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『点字×名刺』強み生かして繋がる世界|ココロスキップインタビュー後編

白い背景のスライド。左側に『点字×名刺 強み生かして繋がる世界 ココロスキップ インタビュー 後編』と黒文字で書かれている。右側には、水色の帯がある点字付きの名刺の写真が配置されている

ビジネスの場で自己紹介のツールとして力を発揮する「名刺」。小さなカード一枚にさまざまな情報が詰め込まれていますが、そこに「点字」が刻まれているとしたらどうでしょうか。

 

マイナスをプラスに変える理念で点字名刺プロジェクトを進めるココロスキップ様インタビュー。後半では、利用者の声や、これからのビジョンなどを伺いました。

 

前編がまだの方は、下記からご覧ください。

『点字×名刺』強み生かして繋がる世界|ココロスキップインタビュー前編

 

最後までどうぞご覧いただければと思います。

利用者などの声

ジュン
点字名刺サービスを利用された方で、印象に残ったエピソードなどはありますか。

 

不動産会社の方からいただいたエピソードがあります。コンペティションというか、複数の企業が金額やプランを出し合ってお客様に決めてもらうという競合の場面で、その方は点字名刺を使ってご挨拶をされていました。

 

その時、最後の決め手になったのがその点字名刺でした。「視覚障害の方のことまで考えて点字名刺を作っている、そういう心ある会社の方に担当していただきたい」ということで、何千万円の契約が決まったというエピソードをいただきました。

 

そこから他の部署の方も点字名刺を注文してくださるようになったのですが、点字名刺は言葉を交わさなくても、名刺を交換しただけで点字が入っていること自体が福祉への関心の高さをアピールできます。

 

ビジネスツールとしても機能しているのだということを改めて教えていただいたエピソードでした。

 

作業されている方のエピソード

ジュン
作業していらっしゃる障害のある方のエピソードなどはありますか?

 

立ち上げ当初から通ってくださっている方がいらっしゃいます。その方は全盲で、週3回透析をされていて、仕事できる時間も限られていますし、視覚に障害があるということで、限られた条件が重なっている状況です。

 

しかし、ご主人と2人で暮らしていて、何でもしてもらうばかりではなく、自分も働きたい、自分の仕事をしてご主人だけでなく自分も一緒に頑張りたいという気持ちでハローワークに行かれました。ところが担当者の方に「視覚障害の方にできる仕事はありません」と言われて帰ってきたそうです。

 

すごく悔しく、悲しい思いをされたのですが、「今こうして点字名刺の仕事、私にもできる仕事があるということが嬉しいです」とおっしゃっていただきました。先ほど就労継続支援B型事業所に変更したお話をさせていただきましたが、変更の際事業をやめるということも選択肢の一つでした。

 

しかし、その方の言葉、喜んでもらっている仕事をするということ自体がすごくありがたいという言葉がずっと心に残っていて、そういった方のためにも続けたいという思いがありました。そのため、形態を変えてでも続けるという決断をしたのです。

 

ジュン
障害があるとどうしても無力感を感じてしまうこともあると思いますが、何かしたいという気持ちもあると思うので、そのような場があることは本当にありがたいですね。

 

得意なところを仕事に繋げることで、自分もやりがいを感じると同時に、周りの方にとってもメリットになります。困りごとは悪いことばかりではなく、その人ならではの特性を活かしていくことで、相乗効果でより良い生活、より良い生き方ができると思っています。

 

支援施設運営を通じて

ジュン
B型支援施設を運営していて、感じることなどありますか?

 

定員が20名と決まっており、これは場所の広さに対しての規定だったと思うのですが、受け入れることができる方が限られてくるため、障害者雇用という意味ではもっと増やしていきたいという気持ちがあります。

 

将来的な話で、具体的には決まっていませんが、全国にココロスキップの施設を作るというよりも、点字名刺の注文がどんどん増えていって、名刺には必ず点字が入るくらいの認知度になると良いと考えています。

 

そうなれば地域にこういう施設ができて、地域の視覚障害の方や障害者の方が通いやすい場所が全国各地にでき、障害者雇用が増えていくのではないでしょうか。同時に、一般企業での取り組みも考えています。

 

例えば大きな会社は名刺をたくさん作ると思うのですが、自社で障害者雇用をして点字を刻印してもらう、一般就労に繋げるという意味でそういうことも実現したいと思っています。

 

B型事業所だと週5日すべて通うという方の方が珍しく、毎日通える方はA型事業所で最低賃金が保障される環境で働くことになると思います。当施設に通われている方は比較的障害が重い方が多いという印象で、なかなか一般就労に結びつきにくいということもあるかもしれません。

 

視覚障害の方でも、もっと収入が欲しいけれども、自分は視覚障害があるから受け入れてくれる一般就労やA型事業所はないのではないかと諦めてしまっている方もいらっしゃいます。そういった方には一般就労をしてほしいので、名刺をたくさん使うような大企業で、点字名刺を作る仕事として雇ってもらう形ができたら良いなと思っています。

 

障害特性や生活に合わせた働き方が選べるように

その人にあった就労形態が選べるようになれば、障害者側としてとてもありがたいですね。生活していく中で、収入をもっと欲しいという方ももちろんいらっしゃるので、そういった方が一般就労に結びつく、もしくは一般就労に行くくらいの収入を福祉施設で得ることができるかということが課題ですね。

