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障害者雇用の難しい問題点とは?現状の課題を先進企業の事例から見てみる!

以前の記事では、

「Harvard Business Review」11月号、
『「出る杭」を伸ばす組織』の特集にて、
紹介されていた自閉症やADHDなどの
人材を活かす先進企業の事例について
お伝えしていきました。

 

その中で、

ニューロダイバーシティ
という概念を持った先進企業の
事例をご紹介しました。

 

「Harvard Business Review」2017年11月号、『「出る杭」を伸ばす組織』の特集にて、自閉症やADHDなどの人材を活かす先進企業の事例が紹介されていました。世界の先進企業では、自閉症やADHDの方たちの才能を活かして、どのように仕事を進めているのでしょうか? ここではまず、その中で重要なキーワードとなってくる「ニューロダイバーシティ(脳の多様性)」とは何なのか?ということをご紹介します。そして、世界の先進企業が、なぜ非定型発達者たちの雇用を積極的にしているのか?実際に雇用したらどのような結果がもた...
ニューロダイバーシティとは?脳の多様性をうまく使った先進企業の事例! - WelSearch ウェルサーチ|福祉の専門家や当事者たちが発信する福祉情報サイト

 

これは、どういうプログラム
なのかと言いますと、

 

 

など、いわゆる

非定型発達者の才能を
導き出すプログラムです。

 

今回は、実際にニューロダイバーシティ
プログラムを実践するにあたって
起こりうる問題点について、
上記の本をもとにお伝えしていきます。

 

障害者を戦力と活用できるよう
雇用していくためのプログラムですが、
どのような問題が起こるのでしょうか?

障害者雇用の難しい問題点とは?

やはりまだまだ非定型発達者の採用に
力を入れている企業は多いとは言えません。

では、なぜこれほど多くの企業が
必要度の高いスキルを持った人材の
採用を避けるのでしょうか?

 

その理由は、この本では以下の3つに
いきつくと言われております。

 

 

つまり、

 

人材を見つけるところから
実際に募集をして、自社に
合うかどうかを見極めるのに
従来の採用よりも手間が
かかってしまうということです。

 

これが主な原因となります。

 

今までの人事関連の流れというのは、
自社に広く適用できるかどうかを

重視しているところが多いです。

 

一方、

 

これら汎用性を重視することは、
ニューロダイバースな人材
(非定型発達者)を採用する
という目標と矛盾してしまうのです。

 

ニューロダイバーシティプログラムを
導入しているヨーロッパ最大級の
ソフトウェア会社のSAPは、

 

SAP
SAPは汎用性の高い
人事プロセスを重視しています。

 

しかし、

 

すべての人に同じプロセスを
適用しようとすると、
自閉症者を取りこぼして

しまうでしょう。

 

と語っています。

 

しかも、このような人材の多くは、
優れた従業員の一般的なイメージに
反する振る舞いをします。

 

例えば、どんなことかと言うと

 

 

などが欠如しているのです。

 

これらを採用基準に入れてしまうと、
非定型発達者は採用の対象外に
なってしまうということになります。

 

しかし、

 

イノベーションを実現するためには、
多様性の向上が求められます。

 

そのためには、グレーゾーンの人材や
アイデアを取り入れる必要が出てきます。

 

従来の人材募集、採用、
育成手法を用いたままでも、
新規採用に際して多様な
人材を探しさえすれば、
それでよいのでは?

 

という考えも出てくるでしょう。

 

でも、

 

2つの大きな問題が原因で
戦力となる非定型発達者の人材を
見過ごしてしまう可能性があるのです。

 

その部分を説明していきましょう。

 

1:面接に関わる問題

1つ目の問題は、従来の手法では
ほぼ必須とされる

面接

にまつわる問題です。

 

非定型発達者の才能は、
特定の部分で突出している
可能性もありますが、
面接が苦手なことがとても多いです。

 

例えば、自閉症者は他人と目を
合わせるのが苦手だったりします。

 

そうすれば、会話もかみ合わないし、
自分の弱点についてもすぐ
語ってしまう可能性もあります。

 

また、過去の面接で苦労した経験から
自信を持てないままの人もいるでしょう。

 

このように、全体的な評価を見たら、
定型発達者より高い評価を得る
可能性はとても低くなってしまいます。

 

先進企業でも、能力や適性の高さを
見抜くのに、数週間~数か月が必要
というデータがあります。

 

2:汎用性を求めてしまう問題

2つ目の問題は、どうしても一般的に

活躍できる人材を求めてしまう
という問題です。

 

汎用性を求めてしまうと、

非定型発達者は、通常ですと、
今までの慣行から脱する必要があります。

 

だから、マネージャーは、
標準化をすることによって
慣行の遵守を徹底するよりも、
それぞれの業務環境を整える
方向へとシフトすることになります。

 

例えば、照明の変更やノイズ対策として
ヘッドホンをするなど、
ちょっとした支援なので、多額な
コストが必要ということもありません。

 

【スウェーデンの障害者雇用】

 

障害者雇用に伴う現状の課題も出てくる

非定型発達者の才能を活用していく、
ニューロダイバーシティプログラム
導入してきた企業は、
多くの課題にも直面してきました。

 

潜在的な候補者はたくさんいるが、
その多くは、やはり簡単には
見つからないのです。

 

なぜなら、多くの大学は、
定型発達者か非定型発達者かという
切り口による学生の分類を
していないし、当事者も
自覚があることは少ないからです。

 

このような状況を受け、
パソコン関係で有名なHPE
(ヒューレット・パッカード・エンタープライズ)
やマイクロソフトでは、従来にない

 

勤労体験プログラム

 

の導入に向けて、大学や高校を
支援しています。

 

具体的にどのようなことを
やっているかというと、コンピューターや
ロボットプログラミングなどを
支援する活動を行っています。

 

しかし、

 

課題というのは、発生してきます。

 

1:採用から漏れた人材の確保

1つ目の問題は、採用から
漏れて希望を失った候補者を
めぐる課題です。

 

とある企業では、不採用となった
候補者の両親から社長に
手紙が届いた事例があります。

 

両親は息子のニューロダイバーシティ
プログラムの参加を受けて

 

今度こそ有意義な
職に就けるでしょ!

