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オーダメイドの電動車いすを届ける|車いす工房 輪 浅見一志さんインタビュー

  • 最終更新日:
車いす工房 輪

「車いすで移動できるようになるだけでなく、自分で好きな時に好きな姿勢を取ることを当たり前にして、車いすユーザーの自立度を上げる手助けをしたい!」

 

そう語るのは、車いす工房 輪(りん)の浅見一志さん。

 

今回は、車いすユーザーの声を取り入れ、超多機能型の電動車いすを販売、修理、メンテナンスをされている浅見一志さんにインタビューをさせていただきました。

 

車いすユーザーの実際の悩み・苦悩の声を汲み取りオリジナルの電動車いすを製造している車いす工房 輪では、お客さんの「移動の自由」だけでなく、姿勢の自由を実現させ、多くの車いすユーザーの自立生活の幅を広げております。

 

日野
今回は、車いす工房 輪の電動車いすがなぜそんなにユーザーからの評価が高いのか?の真相を深堀りさせていただきました!

浅見 一志さんプロフィール

車いす工房宰 輪
浅見 一志さん

 

プロフィール

1975年生まれ。工学院高校卒業 東京科学電子工業専門学校卒業 半導体製造装置の機械設計に従事。品川職業訓練校金属造形科卒業 障がい者ヘルパーのアルバイトを経て、2000年に有限会社さいとう工房に就職。車いすの製作・販売メンテナンスに従事。 2007年に「車いす工房 輪」設立。

 

動画verでご覧になりたい方は、こちらから見ることができます。

 

 

車いす工房 輪の活動

日野
では、さっそくなのですが、浅見さんの活動について、詳しくお聞かせください。

 

浅見
はい。私は、車いす工房 輪を立ち上げて14年目になります。

 

その前に7年間、別の車いす屋で修行しておりますので、車いす屋になって21年くらいですね。

 

車いすには、

 

  • パラリンピックの人が自分で漕ぐような「自走式の車いす」
  • 病院で貸し出しているような「手で押す車いす」
  • 車いすにモーターをくっつけて動く「簡易型車いす」
  • 電気で動くことに設計されている「電動車いす」
  • 小児用の「バギータイプの車いす」

 

があります。

 

このすべての種類を扱うのがほとんどの車いす屋なんです。

 

その中でも車いす工房 輪では、「電動車いす」だけを扱うようにしております。

 

車いす屋を始めたキッカケ

日野
ありがとうございます。

 

ちなみに浅見さんは、なぜ車いすを作るようになったのですか?

 

浅見
当時、いろんな人と会ってみたいと思い、いろんな仕事をしていたんです。

 

  • フリースクールのボランティア
  • 保育園
  • 機械の設計
  • 障害者ヘルパー

 

などを体験してみて、障害者ヘルパーで私が修行していた工房のお客さんに付いていた時に、「面白そうな仕事だな」と思ったんです。

 

そしたら、代表の方が当事者だったんですけど「車いす屋になれ!」と(笑)

 

日野
代表の方から仰せつけられたのですね(笑)

 

浅見
はい。機械の設計をしていたので、紹介してくれたんです。

 

日野
そのようなキッカケで車いす屋さんになったのですね。

 

車いす工房 輪の内観

電動車いすへの想い

日野
今、車いす工房 輪では、「電動車いす」に特化していると思いますが、なぜ電動車いすにこだわっているのでしょうか?

 

浅見
背もたれだけ動くリクライニング。

 

いすごと倒れる「ティルト」っていう機能があります。

 

ティルトとリクライニング

 

浅見
これらって手動の車いすでも普通にある機能なんですけど、そういうものに乗っても自分の好きなタイミングで自分の好きな角度にすることってできないんです。

 

誰かを呼んで倒してもらったりするんですけど、倒しすぎちゃったり、自分のフィットする姿勢になかなか辿り着かないという意見も多かったんです。

 

そこで、好きな時に自分の好きなタイミングで好きな姿勢を取ってもらいたい。っていうのがあって、電動車いすにこだわってるんです。

 

日野
車いすユーザーのリアルな悩みを汲み取って、電動車いすにこだわっているのですね。

 

浅見
はい。

 

自分でなんでも動けるようになった人の変化ってすごく大きいんです。

 

こちらも嬉しいですし、お客さんにも喜んでもらえる。

 

日野
そこが浅見さんのやりがいにも繋がっているのですね。

 

浅見
モーターだけ付けて、自由に移動できる車いすもあるんですけど、それは移動の自由だけで「姿勢」は誰かに依存しなきゃいけないですよね?

