以前の記事は、「生まれつき全盲の私は色をどのようにイメージしているか」をテーマに書きました。
前回の記事はこちら。
生まれたときから全く目が見えない。 光も感じない。 明るいとか暗いとか、それってどういうことなのかわからない。 そんな私がよく聞かれること。 それは、「色をどう理解しているのか」ということです。 先日ヘルパーさんと散歩していたときにも、ふとそのことについて尋ねられました。 ヘルパーさんはいつも周囲の状況をとてもわかりやすく言葉にしてくださるのですが、「色をどう伝えるのか」というのには苦労されているようです。 色。 確かに私はそれをこの目で認識したことがありませ... 先天性全盲の色の世界を語る!色をどう理解してるの? - WelSearch ウェルサーチ|福祉の専門家や当事者たちが発信する福祉情報サイト |
私も自分なりにですが、見たことのないものについていろいろと想像しながら生活してるんですよね。
そして今回も、私の頭の中で起きていることに関するお話をしようと思います。
色のイメージと同じように、「ものを見た経験がなくても夢って見るの?」というのはよく聞かれることのひとつ。
確かに夢というのは「見る」と表現されるように、視覚情報が大きく関わっているものなんですよね。
ということで、生まれつき全盲でも夢を見ることは可能なのか、可能だとしたらどんな夢を見るのか。私自身の体験をもとに、この記事でじっくり解説していきます。
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人はどうして夢を見るのか
どうして人は夢を見るのでしょうか。
調べてみたところ、「まだ解明されていない部分が多い」というのが現状なのだとか。
それでもいくつかの説があり、中でも私がよく耳にするのは、「脳が情報を整理しているから」というものです。
1日の活動が終わって眠りにつくと、頭の中では重要な仕事が行われます。
その日獲得した膨大な量の記憶の中から大事なものを選び出し、保存するという作業です。
その過程で古い記憶と新しい記憶がランダムに結びつき、夢となるのだといいます。
夢の中では実際にはあり得ないようなことが起きたりしますが、その原因はここにあるというわけですね。
夢を見るのは視覚情報が中心だけど
夢を見るというのは、視覚を処理する後頭葉の働き。
そのため夢に出てくるものといえば視覚情報が中心。
音やにおいなどはあまり出現しないといわれています。
でも私の頭の中でも情報の整理は行われています。古い記憶と新しい記憶がつながったり離れたり。そういうことはあるようです。
それでは夢についてはどうなるのでしょうか。
生まれつき全盲の私は夢を見るのか
結論から言ってしまえば、私も寝ているときには夢を見ます。
それには怖いものもあれば、楽しいものもあります。
「何だこれ」という不思議なものもあれば、信じられないくらいリアルなものもあります。
映像が見えることはない
見えている方々と夢の話をしていると、「映像が見える」と聞きます。
実はこれ、私にとっては意外なことでした。
当然と言えば当然なのですが、私の夢は映像ではないからです。
一般的には夢には視覚情報以外のものはあまり現れないのだそうですが、私の場合は現れまくりです。
何かを「見ている」というのではなく、「参加している」という感覚。
自分が何かを体験し、考えているのです。食べたり、触ったり、泣いたり、歩いたり、慌てたり、戸惑ったり。
そういえば私は、慌てる夢を見ることが多いような気がします。
そのときの気持ちや体調も夢に影響してくるといいますし、もしかして何か心配事でも抱えているということなのでしょうか。
それほど自覚はしていないのですが…。
夢の中でも目は見えない
ちなみに私の場合、夢の中でも目が見えることはありません。
途中から全盲になられた方なら「夢の中では見えている」ということも起こると聞きますが、私はいつだって見えていないんです。
夢は脳が作り出すもの。
経験がない以上、見えるという感覚はやっぱりどうやっても想像できないようですね。
私が頭の中で生み出す世界は、私の現実世界とほとんど変わりません。
人に遭遇すればその声を聞いて「あ、○○さんだ」と思う。
音が聞こえてくればそれを頼りにその場の状況を判断して行動する。
目の前に何かあれば触って形状を確かめる。
夢の中でも、視覚以外の感覚を活用しているわけです。
実際にはあり得ないことが起きたりする
ただ、もちろん実際にはあり得ないことも起こります。
見えない私なのに、まるで見えているかのように1人で自由に行動したりするんです。
