ロービジョンの私は、2012年にiPadやiPhoneを使うようになって日常生活が便利に楽しくなりました。
iPadやiPhoneを使うことによって、できることが増えていきますので、ロービジョン(弱視)の方の活動の幅が広がるよう参考にしていただければ幸いです。
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ロービジョンの私とiPadとの出会い
私がiPadを手にしたのは、世界一周の旅に出る1年前、2012年の1月です。
世界旅行については、こちらの記事で私のエピソードを紹介してます。
こんにちは。鈴木弘美です。 海外旅行が大好きな50代の弱視女性です。年に3~4回海外旅行に行くこともあるので、海外旅行依存症といってもいいかもしれません。 ほとんど白杖を持たずに歩くので、視覚障害者とは気付かれにくいのですが、日常生活には補助具が欠かせなくて、本を読むのにはルーペを使い、遠くの看板などは単眼鏡で見ています。最近はiPadがとても便利で、これらの補助具を使って一人旅を楽しんでいます。 今までに約50カ国に旅行しました。2013年には5カ月間の世界一周旅行をしました。 これから数... 海外旅行が好きな持病のある弱視の視覚障害者の人生! - WelSearch ウェルサーチ|福祉の専門家や当事者たちが発信する福祉情報サイト |
当時タブレットは、あまり普及していませんでした。
私の趣味は、ブラジル音楽のギターで弾き語りです。ブラジルの公用語はポルトガル語で、サンバやボサノヴァを歌うためにポルトガル語の辞書は欠かせません。
同じ趣味を持つ弱視の友人とポルトガル語辞書の入った電子辞書を探しに近所の家電量販店にいきました。しかし、ポルトガル語辞書が入った電子辞書は、一種類のみ。
iPadが救世主に
でも、そんな残念な思いはすぐに消え去りました。同じ店にiPadが置いてあったからです。
当時はiPadにポルトガル語辞典のアプリはありませんでしたが、私たちは将来ポルトガル語辞典が出ることを信じて、iPadとWi-Fiルーターを購入しました。
電子辞書もiPadも同じような値段でした。
私が感じるiPadとiPhoneの4つの魅力
2012年から愛用しているiPadは、いろいろな機能やアプリを試してきました。
実際にロービジョンの私が使ってみて、「これはいい!」というiPad・iPhoneの魅力を4つご紹介します。
4つの魅力
- デザインの美しさ
- アクセシビリティ機能が充実
- 世界中で使われているこその便利さ
- アプリが豊富
デザインの美しさ
まず最初に、iPadを使って楽になったことの一つが図書館の資料検索です。
図書館に設置されている端末は拡大表示ができないので、本を借りたいときには家のパソコンで検索していました。検索結果を印刷するかメモして、図書館の方に渡して本を出してもらっていました。
iPadだと検索結果の画面をカウンターで見せるだけで楽チンです。
「あっ、それiPadですよね。初めて見ました!すてきですね!」
資料検索が楽になることや、自分に適した読み書きの環境を携帯できることよりも、この言葉が100倍嬉しかったです。ルーペも単眼鏡も白杖も人前で使うことに抵抗はありませんが、ちっともファッショナブルではありません。
iPadは、初めて心がときめいた美しい補助具です。
アクセシビリティ機能が充実
「アプリは何がいいですか?」と聞かれることがよくあります。
確かにアプリが豊富で便利ですが、そもそもiPadやiPhone自体のアクセシビリティ機能が充実しているところが魅力です。
- 画面の拡大
- コントラストの調整ができるズーム
- VoiceOverという音声読み上げ機能
などがあるので、障害者用の高額なアプリや周辺機器を買う必要はほとんどないはずです。話しかけるだけでスマホの操作をしてくれるSiriもアクセシビリティ機能の一つだと思います。
一番の機能は拡大鏡
ルーペや単眼鏡は距離に応じて道具を使い分ける必要がありますが、iPadやiPhoneの拡大鏡なら持ち替え不要です。
