今回、東京都国分寺市にある知的・精神障害者グループホーム「テラスハウス国立」にお邪魔してきました!
テラスハウス国立オーナーの日暮美名子(ひぐらしみなこ)さんは、障害のあるお子さんを2人お持ちの”お母さん”です。
このグループホームではいわゆる問題行動が多く、他の施設で受け入れてくれないような方も生活しておられます。また実際に生活支援の中では多くの成功体験を積み重ねることができ、中には万引きを克服されたケースもあります。そうした実績から保護者の方からも満足度が高いグループホームとなっています。
お好きなところからお読みください
グループホーム「テラスハウス国立」
まずグループホームの概念についてサラッとお伝えします。
“自立”を目的とした知的障害・精神障害を持った方が共同生活をするのがグループホーム。作業所等から帰宅したあとの、お風呂、ご飯、睡眠などの日常生活を送る場所になります。
グループホームについて詳しく知りたい方は、教員が説明してくれておりますので、こちらをご参照ください。
そんな役割をもつ施設であるグループホームを作ったきっかけについて、日暮さんにお伺いしました。
テラスハウス国立を作ったきっかけ
知的障害者の我が子が“安心して暮らしていける場所を作りたい”と考えたからです。
日暮さん自身が2人の知的障害を持ったお子さんを持たれる母親。母親である日暮さんが亡くなった後、安心して我が子が生活していける環境を作りたい。そんな思いでこのテラスハウス国立の立ち上げに至ったそうです。
そういった経緯もあり、受け入れの難しいいわゆる問題行動の多い方も積極的に受け入れているホームであるという特徴もあります。
テラスハウス国立
スタッフ優先のグループホーム
テラスハウス国立のこだわりの1つ目は「スタッフ優先」ということでした。
その背景について日暮さんにお伺いすると、素敵なエピソードまで語ってくれました。
学生スタッフが多い環境
学生スタッフが4/5を占める環境について、どうお考えなのでしょうか?
日暮さんはスタッフの採用条件として“夢がある方”を置いているそうです。夢のある方は仕事に対して前向きで、物事をポジティブに受け止められる傾向があるためだと言います。実際に働いている学生の方々は福祉に対してだけではなく、他の分野に対して大きな夢を持っている方が多かったです。福祉に対しての夢を持っているという訳ではない方も、施設で活躍をしていることがとても印象的でした。
実は現在経営されているグループホームは2期目で、1期目にはスタッフに看護師、介護士の専門職を募集していたそうです。しかし。1期目にはうまく立ち回らず苦戦。2期目になって学生を募集し始めてうまく行くようになったと言います。
万引きからの断ち切り
軽度知的障害のAさんは、お金の管理が苦手で中学時代から万引きを繰り返していました。万引きを何度も繰り返してしまう状態に半ば諦めていたそんな時、グループホームに入居しました。「Aさん万引問題」をどうにか解決したい!!と考えた学生スタッフは自分たちでプロジェクトを企画し実行していきました。
万引きする理由は「金銭管理能力不足」だと考えたスタッフらは、金銭管理・使用計画を一緒に行いました。
まず工賃をいただいてきたら金額を計算し、食費、欲しいもの、必要なものに振り分け、お金の使い道を決める。そして使った後は、どのようにお金を使ったのか記録しておくことで見返せるようにしておく。
これを学生スタッフが利用者さんと一緒に実行していきました。すると始めてすぐに、長年繰り返していた万引きはすっぱりとなくなりました。
1人の利用者のために学生スタッフ全員で行った行動は、非常に大きな成果をもたらしたものであり、その成果はまた学生と利用者の関係性の中でもたらされたものですね。
職場環境の重要性
日暮さんは利用者第一でありながらも「スタッフ第一」という考えもお持ちです。
働いている時間は人生の1/3。その1/3は笑っていられるようにしたい。これを犠牲にしてはいけない。
これが日暮さんの思いです。これは、日暮さん自身が障害当事者の母親である事が大きく関わっているのではないかと思います。
「お客様第一」という言葉は様々な場面で耳にします。しかしそれだけでは理想的な関係は得られないと言います。日暮さん自身が親子関係で、我が子第一の生活に限界を迎えてしまったという過去の経験から、利用者を支えるスタッフの働きやすさ、職場の雰囲気には相当な思いがあるようです。
実際に働いている学生の女性スタッフさんにお話を聞いたところ、ホームの利用者と同じ時間を過ごすことは非常に楽しく、まるで兄弟みたいな存在だとおっしゃっていました。