 

ジュン
収入だけでもだめ、やりがいだけでもだめ。そこはバランスですね。

 

一般就労をしても全く何もすることがなく、ただ座っているだけという話を聞いたことがあります。それもお金がもらえるからと言っても、1日のうち何もしないで過ごす時間というのはどうなのかと思いますね。

 

ジュン
やりがいと収入。収入面でいえば、B型の収入問題もよく取り沙汰されますがいかがでしょう。

  

全国平均では時給も安いため、そうした問題があります。ただ、同じ障害でもできることが違うというか、同じ視覚障害の方でも器用な方もいれば、そうではない方もいて、ひとくくりに障害でくくることはできません。

 

しかし、B型事業所では何でもできるという方の方が少ないのが現実です。そうした中で収入を上げていく、売り上げを上げていくということは、全国のB型事業所共通の課題だと思います。やはり当施設の強みとして、その人に合わせた仕事を創造してやっていくということが一番大切なことだと考えています。

 

ジュン
収入面とやりがいのモデルケースとして、ココロスキップ様の活動が広がってほしいですね。

 

今後の展開と読者に向けて

ジュン
ココロスキップ様の今後の展開はどのように考えていらっしゃいますか?

 

先ほど申し上げたような一般企業の中に点字名刺の部署を作ってもらって一般就労に繋げていく、そういう仕組みができればと思います。また、点字名刺プロジェクトのように、その障害特性を活かすお仕事をもっと作っていきたいという思いもあります。

 

なかなか難しいのですが、点字名刺とはまた別の取り組みとして、ハンドメイドの商品にブランド名を付けて売っていくといったことも考えています。その人の感性で作った作品や、障害特性だからこその感性で作った作品を売って売り上げに繋げていく。

 

そうした点字名刺で実現できた福祉資本主義と同じようなことを、もう一つ二つ見つけてやっていきたいという思いがあります。また、点字名刺が普及することで、視覚障害、さらには障害というものをもっと知ってもらい、共生する社会への理解を深めてもらいたいという願いもありますね。

 

読者の方へメッセージ

ジュン
最後にこの記事を読んでくださる読者に一言お願いいたします。

 

一歩踏み出せない方、やってみたいけれども仕事はまだ早いかな、ちょっと難しいかなと思われている方でも、こういった福祉施設がありますので、一歩踏み出してみていただければと思います。

 

先ほど申し上げたように、収入を得ることややりがいということも大切ですが、ここに来て仲間の存在を感じるということも、働くことの大きなメリットだと考えています。働くということを通して毎日の時間を過ごしていく中で、この働くという体験を一歩踏み出すきっかけにしていただき、将来への一つの道筋にしていただければと思います。

 

全国にB型事業所はたくさんありますので、そうした場所を活用して充実した生活に繋げてほしいと願っています。

 

ジュン
ありがとうございました。

 

インタビューを終えて

点字の力で繋がる絆。名刺で広がる世界。誰にでも強みがありますが、それをどう活かしていくかは皆さん共通の課題かと思います。

 

ココロスキップ様の取り組みを参考にして、皆さんも強みを活かす何かの一助にしていただければ幸いです。

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 

ココロスキップ様のお心遣い

先日、私もココロスキップ様にご依頼をして点字名刺を作成していただきました。

 

私自身、点字に関する知識は乏しく、この点字を触っても最初は「多分自分の名前が点字で打たれているのだろう」程度にしか思っていませんでした。しかし、この一文字一文字を丁寧に作業してくれたのだろうということを実感するエピソードがありました。

 

それが、同封されていた手紙です。

 

この名刺を作成していただいた方からの丁寧な手紙でした。自分も発達障害を持つ身として、感情の波などで日々苦しい時があります。同じような境遇でありながら、他にも色々な困難を抱えていても、心温まる環境でしっかりと幸せに過ごされている。だからこそ丁寧な仕事をしていただけたのだろうという思いで、作成していただいた名刺を今後ありがたく使わせていただこうと思います。

 

就労継続支援B型事業所 ココロスキップ詳細

ホームページ:

就労継続支援B型事業所 ココロスキップ

ココロスキップの点字名刺プロジェクト

 

住所:

〒343-0025 埼玉県越谷市大沢3-10-28 ピアザクラウン1F

 

メール:

info@tenji-meishi.net

電話番号:

048-978-9198

 

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久田 淳吾

発達障害(ADHD・ASD)と吃音を抱える40代男性。今まで発達障害の事は知らずに生きてきたが、友人の話を聞いて自分にも当てはまる事が多すぎる事を実感し、病院にて診断を受けると見事に発達障害との認定を受ける。自分に何ができるかと考えた時、趣味の写真でプロの先生に話を聞く機会があり、吃音が強く出ていたことに気がついた先生が『君は吃音持ちだね。だったら吃音の方の気持ちがわかるはず。それを活かして吃音の方の気持ちがわかるカメラマンになったらどうか』という言葉を思い出し、発達障害者として同じ気持ち、舞台に立てる人間として趣味のカメラ、動画編集技術を活かして情報発信をする事を決意。
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