工賃アップや福祉のブランディングをするにあたって「デザイン」というのは、欠かせない存在です。デンマークの最先端福祉を体感されており、福祉業界に数少ない「ものづくりと福祉」の領域で、デザイナーとして活動されている方がいらっしゃいます。
今回は、3つの記事にわけて、インタビュー内容をお伝えしていきます。第2回目のインタビューは、デンマークで衝撃を受けた福祉用具「ロフストランドクラッチ(杖)」について語っていただきました。
多くの福祉用具は、機能を重視しているだけで、おしゃれにデザインされたものが少ないのが現状です。宮田さんが手掛けている福祉用具のロフストランドクラッチは、おしゃれでカッコいい!
しかも、機能も充実しているという珍しい福祉用具。
デンマークの自然豊かなエコ文化・使い手のために創られているという造り手のアツい想いがそこには詰まっていました。
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宮田尚幸さんプロフィール
尚工藝(なおこうげい)主宰
宮田 尚幸(みやた なおゆき)さん
プロフィール
自身が福祉だと感じるものごとの、商品のデザイン、ブランディングを行う。その傍ら、デンマークのハンドメイドの杖の工房「Vilhelm Hertz / ヴィルヘルムハーツ」の一員として、日本、アジアに広める活動を行う。また、対話会や執筆活動を通して、デンマークの思想を自分なりに伝え、生きにくさを感じている方への小さな拠り所を作る場を模索中。
文具雑貨のデザイン、ブランディングを経て、POSTALCO にて服飾雑貨のデザイン開発に従事。質の良いものを長く使うこと、環境への配慮の大切さに気づく。
その後、デンマークに福祉で有名なEgmont Højskolenに留学中に出会った「Vilhelm Hertz」にて半年間住込みでインターンとして働く。
デンマークで、幼い頃から抱える生きにくさが軽減したことで、ものづくり、福祉に強い関心を抱いている。帰国後、尚工藝を立上げ現在の活動に至る。
【宮田尚幸さんインタビュー動画】
後編(ロフストランドクラッチの紹介)
ロフストランドクラッチとの衝撃的な出会い
この杖にイナズマが走って興味を持ったという話だったんですけれども、どういったところに興味を持ったんですか?
もともとですね、デンマークに行く前にPOSTALCO(ポスタルコ)という企業で革製品やカバン・キーホルダー・ペンというようなもののデザインや開発をしてたんです。
そこの商品のコンセプトが、
- いいものを長く使う
- 人がしっかり使うことを前提としてものを考える
- 環境にも優しいものを作る
あとは、日本の職人さんが一つひとる手作りだったので、ものすごいクオリティが高いものを作っていたんです。
そうです。すごい有名で何十万もするような家具。デンマークでは、それが代々受け継がれている文化でして、そこに何かヒントがあるかもしれないって思っていたんです。
そこで得たマインドがこの杖だったんです。自然の素材を使っていたり。
部品にもストーリーがある
鉄がもうここだけですもんね。
この鉄も自分たちで廃材を買い取ってきて、自分たちで削り取ったんですよ。一つひとつのパーツにも物語がある。
そういった長く人間が使うってことを意識して作られているもの。それに、ずっと自分がやってきて「いいな」と思っていたものを福祉の分野でやっていたんです。
そうですね。
デンマーク人の暖かさに涙
そうなんです。「住み込みで働いてもいいよ!」って言ってくれたんですけれど、自分が実際に住む家っていうのが用意していないっていうか無かったんです。
でも、向こうに着くやいなや、信頼が先だということで「お前にもプライベートな空間が必要だ!」って言って、自分の住むところを作ってくれたんです。
それで、彼らの家の庭先に自分の住む小屋みたいなのを一緒に建てたんです。
住み込みの家のストーリーはこちら
そう。まっさらな状態から。しかも14日間で作っちゃいました。
それでそこに半年、住み込みされたのですか?
