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視覚障害者への歩行訓練やグッズ紹介で日常生活もサポート|日本点字図書館訪問記〜第2回〜

点字図書館訪問記第2回

今回、点字や録音による本の貸し出しや作成、視覚障害の方へのサポートなどを行なっている日本点字図書館を訪問させていただき、視覚障害の方への活動内容を伺って参りました。日本点字図書館の訪問記、第2回目となります。

 

今回の記事では、視覚障害の方への自動販売機の表記や、点字図書の作成状況、視覚障害の方への歩行訓練の内容などをお伝えいたします。

 

ジュン
普段街中で存在してもあまり意識できていない点字。そして視覚障害の方への配慮などについても今回紹介してありますので、ぜひ最後までお読みいただければ幸いです。

 

第一回目はこちらです。

視覚障害者に読書環境を|日本点字図書館を訪問記〜第1回〜

視覚障害者への自動販売機の工夫と問題

館内を案内していただいている途中、館内の休憩場所を通りかかります。その際、設置してある自動販売機についての説明をしていただきました。

 

自動販売機自体は街中にある自動販売機と同じなのですが、商品説明の点字シールが貼られています。

 

 

日本点字図書館
今はすべて冷たい商品ですが、まず点字シールの1行目で冷たいか、温かいかの判別できます。

 

2行目以降は商品名、この商品は「さらさら とまと」、そして「かん ぷるとっぷ」、「350g」、最後に「110えん」と金額を記しています。

 

缶入り飲料もプルトップ缶のほかボトル缶などもありますので、その違いも記載しています。

 

ジュン
文字として情報にすると、たくさんの項目がありますね。

 

日本点字図書館
そうですね、飲み物を買う時に必要な最低限の情報を記載してあります。

 

同じ缶入り飲料でも缶の口が閉まるボトル缶なのか、閉まらないプルトップ缶なのかは知りたい点だと思いますし、容量も気になると思いますので、こちらも記載しています。

 

ジュン
たしかに、持ち歩きたいと思ってふたが閉まると思っていたのにプルトップ缶だったら、不便ですよね。

 

こういった自動販売機の表記ですが、街中ではあまり見ないですね。

 

日本点字図書館
自動販売機の台数はとても多く、商品の入れ替えも激しいので、難しいのかもしれません。

 

ジュン
自動販売機に関してもやはり細かい配慮をされているんですね

点字図書制作の流れ

次の案内場所として、点字本制作について紹介いただきます。

 

 

日本点字図書館
点字の制作に関してはまず図書を選定して、ボランティアさんに依頼するという流れは録音図書と同じなのですが、録音スタジオのように特別な環境は必要ないので、ご自宅で作業をしていただいています。

 

以前は1点1点手作業で点字を打っていたのですが、現在はパソコン点訳です。

 

ジュン
場所をそれほど選ばないというのは大きなメリットですね。

 

日本点字図書館
ボランティアさんのご自宅で入力いただいた点訳データが届いたら、次に2人1組で校正作業に入ります。

 

1人は実際に点字図書を読むように、点字用紙に打ち出したものを触って読み上げ、もう1人は読み上げられたものと原本が一致するかどうか活字を見ながら校正します。

 

ジュン
校正作業は1人ではできない作業なんですね。

 

日本点字図書館
精度を高めるために、初回は2人で校正しています。その後、誤りを修正し、先程とは別のスタッフがもう一度最初から全て読み直します。このような校正作業を2回以上行ない、ようやくデータが完成。

 

完成データを点字専用のプリンタで印刷し、連続用紙を切り離した後、バインダーに綴じ、装丁を行ないます。

 

完成した点訳データは全国の点字図書館や公共図書館、ボランティア団体などが加盟しているサピエ図書館にアップしています。

 

ジュン
点字図書は基本的にバインダー形式なのですね。

 

