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介護美容で高齢者のQOL向上|東京都新宿区の介護美容YNの取り組み

  • 最終更新日:
白い背景に、ピンクや紫の淡い水彩風の模様と金色の小さな星が散りばめられたデザイン。中央に灰色の文字で「介護美容で高齢者のQOL向上 介護美容YNの取り組み」と書かれている。

高齢者の笑顔と心の活力を取り戻す「介護美容」をご存知ですか?

 

代表の箱石志保さんは、祖父母への想いをきっかけに大手企業から転身し事業を立ち上げました。

 

美容を通じて高齢者のQOL向上を目指す取り組みについて、詳しくお話を伺いました。

介護美容YNとは?代表の箱石志保さんの想い

介護美容YNは、高齢者施設や個人宅への訪問美容サービスを提供する事業です。

 

ネイル・メイク・エステなどの美容施術を通じて、高齢者の方に笑顔と心の活力を届けています。

代表 箱石志保さんのプロフィール

経歴

  • 一橋大学大学院MBA取得
  • NTTデータグループにて人事・経営企画を担当
  • 祖父母の介護経験をきっかけに介護美容の道へ

 

転身のきっかけ
祖父母が認知症となり介護休職を経験した際、SNSで介護美容研究所の広告を目にし「これが天職」と直感

美容好きでビジネス志向もあった箱石さんにとって、祖父母への想い、美容への関心、そしてビジネスの可能性が重なった瞬間でした。

 

資格取得と現場経験

  • 2020年4月:介護美容研究所(原宿)で1年間学ぶ
  • 2020年6月:会社員を退職
  • 2020年8月:都内デイサービスで介護職員として勤務開始
  • 取得資格:ケアビューティスト、介護職員初任者研修

事業の立ち上げと成長

開業までの道のり

  • 2021年:介護美容YNを開業
  • 開業4ヶ月目:月収10万円達成
  • 2022年6月:介護職を退職し、介護美容一本で独立

 

事業拡大の工夫
介護美容は新しい分野で就職先が少ないため、自ら営業・開拓する必要がありました

箱石さんは地道な営業活動とSNS発信で事業を拡大。

 

コロナ禍という困難な状況からスタートしましたが、着実に実績を積み上げ、現在はチーム体制での展開も進めています。

 

社名の由来
YNという社名は、事業のきっかけとなった祖父母の名前から取られており、介護美容事業の原点となった家族への想いが込められています。

 

ジュン
大手企業のキャリアを手放してまで飛び込んだ介護美容の世界。箱石さんの原動力は、祖父母への想いだったんですね。

 

MBA取得者がゼロから介護の現場に入り、地道に営業を重ねて事業を軌道に乗せた行動力には頭が下がります。YNという社名に込められた家族への愛情が、サービスの温かさにもつながっているのだと感じました。

 

介護美容でどんな効果がある?サービス内容を解説

室内で、若い女性が高齢者の手を優しく握りながらネイルや手のケアをしている。テーブルには化粧品やネイル用品が並び、介護現場での美容サービスの一場面を表している。

 

——介護美容とは、どのようなものなのでしょうか?

 

——箱石さん(以下敬称略)

介護美容は、高齢者施設に訪問して、ネイルやエステ、フット・ハンドトリートメントなどの美容サービスを提供するものです。一対一でサロンで行うような美容施術を、施設で行っています

 

——介護美容を受けるメリットはどのようなものがありますか?

 

——箱石

美容を楽しんでもらうことが一番の目的ですが、それだけではありません。1対1で20〜30分、しっかりと向き合ってお話しする時間があります。コミュニケーションも非常に楽しんでいただいています。

 

また、お化粧やネイルでは、自分で色を選んだり、デザインを考えたりできます。普段とは違う非日常を味わっていただける点で、とても意義があると思っています。

 

心を開いて会話を通して楽しんでいただけるのも特徴です。施設では職員の方も忙しく、お一人にじっくり時間をかけることが難しい現状があります。そうした背景からも喜ばれているのだと感じています。

 

——具体的にはどのような変化が見られますか?