 

日野
たしかに自分で姿勢を動かせないのって、考えたことないですが、めちゃくちゃ辛いですよね。

 

浅見
そうなんです。

 

だから、よくあるティルト・リクライニングだけでは物足りない人のために、非対称的にねじったり、ひねったり、伸ばしたりするような車いすも作ってるんです。

 

側屈・回旋・上下

オリジナル電動車いす「P5」とは?

日野
今までになかった姿勢を自由に動かせる「P5」というオリジナルの電動車いすを手がけておりますが、この「P5(ピーファイブ)」ってどんな特徴なのか教えていただいてもよろしいでしょうか?

 

浅見
「P=Posture(姿勢」

 

5には、

 

  • ティルト
  • リクライニング
  • 背もたれの上下
  • 側屈
  • 回旋

 

の5つの姿勢が取れるという意味があります。

 

P5

できたての新作P5

 

日野
おぉ!それでP5というネーミングなのですね。

 

浅見
それプラス、自分の好きな姿勢を記録することもできます。

 

例えば、2番のボタンを押すと「休息姿勢」。3番のボタンを押すと「ご飯を食べやすい姿勢」といった感じで、姿勢を記録して再現できる機能もついてます。

 

日野
先ほども姿勢の変更を他人にお願いすると、ベストな姿勢を作るのが難しいとおっしゃってましたが、これだと一発ですね。

 

姿勢が悪い方の声から思いついた発想

日野
このような便利な機能は、どのように発明に至ったのですか?

 

浅見
以前、筋ジストロフィーのデュシェンヌ型といって、姿勢がすごい悪い方がお客さんでいたんです。

 

浅見
我々のような業者がその人の体を型取り、ウレタンを削ったりして、良姿勢を作っていくんですけど、それがすごく難しかったんです。

 

どうすればいいのかわからなくなった時に、「その時に合わせて動かしてみたらいいんじゃないか?」って思ったんです。

 

それで、その人の背中の形を自由に動かすという発想が生まれました。

 

日野
浅見さんって、本当に自分の思いだけで作るのではなく、ユーザーの声を聞いて、その悩みを解決できるものを形にしていっていますね。

 

浅見
まさしくP5は、プロダクトアウトではなく、お客様のニーズから出てきた製品なんです。

 

車いす工房 輪の信念

日野
今までのお話を聞いてきた中で、本当にユーザー目線なのだということがわかったのですが、浅見さんが仕事をする上で大事にしていることって何なのですか?

 

浅見
モノを作ることが仕事というよりも、一緒にその人の可能性を見つけていくのが仕事だと思ってます。

 

そのためには、まず信頼関係をしっかり持つことを心がけていますね。

 

日野
その「信頼関係」は、どのように築いているのでしょうか?

 

浅見
例えば、打ち合わせの時間や出会う回数は、1台を作り終わるまでにすごく多くしています。

 

当事者と仲良くなって、ご家族とも仲良くなりますし、周りの環境とかいろいろ知った上で始めなきゃ良いものは作れないです。

 

だから、信頼関係を作ることをすごく大事にしているんですよね。

 

浅見さん

 

日野
ご家族となったり、周りの環境を知るところまでされているのですね。

 

当事者も介助者も辛い日々からの解放

浅見
例えば、三次元で動く車いすを作ってもらったお客さんがいます。

 

筋ジストロフィーの方ってすごく姿勢がシビアなんです。

 

少し動かして引っ張りすぎとか。もう少し横とか。

 

お母さんがその姿勢の補助をしていたのですが、15分に1回くらい呼ばれていて、休息時間がなかったんですよね。

 

日野
当事者も楽な姿勢が取れなくて辛いですし、介助者も何度も呼ばれて大変な状態ですね。

 

浅見
そんな状態だったのですが、P5を買ってもらって、自分で好きな姿勢を取ることができるようになったんです。

 

ちょっと不快があったとしても、自分で姿勢を直すことができるので、呼ばれることが1日数回に減りました。

 

日野
そんなに減ったんですか!?

