ひきこもりや生きづらさを感じている人が、気軽に話せる場所があったら。 そんな思いに応えるのが「V福祉プロジェクト」です。
V福祉プロジェクトとは、VTuber(2Dや3Dのアバターを使って配信活動をする人)が「楽しいこと」を入り口に、福祉へつなげるボランティア団体。
副代表の針有バフさん・いえなしバツさん、中核メンバーのユミりりさんに、活動への思いを伺いました。(以下敬称略)
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V福祉プロジェクトとは?バーチャル×福祉の新しいかたち

――本日はお忙しい中ありがとうございます。まず、皆さんの自己紹介をお願いします。
――針有バフ
V福祉プロジェクトの副代表をしております、針有バフと申します。私はVTuberではないのですが、裏方スタッフとして全般的な運営の管理を担当しています。本日はよろしくお願いいたします。
――いえなしバツ
針有さんと一緒に副代表をしている、いえなしバツです。よろしくお願いいたします。
――ユミりり
中核メンバーのユミりりです。よろしくお願いします。
――V福祉プロジェクトについて教えてください。
――針有バフ
「バーチャル×福祉」をコンセプトに、VTuberが主体となって活動するボランティア団体です。 ひきこもりなどで悩む方が、オンラインで楽しく参加できる居場所を提供しています。
メインの活動は、月1回程度のオンライントークサロン「ぶいねっとーく」と、月2回の定期配信「ブイふくレター」です。
ブイふくレターは毎月第2・第4月曜日の21時から配信しています。忙しいときはお休みもありますが、できる限り続けています。
テーマは大まかに決めていますが、毎回脱線します。コメントはなるべく拾うようにしていて、話すこと自体が目的なので、それでいいと思っています。
ほかにも、カバー楽曲の投稿や、福祉系の配信者とのコラボなども行っています。
――VTuberという形式を選んだ理由を教えてください。
――針有バフ
きっかけは、代表がX(旧Twitter)で発信した呼びかけでした。
代表は精神疾患で10年以上ひきこもりを経験した方です。
「寂しい思いをする人を助けたい」という思いがあり、もともとVTuberとして活動していたことから、「アバターを介すれば、他者と関わるハードルが下がるのでは」という考えで始まったとのことです。
――アバターを使うことで、ハードルが下がる面はありますか?
――針有バフ
現実で顔を合わせると、どうしても相手の顔色をうかがってしまいますよね。オンラインであっても怖いと感じる方はいらっしゃいます。アバターなら、その緊張が少しでも和らぐのではないかと考えています。
――福祉というと堅いイメージがありますが、VTuber活動をきっかけに福祉を知ってもらうのは新鮮ですね。
――針有バフ
私自身は福祉の専門家ではなく、代表の思いに共感して協力を始めました。
実際に福祉の世界に触れてみると、想像以上に堅い。だからこそ、VTuberを入り口にする私たちの活動は珍しいのかもしれません。
――いえなしバツ
V福祉プロジェクトがカバー楽曲を出しているのは、福祉と無関係に見えるかもしれません。
でも、そこから福祉を知ってもらえたらという思いがあって、一見関係のない活動もしているんです。
――針有バフ
福祉団体なので過激なコンテンツは控えていますが、ゲームなども積極的にやりたいと思っています。
参加を希望される方は、さまざまな経験をしてきた方が多いのですが、だからこそ皆さん優しく、穏やかな雰囲気がありますね。
――いえなしバツ
個人チャンネルでの活動は、V福祉プロジェクトとしては関与していません。そこは自由です。
――福祉は制度や支援だけでなく、楽しいことで元気になることも含まれますよね。皆さんはどう捉えていますか?
――針有バフ
その通りです。福祉はもっとラフでいい。早めに相談できる選択肢があると知っておくだけで、安心につながることもあります。
――いえなしバツ
「ちょっとしんどいな」と思ったときに、気軽に誰かに話せる場があるといいですよね。
代表から聞いた話ですが、福祉という言葉には「幸せ」「みんなの幸せ」という意味があるとのことです。
漢字だと堅く見えますが、本来は幸せを表す言葉なんですよね。それを知ってもらえたらと思います。
V福祉プロジェクトは、アバターを介して対面の緊張を和らげ、オンラインで居場所を提供しています。「楽しいことから福祉へ」という発想は、堅いイメージを持たれがちな福祉に新しい入り口をつくる試みです。福祉の本来の意味である「幸せ」を、楽しさを通じて届けようとする姿勢が印象的でした。
活動の効果と役割|専門家の手前にある「入り口」

――VTuber活動を通じて、福祉に興味を持った方はいますか?
