デンマーク人は自己肯定感が高い
よくウェルサーチでも、
- 障害者だから○○できないんです…
- 自分に自信がなく、自分を好きになることができない…
といったような、いわゆる「自己肯定感」というテーマの相談がよくくるのですが、デンマーク人は、この自己肯定感が高い人が多いという印象を持ちました。
だから、世界一の幸福度がある国という実感はないのですが、
の問いに、ほとんどの人が「イエス!」と答えるとおっしゃっていました。
これも世界一の幸福度と言われる理由の1つなのでしょう。
なぜかと言うと、デンマークが大切にしているのは「自尊」だからです。つまり、自分を尊重すること。自分が大好きですし、自分の価値がこれだけあるということも理解している。
自分を信じる力・尊敬する力(自尊)が土台にあって、それから自信を高めていく教育を子どものころから受けているので、自己肯定感が高い人が多いのでしょう。
さて、いろいろとシェアさせていただきましたが、こんな内容、実はデンマーク現地でしか聞けない貴重な内容なんです。
なぜなら、デンマークの現役教育者が来日することがきっかけで、聞くことができたからです。では、その教育者とは、いったい誰なのでしょうか?
デンマーク教育者モモヨ・タチエダ・ヤーンセン氏
遅くなりましたが、今回すばらしいセミナーの講師を務めていた「Momoyo T. Jørgensen (モモヨ・タチエダ・ヤーンセン) 」氏のご紹介もさせていただきます。
Momoyo T. Jørgensen (モモヨ・タチエダ・ヤーンセン) 氏
プロフィール
ノーフュンスホイスコーレ短期研修部代表。1990年にデンマークに渡航後、20年以上に渡り介護福祉の分野で活動を続けている。2000年頃から日欧文化交流学院(現在のノーフュンスホイスコーレ)にて教員として働き始め、国立オーデンセ教育大学で教育指導学、教育心理学、心理学、社会学を専攻し、教員免許を取得。現在、デンマークの成人教育機関「ノーフュンスホイスコーレ」の教員として短期研修部代表を務める。
ちなみに、『ホイスコーレ』とは、17歳半以上なら
- 国籍
- 年齢
- 学歴
- 宗教
など関係なく、誰でも入れるデンマーク発祥で「対話と共生」がテーマの全寮制の学校です。北欧に300校ほどあり、それぞれのホイスコーレによって、たとえば福祉、音楽、多国籍、政治、アート、スポーツなど学べる内容や特色も違ってくる学校。
その中でも、今回デンマーク渡航で視察する障害者と健常者が一緒に学ぶ「エグモント・ホイスコーレン」については、以前の記事で紹介しておりますので、参考にしてみてください。
デンマーク式の心のバリアフリーを体感
主催のフィーノ株式会社さんが、大きな電動車いすを利用している山口さんでも直接会場で参加できるかどうか、事前にヒアリングしていただいたり、エレベーターの大きさを測っていただいたり、たくさんのご協力をしていただけました。
残念ながら、ぶっちゃけシリーズでも紹介している山口さんのハイパー車椅子が、今回の会場のエレベーターに入ることができなかったのですが…
そこで、合理的配慮として、山口さんは、春日部からスマートフォンによる遠隔でセミナーを受講させていただけるように配慮いただきました。
できる限り健常者が過ごす環境に近づけるように、デンマーク式の心のバリアフリーを体感することができました。
遠隔受講が可能になるよう、
スマートフォンを設置する介護士の日高さん
Q&Aの時間では、こんな感じで講師のモモヨさんにスマートフォンから質問をさせていただきました。
という質問に、「何も準備していかなくていい!」というご回答。
「オープンマインドで行って、全部体験してやろう!という気持ちでいい。エグモント・ホイスコーレンの生徒とたくさん交流してみるといいですよ!障害者の文化や自信・自尊の部分は、当の本人の話が1番おもしろい。準備するのは、自分の期待だけ!」
とアドバイスいただきました。デンマーク渡航では、現地の人たちとたくさん交流し、たくさん体験してきます。
最後に講師のモモヨさんとメンバーで写真撮影!
今回のセミナーの主催であるフィーノ株式会社さんは、「自分の幸せの定義を探究する力を育てる」ことを理念に北欧教育FINOLykke(フィーノリッケ)を運営しております。
世界一幸福な国が集まる北欧の教育を日本へ浸透させるために、デンマークのソーシャルペタゴジー・子どもの教育を日本で初めて提供している教育機関です。
まとめ
いかがでしたでしょうか?デンマークの教育で木登りの話が出たときは、一瞬固まりましたが(笑
子どものときの教育から「対話・平等」が主軸となっておりました。
ノーマライゼーションが当たり前のように浸透している背景には、デンマークの子ども教育でもある「ソーシャルペタゴジー」が大きなキーポイントでしたね。
この大きなヒントを頭に入れておきながら、実際のデンマーク渡航でもたくさん現地の人たちと話し・体験していければなと思いました。
このセミナーは、福祉関係のみならず、教育・保育・企業の方など、多種多様な業界の方がいらっしゃっておりましたが、本当にいろんな業界で取り入れられるものばかりでした。
何よりも、ノーマライゼーションの精神の元、こちらのご要望に応えていただいた主催のフィーノ株式会社さん、共催の北欧教育オルタナティブスクールFinoLykke(フィーノリッケ )さん、すばらしいセミナーをありがとうございました。
一緒に創っていきませんか?
『ジャパン・ノーマリゼーション・プロジェクト “OTAGAISAMA”』のFacebookグループでは、
- メンバー同士の情報交換
- デンマークの情報で知りたいこと
- 日本の福祉の良い点や問題点
など、皆さんとやり取りしながら企画を進めています。こちらのグループにて、皆さんの意見をいただきながら、みんなでプログラムを創り上げていこうといったものだからです。
もちろん参加は無料ですので、ぜひこちらのグループでも情報交換できれば幸いです。(もちろん情報を得るだけの参加でも大歓迎です)
デンマーク渡航では、最先端の福祉を学び取り、日本版のノーマリゼーション「OTAGAISAMA文化」を作っていきます。そして、真のユニバーサル社会を実現できるように動いていきます。
ぜひ一緒に作り上げていきたい方がいらっしゃいましたら、Facebookグループに参加したり、お気軽にお問い合わせください。
OTAGAISAMAプロジェクト
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