 

実際の効果を感じた感想

——箱石

前向きになって、表情がすごく硬かった方が柔らかくなるケースもあれば、麻痺の方で「ネイルなんかしても」とおっしゃっていたのに、実際やってみたらすごい笑顔になったという例もあります。

 

爪を綺麗にしたから、髪も綺麗にしておこうといった影響も出てきます。リハビリが嫌いだった方が、爪をいろんな方に見せたいからと歩き回り、それがリハビリになるという嬉しい変化も。また、部屋にこもりがちだった方が「今日は美容の日だから行く」と積極的に外へ出てくださることもありました。

 

外見を整えることによって明るくなったり、前向きになったりすることを、間近で見ていて実感しています

 

認知症の方も多いため、毎回初めましてということも少なくありません。ただ、何度か施術を重ねると「何かあったことがあるみたい」な感じで、少しずつ覚えていってくださることもあり、それがとても嬉しいですね。

 

ジュン
美容を楽しむだけでなく、1対1でじっくり向き合う時間が心のケアにもなっているんですね。

 

「ネイルなんかしても」と言っていた方が笑顔になる瞬間や、リハビリ嫌いだった方が爪を見せたくて歩き回るようになる変化。

 

外見を整えることが、こんなにも心と行動に影響を与えるのだと実感しました。認知症の方が少しずつ覚えてくださるエピソードも、とても温かいですね。

 

利用者への配慮は?施術で気をつけていること

車いすに座る高齢の女性が、テーブル越しに美容スタッフと向き合っている。スタッフはマスクをつけ、女性の手を取りながら優しく会話をしている。テーブルの上にはネイル用品やケア道具が並び、温かい雰囲気で美容サービスが行われている。

——利用される方の特徴はいかがですか?

 

——箱石

ご本人が希望されるというよりは、ご家族が良いと思って予約してくださる方がかなり多いんです。

 

ご家族としては『昔美容が好きだったから今も楽しんでほしい』という想いがあります。また『あまり会いに行けないから、その分美容の時間でリフレッシュしてほしい』と申し込まれる方もいらっしゃいます。

 

——当人が乗り気でない場合の対応は?

 

——箱石

ご家族が良かれと思って予約しても、ご本人に伝えると「私そんなの頼んでない」ということがたまにあります。その場合は「ちょっとやってみませんか」と声をかけて、それでも拒否が強ければ当日でもやめるようにしています。

 

もちろんキャンセル料も取っていないので、やりたい方に楽しんでいただくか、ちょっと興味はあるけれど抵抗がある方に声をかけて「やってみたら楽しかった」と感じていただくかですね。

 

ご家族や職員の方は『せっかくだからやってもらえば』という想いもあるでしょう。しかし、ご本人がやりたくないという意思が強ければ、私は強制しないようにしています。

 

——男性の利用者もいらっしゃいますか?

 

——箱石

多くいらっしゃいます。美容面というよりは、フット・ハンドトリートメントが人気です。足と手のマッサージのような感じなのですが、マッサージは国家資格がないと『マッサージ』と言えません。そのため私たちは『トリートメント』とお伝えしています。

 

「足が軽くなった」とか、「今歩けているからその状態を保ちたい。血流を良くするために定期的にトリートメントを受けたい」といった健康面を考えて、足の施術や手の施術を受ける男性がかなりいらっしゃいます

 

——施術の際に気をつけていることは?

 

——箱石

認知症の方への対応もそうですし、立ったり座ったりという一つの動作だけでも、間違えると骨折に繋がってしまうリスクがございます。ちょっと大げさですが、ありえなくはないので、そういったところは気をつけています。

 

スタッフの方から「リハビリを促しても全然やらなかったけれど、すごく前向きになってくれた」とか、「家に帰りたい、帰りたい」と言っていた方が少し落ち着いて、そういう発言が少なくなったという報告を受けることもあります。また、ネイルをずっと見て楽しんでくださる方もいらっしゃいますね。

 

ジュン
ご本人の意思を何より大切にする姿勢が印象的でした。

 

家族が良かれと思って予約しても、本人が嫌なら無理強いしない。キャンセル料も取らないという柔軟な対応は、利用者ファーストの考え方がよく表れていますね。

 

また、高齢者の体調や動作へのリスク配慮、認知症の方への接し方など、介護の知識があるからこそできる安心・安全なサービスなのだと感じました。

 

これからの介護美容は?今後の展望と課題

高齢の女性が、ピンクと白の布製の花を両手でやさしく持っている。爪にはラメや花柄のネイルアートが施され、華やかな印象。テーブルには花柄のハンカチが敷かれている。

——障害者の方への施術は考えていらっしゃいますか?