現実の私は初めての場所では1人で動き回れませんが、それが何の苦もなくできる。
それを変だなあとは全く感じずに。
階段を駆け下りるのだってお手の物です。
日頃からの願望が現れているということでしょうか。
思い返してみると、「あり得ないことが起きるなら、夢の中だけでも普段できないような経験が楽しめないかなあ」と子どもの頃はよく考えていたものです。
「見える人のように」というのを超えて、「空を飛びたい」などと。
「見たい夢があるなら、寝る前にそのシーンをしっかり想像するといい」と聞いたことがあり、何度も飛んでいる感覚を思い浮かべて準備したりして。
結局思うような結果にはつながりませんでしたが、今となってはいい思い出です。
全盲の私はどんな夢を見るのか
では具体的に、私の見る夢とはどんなものなのか。
印象に残っているものを思い出してみます。
家族が崩壊する夢
子どもの頃のことです。
5歳くらいのときだったでしょうか。朝目を覚ました私は、思い切り泣いていました。
「さっきのあれは本当のことではなかったんだ」というのはすぐにわかったのですが、どうにも涙が止まりません。
それを見た母には、何事かととても心配されました。当然ですよね。自分でも驚いたくらいなのですから。
涙のきっかけとなったのは、家族が崩壊するという夢でした。
両親がけんかして、家の中はギスギスした感じになる。
それまで優しかったはずの両親が、私にも冷たい声で話しかけてくる。ついには2人が離婚することになる。嫌だ嫌だと嘆く。そんな内容だったのです。
今考えると、どうしてそういうひどい夢を見たのか不思議です。
寝る前に何かのドラマでも見たせいでしょうか。
想像力が豊かだった時期ということもあり、臨場感はかなりのものだったはず。
目が覚めてからもしばらく余韻が残っていました。
悲しい気持ちを引きずることになったのです。
でも、その分「現実の出来事じゃなくて本当によかった」と胸をなでおろしたのでした。
そのときのことは今でもよく覚えています。
地獄に落ちる夢
また、地獄に落ちる夢というのも印象的でした。
これも子どもの頃のことです。小学生になっているかいないかくらいのときだった気がします。
「これからは地獄で過ごさなければいけない」
突然誰かにそう言われた私。
どうしてそうなったのかわかりませんが、確か「みんなに嫌われるようなことをした」ということだったかと思います。
抵抗はできません。仕方がないので覚悟を決めました。よく聞くような「針の山」とか「血の池」みたいなところに連れていかれるのを想像しながら……。
ところがそうではなかったんです。
放り込まれた地獄は、人の気配のないとにかく寂しい場所。
お風呂みたいに湿気の多い、暑いところでした。
私はそこで時々働かされたりしながら孤独な日々を過ごす。そんな夢でした。
でも確かにいい気分ではないなあ。そう考えた記憶があります。
印象に残る夢にはネガティブなものが多い
こうして振り返ってみると、印象に残っている夢と言えば、楽しいものよりも悲しいとか怖いといったネガティブなものが多い気がしますね。
大人になってからはあまり印象に残る夢を見ていませんが、よく覚えているのは大体あまりよくない夢です。
このところ覚えているもので言うと、なぜか学生時代のことがよく出てきます。
「あ、やばい、宿題やってない。どうしよう、叱られる」とあたふたしているシーンが多いような……。
あのときまじめにやっていなかったせいなのか……?
いやそこまでひどくはなかったと思うんだけど……。
夢からストーリーが生まれるように
ビートルズの名曲「Yesterday」は、ポール・マッカートニーの夢の中で生まれたのだそうですね。
これ、すごいと思いませんか?
そんなふうにして曲が生まれたこともすごいですが、その曲が現実世界でしっかりと形になっているというのがすごいことだなと思えてなりません。
私も寝ているときに何かを生み出せないものか。
激しくそう感じてしまいます。
夢の中で皆さんに感激していただけるような素敵な記事が出来上がったらどんなにいいだろう、なんて。
うーん、絶対無理ですね。どう考えても。
とはいえ、うまくいけば夢の中では実際にはできないことが当たり前のようにできる。何にでもなれる。これって楽しいですよね。
私も想像力をもっと磨いて、もっと充実した夢を見てみたいものです。
さてさて、今日はどんな夢が見られるか。
最近は内容を覚えていないことも多いですが、期待して眠りにつこうと思います。
皆さんもぜひ、いい夢を見てください。
ここまでお読みいただきましてありがとうございました。
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