日本点字図書館
バインダー図書は破損があった場合にそのページだけ差し替えができるというメリットがあるのです。

 

販売している点字図書など背表紙をつけ製本したものもあります。

 

視覚障害者への訓練

点字図書の作成について一通り説明を受けた後、今度は点字図書館の事業の一つである視覚障害者への訓練について説明を受けました。

白杖の使い方と歩行訓練

日本点字図書館
日本点字図書館の主な事業の1つに訓練事業があります。白杖を使った歩行訓練、パソコンなどのICT訓練、点字訓練などです。

 

当館1階の「わくわく用具ショップ」で白杖を取り扱っていますが、正しく・安全にお使いいただくために歩行訓練士がマンツーマンで訓練を行ないます。

 

ジュン
ICT訓練はどのような内容ですか?

 

日本点字図書館
パソコンを画面やマウスを使わず、画面読み上げの音声のみで操作したり、文字を拡大して表示させ操作する訓練です。

 

スマートフォンの訓練もお問い合わせが非常に多いです。

 

ジュン
訓練内容はどのようなものですか?

 

日本点字図書館
訓練内容はその方のご要望に応じて決めていきます。

 

「自宅から職場まで1人で歩けるようになりたい」とか、「音声パソコンを使ってインターネットを使えるようになりたい」とか、訓練を受ける方それぞれ目指すものが違うので、その方に応じた訓練内容になります。

歩行以外の訓練やグッズ

日本点字図書館
その他にも日常生活を安全に過ごすための訓練として、調理訓練などもあります。

 

「この手順なら安全に調理ができる」とか「このグッズを使ったら調理しやすい」などをお伝えしながら訓練を行ないます。

 

ジュン
生活する上で料理も大切な項目ですし、まずは何よりも安全にという部分がとても大事ですね。歩行訓練も同じかと思いますが。

 

日本点字図書館
例えば「わくわく用具ショップ」で黒いまな板を販売しているのですが、黒いまな板の上に大根など白い食材をのせると、コントラストがはっきりして手元がよく見えるので、使いやすくなります。

 

ジュン
訓練だけでなく、さまざまなグッズなどもこういう部分で大きく役立ちますね。

 

何度も申し上げてますが、やはり人によって状況は千差万別なのでその方にあったやり方が大事であると。

 

日本点字図書館
最近は電磁調理器も人気があります。当館で取り扱っている商品には、目安となる位置や主要なボタンに触ってわかるシールを貼るなどの加工を施しています。

 

ジュン
その他にもいろいろな視覚障害の方に関して便利なものがたくさんありますね、この商品もそうですか?

 

弱視の方向け小銭入れ

 

日本点字図書館
こちらの商品は両側に3か所ずつ丸いくぼみがありますが、このくぼみに6種の硬貨を分けて収納できます。

 

通常のお財布は硬貨が混ざってしまうので、視覚障害者には使いにくいのですが、このように分けて収納できると出したい硬貨をスムーズに取り出すことができます。

 

ジュン
普段私たちが意識していない部分でも、視覚障害の方に関してはこういう工夫がなによりありがたいものですね。

 

日本点字図書館
そうですね。当館は商品の販売だけでなく、みなさまのご要望をもとに商品開発も行なっています。当館オリジナルの商品をお役立ていただければ幸いです。

 

ジュン
実際に必要とされている方の意見があってこその商品ですね。

日本点字図書館
当館では触知案内図や点字サインの製作・監修も行なっています。駅や公共施設などに設置されている「触ってわかる地図」や「点字案内版」など視覚障害者にとって必要な情報が正しく伝わるお手伝いをしています。

 

例えば館内にはディズニーランドの触地図の元になるものを展示していますが、完成までには多くの視覚障害者に実際に触れていただき、わかりやすさ、使いやすさを確認しながら製作しました。