 

——箱石

やりたいなとは、もちろん思っています。ただ、具体的にどう動いていくかは、まだ行けていない状況ですね。

 

今は高齢者専門で、介護士や医療関係の方がメインで私もチームを作ってやっているのですが、身体的な障害、知的障害、精神的な障害をお持ちの方だと、また対応が全然変わってきます。そこは勉強なども必要ですし、誰でもできるわけではないかなと思います。

 

私自身が勉強するのか、そういった知識のある方に入ってもらうのか、どちらかになってくるのかなと考えています。例えば高齢者でも、認知症の方への接し方の知識や経験がないと、全然違う対応になってしまいます。障害者の方に対しても、それと同じだなと感じています。

 

——今後の展望についてお聞かせください。

 

——箱石

現在は、どうしてもお金に余裕のある方がメインで、美容にお金をかけられる方が中心になってしまっています。今後はもう少し仕組み作りをして、そこまでお金は払えないけれど利用したいという方にも、何か届けていけたらと思っています

 

介護美容は、まだまだ知らないという方が多くいらっしゃいますので、SNSはもちろんですが、今回のようなインタビューを受けたり、メディアに出演するといった活動も大切だと思います。また、コツコツと営業活動を続けることや、SNSを通じた方とのコラボレーションなど、できることをいろいろやっていきたいと考えています。

 

——最後に、この記事を読んでくださる読者に一言お願いいたします。

 

——箱石

介護美容をご存知の方もご存知ない方も、この機会に、美容を楽しむだけではなく、美容を通じて高齢者の方により良い影響があるということを知っていただければ嬉しいです。ご家族で「やってみたいな」と思う方がいらっしゃいましたら、ぜひご相談いただければと思います。

 

ジュン
「お金に余裕のある方だけでなく、もっと多くの方に届けたい」という想いが伝わってきました。

 

介護美容はまだ認知度が低い分野だからこそ、地道な営業活動やメディア発信が重要なんですね。

 

障害者の方への展開も視野に入れながら、確実にステップを踏んで成長していく姿勢に、事業家としての堅実さを感じます。今後の仕組み作りに期待が高まりますね。

 

インタビューを終えて

介護美容という新しい分野で、高齢者の笑顔と尊厳を守る取り組みを続ける箱石さん。美容を通じたコミュニケーションが、単なる外見のケアを超えて心の支えとなり、利用者の生活に前向きな変化をもたらしていることがよく分かりました。

 

今後も介護美容の認知度向上と、より多くの方にサービスを届けるための仕組み作りに期待が寄せられます。

 

最後までお読みいただきありがとうございました。

 

介護美容YNの詳細

事業名:介護美容YN
代表者:箱石 志保

 

ホームページ

 

メールアドレス:s10ec050a@gmail.com

 

受付時間:
平日(月〜金)9:00 〜 18:00

 

SNS・外部リンク:

Instagram

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久田 淳吾

発達障害(ADHD・ASD)と吃音を抱える40代男性。今まで発達障害の事は知らずに生きてきたが、友人の話を聞いて自分にも当てはまる事が多すぎる事を実感し、病院にて診断を受けると見事に発達障害との認定を受ける。自分に何ができるかと考えた時、趣味の写真でプロの先生に話を聞く機会があり、吃音が強く出ていたことに気がついた先生が『君は吃音持ちだね。だったら吃音の方の気持ちがわかるはず。それを活かして吃音の方の気持ちがわかるカメラマンになったらどうか』という言葉を思い出し、発達障害者として同じ気持ち、舞台に立てる人間として趣味のカメラ、動画編集技術を活かして情報発信をする事を決意。


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