前編では、ローランズの事業概要と、植物の成長に学んだ「人を咲かせる」支援の哲学について伺いました。
| 東京・原宿に本店を構える株式会社ローランズは、「みんなみんなみんな咲け」の願いを込めたスローガンを掲げ、障害者雇用の新しいモデルを切り拓いています。 従業員の約7割が障害のある方々という同社では、花屋事業を軸に、就労継続支援A型事業所の運営、企業向けの障害者雇用サポートなど、多岐にわたる事業を展開しています。 代表の福寿満希氏が花を選んだ理由、そして植物の成長から学んだ「人を咲かせる」支援の哲学とは何なのでしょうか。 障害ではなく「その人自身」を見るという姿勢が、どのように職場環境... 「人を咲かせる花屋」ローランズ 障害者雇用の新しいモデルを創る 前編 - WelSearch ウェルサーチ|福祉の専門家や当事者たちが発信する福祉情報サイト |
「種を見る」「土を選ぶ」といった九つのバリューを軸に、足りないものを補うのではなく、あるものを伸ばすという独自のサポート方法を実践しているローランズ。
後編では、この哲学が実際の現場でどのように具体化されているのか、より深く掘り下げていきます。
業務の細分化によって「できる」を増やす工夫、グループホームでの自立支援、そして商品価値へのこだわりまで、ローランズの取り組みの実際について、引き続きお話を伺いました。
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業務の細分化と「できる」を増やす環境づくり
-- お話を伺っていると、障害者雇用というと障害に目を向けがちですが、ローランズでは障害は障害として理解しつつも、一番大事なのはその人自身を見るということを大切にされていると感じます。そういった姿勢があるからこそ、皆さんが生き生きと働けるのだろうと思います。
福寿
障害に関わらず、その人と向き合っていくということが非常に大事だと思っています。おっしゃっていただいた通りですね。
-- ローランズは就労継続支援A型事業所として、一般企業などでの就職に向けた訓練も行う場所ではありますが、一般の企業と変わらない部分が大きいのでしょうか。
福寿
ローランズで工夫していることとしては、どんな方が来ていただいても花屋で働くという夢が叶いやすいように、業務を細分化して分業制にしている点です。
例えば、通常は受注する、製作する、配送するという3工程に分かれるところを、ローランズでは10工程ぐらいに業務分解しています。
花を製作するという部分も7工程ぐらいに分割していて、例えば先端恐怖症でハサミが使えなかったとしても、ラッピングをふんわりと仕上げていくという作業が得意なスタッフもいるので、そこだけを特化してやってもらう形にしています。
アレンジの花だけを作っていく人、その手前のグリーンのセットをする人、アレンジメントのベースを作っていく人、というように工程を分解した中の一つ一つのプロフェッショナルを作っていく。
そのプロフェッショナルな仕事を繋ぎ合わせて一つの作品を作っています。
そうすることで、花屋で働きたいという夢を叶えやすくなったり、ハサミが持てなくても花屋で働けることが実現したり、マルチタスクはできないけれども一つのことであれば集中特化して仕事をしていくことができるという方が仕事に参加できるようになります。
こういった業務の分解、工程分解は、他の花屋ではあまりやっていないことかなと思います。
-- そういった配慮があることで、いろんなことに関われる。できるということから自己肯定感が上がっていくのでしょうか。
福寿
はい。工程が一つできたら、また次の工程ができるようにしていくというふうに、できることを増やしていく形をとっています。
障害者雇用の現場では、どうしてもできないことが見つかるとどんどん仕事の範囲が狭まっていくという状況があるかと思いますが、そこを引き算ではなく、足し算で働いていくような環境作りをしています。
-- できることをどんどん増やしていく中で、ローランズに入った障害のある方々にはどんな変化が起きていますか。
福寿
「私なんて」と思っていた方が「私にもできる」というふうに考え方を変えていったり、自信をつけていく変化がありますね。
今まで仕事が2週間しか続かなかったという方が、もう10年連続で働けるようになったという例もあります。
そういった方が今もローランズで働いていたりするんですが、やはり自信の変化というのは大きいと思います。
-- 花屋という仕事は製造作業もありますが、お客様と接する機会もあると思います。その点で、一般的な軽作業などとは異なる働き方の環境があるのでしょうか。
福寿
お客様に接客をする仕事と、製造に徹する仕事とそれぞれあるのですが、お客様の声がすごく届きやすい環境だと感じています。
