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視覚障害者に読書環境を|日本点字図書館を訪問記〜第1回〜

点字図書館訪問第一回

「点字」という言葉自体聞いたことは、あるかと思います。実際に施設などで点字の案内などを気にはしてないけど見たことはあるでしょう。

 

視覚に障害のある方にとってとても重要な点字。読書をするにもやはり点字などのサポートが必要になります。

 

今回、点字や録音による本の貸し出しや作成、視覚障害の方へのサポートなどを行なっている日本点字図書館を訪問させていただき、視覚障害の方への活動内容を伺って参りました。

 

ジュン
視覚障害の方へのサポート、それを取り巻く問題なども伺ってまいりましたので、ぜひ最後まで記事をご覧いただけば幸いです。

日本点字図書館とは?

日本点字図書館は、東京都の高田馬場駅近くにある施設で、主に点字や録音による本の作成や貸し出し、視覚障害の方への生活訓練、また視覚障害者用具の販売などもおこなっています。

 

 

日本点字図書館の外観はこのようになっています。近くにコインパーキングがありまして、今回そこを利用させていただいたのですが、そこのコインパーキングでも、点字図書館があり、視覚に障害がある方がいるためご注意くださいと注意書きがありました。

 

点字図書館に入り、受付を済ませた後、実際にどのような業務を行なっているのか案内していただきます。

 

日本点字図書館イメージキャラクター「ロクホシくん」(全盲のイラストレー ター エム ナマエ作)

 

視覚障害者用具の販売

点字図書館に入りますと、視覚障害者用具の販売コーナーがありました。そこから案内していただきます。

 

販売物としては、弱視の方が見やすいようにご飯茶わんの内側が黒くなっていたり(白いご飯と判別がつきやすいように)、カップの内側にも量が見やすいようにマークが付いていたりと、普段特に意識していない部分で細かい工夫があるなと感じられました。

 

 

また、生活に使う食器などの他に、おもちゃなども販売しております。写真はリバーシとなりますが、このリバーシ一つとっても、手で触って感覚がわかったり、枠の部分が盛り上がっていていたりとさまざまな工夫がされていました。

 

障害がある方にとって、生活するのも大切ですが、このような娯楽に触れることができるのはとても貴重だと感じます。

 

録音図書作成について

そして、ここからは一般の方は普段立ち入らない、点字図書や録音図書の制作や保管をしている場に案内をしてもらいます。

 

最初は録音図書作成についての案内をしていただきました。録音図書とは、視覚に障害がある方に向けて本を耳で聞けるように朗読し、それを録音した物になります。

 

1冊の録音図書作成についてのさまざまな苦労を聞かせていただきました。

 

作成図書の選定

ジュン

それでは、ご案内よろしくお願いいたします。

 

日本点字図書館

よろしくお願いいたします。

 

ジュン
まずは録音図書の作成についてお聞きしたいと思います。

 

録音図書はどのような流れで作成するのでしょうか?

 

日本点字図書館
日本点字図書館は、各地にあります点字図書館の中でも一番大きな規模となっております。

 

各地の点字図書館で点字図書や録音図書を作成するのですが、その際他の図書館と連携して各図書館で同じ図書を作成しない取り決めをしております。

 

ジュン
それはどのような理由でしょうか?

 

日本点字図書館
どうしても人気作家の本は、出版と同時に各地の施設が作りたくなります。

 

ですが同じ図書を5冊制作しても、お聞きになる方にとっては内容は同じになってしまいます。

 

それなら、世の中に点字や録音として出回ってない本を1冊でも多く作るという目的で、他の図書館がまずその本を制作していないという前提で当館は制作を始めます。

 

ジュン
確かに、世の中には多くの本が出回っています。

 

それなのに人気ある作品ばかり作成されて、他の本が読めないのであれば利用者としては不便ですね。

 

読みやアクセントを調べる

ジュン
他の図書館と調整して、制作する本が決まったら録音図書の制作に入るわけですね。

 

実際の流れについて説明お願いいたします。

 

日本点字図書館
録音図書制作については、ホームページに掲載もしてありますのでそちらもご参照いただければと思います。

 

まず、最初に行なうのが「読みの調べ」となります。これが一番大変な作業になります。

 