点字ブロックの問題

続いて、普段街中でもよく見かける点字ブロックについての説明を聞かせていただきました。点字ブロックについては視覚障害の方への物とは理解していますが、それでも話を聞いて、実際に理解しきれていなかった点が多くありました。

 

 

日本点字図書館
点字ブロックの多くは黄色です。

 

「黄色でなければならない」という決まりはないのですが、黄色は他の色とのコントラストが高いので周囲の色と区別しやすく、弱視の方でも見えやすいため、大半の点字ブロックには黄色が使われています。

 

ジュン
たしかに、点字ブロックは黄色というイメージが強いですが、他の色もあるのですね。

 

日本点字図書館
弱視の方には点字ブロックの色が路面の色と大きく異なることに意味があります。

 

しかし、景観の問題なのか、残念ながら路面と同じような色の点字ブロックが敷いてある所もあります。また、せっかく敷いてあっても配置に問題があり、意味をなさない場合もあります。

 

ジュン
景観問題もたしかに軽視はできませんが、やはり障害を持たれる方にとって使いにくいというのは本末転倒な気もします。

 

本来の点字ブロックの意味を考えると、正しく色などを配慮していただきたいなという思いは出てきますね。

視覚障害者からのお願い

日本点字図書館
見学にいらした方には「点字ブロック上に物を置かないでください」とお願いしています。

 

高田馬場駅から当館まで、点字ブロックが敷いてあるのですが、駅に近く商店も多いため、点字ブロック上に駐車・駐輪されていることが度々あります。

 

 

ジュン
視覚障害の方にとって数少ない手がかりが使えないのはかなり問題ですからね。

 

他の地域でも同様のことは多々あるなとは感じています。

 

日本点字図書館
また、自転車が点字ブロックの上にのっていなくても、点字ブロック周辺に自転車があると、その場を通る際に車輪の間に白杖が入って、折れてしまう、曲がってしまうという危険があります。

 

そのため、点字ブロック上だけでなく周囲にも気を配っていただければと思います。

 

ジュン
障害をもっていないと、実際点字ブロックがどう使われているか意識できていないというのが大きな問題かなと思います。そのような情報の周知をするのがとても大切になってきますね。

日本点字図書館訪問 第2回まとめ

日本点字図書館訪問第2回、点字図書作成の流れや、視覚障害者への訓練などについてお話を聞かせていただきました。

 

視覚障害者が生きていく上で必要なこと、そして周りの方が考える配慮などもいろいろ重要だなと感じた第2回。

 

日本点字図書館訪問、第3回では点字図書の保管場所についてや、点字図書の抱える問題などを紹介いたします。 

 

▼日本点字図書館シリーズ▼

視覚障害者に読書環境を|日本点字図書館を訪問記〜第1回〜

 

 

最後までお読みいただきありがとうございました。

 

日本点字図書館について

公式HP:日本点字図書館ホームページ

 

住所:〒169‐8586 東京都新宿区高田馬場1‐23‐4

 

電話:03‐3209‐0241(代表)
FAX:03‐3204‐5641

 

アクセス

 

JR山手線、西武新宿線、東京メトロ 東西線 高田馬場駅

再最寄りは JRおよび西武新宿線 戸山口より徒歩5分

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久田 淳吾

発達障害(ADHD・ASD)と吃音を抱える40代男性。今まで発達障害の事は知らずに生きてきたが、友人の話を聞いて自分にも当てはまる事が多すぎる事を実感し、病院にて診断を受けると見事に発達障害との認定を受ける。自分に何ができるかと考えた時、趣味の写真でプロの先生に話を聞く機会があり、吃音が強く出ていたことに気がついた先生が『君は吃音持ちだね。だったら吃音の方の気持ちがわかるはず。それを活かして吃音の方の気持ちがわかるカメラマンになったらどうか』という言葉を思い出し、発達障害者として同じ気持ち、舞台に立てる人間として趣味のカメラ、動画編集技術を活かして情報発信をする事を決意。
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