私たちはお客様の「ありがとう」や「おめでとう」の場面をお手伝いさせていただいているという状況なのですが、花を準備した後に、お客様からご連絡をいただいて「本当に素敵なお花で感動しました」「お花のおかげですごくいい会になりました」といった言葉をいただくことがあります。
そういった声は製造チームにも共有するようにしていて、お客様の声が伝わってくると、みんなのモチベーションが上がりますし、嬉しい気持ちになります。
それがまた次も頑張ろうという活力になっていると思います。
-- 誰に届くのかが見える仕事というのは、やはりやりがいにつながりますね。
福寿
人の顔が見える仕事というのは、よりやりがいに繋がりやすいと思います。
-- お客様の反応でも、特に印象に残っているものはありますか。
福寿
たくさんありますが、まず製造に障害当事者が関わっている・いないに関わらず本当に「商品そのものが素敵だから売れていく」ということを目の前で見ることは嬉しいことです。
印象に残っているエピソードとしては、例えば結婚式の花を制作メンバーと一緒に納品して、自分たちが作った商品によって結婚式を彩り、人生に一度の花にも関わることができたというのを目の前で見て、「自分が障害と向き合っていることを忘れました」と当事者が話してくれたことがあります。
花の仕事は、人が生まれたとき、生きている中でのお祝いの場、そして最後、亡くなるときにも花が添えられる、人生の節目に関わる仕事なんです。
その節目に関わった瞬間に、心にぐっとくる、残るものがあって、嬉しいと感じるんですね。スタッフとしてそれを感じることができるのは、やはり大きいと思います。
納品したり、その場に立ち会ったりする瞬間というのは、この仕事の素晴らしさを実感できる瞬間です。
そんな実感から、もっと花の仕事が好きになっていくスタッフも多いですね。仕事の素晴らしさと、自分の花がどう使われているのか、自分の商品がどう役に立っているのかを感じられることは、非常に大事だと思います。
この徹底した業務分解が印象的でした。
ハサミが使えなくてもラッピングが得意なら、そこに特化できる。
マルチタスクが苦手でも、一つのことに集中できれば活躍できる。
「引き算ではなく足し算」という言葉の通り、できないことで仕事を狭めるのではなく、できることを増やしていく環境づくりがされています。
「2週間しか続かなかった方が10年働けるようになった」というエピソードは、この取り組みの成果を如実に物語っていると感じました。
そして、お客様の「ありがとう」「おめでとう」の声が直接届く環境が、さらにスタッフのやりがいを高めているんですね。
グループホームと自立支援の取り組み
-- ローランズでは、自由が丘にグループホーム「ローランズハウス」も運営されていますね。グループホームと就労支援事業との連携について教えていただけますか。
福寿
働く中で働くことが継続できなくなるパターンというのがやはり出てきます。
そのときに、家庭や生活面での出来事が仕事を続けることに影響が出てくるというケースが見られました。
多くの方が実家で親御さんと暮らされているのですが、親子の関係が密接すぎるケースもあり、仕事上で自分で何かを決めることや、今後仕事とどう向き合っていくかということにおいて、自分の判断ではなく「親から言われた言葉」があまりにも影響してくるという状況がありました。
そこで、実家から離れて自分でいろんなことを決めていく生活をした方がいいと判断したんです。
実は、たった1人の当事者の状況を変えたいというところからグループホームをスタートしています。
親子関係の悩みが仕事に影響が出ないように、親御さんではなく自分で決めていくという習慣をつけていくために、2019年にグループホームをスタートして、今6年目になります。
-- 自立という意味では、仕事ができればいいというわけではなく、朝きちんと起きて、基本的な生活習慣を整えるという基礎ができないと、仕事に影響が出てしまうということでしょうか。
福寿
そうですね。仕事ができても休憩を多く取ることが続いたり休みがちになって出社し辛くなることもあります。また体調管理が行き届かず、出社したときにパフォーマンスが発揮できなくなることもあります。
自分のことは自分でコントロールできるように、大きな一歩として親子関係から自立する、精神的に自立するということは非常に大事だと思います。
-- 仕事ができても、人間関係が苦手な方も多いと思います。グループホームで一緒に暮らすことは、そういった人間関係の成長にも繋がるのでしょうか。
福寿
はい。共同生活をする上では、いろんな方の生活や価値観に触れることになります。お手洗いやお風呂を共同で使っていくことで、他の人のためにきちんと掃除をする、次の人が使うことを考えて行動していくということもありますし、生活をしていると冷蔵庫の使い方や階段の上り下りの仕方など細かなところでも気になることが出てきて、それをきちんと話し合いで共同生活の在り方を一緒に決めていくという、そのプロセスこそが大切です。