ジュン
読みですね。確かに漢字一つとっても読み方はさまざまあるかと思います。

 

日本点字図書館
地名や人名などの固有名詞などの読みや、その正しい地名のアクセントがどういったものなのか、アクセント辞典などで当てはめつつ、全部調べておきます。

 

ジュン
この辺りも、普段あまり意識していませんが、アクセント1つで印象が変わってしまうのでとても大事ですね。

 

日本点字図書館
そして、最近の本ですと地図や表、グラフなども多様に使われているものが多いのですが、例えば「次ページの図参照」という表記があると思います。

 

実際の本であれば、次のページを開けばその地図や表が見られるのですが、録音図書の場合例えば「○○ページの図参照」と読み上げただけでは全然意味が伝わりません。

 

ジュン
確かに、録音図書ですと地図を見てくださいといってもわかりませんからね。

 

日本点字図書館
ですので、そのグラフや地図を一旦全部文章化して、実際に耳で聞いた時にもわかるような制作をしております。

 

例えば小説の中で、宝の地図が隠されている場所の地図が出てくるような場合も、そのポイントとなるところを絞り、地図を文章化して、読み上げるようにしております。

 

ジュン
地図1つとっても、音声にするという作業の場合本当にそれだけで大変な作業になるのですね。

 

日本点字図書館
小説の挿絵などであれば省略できるものもあるのですが、どうしても省略できない図なども出てきますので準備がいろいろ必要になってきます。

朗読を開始

ジュン
いろいろ間違いがないように下調べや準備がとても大切なのがわかりました。

本当に準備ひとつ聞いてもとても労力がかかっているなとも。

 

日本点字図書館
その下調べが全て済みましてようやく朗読という作業に入ることができます。

 

例えば小説ですとだいたい文庫本1冊で、朗読図書の再生時間は5、6時間位はかかるんですが、朗読作業はその3倍や4倍もかかります。

 

ジュン
単純な計算でも丸一日近になりますね。

 

日本点字図書館
どうしてもはじめからすらすら読めるわけではないので、つかえたら少しず つ直したりします。

 

ジュン
一日ずっとその作業を進めるのはさすがに無理がありますね。チェックや修正にもかなり時間がかかると思います。

 

日本点字図書館
それでご自身で録音し終わった後、聞き直しをしていただいて提出になります。

 

その後別の担当が全部校正を行ないます。原本を見ながら正しく読まれているか、調べた語句は正しいか、単語などについて調べがついていないのであれば、新たに調べなければいけません。

 

ジュン
読んだ本人が気づかない部分なども実際ありますからね。

 

チェックされる方もとても神経を使って作業なされていると感じます。用語に関しても、専門的な用語も多々ありますので。

 

日本点字図書館
そして、この朗読して校正したものを今度はDAISY(デイジー)という という、録音図書の国際基準があるのですが、こちらで編集し、例えば目次を聞いて50ページに飛ぶとか、第一章のどこに飛ぶなど、そういった見出しを作成する機能がつけられます。

 

デイジー(DAISY):Digital Accessible Information System の略。視覚障害などで活字の読みが困難な人のために製作されるデジタル図書の国際標準規格です。

 

ジュン

少しでも読みやすくする工夫ですね。

日本点字図書館

そちらの編集が終わったものを、サピエ図書館というインターネット上の図書館を作っており、そこに録音データをアップロードします。サピエ図書館の会員は、そこから データのダウンロードが24時間可能となっております。

ジュン

今の時代ですと、ダウンロードで利用する方は多いですし、便利なシステムですね。

点字図書館内の録音スタジオ

続いて、点字図書館にある録音スタジオに案内していただきました。こちらのブースは2部屋ありまして、朗読するブースと、チェックなどをするブースに分かれておりました。

 

ブース内はしっかりと防音処置が取られており、廊下で歩く人の足音や話し声はほぼ入ってきませんでした。

 

このブースにて、朗読者の方と編集をする方が同時に作業をすることで時間短縮をすることができるそうです。

 

ジュン
急ぎの制作物というのはどんなものがあるのでしょうか?