 

と期待を膨らましていただけに、
不採用の通知がきてしまい、
落胆してしまったのです。

 

最終的には、
プログラムの管理者たちが
候補者の両親と話し合い、
問題は沈黙化したとのことです。

 

その他にも、公平性や意志疎通の
在り方をめぐって、課題が
持ち上がる可能性もあります。

 

事例としては、過剰刺激症候群を
抱えるプログラム対象者に
個室を与えていたケース。

 

しかし、近くの部署では
同じくらいのスペースに4人を
同じ部屋に入れていたので、
不満の声が上がってしまったのです。

 

事情を説明すると不満は収まりました。

 

自閉症者は一般的に本音を
あからさまに表にだすので、
そのせいで反発を招いた
事例もあるとのことです。

 

一方で、

 

ニューロダイバーシティプログラムの
導入に伴って仕事が増えた

というマイナス面の声もあります。

 

なぜなら、プログラム対象者の一部は、
物事を突き詰める傾向があり、
製品の欠陥を見つけても、
修正する意味があるのかどうか、

あるいは追加の指示を求めるべきか
どうかをなかなか判断できないからです。

 

2:ストレスをどう管理するか?

もう1つの課題は、非定形発達者の
ストレスをどう管理するか?
という課題です。

 

プログラム対象者は、システムの
停止によって仕事のルーティンが乱れるなど、
予想もしなかった不可抗力の
出来事が起きると、激しい不安に
襲われたといいます。

 

対象者のストレスに
配慮する必要がある

 

という強い意見が相次いだ。

 

ストレス対策として時短を
導入する例もあるが、仕事の締切が
近づいているときなどは特に、
問題を引き起こすおそれがある。

 

このような状況に対処するには、
問題が大きくなる前に気配を察知して
火消しができるよう、
適材を配慮しておく必要がある。

 

多くのマネージャーがこのような
支援策があれば、自分たちはほぼ
通常通りに業務をこなせるだろう
と語っていた。

 

人材マネジメントを転換する必要が出てくる

ニューロダイバーシティプログラムは、
最大限に力を発揮できる環境に
各人を配慮するマネジメント手法の
実践を企業とそのリーダー層に働きかける。

 

企業は従来、型にはまるような
従業員を求めてきました。

 

なぜなら、全員が全く同じ形を
しているほうが、全体を
まとめやすいからです。

 

しかし、

 

そうなってしまうと従業員は、
企業の革新に必要な個性を
封印しなくてはならない。

 

したがって、企業は従来と異なる
哲学を受け入れていかなければ
ならないということになります。

 

つまり、不規則なピースをうまく組
み合わせるという難題への挑戦を、
マネージャーに求めるのである。

 

これは、従業員を取り替え可能な
「人的資源の器」としてではなく、
個性を持つ資産そのもの
として扱うことを意味する。

 

マネージャーの仕事は
今まで以上に大変なものになるが、
それ以上に企業が得るものは大きいです。

 

競争力強化に繋がりそうな、
従業員の資質や多様な視点を、
いっそう引き出すことができるからです。

 

【障害者の驚異的な絵の才能】

 

編集後記

いかがでしたでしょうか?

 

今回は、ニューロダイバーシティ
プログラムを実践するにあたって、
起こりうる問題点について、
Harvard Business Review
記載されているものを抜粋しました。

 

ある才能に特化した人材を活かす
障害者雇用をするにあたっても

 

 

という問題点が出てきます。

 

このような問題を解決するために
世界の先進企業では、7つの工夫を
していると本では記載されています。

 

それに関しては、別記事で
詳しくお伝えしましたので、
参考にしていただければ幸いです。

 

以前の記事でもご紹介しましたが、世界の先進企業が非定型発達者の障害者雇用における取り組みを書ききれなかったので、新たにまとめます。 「Harvard Business Review」2017年11月号、『「出る杭」を伸ばす組織』の特集にて、自閉症やADHDなどの人材を活かす先進企業の事例が紹介されていました。以前の記事では、「ニューロダイバーシティ(脳の多様性)」という概念を持った世界の先進企業の事例をご紹介しました。 ▼関連記事▼  自閉症 ADHD 統合運動障害 失語症 計算障害 など、いわゆる「非定型発...
先進企業の障害者雇用における取り組みと7つの工夫!最先端のマネジメントを紹介 - WelSearch ウェルサーチ|福祉の専門家や当事者たちが発信する福祉情報サイト

 

 

今後、ますますニューロダイバーシティ
プログラムが広がって、
障害者雇用が当たり前の
世の中になっていくことを願います。

 

最後までお読みいただき、

ありがとうございました。

 

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日野信輔

株式会社Nextwel代表取締役。Welsearch編集長。ソーシャルビジネスに特化したWebマーケター。障害者プロデュース・福祉事業所やNPOの伴奏支援などしております。得意分野:工賃アップ/障害者の仕事づくり/集客。詳しいプロフィールはこちら→日野信輔
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