誰かの生活を受容していくという意味では、人間関係のトレーニングにも大きく繋がっていると思います。
この原点に、ローランズの姿勢が表れていると感じました。
親子の密接な関係が仕事の継続に影響を与えているという課題に向き合い、精神的な自立を支援する。
共同生活の中で、掃除や話し合いを通じて他者を受容していく経験は、人間関係のトレーニングにもなっているそうです。
仕事ができればいいのではなく、生活の基盤を整えることが仕事のパフォーマンスにも繋がる。就労支援と生活支援を一体的に捉える視点が、ローランズの強みなのだと理解しました。
環境配慮と商品価値の追求
-- ローランズではSDGsの取り組みも行われていると伺っています。どのようなことに取り組まれていますか。
福寿
SDGsを特に意識しているわけではないのですが、ローランズでは「みんなみんなみんな咲け」というスローガンを掲げて、諦めない美学といいますか、障害の有無に関わらずだれもが咲けるということを社会に伝えていくことを使命としています。
それを商品でどう伝えていくかと考えたときに、花というものの可能性を最後まで諦めないという考え方から、例えば一度結婚式などで使われた花を回収してドライフラワーに加工して、もう一度商品化していく「フラワーバトン」という取り組みを行っています。
一度役割を終えて本来であれば捨てられてしまう花を再活用して、再び価値を見い出していくんです。
また、カフェでは規格外のフルーツを使ってスムージーを提供しています。
誰かがこれはもういらないもの、規格外だと定めたものを、私たちの手で最高の価値に変えていく。
花やフルーツといった素材一つ一つを最後まで大切にしていく、最後まで可能性を諦めずに向き合っていくということを商品に込めています。
これがSDGsの観点からは、12番の「つくる責任 つかう責任」に該当するとして、商品をピックアップしていただくことも多いですね。
-- そういった取り組みは、もったいないという意識や再生という観点でも、働く方々の成長にも繋がるのでしょうか。
福寿
おっしゃる通りです。
-- 福祉業界は経営状態が厳しいという話をよく聞きますが、ローランズではそういった苦労はありますか。
福寿
昨年2024年4月の報酬改定で、全国の事業所の10%が廃業となり、1万人ちかいの当事者の解雇が行われました。その大半がA型事業所からだったということがニュースでも報道されました。
私たちもA型事業所として、この報酬改定の対象当事者ではあったのですが、特にその影響を受けることはありませんでした。
今回の報酬改定は、生産活動収入、つまり売上から当事者の給料が捻出できているのかどうかを評価の軸にするというもので、要は当事者が働く分の仕事を獲得できているかどうかというところが問われたのですが、私たちはそれができていたため報酬改定の影響を受けることはなく、むしろ報酬が上がりました。
ただ、それをキープしていくことは非常に大変です。
どんなビジネスも楽なものはないと思いますので、そういう意味では普通のことかなとは思うのですが、やはり障害と向き合う当事者と共にサービス提供をする中で一定の配慮を行った上で働いていると、納品が明日で今日が大詰めというときに、必ずしもスタッフ全員で踏ん張ることができないのが正直なところです。忙しくなると、そのバタバタの雰囲気から来られなくなる精神障害の当事者もいます。
それを出勤できているスタッフで何とかカバーするという状況にあるので、勤怠が不安定なメンバーと働くことの大変さや、その中で納期を守っていかなくてはいけない部分は、正直大変だと感じますし、仲間の理解が非常に重要だと思います。
仕事を獲得することももちろんですが、クオリティと納期を守って納品し続けていくということも非常に大変なことだと思いながら、それでも現場の責任者はじめ仲間がたくさんの工夫を重ねて、リピートをいただくようなサービスを日々提供しております。
-- お客様は障害者が作っているから買うのではなく、商品が良いから買う。障害を持っていてもしっかりとした仕事をしているからこそ、利用されるということですね。
福寿
商品が良いからこそ、ですね。
私も商品を販売するときに、障害者が作っているから買ってくださいという説明は一切商品につけていません。
例えば市役所などでクッキーなどを売っているときに「この商品を障害者が作っています、だから買ってください」というような同情コミュニケーションは絶対しないと決めています。
それが理由で買っていただくのは1回、商品が良い場合は複数回商品を購入いただけます。2回以上のお取引になることを目指した販売活動を行っています。
-- 障害者が作ったものだからと同情で買われると、本当の意味で商品価値を認めてもらえませんし、それでは働く方々の自信にも繋がらないですよね。