――いえなしバツ
います。個別のお話は控えますが、V福祉プロジェクトというより私個人の活動においても、「こういう制度があるんだ」と初めて知った方や、「自分が当事者かも」と気づくきっかけになった方がいるようです。
少しでも力になれていれば嬉しいですね。
――日常生活では、そうした情報に触れる機会は限られますよね。
――針有バフ
制度の存在を知るだけで救われることもあります。
ただ、かしこまった福祉の形では届きにくい。まずは楽しいことから入って、そこで知ってもらうのが私たちの目指すところです。
――配信中に悩みを話してくれる方もいるのでしょうか?
――いえなしバツ
病院に行くほどではないけれど、「最近こういうことがあって」とポロッとこぼしてくれる方はいます。
ブイふくレターの配信中に聞くこともありますね。
――身内には話しにくくても、外部の人だから話せることもありますよね。
――いえなしバツ
家族に話せないという方もいます。
V福祉プロジェクトのメンバーになら話せる、気軽に声をかけられる――そんな存在になれたらと思っています。
――針有バフ
良い意味で「キャラクター」という壁があるので、「迷惑をかけてしまう」という罪悪感が軽くなり、相談しやすいようです。雑談の延長のような感覚で話してもらえますね。
――いえなしバツ
アバターの向こうには人がいるので、温かみのあるやり取りができるのも強みだと思います。
AIを否定しているわけではありませんが、そこは違いかなと。
――専門家ではないからこその良さもありそうですね。
――針有バフ
専門家に相談すると、すぐ「解決」の方向に進みがちです。
ただ受け止めてほしいだけなのに、自分の意思が置き去りになることもあります。
――いえなしバツ
思っていたより深刻だった場合、周りが「早くしなきゃ」と焦って、自分だけ置いてけぼりになることがあります。
私自身がそうでした。そんなとき、「今こういう状態なんだけど」と話せる人がいたら、ずいぶん違うと思います。
――針有バフ
助けてもらえるのはありがたいですが、ワンクッション欲しいですよね。自分の状態に気づくきっかけといいますか。
――解決の前に、まず受け止めてもらう段階が大切なんですね。V福祉プロジェクトとしてはどこまでを担っているのでしょうか?
――いえなしバツ
解決も大事ですが、その前にただ話せること、ちょっと楽しいことをしたいだけ、というのも大切です。
あくまで入り口をつくりたいんです。
深い話になったら、専門の方を頼ってほしいというスタンスです。
――針有バフ
専門的な部分は、私たちが扱うと誤った情報を届けてしまう可能性があるので、詳しい方にお任せしています。
V福祉プロジェクトとしては、福祉に強い外部の団体や専門家と協力関係を結んで活動しています。
――自分の体験を語れるのは、専門家にはない強みですね。
――いえなしバツ
そうですね。自分の体験を語るだけなら、資格は必要ありません。
――いえなしバツさんは、家がなかったというご経験もお持ちだと伺いました。そうした背景に関心を持つ方もいらっしゃいますか?
――いえなしバツ
はい、そういった興味から配信を見てくださる方もいます。
自分の経験が誰かの参考になればと思って、話せる範囲でお伝えしています。
V福祉プロジェクトは、専門家に相談する手前の「入り口」として機能しています。解決を急がず、まず話を聞いて受け止める。その姿勢が、一般的な支援とは異なる価値を生んでいるのではないでしょうか。 キャラクターという適度な距離感が、相談のハードルを下げている点も印象的でした。専門的な情報は専門家に委ね、自分たちの役割を明確に線引きしている姿勢は、活動を長く続けていくうえでも大切なことだと感じます。
チームの力と社会参加|居場所が生む変化

――メンバー同士の交流はいかがですか?
――いえなしバツ
いろいろなスキルを持った人がいるので、勉強になります。
V福祉プロジェクトではカバー楽曲を出していますが、曲を作る人、歌う人、ミックスをする人、MVを作る人、絵を描く人と、役割はさまざまです。
自分にできないことをしている人を見ると刺激になりますし、「どうやっているの?」と聞くことで学びにもなります。
私は歌うのが好きなのですが、どのように音源を提出すればミックスする人が作業しやすいか、といった話も聞けて勉強になっています。
――針有バフ
メンバーにはクリエイティブな方が多いですね。
私が使っているこのアバターも、メタバースイベントでアバターが必要となった際に、メンバーが作ってくれました。
――いえなしバツ
お互いに良い影響を与え合っています。
ボランティア活動は一人ではできないので、スタッフがいるからこそ成り立っていますね。
――針有バフ
メンバーにはプロ級の知識を持った方や福祉の専門家もいます。スタッフ向けに「福祉について学ぼう」という勉強会を開くこともあるんです。
得意分野を持っている方が「内部で教えようか」と声をかけてくれることもありますね。
――リスナーの中にも協力したい方がいると思いますが、どのような参加の形がありますか?