目標の達成と成功体験が充実なグループホーム
テラスハウス国立の2つ目のこだわりは「目標達成と成功体験」です。
できることを増やす
グループホームのゴールは何か。それは“家で生活をする”ことです。家での生活能力を高める(=自分でできることを増やす)ことで、障害を持った方が自分の人生を全うするということです。
支援計画をもとに、
- 部屋の片付けをする
- 食器を片付ける
- 部屋の電気を消す
- トイレの後は手を洗う
など、一人一人に合わせた目標が立てられており、目標達成に向け日々声がけ・チェックなどの取り組みが行われています。
自立とは自立ではない
“自立”とは何か。ここで必要なことは、自分で全てをできるようになってほしいということではなく、できることを増やして自分の人生を全うしてほしいという想いだと思います。
自分自身でできることが増えていくこと、つまりその”成功体験”こそが生きるモチベーションになるのでは無いでしょうか。生きるモチベーションを自分で持つこと、それが自立なのです。
居場所となるグループホーム
テラスハウス国立のこだわり3つ目は「居場所づくり」とおっしゃっておりました。
グループホームが安心して帰ってこれる居場所となるような想いがとても伝わってきます。
こうでなきゃいけないは無い
テラスハウス国立では“こうでなきゃいけない”ということはありません。グループホームは“家”であり“帰ってくる場所”。日々を楽しく過ごせることが大事なのです。
温かいご飯
テラスハウス国立の朝夕ご飯は手作りです。ホーム内にあるキッチンで、日々支援するスタッフが手作りします。慣れ親しんだスタッフによる栄養満点、温もりたっぷりの温かいご飯を食べることができるのです。
高校生も料理担当として活躍
利用者もスタッフも努力しよう
スタッフはお金をもらっているのだから、利用者を支援するのは当たり前。そう思う方も多いかと思います。
そのため利用者は、利用者だから何も努力しなくてもいいという訳ではありません。
「スタッフも利用者も気持ちよく人から協力をもらう努力をしよう。」そのように日暮さんはおっしゃっていました。例えば、コミュニケーションを取れる利用者の方に関しては何かしてもらった時に「ありがとう」を伝えるようにお伝えしています。またスタッフに関しては、スタッフ同士や親、友人、自分を取り巻く全ての人とものへ感謝するよう、伝えています。
日暮さんが経営される株式会社KURASULUのビジョンは「感謝・感動・共感」です。そこにも通ずる考え方ですね。
テラスハウス国立の今後の展望
日暮さんから、2つの回答がありました。
グレーゾーンの人への理解
1つ目は、グレーゾーンの人への理解。公共の場で、目で見て障害を持っていることがわかる方に対しては世間の目は優しくなります。
しかし、一目で障害があることがわからない場合、「ただのおかしい人」と判断されてしまうという現状があるのです。
工賃の値上げ問題
2つ目は、障害者の工賃の問題。
知的障害・精神障害を持った方の月々の工賃は1万5000円前後。多くて2万円。この工賃の低さが万引きや金銭トラブルの原因になることもあるそうです。
最後に
最後までご高覧いただきありがとうございました。
オーナーご自身の子育て経験より、職場環境やスタッフと利用者の関係構築をとても大事にされていることがよくわかりました。インタビュー前はグループホームの職場に学生の方が多いというのは、専門性に置いてどうなのか?と疑問に思っていました。
また目標を持つということは本人のモチベーションでもあり、スタッフのモチベーションでもあると思います。グループホームの役割とは利用者の方々の“居場所”だけではなく、成功体験を積む場所でもある必要性を感じました。
国立駅のグループホーム「テラスハウス国立」
グループホーム名:テラスハウス国立
住所:東京都国分寺市光町1-9-7テラスハウス国立
お問い合わせ先:0428493442
オーナー日暮さんのストーリーについては、こちらでも紹介されております。
障害者に必要なのはお金だけじゃない!我が子が一人で生きていける場所を作った母親
黒澤
最新記事 by 黒澤 (全て見る)
- 障害者専門デリヘルはんどめいど倶楽部代表ショウさんに聞く|感動ポルノは悪、という悪vol.4 - 2021年11月19日
- バリアフリー映画監督の堀河洋平さんに聞く|感動ポルノは悪、という悪vol.3 - 2021年10月12日
- 映画監督の佐藤隆之さんに聞く|感動ポルノは悪、という悪vol.2 - 2021年10月8日