千葉県八千代市にある村上団地。その一角にあたたかな雰囲気のお弁当屋さんがあります。この団地弁当では、一般企業で働くことが難しい人たちが、様々な目標を持って働いています。
今回は、その団地弁当を運営する板屋佑実子さんにお話しを伺いました。第1回目の今回は、団地弁当を始めたきっかけ、障害者の働く場としての団地弁当、団地の方々の交流などについてお聞きしました。ぜひ最後までお読みください。
お好きなところからお読みください
板屋佑実子さんについて
↓ 早稲田大学へ進学し、医療/障害福祉を学ぶ。 ↓ 株式会社船井総合研究所に新卒入社。そこで障害福祉分野のコンサル業に出会い、放デイやB型の改善提案を行う。 ↓ 2021年に退社し、2022年1月に就労継続支援B型事業所「団地弁当」をオープン。その代表をしています。
大学進学から起業まで
なぜ生命は誕生するのか、なぜ動植物は生きるのか、人間はなぜ死を恐れるのか、などなど…このような死生観について、様々な観点から考えて物思いにふけることが好きでした(笑)その過程で、一番興味を持ったのが人体の仕組みでした。 人体の構造の解明、それを元にした医療の発展について、興味津々でした。そこで、人体の仕組み・医療の発展について、生命科学の学問としてもっと深く研究したいと思い、医療福祉分野に進みました。 いろいろあって理系の学部には進学できなかったのですが、他学部の授業を取ったりして、1人で黙々と調べたりしていました。
大学に関しては医療というか生物的、もしくは哲学的な観点での分野に興味があり、福祉に関してはそんなに興味がなかった感じですか?
会社に入って初めてビジネス視点を持ち合わせた時に、福祉に興味を持ち始めました。
そして就職なされましたが、就職に関しては大学で学んだことを活かすためか、もしくは他の理由があったのでしょうか?
浅はかですが、文系出身では真の意味で人に貢献できるような仕事はできないだろうと諦めていたためです。(今は思っていません) それよりも、将来は起業したいという気持ちがかなり強かったです。新卒で入社した会社は、零細〜中小企業の社長さんに対して改善提案を行う会社でした。コンサルタントとして企業勤めしながら、起業準備をしてきました。
また、当時お付き合いしていた人にお別れを告げられたのも良いタイミングでした(笑) 従業員を雇ってのスタートなので、スモールスタートができる通常の創業より、リスクは大きかったです。 しかし、別れてしまえばたとえ失敗したとしても私1人が困るだけで済むので、別れた今のタイミングが絶好のチャンスだと思い踏み切りました。
そして起業なされた訳ですが、何故障害福祉分野での起業となったのでしょうか?
新卒で入社した会社は独特で、入社後半年間はいろいろな部署へ行って見学・体験ができるような会社でした。私も本当に幅広くいろいろな業界を見させていただき、その過程で障害福祉分野に出会いました。 障害福祉分野は、利用者に対して真摯に向き合って行動することができれば、それに伴って収益も上がる仕組みになっています。
しかし、障害福祉は人が中心となっている分野です。人に貢献できている自分も好きになれて、利用者さんとの日常を楽しく過ごすことができて、さらにそれが収益として返ってくるという構造が魅力的に感じました。
起業について
そもそも私自身、無駄なことにお金を使うことが嫌いで普段お金をほぼ使わないので、お金をモチベーションにした生き方は向いていないですね(笑)
団地弁当について
団地弁当販売にした理由
誰かに貢献できるといえば、衣食住。その中で最も馴染み深い「食」でいこうと決めました。 その中でもお弁当販売は、来店してくれたお客さんに直接お渡しすることができるので、利用者さんのモチベーションの維持にも繋がります。実際、お弁当がたくさん売れるのは嬉しいと仰ってくれる利用者さんが多いです。 お弁当がたくさん売れるためにどうすればいいか、毎日のようにみんなで意見を出し合っています! また、1日1食というのも大きな特徴になっています。 1日1食のメリットとしては、 というのがあります。
そして団地という場所での起業ですが 団地との縁などがあったのでしょうか?