福寿
売っている障害のある当事者も、自分が障害者だから買ってもらうということはあまり自信に繋がらないと思っています。
自分が作った商品が素敵なものだから売れていくということが自信になっていくと思うので、そういう意味でもお客様とのコミュニケーションは、その人がその商品を受け取ったときにモチベーションが上がるような商品を一緒に作っていくということが大事だと思っています。
-- 花という素材の良さと、お客様の良い反応があるからこそ、従業員の方もモチベーションが上がって、さらに良い仕事ができるという、本当に良い循環ですね。
福寿 おっしゃる通りです。
-- では最後に、この記事を読んでくださる方に向けて一言お願いします。
福寿
誰もが、小さいときに夢見た仕事があったり、本当はこういう仕事に就きたいという願いや夢を持っていた、または持っていると思います。
ローランズは、障害や難病と向き合う子どもたち大人が、なりたかった職業に就けるチャンスを広げていける会社になりたいと思っています。
今は花の仕事に就きたかった人たちがその夢を叶えられるような職を作っています。
花屋になりたいという夢を持つ方は、ぜひその夢を叶えることに挑戦しに来てもらえればと思っております。
同じように花が好きな方がたくさんいます。原宿、天王洲、晴海で見学会も定期開催していますので、気軽に遊びに来ていただければと思います。
規格外のフルーツを使ったスムージー。
「誰かがいらないと定めたものを、最高の価値に変えていく」という考え方が、まさに「人を咲かせる」哲学と重なります。
そして何より印象的だったのは、「障害者が作っているから買ってください」という同情論を絶対にしないという姿勢です。
商品そのものの価値で選ばれることが、作り手の自信に繋がる。
2024年4月の報酬改定で多くのA型事業所が廃業する中、ローランズが影響を受けなかったのは、この「商品価値」へのこだわりがあったからこそ。
福祉と事業の両立は決して簡単ではないけれど、本質を見失わないローランズの姿勢に、希望を感じました。
インタビューを終えて
「私なんて」から「私にもできる」へ。
業務の細分化によって一人ひとりの強みを活かし、グループホームでの生活支援を通じて精神的な自立を促す。
そして、同情ではなく商品の価値で選ばれることで、働く人たちの自信を育てていく。
ローランズの取り組みは、障害者雇用という枠を超えて、すべての人が自分らしく働ける社会のあり方を示しているように感じられます。
「みんなみんなみんな咲く」というスローガンの通り、誰もが自分の花を咲かせられる環境を作り続けるローランズ。
その挑戦は、これからも多くの人に希望と可能性を届けていくことでしょう。
花屋になりたいという夢を持つ方、花が好きな方は、ぜひ一度ローランズの見学会に足を運んでみてはいかがでしょうか。そこには、夢を叶えるチャンスが待っているはずです。
株式会社ローランズ 概要
ホームページ:
https://lorans.jp/
オンラインショップ:
https://lorans.shop-pro.jp/
Instagram:
https://www.instagram.com/lorans.flower/
住所:
〒151-0051 東京都渋谷区千駄ヶ谷3丁目54−15 ベルズ原宿ビル1F
電話番号:
03-6434-0607
創業年月:
2013年2月1日
代表者:
福寿 満希
グループ会社:
一般社団法人ローランズプラス
グループ従業員数:
140名(うち障害者・就労困難者合わせて約100名)
運営施設:
ローランズ原宿本店
ローランズHARUMI FLAG店
Bloom Factory -Flower原宿1
Bloom Factory -Flower原宿2
Bloom Factory -Green天王洲
ローランズハウス自由が丘
ウィズダイバーシティ有限責任事業組合(障害者共同雇用の取り組み):
https://with-d.com/
リクルート情報:
「人を咲かせる人であれ」
ローランズの「人を咲かせる仕事」に関心のある方は管理スタッフ・就労継続支援A型事業所採用の詳細ページよりご確認ください。
https://lorans.jp/recruit
障害者の共同雇用に関心のある方は下記よりご連絡ください。
メッセージ:
ローランズは「みんなみんなみんな咲け」というスローガンのもと、障害者雇用を推進。企業と地域の福祉事業者が連携して障害者雇用を広げる「ウィズダイバーシティ有限責任事業組合」を発起し、組合の参加企業拡大・一般就労者の輩出など、日本の障害者雇用の変革を目指しています。
「障害者雇用」にご関心のある方はぜひ上記窓口よりご連絡ください。
久田 淳吾
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