――針有バフ
ぶいねっとーくでは、表で話すVTuberとは別に、裏方で進行管理をするスタッフがいます。
アバターがなくても参加できる役割ですね。
――いえなしバツ
縁の下の力持ちで、本当に助かっています。
VTuberではないスタッフも結構いて、福祉に興味がある方や「力になりたい」という方が来てくれるのはありがたいです。
――針有バフ
皆さんボランティアなので、形あるお礼を出せないのは申し訳なく思いつつ、お願いしています。
――いえなしバツ
やりがいや学びになっていれば嬉しいですね。やりがい搾取にはならないよう、気をつけています。
――リスナーにとっても社会参加の機会になりますね。参加者の方にはどんな変化がありますか?
――いえなしバツ
普段は人と話せなくても、ネットならコメントできる。
ぶいねっとーくに参加することで、声を出すこと自体が久しぶりだったという方もいると思います。
参加してくれるのは嬉しいですし、元気になってもらえたら、こちらも元気をもらえます。
――具体的な変化の事例はありますか?
――針有バフ
最初はチャットだけだった方が、声を出せるようになったケースがあります。
また、ぶいねっとーくで書道教室を行ったのですが、それをきっかけにリアルの書道教室に通い始めた方がいました。
――いえなしバツ
嬉しいですね。外に出て教室に通うのは大きな一歩ですから。
――針有バフ
リアルの場に踏み出すきっかけになるとは思っていなかったので、驚きました。
――そうした反応があると、活動の手応えを感じますね。
――いえなしバツ
「よかった、役に立てた」と思いました。
――針有バフ
そうした反応をもらえるのが一番の楽しみですね。
――VTuberの配信を楽しみに来る方も多いのでしょうか?
――いえなしバツ
「今日はV福祉プロジェクトの配信だから来てね」と呼びかけて、「来てくれてありがとう」というやり取りをしたり、メンバー同士の掛け合いを楽しみにしてくれる方もいます。
――針有バフ
V福祉プロジェクトの配信をきっかけに新しいVTuberを知って、そちらの配信に行くという流れもありますね。
――いえなしバツ
「楽しい」を広げてもらえたら嬉しいです。
――配信に安心感があるのは大きいですね。ただ、福祉の話題ばかりだと人が集まりにくい面もありますか?
――針有バフ
そこのバランスは難しいところです。
――いえなしバツ
そうですね。
ただ配信をしていると、リスナーから励ましをもらって、こちらも生きる気力をもらっています。安心感があってお互いにとって良い関係ですね。
――VTuberは一方通行ではなく、交流できるのが魅力ですよね。リスナー同士のつながりはいかがですか?
――針有バフ
リスナーが10人くらいの規模だと、リスナー同士で会話が始まることもあります。VTuberによっては避けたい方もいますが、V福祉プロジェクトでは歓迎しています。
――いえなしバつ
皆さん仲が良くて、見ていて嬉しくなります。
――連帯感が生まれているんですね。
――針有バフ
そうした交流を通じて話すハードルが下がり、「部屋を出てみようかな」「家を出てみようかな」と思ってもらえたら、それが一番の喜びです。
――VTuber文化自体も広がっていますよね。始めるハードルはいかがですか?
――いえなしバツ
VTuberは非常に多く、スマホだけで始められるアプリも出てきて、やるだけなら誰でも簡単になれる時代です。
――針有バフ
ハードルは下がりましたね。
――有名になることを目指さなくても、楽しみ方はありますか?