団地に絞った理由としては、 といったものがありました。
ゆっくり話したりということもやりやすいかと。
特に、利用者数に関して良いスタートが切れたのは、団地で出店したというのが大きかったです。 あまりスタンダードな方法ではありませんが、1日中外にいて直接声掛けなどをして集客活動をしました。結果、多くの人が利用してくれることになりました。 このように、「障害があるけれども福祉サービスを利用するまでに至っていない」層が団地には多くいると確信していたので、絶対に一店舗目は団地にすると決めていました。
具体的には といったものになります。 お客様からいただいたお声は、必ず利用者さんにも全てお伝えするようにしています。 多くの利用者さんは、お弁当やカフェでの売上が上がるのを楽しみに毎日来てくださっているので、こういったご意見は利用者さんにとっても貴重なものになります。 実際にお客様からいただいたご意見を参考に、空き時間にみんなで意見をし合うこともよくあります。
特別ではない大切な団地のやすらげる場所として。そして、団地の方との交流はどのような雰囲気でしょうか?
利用者さんの知り合いが頻繁に来てくれたり、新規のお客様もだんだんと定着するようになっています。 弊社はお弁当/カフェ共に、リピーターのお客様が大半を占めています。このことも、雰囲気がいいことを表しているのかなと思います。
例えば、農家の方をご紹介していただいたり、一緒にドライブへ行ったり、私の私物のギターを修理してもらったり、ギターを教えてもらったりしています(笑) お客さんギター上手すぎるな〜と思っていたら、昔ずっとミュージシャンをしていたとのこと!みんなでびっくりしてました(笑)普段なかなか出会うことにできないディープな人がいるというのも魅力ですね。 こんな感じで、ゆるく交流ができて雰囲気も◎です!利用者さんも団地の方も楽しそうで嬉しいです。私も嬉しいですー!
働いている方も、団地の方もそれぞれこういう楽しい交流があってこそ、心を癒せる福祉として大切なのかなと感じました。
働いている方々について
雰囲気がいい理由としては、利用者さん間での通所の目的がほとんど一致していることが大きいと個人的に考えています。 その目的とは、「お弁当/カフェの売り上げを上げながら、通所している時間を楽しむ」といったものです。目的が一致しているので、その目的に向かう過程で少し意見が対立することがあったとしても、感情的な衝突はほぼなく、みなさん雰囲気よく過ごしています。
みなさんやらされているのではなく、しっかりとやりたいことをもっていらっしゃるからこそ、対立があっても雰囲気を壊さないいい空気を作られていますね。
利用者さん間の交流も、深すぎないところがちょうどいいのかもしれないです。良い意味でドライで、営業時間が終了すると「じゃおつかれさまでーす」といった形で速やかに解散します(笑) 営業中は全集中で楽しんでいるからこそ、このドライ感が成り立つのかなと。 営業中もずっとドライでほぼ会話なし!だと、ただ交流がないだけですしね(笑)
みなさん、一日どのような感じで働いているのでしょうか?
↓ 身支度を済ませた後、その日の惣菜をつくります。 ↓ 11時営業開始 ↓ 13時昼食 ↓ 15時終了 空き時間にみんなで談笑したり、ゆっくりコーヒー飲んだりする時間が至福です。
とても素晴らしいと思います。
インタビュー第1回を終えて
障害福祉の場として、また団地の憩いの場としての団地弁当。障害を持つ方が働く場はいろいろありますが、やはりなによりも大切なのは場の空気であり、障害があっても目的を持って働けるという当たり前の事実もあらためて認識させていただきました。
私も一度団地弁当を訪れさせていただきましたが、本当にゆったりとした空気で癒される場でした。お近くにいかれる方でお時間のある方はぜひ一度お立ちよりください。
第2回目は、就労支援施設のあり方や、福祉の今後についてお話を聞かせていただきます。
団地弁当で障害のある人の活躍を!村上団地のB型事業所を運営する板屋佑実子さんインタビューvol.2
今回も最後までお読みいただきありがとうございました。
団地弁当について
団地弁当ホームページ:https://danchi-bento.com/
板屋さんTwitter:板屋佑実子/団地弁当🍱🌽🥕🍅さん (@murakami_bento)
久田 淳吾
最新記事 by 久田 淳吾 (全て見る)
- 【障害がある方向け】自宅から始まる就労準備|在宅ワークスクール加賀の体験談 - 2024年12月16日
- 災害時に役立つAIなどの最新美術|障害や病気を抱える方への災害避難マニュアル|第4回 - 2024年9月22日
- 障害がある方の避難所生活|障害や病気を抱える方への災害避難マニュアル|第3回 - 2024年8月15日