はい。建て終えてから、実際に杖のことをやろうって半年間、修行しました。
福祉用具ロフストランドクラッチの特徴
はい。特徴の1つとして、この革と木を使っていることで、こうグリッドを持ったとき、人って手の汗をちょっとかくんです。
木と革を使うことで人の汗を常に吸収してくれるってのがあるので、例えば
- マメになりにくい
- 手の皮が剥けにくい
という特徴があります。
また、革が汗を吸ってくれるので、皮が剥けにくいんです。
見た目もカッコいいので、人生が変わった
あとは、まず第一にすごいカッコいいと思うんですけれども。
後は「おじいちゃんがやるような杖」っていうのがイメージですけど、福祉用具っぽくないですね。
そう。そこがまず第一のミソなんです。
デンマークでこれを使ってるお客さんのお話を、コーヒー飲みながら話したりしてたんですけれども、「人生変わった!」と言ってくれるお客さんがけっこういるんです。
なんで変わったかというと、よくある杖って病人っぽいですね。メカニック的なもの。
そう。だから、それをアピールしながら歩いてるっていう自覚をしなきゃいけなくて、人に会うとだいたい心配されちゃう。
そうなんです。それがネガティブを感じられて、段々人に会いたくなくなっちゃって、ひきこもりがちになっちゃう。
だけど、この杖を手に入れられてから、まず「何その杖かっこいいね!」って声をかけられるようになった。
主体的に外に出るようになった
そうです。視点がちょっと変わる。
「どこで買ったの?」とか言われたら、自分の口からどんどん情報を提供する側になるんです。
毎日これを持って人に会いたくなって、外に出たくなったって話を多く聞きました。そういうところから人生が本当に変わったって言ってくれましたね。
ロフストランドクラッチのしなりが重要
他に、杖の柄。ものすごく細いので、すぐ折れちゃいそうなイメージですよね?
不安だと思うんですけど、これもう300kgくらいまでは耐えられるんです。
平気でいけちゃいます。
そうなんです。このしなりがかなり重要なポイントで、杖をつくユーザーの方って、毎歩毎歩杖を使いますよね?
その衝撃ってかなり大きいんですよ。いわゆるアルミのパイプで、カチカチ音のするものは、その衝撃を杖自体が吸収することはできないので、人の腕か肩に衝撃を吸収してるんですよ。それをしなることによって、こっちの棒が衝撃をカバーしてくれるんです。
人間への体の負担がものすごく少なくなります。
デザインがいいものっていうのは、ただただカッコいいというものではなくて、機能と見た目両方を兼ね備えたものがデザインだっていうのを、同時に発信していきたいです。
デンマークではロフストランドクラッチが当たり前?
そうですね。流行ってるというよりかは、肘の下で支えるタイプの杖っていうのが「ロフストランドクラッチ」という杖なんですけれども、この杖がかなり一般的な杖です。
特に高齢の方、あと足に不具合を持ってる方っていうのがこの杖を使う。で、日本で高齢の方って大体T字のステッキみたいなの使ってますよね?
逆に向こうでは、どこかに痛みが出た時点でこっちに切り替えるんです。それは完全に予防的な考えで、痛みがひどくならないうちにロフストランドクラッチに切り替えて使う。
これは3本目の足として、常に自分の横にくるように使うんですよ。
T字の杖は体重をかけてはいけない
T字の杖っていうのは、バランスを取るためのものなので、空中に浮かせといて、よろめいたときにコツって突くものなんです。
だから、あれ自体に体重をかけちゃいけないものなんです。
そうなんですけど、あれに体重をかけてしまう。日本人の方は特にそうですよね。
だから、バランスがとれないので、どうしても自分の重心が前にいってしまう。
まっすぐ立つんじゃなくて、杖を持つと、重心が前に出てきちゃうんです。
そうなんです。そういう使い方も含めて、日本にもロフストランドクラッチをなるべく不具合があるなら使ったほうがいいんだよっていう概念を広めたい。
もしご興味ある方は、問い合わせとかしていただければ、いつでも説明してくれますよね?
はい、もちろんです!
ちなみに、いろいろなものを作ってる施設も多いんですけど、欠けてるなってのがやっぱデザインなんですよね。
しかも低単価で売ってしまってるという現状があるので、次の動画では、デザインの観点をプロの目線から、福祉分野でどう応用していけばいいのか?っていうのをお聞きできればと思います。
はい、よろしくお願いします。
宮田尚幸さんのインタビューを終えて
宮田さんインタビューありがとうございました。
第2回目のインタビューでは、宮田さんデンマークで衝撃を受けた福祉用具の杖「ロフストランドクラッチ」について、説明していただきました。
福祉用具って、機能にフォーカスしてしまっているところが多いのですが、おしゃれで機能性もあって、長く使える福祉用具は本当に珍しいですよね。
やはり使う側の目線になって、造ってくれたモノというのは、温かみも感じます。
そして、次回は福祉に足りていない『デザイン』の要素について、専門家の宮田さんにたくさんヒントをいただきました。売りたい商品があるという施設や事業所は、ぜひ参考にしていただければ幸いです。
宮田尚幸さんインタビュー
1:尚工藝のデザイナーが福祉と出会ったキッカケ!宮田尚幸さんインタビューvol.1
2:おしゃれなロフストランドクラッチにかけるアツい想い!宮田尚幸さんインタビューvol.2
3:福祉施設でデザインを取り入れる思考法をプロに聞いた!宮田尚幸さんインタビューvol.3
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ウェルサーチ 障害者・編集チーム

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