災害には備えが肝心!障害や病気を抱える方への災害避難マニュアルシリーズとして、お届けしております。
今回は「避難所での生活」について紹介したいと思います。
自宅にいては危険な場合、安全を確保するために避難する場所である避難所。
生活環境が一変してしまい、快適さの問題などがある避難所で障害や病気を持つ方はどのようにすれば少しでも快適に過ごせるのか?
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避難所とは?
避難所とは、自然災害や火災、その他の緊急事態が発生した際に、住民が一時的に安全を確保し、生活するための場所です。
通常、地域の学校や体育館、公民館、スポーツセンターなどが避難所として利用され、必要に応じて仮設住宅やテント村が設置されることもあります。
避難所の設置と運営は自治体や政府機関、赤十字などの支援団体が担当し、被災者に基本的な生活支援が提供されます。
食事や水の配給、衛生管理、医療サービスが提供されるほか、安全な宿泊場所としての役割も担います。
避難所は災害発生後数日から数週間利用されますが、状況によってはより長期間にわたることもあるので長期の避難になった場合の心構えも必要です。
このため、避難所生活の快適性向上や支援体制の充実が重要となります。
避難する際には、事前に地域の避難所情報を確認し、避難経路や持ち物を準備することが肝要です。
特に、障害を持つ方や高齢者、持病のある人は、適切な避難計画を立て、必要な支援を受けられるようにしておくことが大切です。
避難所の概要と基本ルール
避難者登録
避難所に到着したら、まず受付で自分の名前や連絡先、健康状態などを登録します。これにより、避難所スタッフが避難者の状況を把握し、適切な支援を行うことができます。
避難所では、多くの人が共同で生活するため、以下の基本ルールを守ることが重要です。
共用スペースの利用
避難所では、たくさんの人々が一緒に暮らすスペースを共有します。
食事や休憩、眠りの場所は他の避難者と共有するので、自分のエリアを広げすぎないようにし、他人のエリアを尊重しましょう。
共用スペースを占有しすぎず、必要な時には譲り合う姿勢が必要です。
食事の際には手洗いや消毒を丁寧に行い、清潔な状態を保つことが要求されます。
清掃当番
衛生的な環境を保つためには、避難所内の清掃が重要です。トイレや洗面所、共用スペースなどの清掃は全員で分担して行います。
清掃当番はローテーションで行われ、当番表で掲示するなど分かりやすい工夫がされる場合も。
定期的な清掃により、衛生的な環境を保ち、感染症のリスクを低減することができますので、特に身体の弱い乳幼児、高齢者、持病を持つ方への配慮としても大切です。
ゴミの分別や処理方法についても事前に確認し、正確に処理するように心がけましょう。
静かに過ごす
夜間や早朝は、ほかの避難者がくつろげるよう配慮することが要求されます。
大声で話すことや音楽をかけることを避け、静かな時間を大切にしてください。
就寝時間には特に、ライトを消したり、そっと移動したりして、他の避難者の睡眠を妨げないよう心がけましょう。
避難所内でのテレビやラジオの音量も適切に調整し、共有スペースでは落ち着いて過ごすよう努めます。
情報共有
避難所内では、情報掲示板やアナウンスを利用して、最新の情報を把握することが重要です。
避難所の規則やスケジュール、重要な連絡事項が掲示されるため、定期的にチェックするよう心がけましょう。
自分のニーズや問題点をスタッフに報告することで、迅速な対応が期待できます。
たとえば、体調不良や必要な物資の不足など、個々の状況を適切に伝えることにより、スタッフなども適切に対応することができるので、大切な情報は逐次伝えるようにしましょう。
衛生管理と健康維持
避難所での生活が長引くと、衛生管理の重要性が増します。
多くの人が集まる避難所では、感染症のリスクが高まるため、以下の対策を徹底することが求められます。
手洗いと消毒
避難所には手洗い場や消毒液が設置されている場合があります。手洗い場には石鹸が用意されており、食事前やトイレの後、外出から戻った際などにこまめに手を洗うことが推奨されます。