 

それは当事者も介助者もかなり楽になりますね。

 

浅見
本人が喜ぶのはもちろん。お母さんもすごく喜んでくれました。

 

介護が楽になったということは、本人の自立度が上がったということです。

 

この話を聞いて、私もすごく嬉しかったですね。

 

「もう以前の車いすには戻れない!悩んでいる人がいたら、すぐ決めて使った方がいいです!」って言ってくれました。

 

印象に残っている電動車いすエピソード

日野
今までたくさんの電動車いすを作ってこられてきたかと思いますが、その中でも印象に残っているエピソードってありますか?

 

浅見
皆さん、とても印象に残っているので難しいのですが(笑)

 

1人すごく印象に残っている方がいて、20歳まで病院で寝たきりの人。

 

重い障害だったので、お母さんが毎日病院に来るような感じだったんです。

 

ずっと「体を動かすのをやってみたい」って先生から言われまして、スイッチとかいろいろ持ち込んでいたら、こちらの言葉も理解できてましたし、動作も正確なので、「電動車いすを動かせるんじゃないか?」って思ったんです。

 

そこで、唇の下に当てたスイッチを1つだけ押せば、前後左右に動いて、ティルトもリクライニングもできる試乗車を作りました。

 

そしたら、寝たきりだった人が乗れるようになったんです。

 

車いす工房 輪の内観

 

日野
すごい!寝たきりの人が車いすに乗れるようになるって、かなり道が開けますね!

 

浅見
作っている途中で知ったことがあります。

 

病院には電動車いすに乗ってる子が他にもいて、その子達を見てて「実は電動車いすに乗ることが夢だった」って言ってたんです。

 

日野
その子の夢を叶えたのですね!すごいいい話。

 

浅見
初めに声がかかった時には、そんなこと聞いていなかったんです。

 

でも、結局乗れるようになって、最初の1日目に初めて20年間寝てた子が1人で動いていた様子を病院の中でテストしたときは、人だかりができてました。

 

今は当たり前の光景になったってすごい印象的だし、もっと早く関われたら多感な時期に動かすことができたのかな?とも思ってます。

 

日野
そんな光景を見たら、病院でずっと見てきた先生も患者さんも一緒に喜んじゃいますよね。

 

すばらしいエピソードをありがとうございます。

 

車いす工房 輪で実現したいこと

日野
これまでいろいろな当事者の悩みを「電動車いす」で解決されてきたと思いますが、浅見さんが今後実現していきたいことってありますか?

 

浅見
P5は、児童で1例。成人で1例。2例が特例支給という形で公費で認められた実績があります。

 

それを本当に必要とする人へもっと届けたいです!

 

日野
たしかに、P5を知ることで助かる人ってまだまだいると思いますよね。

 

姿勢の自由は「権利」

浅見
姿勢を自由に好きなタイミングで動かすっていうのは、私は権利なんじゃないのかな?って思ってます。

 

それをするなって言われて、映画を見続けたりとか、人の話を聞く時にずっと背筋をピンとしているとすごい疲れますよね?

 

そういう時にも彼らは良いという姿勢を取らされてるんです。でも、それを動かすことはできない。

 

日野
「姿勢を取らされている」

 

まさしく当事者の立場からしたら、その言葉がとてもしっくりきますね。

 

P5

 

浅見
自由に移動することは「移動権」として権利として認められています。

 

でも、「姿勢の自由」は非常にグレーで、保証されていないし、定義もされていない。

 

私は、姿勢を自分で好きな時に変えるのは、本人の自由だと思っています。

 

姿勢の自由を獲得するために、高機能な車いすに乗って、快適に過ごしてもらいたいです。

 

日野
ありがとうございます。

 

ぜひこのP5がより多くの人に認知され、姿勢で困っている車いすユーザーの自立度が高くなり、世の中で活躍できるようウェルサーチでも応援させていただきます。

 

車いす工房 輪(りん)

HP:車いす工房 輪

 

〒189-0022
東京都東村山市野口町2-18-5

 

 

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日野信輔

日野信輔

株式会社Nextwel代表取締役。Welsearch編集長。ソーシャルビジネスに特化したWebマーケター。障害者プロデュース・福祉事業所やNPOの伴奏支援などしております。得意分野:工賃アップ/障害者の仕事づくり/集客。詳しいプロフィールはこちら→日野信輔


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