「車いすで移動できるようになるだけでなく、自分で好きな時に好きな姿勢を取ることを当たり前にして、車いすユーザーの自立度を上げる手助けをしたい!」
そう語るのは、車いす工房 輪(りん)の浅見一志さん。
今回は、車いすユーザーの声を取り入れ、超多機能型の電動車いすを販売、修理、メンテナンスをされている浅見一志さんにインタビューをさせていただきました。
車いすユーザーの実際の悩み・苦悩の声を汲み取りオリジナルの電動車いすを製造している車いす工房 輪では、お客さんの「移動の自由」だけでなく、「姿勢の自由」を実現させ、多くの車いすユーザーの自立生活の幅を広げております。
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浅見 一志さんプロフィール
車いす工房宰 輪
浅見 一志さん
プロフィール
1975年生まれ。工学院高校卒業 東京科学電子工業専門学校卒業 半導体製造装置の機械設計に従事。品川職業訓練校金属造形科卒業 障がい者ヘルパーのアルバイトを経て、2000年に有限会社さいとう工房に就職。車いすの製作・販売メンテナンスに従事。 2007年に「車いす工房 輪」設立。
動画verでご覧になりたい方は、こちらから見ることができます。
車いす工房 輪の活動
その前に7年間、別の車いす屋で修行しておりますので、車いす屋になって21年くらいですね。
車いすには、
- パラリンピックの人が自分で漕ぐような「自走式の車いす」
- 病院で貸し出しているような「手で押す車いす」
- 車いすにモーターをくっつけて動く「簡易型車いす」
- 電気で動くことに設計されている「電動車いす」
- 小児用の「バギータイプの車いす」
があります。
このすべての種類を扱うのがほとんどの車いす屋なんです。
その中でも車いす工房 輪では、「電動車いす」だけを扱うようにしております。
車いす屋を始めたキッカケ
ちなみに浅見さんは、なぜ車いすを作るようになったのですか?
- フリースクールのボランティア
- 保育園
- 機械の設計
- 障害者ヘルパー
などを体験してみて、障害者ヘルパーで私が修行していた工房のお客さんに付いていた時に、「面白そうな仕事だな」と思ったんです。
そしたら、代表の方が当事者だったんですけど「車いす屋になれ!」と(笑)
電動車いすへの想い
いすごと倒れる「ティルト」っていう機能があります。
誰かを呼んで倒してもらったりするんですけど、倒しすぎちゃったり、自分のフィットする姿勢になかなか辿り着かないという意見も多かったんです。
そこで、好きな時に自分の好きなタイミングで好きな姿勢を取ってもらいたい。っていうのがあって、電動車いすにこだわってるんです。
自分でなんでも動けるようになった人の変化ってすごく大きいんです。
こちらも嬉しいですし、お客さんにも喜んでもらえる。
だから、よくあるティルト・リクライニングだけでは物足りない人のために、非対称的にねじったり、ひねったり、伸ばしたりするような車いすも作ってるんです。
オリジナル電動車いす「P5」とは?
5には、
- ティルト
- リクライニング
- 背もたれの上下
- 側屈
- 回旋
の5つの姿勢が取れるという意味があります。
例えば、2番のボタンを押すと「休息姿勢」。3番のボタンを押すと「ご飯を食べやすい姿勢」といった感じで、姿勢を記録して再現できる機能もついてます。
姿勢が悪い方の声から思いついた発想
どうすればいいのかわからなくなった時に、「その時に合わせて動かしてみたらいいんじゃないか?」って思ったんです。
それで、その人の背中の形を自由に動かすという発想が生まれました。
車いす工房 輪の信念
そのためには、まず信頼関係をしっかり持つことを心がけていますね。
当事者と仲良くなって、ご家族とも仲良くなりますし、周りの環境とかいろいろ知った上で始めなきゃ良いものは作れないです。
だから、信頼関係を作ることをすごく大事にしているんですよね。
当事者も介助者も辛い日々からの解放
筋ジストロフィーの方ってすごく姿勢がシビアなんです。
少し動かして引っ張りすぎとか。もう少し横とか。
お母さんがその姿勢の補助をしていたのですが、15分に1回くらい呼ばれていて、休息時間がなかったんですよね。
ちょっと不快があったとしても、自分で姿勢を直すことができるので、呼ばれることが1日数回に減りました。
それは当事者も介助者もかなり楽になりますね。
介護が楽になったということは、本人の自立度が上がったということです。
この話を聞いて、私もすごく嬉しかったですね。
「もう以前の車いすには戻れない!悩んでいる人がいたら、すぐ決めて使った方がいいです!」って言ってくれました。
印象に残っている電動車いすエピソード
1人すごく印象に残っている方がいて、20歳まで病院で寝たきりの人。
重い障害だったので、お母さんが毎日病院に来るような感じだったんです。
ずっと「体を動かすのをやってみたい」って先生から言われまして、スイッチとかいろいろ持ち込んでいたら、こちらの言葉も理解できてましたし、動作も正確なので、「電動車いすを動かせるんじゃないか?」って思ったんです。
そこで、唇の下に当てたスイッチを1つだけ押せば、前後左右に動いて、ティルトもリクライニングもできる試乗車を作りました。
そしたら、寝たきりだった人が乗れるようになったんです。
病院には電動車いすに乗ってる子が他にもいて、その子達を見てて「実は電動車いすに乗ることが夢だった」って言ってたんです。
でも、結局乗れるようになって、最初の1日目に初めて20年間寝てた子が1人で動いていた様子を病院の中でテストしたときは、人だかりができてました。
今は当たり前の光景になったってすごい印象的だし、もっと早く関われたら多感な時期に動かすことができたのかな?とも思ってます。
すばらしいエピソードをありがとうございます。
車いす工房 輪で実現したいこと
それを本当に必要とする人へもっと届けたいです!
姿勢の自由は「権利」
それをするなって言われて、映画を見続けたりとか、人の話を聞く時にずっと背筋をピンとしているとすごい疲れますよね?
そういう時にも彼らは良いという姿勢を取らされてるんです。でも、それを動かすことはできない。
まさしく当事者の立場からしたら、その言葉がとてもしっくりきますね。
でも、「姿勢の自由」は非常にグレーで、保証されていないし、定義もされていない。
私は、姿勢を自分で好きな時に変えるのは、本人の自由だと思っています。
姿勢の自由を獲得するために、高機能な車いすに乗って、快適に過ごしてもらいたいです。
ぜひこのP5がより多くの人に認知され、姿勢で困っている車いすユーザーの自立度が高くなり、世の中で活躍できるようウェルサーチでも応援させていただきます。
車いす工房 輪(りん)
HP:車いす工房 輪
〒189-0022
東京都東村山市野口町2-18-5
日野信輔
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