今まではスーパーで頭上や足元に書かれている案内表示は単眼鏡で、値段や賞味期限はルーペでと持ち替えて読んでいました。
また、iPadやiPhoneの拡大鏡は、暗い環境でも良く見えるという特徴があります。私は博物館や美術館ではiPadを使って、作品鑑賞を楽しんでいます。
単眼鏡では、茶色一色にしか見えなかった古いじゅうたんが、iPadで見たら細かい植物や幾何学模様まで見えた時には胸に熱いものがこみ上げてきました。
iPadやiPhoneを使って見ていると写真撮影をしていると誤解されます。博物館などでは、少々面倒ですが見学前に許可を得てから使ってください。
世界中で使われているこその便利さ
3つ目は、障害に関わらず世界中で使われていることです。
多くの人が操作やアプリの情報を知っていますので、分からないことを知り合いに聞けますし、困った事は検索すればネット上に親切な回答が出ています。
世界中で使われている製品であることも、海外旅行好きの私にとっては重要なポイントです。2013年に世界一周の旅に出ました。
旅行中にiPadの調子が悪くなった時にも世界中にApple Storeがあり対応してもらえました。
もちろん大変なケースも
一方で、万が一の時の通信手段として持っていたガラケーの充電コードが壊れかかった時は、入手することができなくて大変でした。
結局、たまたま海外旅行に出て来た友人にトルコまで届けてもらったので、助かったのですが。
アプリが豊富
4つ目の魅力は、アプリが豊富なことです。こんなものないかなと探してみると、だいたい見つかります。
アプリについては、たくさんあるので、この後に詳しく説明させていただきます。
私のiPad、iPhoneの使いこなし術
iPad・iPhoneの魅力について理解していただけたかと思いますが、実際に使いこなせないと宝の持ち腐れになってしまいます。
そこでロービジョンの私が実際に使っている方法を海外旅行編と健康管理編としてまとめましたので、参考にしていただければ幸いです。
海外旅行での使い方
私が「一人で海外旅行をする」と話すと、必ずといっていいほど「目が見えにくいのに一人旅だなんて、道に迷ったりしないんですか?」と質問されます。
道に迷うことはしょっちゅうあります。しかし、Googleマップを使えば道に迷っても何度でも検索して経路を探せるので、たとえ海外であってもあまり心配することはありません。
以前はわかりやすい大通りばかり歩いていましたが、最近は小さな路地にもどんどん入って行き「世界ふれあい街歩き」や「ぶらり途中下車の旅」といった旅番組の気分を楽しんでいます。
膝が痛くて階段の上り下りが大変だったとき、Googleマップの車椅子用経路検索を使いました。遠くが見えない私はエレベーターの場所がわかり、助かりました。弱視仲間ではヤフーの地図アプリを好む人も多いです。
その理由は道を示すラインが太くて見やすい、コンビニ、ファストフード店など弱視者が見つけやすいランドマーク情報が多いからです。
海外旅行で重宝しているアプリ
旅行関係で特に重宝しているのがKAYAKという旅程管理アプリです。旅行の時は、ホテルや飛行機、美術館やイベントなど、たくさんの予約をします。
数字の見間違いやコピペする場所を間違えることが多いからなのですが。
KAYAKは、確認書のPDFをwebサイトに送るだけで、自動で日付順に並べて旅程を作成してくれます。そのうえ、飛行機の遅延や出発ゲート情報などの通知も来るので、重宝しています。
電子書籍アプリも必須
電子書籍アプリも欠かせません。私はKindleアプリを使っています。
旅行ガイドも電子書籍版が増えました。電子書籍なら英語のガイドブックでも辞書引きが簡単で楽に読めます。リンクをタップしてwebにアクセスできますし、かけ間違いなく電話ができるので予約や情報収集がスムーズにできます。
使ってみたいアプリ
今後使ってみたいアプリは、税関申告アプリです。