 

日本点字図書館
こちらのブースでは、録音雑誌などの制作物の作業などで主につかわれます。

 

当館ですと「にってんデイジーマガジン」という録音雑誌を毎月発行している のですが、その時の話題でなければいけない月刊誌の扱いになりますので、どうしても時期で話題がずれることがないようにしています。

 

もし、1ヶ月も遅れて その情報が届くようでは、月刊誌の意味がなくなってしまうので。

 

ジュン
確かに、雑誌などはその時の旬の話題を取り扱うため、より早く伝える必要がありますね。

 

流行に乗り遅れないという意味でも。

 

雑誌の録音図書環境

ジュン
雑誌1冊を録音図書にするのにかなり労力がかかると伺いましたが、雑誌1冊ではどの位の作業量がかかるのでしょうか?

 

より早く届けるといっても作業時間はかなりかかると思いますが。

 

日本点字図書館
朗読時間ですが、例えば雑誌「文藝春秋」をまるまる読んで30時間ほどになります。

 

ですので、とても一人で読めるものではないので、それをコーナーごとに分けまして、そのコーナーごとに分担作業で読んでいただいて、それを最後に編集の段階で全音源を繋ぎます。

 

そして、いろいろな場所で録音しているので、多少の録音の音量のばらつきがあります。

 

その音量を整えるような作業を行なって、さらに他の雑誌と集約し、1冊のデイジーマガジンというものが毎月毎月発行されております。

 

ジュン
確かに、30時間を一人で録音するのは無理がありますし、時間も掛かりすぎますね。

 

そして、さらに編集の手間がかかると。

 

日本点字図書館
専用の朗読のためのソフトがあります。

 

それを入れていただくと極端に音が大きくなるものに関しては、音をちょっと下げるような機能がありまして、逆にマイクに入った音量が低ければ増幅するような機能が付いています。

 

それを使う事によって録音の段階である程度ばらつきのない音源ができるのですが、やはり複数の方の音声をつなぎ合わせていきますのでどうしてもバラつきが出ます。

 

そこで、再度確認し編集するようなことを行なっています。

 

ジュン
複数でやることにもやはりメリット、デメリットは出てきますね。

 

日本点字図書館
また、企業様のカタログなどを録音図書にする場合もあるのですが、その場合は企業様の担当の方に立ち会っていただき、チェックをしていただきます。

 

どうしても企業様の場合ですと、商品名などはアクセント辞典などに載っておりませんので、商品名のアクセントなどをチェックしていただいたりという必要が出てきます。

 

ジュン
本当に、一冊の雑誌を音にするだけで並々ならぬ苦労がありますね。

 

このような過程をこなしていただけるからこそ、視覚障害の方にもしっかり情報が伝わりますね。

 

日本点字図書館訪問 第1回まとめ

日本点字図書館訪問第1回、視覚障害の方のための販売物と、録音図書作成について書かせていただきました。

 

オーディオブックなどを自分も利用する時もありますが、視覚障害の方にとって音というのは情報を知るための大切なメディアです。細心の注意と多量の作業量を拝見させていただき本当に頭の下がる思いでした。

 

日本点字図書館訪問、第2回では点字図書の制作や視覚障害者の方の訓練などについて紹介させていただきます。

 

最後までお読みいただきありがとうございました。

 

日本点字図書館について

公式HP:日本点字図書館ホームページ

 

〒169‐8586
東京都新宿区高田馬場1‐23‐4

 

電話:03‐3209‐0241(代表)
FAX:03‐3204‐5641

 

アクセス

 

JR山手線、西武新宿線、東京メトロ 東西線 高田馬場駅

再最寄りは JRおよび西武新宿線 戸山口より徒歩5分

 

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久田 淳吾

発達障害(ADHD・ASD)と吃音を抱える40代男性。今まで発達障害の事は知らずに生きてきたが、友人の話を聞いて自分にも当てはまる事が多すぎる事を実感し、病院にて診断を受けると見事に発達障害との認定を受ける。自分に何ができるかと考えた時、趣味の写真でプロの先生に話を聞く機会があり、吃音が強く出ていたことに気がついた先生が『君は吃音持ちだね。だったら吃音の方の気持ちがわかるはず。それを活かして吃音の方の気持ちがわかるカメラマンになったらどうか』という言葉を思い出し、発達障害者として同じ気持ち、舞台に立てる人間として趣味のカメラ、動画編集技術を活かして情報発信をする事を決意。
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