正しい手洗いの方法としては、指の間や爪の下までしっかりと洗うことが重要です。
消毒液を使用する場合も、十分な量を手に取り、手全体に行き渡らせるようにします。特に、避難所に多くの人が集まる場合は、こまめな手洗いや消毒が感染症予防の基本となります。
咳エチケット
新型コロナウィルスや、季節によってはインフルエンザウィルスなど、多くの感染症があります。それらの感染を防ぐため、咳やくしゃみをする時は、マスクをつけるか、ティッシュか肘で口と鼻を覆うようにしてください。
これは飛沫感染を防ぐための基本的なマナーです。マスクは使い捨てのものを使い、汚れたらすぐに取り換えましょう。
ティッシュを使ったらゴミ箱に捨て、手を洗うこともとても重要です。
そして、避難所内では、周りの人に気を配り、可能であれば対人距離の確保に務めてください。
これにより、他の避難者への感染リスクを軽減することができます。
共用施設の利用
トイレやシャワー室、炊事場などの共用施設は、使用後に必ず清掃し、次に利用される方のために清潔に保つことが求められます。
特にトイレは、感染症予防の観点などからも、汚れたらすぐにスタッフに連絡し、清掃していただくように心掛けてください。
シャワー室も同様に、使用後に残った髪の毛や汚れを取り除き、次に利用される方が快適に使えるよう心掛けます。
炊事場では、使用した調理器具や食器を洗って乾燥し、片付けてください。
共用施設内でのマナーを守り、順番を待つ時には他の方と距離を保つことも非常に重要です。
健康維持
避難所での生活を過ごす中で、健康を保つためには、十分な睡眠とバランスの取れた食事を心がけることが肝心です。
避難所での暮らしは、ストレスがたまりやすい状況ですので、リラックスする時間を作ることも大切です。
避難所内にて健康相談や医療サービスが行われている場合は、積極的に利用し、自身の健康状態を把握することが大切となります。
特に、持病を抱えている場合や特定の薬を必要とする際は、避難所のスタッフに早めに伝えて、必要な対応を求めましょう。
また、運動不足を解消するために、周りの人に配慮しながらストレッチや軽い体操を取り入れることも効果的です。
食事と飲料水の確保
避難所では、食事や飲料水の供給が限られることがあります。
通常、炊き出しや配給が行われ、非常食や備蓄食品が提供されます。避難所での食事と飲料水の確保について、以下の点に注意します。
食事
食事は通常、決まった時刻に提供されるので、スケジュールを事前に確認しましょう。
提供される時間に遅れないように気をつけ、指定された場所で待ちます。
アレルギーや食事制限がある場合は、事前にスタッフに伝え、適切な対応を受けることが必要です。
提供される食品には、カレーやおにぎり、パン、缶詰、レトルト食品などが含まれることが一般的です。
また、食事の際には、食品を無駄にせず、必要な分だけを取るように心がけましょう。
配給が限られている状況では、食材を無駄にしないことが肝要となります。
備蓄食品
非常食や備蓄食品は、長期保存が可能で栄養価の高いものが選ばれます。
避難所に備蓄されている食品について情報を確認し、自分に最適なものを選びます。
特に、アレルギーや食事制限がある場合は、事前にスタッフに伝えましょう。
個人で持参する場合は、賞味期限を確認し、必要な分を持参します。
備蓄食品には、乾パン、クラッカー、インスタントラーメン、缶詰などが含まれますが、これらは保存性が高い一方で、塩分や糖分が多いことがあるため、バランスを考慮して摂取することが肝要です。
飲料水
飲料水は、配給される場合と、避難所内の給水ポイントで確保する場合があります。
配給される場合は、決められた量を守り、無駄にしないよう心掛けましょう。
特に、飲料水の供給が限られる場合は、必要最低限の水で調理や洗浄を行い、節約することが求められます。
持参できる場合は、長期保存が可能な水やウォーターボトルを用意しておくと安心です。
避難所の水道水を利用する際は、飲料水として適しているかどうかを確認し、必要に応じて浄水器や煮沸などが必要になります。