海外から日本に入国する時には、国籍や課税、非課税にかかわらず税関に申告書を提出します。申告用紙の記入欄がとても小さくて、毎度記入に苦労しています。
健康管理
実は、iPadやiPhoneは健康管理にもかなり役立つツールなのです。
ある日、体重計が壊れました。私は膝が悪くなって以来しゃがんで測定結果を見ることができなくなり、体重計を顔の位置まで持ち上げて数字を見ていました。
この際、音声体重計を買おうかと考えました。しかし、音声機能付き体組成計は15,000円以上と高額でした。
普通の体組成計なら5,000円も出せば買えるのでもったいない気がしました。
スマホ連動型の体組成計
そこで思いついたのがタブレットやスマホと連動する体組成計の購入。
スマホでデータを読むのは楽だし、ノートに記録して体重管理するなどという面倒なことが嫌いな私にぴったりでした。気を良くした私は血圧計や活動量計もスマホ連動のものを買いました。
それはPhoneに付いているヘルスケアというアプリと、機器の専用アプリが連携できることです。なぜならば、ヘルスケアは確実に視覚障害者が使えるからです。
専用アプリのデメリットも
一方、専用アプリは視覚障害者には使いにくいことがあるからです。私が買ったオムロンの血圧計の専用のアプリは、VoiceOverでは操作できないところがありました。
またコントラストも低く数字が読みにくかったです。しかし、ヘルスケアと連携させれば、ヘルスケアの見やすい表示でデータを見られます。
血糖値の変動を把握できるアプリも
もう一つ、最近使って便利だったものに血糖値の変動を把握できる機器、FreeStyleリブレ(以下リブレ)があります。自分の血糖値をよく知りたいと思い測定器を買うことにしました。
普通、血糖値を測るには毎回指に針を刺して血液を取らなければなりません。
しかし、リブレは500円玉ほどのセンサーを腕に付けてしまえば、14日間継続して血糖値(正確には間質液中のグルコース値)を測ることができます。専用のリーダーをセンサーにかざすだけでデータを取り込めます。痛みなく何度でも測定でき、睡眠中の血糖値まで分かる優れものです。
一方で医師から処方されていない場合は、自費で買うとセンサー、リーダーとも7,000円以上と高額なのが辛いところです。
しかし、最近、iPhoneで測定できる専用のアプリが提供され、リーダーなしでリブレを使えるようになりました。近いうちにAndroid版も提供されるそうです。
実は、ヨーロッパやアメリカでは数年前からアプリが提供されており、私は日本で使える日を心待ちにしていました。iPhoneで使えば専用リーダーを買わずに済みますし、旅行の時も荷物も減って身軽です。
何よりも嬉しいのは、iPhoneなら拡大表示や音声読み上げができることです。専用リーダーにはそのような機能がありませんでした。
今回提供されたアプリには音声で血糖値を読み上げる機能があります。しかし、これだけだと全盲の方には不十分なので、VoiceOverを使った方が良いと思います。一部読み上げないところはありますが慣れた方ならまあまあ操作できそうです。
飛行機も簡単に
それは飛行機に乗りやすくなったことです。以前、専用リーダーを機内に持ち込めないという経験をしたことがあります。専用リーダーのリチウムイオンバッテリーのリチウム量がわからず、機内に持ち込めなかったのです。スマホならこんなことは起こりませんから本当に良かったです。
ロービジョンの私のiPad・iPhone活用術まとめ
いかがでしたでしょうか?
こんな風にタブレットやスマホで便利に楽しい生活をしていますが、少し残念に思う事もあります。
美術館、博物館などでの使用がもっと広く認められるとうれしいです。
またiPadやiPhoneは福祉機器ではないので、日常生活用具として支給する自治体がほとんどありません。せめて学生、できれば低所得の視覚障害者には障害等級に関わらず、日常生活用具として支給するという制度ができるといいな、と思います。
鈴木弘美
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