――いえなしバツ
知名度に関係なく、「この人いいな」と思えれば楽しめます。
――針有バフ
逆に、知名度がないからこそ味わえる配信の楽しみ方もあります。
――少人数の配信だと、コメントを拾ってもらいやすいですよね。
――いえなしバツ
50代の方でもVTuberをご存知だったり、お孫さんの影響で知ったという方もいらっしゃいます。ジャンル自体が広がっていますね。
多様なスキルを持つメンバーが学び合い、互いに刺激を受ける環境が生まれています。
VTuberだけでなく、裏方スタッフとしてリスナーが参加できる仕組みは、社会参加の新しいかたちといえるかもしれません。
書道教室をきっかけにリアルの教室に通い始めた事例は、オンラインの居場所が現実への橋渡しになりうることを教えてくれます。
少人数の配信だからこそ生まれる交流や連帯感も、V福祉プロジェクトの大きな強みだと感じました。
今後の展望と読者へのメッセージ

動画サムネイル:いえなしバツさん作成
――今後の展望を教えてください。
――針有バフ
一番要望が多いのはメタバースですね。
メタバース上に居場所を作りたいと、ずっと考えています。
ただ、空間を用意すること自体は難しくないのですが、アクセスする側にある程度の環境が必要です。
スマホでも入れる場所でなければ、居場所としては機能しにくい。
持っている機材で参加できることが目標なので、軽量化が課題ですね。
また、ぶいねっとーくは今後もずっと続けていきます。
居場所は、あり続けることが大切だからです。
代表の言葉ですが、何があってもぶいねっとーくがなくならないよう、しっかり維持していきたいと考えています。
――読者へメッセージをお願いします。
――いえなしバツ
私の名前はいえなしバツといって、よく家がなくなるからこの名前なんです。
家がなくなっても、こうして笑って生きていける。
それを発信したくてVTuberを始めました。
V福祉プロジェクトの「楽しいことから福祉へ」という方針と、私の思いは合っています。
大変なことがあっても、笑って生きられる。そのことを伝えたいです。
――針有バフ
「こうしなければ」「自分はダメだ」と感じてしまうこともあると思います。
まずは、楽しいと思えることを見つけてください。続けていくうちに、気がついたら認められている、ということもあります。
――いえなしバツ
ぶいねっとーくでレクリエーションをやっているのも、楽しいことを見つけてもらうためです。
手芸、書道、ゲーム、中国語講座、紅茶の淹れ方講座なども行いました。世界が広がるきっかけになればと思います。
――ユミりり
のんびり、まったりと楽しいことを伝えたいです。
ぶいねっとーくに来てくださる方が楽しい時間を過ごせるよう、毎月トークテーマやレクリエーションを皆で考えて開催しています。
気になる方は、ぜひぶいねっとーくやブイふくレターに遊びに来てください。
――針有バフ
興味を持ってくださる方がいれば、専門知識や特別なスキルがなくても大丈夫です。気軽に声をかけてください。楽しいですよ。
最初は居場所を作る組織として立ち上がりましたが、今ではこの組織自体が居場所になりつつあります。
――「楽しいことから福祉へ」。その言葉の意味が、お話を通じて伝わってきました。本日はありがとうございました。
メタバース上に居場所を構築することを目指しつつ、ぶいねっとーくを「あり続ける居場所」として維持していく方針が語られました。皆さんそれぞれの言葉で「楽しいことを見つけてほしい」という思いが伝わってきます。大変な経験をしても笑って生きていけるという、いえなしバツさんの言葉には、当事者だからこその説得力がありました。
編集後記
「楽しいことは福祉になりうる」
取材を終えて、この言葉が強く残っています。
福祉というと「支援する側」と「される側」という構図を思い浮かべがちです。でもV福祉プロジェクトには、そうした一方通行の関係がありません。配信者はリスナーに励まされ、リスナーは居場所を得て、裏方スタッフは社会参加の機会を見つける。誰もが何かを受け取り、何かを与えています。
専門家と自分たちの役割を分け、「入り口」に徹する姿勢も印象的でした。何でも引き受けるのではなく、できることとできないことを見極める。その線引きがあるからこそ、無理なく続けていけるのだと感じます。
取材中、私自身もVTuberに助けられた経験を思い出していました。推しの配信を見ることが、生きる希望になった時期があります。文化やエンターテインメントには、人を支える力がある。V福祉プロジェクトは、その力を福祉に活かそうとしているのだと思います。
ぶいねっとーくは「あり続けること」を大切にしているそうです。居場所とは、そこにあり続けて初めて居場所になる。その言葉を胸に、今後の活動を見守りたいと思います。
V福祉プロジェクト 団体概要
団体名 V福祉プロジェクト(愛称:ブイふく)
団体形態 有志によるボランティア団体
設立 2023年
代表 ゾンビのシアンCAT
スローガン 「さみしいをたのしいに」
主な活動
ぶいねっとーく 月1回程度のオンライン居場所(Zoom、顔出し不要)
ブイふくレター 毎月第2・第4月曜日 21時配信(YouTube)
参加方法
配信視聴:YouTubeチャンネルで無料公開
イベント申込:公式サイトのお問い合わせフォームから
スタッフ募集:VTuber・裏方ともに募集中
公式リンク
公式サイト:https://virtualwelfare.wixsite.com/vfuku
YouTube:https://www.youtube.com/@Virtual_Welfare
X(Twitter):https://x.com/Virtual_Welfare
久田 淳吾
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