調理と衛生
避難所によっては、簡易的な料理場が設置されています。
共用の料理器具や食器は使用後に必ず洗浄し、清潔さを維持することが要求されます。
料理の際には、手洗いや食材の取り扱いに細心の注意を払い、交差感染を防ぐために、生の食材と調理済みの食材を分けて扱うようにしましょう。
生鮮食品を調理する場合は、食中毒のリスクを回避するために、十分に加熱します。
特に肉類や魚類は、内部までしっかりと火を通すようにします。調理中に使用するまな板や包丁なども使用後に洗浄し、清潔な状態を維持することが必須です。
さらに、避難所内でのゴミの処理も衛生管理の一環として重要となります。
調理後の生ゴミや使用済みの食品包装などは、指定された場所に捨て、適切に処理します。
ゴミが溜まると衛生環境が悪化し、感染症のリスクが高まるため、こまめにゴミを処理することが大切です。
安全とセキュリティの確保
避難所では、多くの人が共同で生活するため、安全とセキュリティの確保が重要です。
以下のポイントに注意して、安全な避難所生活を送りましょう。
貴重品の保管
貴重品は持ち込むことをなるべく避け、もし持ち込む場合は自己管理を徹底しましょう。
財布や携帯電話、重要書類などを小さなバッグに収めて、常に身につけるようにします。
貴重品は放置せず、常に目に入れておくことが重要です。
不審者への対応
見知らぬ人と共有する空間が多いため、不審な行動や異変を感じたら、すぐにスタッフに報告してください。
避難所では、他の避難者と協力し合い、お互いに見守り合う姿勢が重要です。
例えば、見知らぬ人が避難者の所有物に触れたり、不審な行動をとった場合は、速やかにスタッフに連絡してください。
また、トラブルや喧嘩を未然に防ぐためには、周囲の様子に常に気を配り、異変を感じたら積極的に報告することが求められます。
夜間の安全
夜間には、避難所の入口が施錠されることが多くあります。
万が一の緊急時に備えて、避難所のスタッフが迅速に対応できるよう、連絡方法を確認しておきまましょう。
避難所の入り口や安全な経路を把握し、やむを得ず夜間に外出する際は必ずスタッフに報告し、安全な経路を確認してから行動をとります。
夜間は視界が悪くなりやすいため、懐中電灯や携帯電話のライトを用意しておくと安心です。
できるだけ夜間の外出は控えるべきですが、どうしても必要な場合は信頼できる人と複数人で行動するようにしましょう。
避難所でのバリアフリー状況
避難所のバリアフリー状況がどうなっているか。障害を持つ方やご高齢の方にとっては大切な項目です。
避難所の性格上、完全なバリアフリーを望むのは難しいですが、その中で望まれるバリアフリーも多くあります。
ここでは避難所で求められるであろうバリアフリーの例を紹介します。
車椅子使用者などへのバリアフリー
移動がスムーズにできるように、スロープや手すりが設置されているかを確認しましょう。
スロープの傾斜は緩やかであることが望ましく、手すりは両側に設置されているとより安全に移動ができます。
スロープの幅も、車椅子がスムーズに通れるよう十分な広さが必要ですので確認しましょう。
場所によってはスロープがない場所も多くあるので、可能であれば携帯用スロープなどを自前で用意する必要があるでしょう。
トイレ設備のバリアフリー
障害者や高齢者にとって、トイレ環境がどうなっているかの確認も必要になります。
バリアフリートイレが避難所に設置されているか確認し、使用方法を理解しておくことが大切です。
人によっては、オストメイト配慮が必要な方もいますので、そのような方が身近にいる場合は、排泄処理設備が整っているかも確認しておきましょう。
障害者用のトイレ設備がない場合は、他の場所に移動することや、専用の器具を携帯するなどが必要になります。
視覚障害者へのバリアフリー
視覚障害者が自立して移動できるよう、点字案内が設置されているか確認します。
避難所内の主要な場所(トイレ、食事エリア、出入口など)に点字案内があることが望まれます。公共施設などであれば、点字案内などもある程度充実していますが、それらがない場合には仮設の点字ブロックなどを設置するなどの配慮も必要になります。
ですが、場所などの問題もあり、なかなか設置も難しい現状もあります。
音声案内がある場合、視覚障害者がスムーズに避難所内を移動できますのでチェックしましょう。エレベーターやトイレに音声ガイドがある場合、視覚障害者にとって一人である程度行動できる利点があります。
近年では、スマホアプリによって道案内などが可能な技術も出てきていますので、スマホのアプリを用意しておくのもよいですね。
また視覚障害の方は白杖を利用することが多いので、白杖を使用する視覚障害者が安全に移動できるように心がけましょう。
通路に障害物がないことや、ガイドラインが明確に示されていることを確認するともに、周りの人も障害物を置かないような配慮が必要です。
聴覚障害者へのバリアフリー
聴覚障害者のために、重要な情報や指示を視覚的に表示することが極めて重要です。避難所内の案内板や情報掲示板には、文字情報やピクトグラムを活用し、わかりやすい形で情報を提供することを心がけましょう。
避難経路やトイレの場所、食事の配給時間など、必要な情報を明瞭に示すことが求められます。
緊急時には、音声アナウンスに代わる視覚的なアラートやフラッシュライトを使用した警告システムも効果があります。
また、避難所内の掲示板に、最新の情報や重要な連絡事項を定期的に更新することで、聴覚障害者が常に最新情報を入手できるようにしましょう。
スタッフとコミュニケーションを取る際には、聴覚障害者にとって筆談用具が有用です。ホワイトボードや紙とペンが準備されていると、円滑な意思疎通が図れますので用意しておきましょう。
さらに、手話通訳が可能なスタッフが在籍していると、コミュニケーションが一段と円滑になります。避難所スタッフは、簡単な手話やジェスチャーを用いて意思を伝える方法を覚えておくといざという時にも対応しやすいですね。
知的障害者へのバリアフリー
知的障害者が避難所内で迷わないよう、簡単で明確な案内表示を行うことが重要です。絵や写真を使った案内図やピクトグラムは、文字だけの表示よりも視覚的に理解しやすくなります。
トイレ、食事エリア、医療ケアの場所など、主要な施設の場所を示す案内板には、わかりやすいアイコンやカラフルなイラストを使用します。
避難経路や緊急時の集合場所なども、同様に視覚的に示し、避難者が自分の位置や目的地を容易に把握できるようにしましょう。案内板の設置場所も重要で、視線の高さに合わせて見やすい位置に配置し、避難所内の要所に複数設置することで、常に情報を確認できるようになります。
知的障害者に対してのコミュニケーションも重要で、知的障害者が理解しやすい言葉や表現を使い、ゆっくりと話すことを心掛けます。必要に応じて、ジェスチャーや身振り手振りを交えて説明しましょう。
避難所のバリアフリーの実態
避難所で望まれるバリアフリーの例をあげさせてもらいましたが、予算の問題や場所の問題、バリアフリーへの意識などの課題も多く、完全なバリアフリーを各避難所に求めるのは難しい状況だと感じます。
国や地方でもバリアフリーへの課題は実感していますので、さまざまな施策を検討していますが、一朝一夕でできるものではありません。
ですが、バリアフリーというものは物理的なものだけでは決してありません。各個人でできるバリアフリー。障害者や高齢者が困っていたらできる手助けをする。それがまず達成できるバリアフリーではないでしょうか?
避難所での生活を少しでも快適に
災害時における避難所の生活について紹介させていただきました。
決して快適とはいえない避難所生活。早く通常生活に戻りたい気持ちはみなさんお持ちかと思いますが、それまでの間に心身の調子を崩さないように是非この記事を参考にしてくださいね。
次回は、AIなど最新技術と災害について紹介します。
最後までお読みいただきありがとうございました。
▼参考▼
災害には備えが肝心!障害や病気を抱える方への災害避難マニュアルシリーズ
久田 淳吾
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