あなたは特別支援学校の高等部を卒業したら、どのような資格が得られるかご存知でしょうか?
私が特別支援学校で勤務していて、特別支援学校の卒業の資格について驚いたことがあります。これについては、親御さんからも質問が多いです。それは、特別支援学校の高等部を卒業しても「高卒扱いにならない」ということです。
では、高卒扱いにならないのであれば、特別支援学校を卒業した人たちは、大学に入学する資格はないのでしょうか?そこで今回は、特別支援学校を卒業したときに得られる資格と大学入学の資格について話をしていきます。
結論から言いますと、特別支援学校の高等部では、高卒の資格はもらえないが、大学を受験する資格は得ることができます。いったいどのようにしたら特別支援学校の高等部で、大学を受験する資格を得ることができるのでしょうか?
お好きなところからお読みください
特別支援学校の高等部では高卒の資格は取れない?
冒頭でもお伝えしましたが、特別支援学校で勤務をしている私は、特別支援学校も学校なので、高等部では「高卒」の資格を取得できるものだと思っていました。しかし、驚いたことに現実は違ったのです。
あくまでも特別支援学校の卒業の資格は、「特別支援学校の高等部を卒業した」ということを証明するだけのものです。つまり、特別支援学校は一般的な高等部の学校とは異なり、「高校卒業」の資格を与えられるものではありません。
特別支援学校・普通校は1年間で「1050時間以上」勉強しなければいけないと、特別支援学校指導要領に定められています。
これについては、実際にご覧になっていただいた方がわかりやすいかと思いますので、説明していきますね。
特別支援学校指導要領の第3款
特別支援学校指導要領の第3款に「知的障害者である生徒に対する教育を行う特別支援学校における各教科等の履修等」という項目があります。詳細は以下を参照してください。
第3款 知的障害者である生徒に対する教育を行う特別支援学校における各教科等の履修等
第2 各教科,道徳,総合的な学習の時間,特別活動及び自立活動の授業時数等
- 各教科,道徳,総合的な学習の時間,特別活動及び自立活動(以下「各教科等」という。ただし,この項及び8において,特別活動についてはホームルーム活動に限る。)の総授業時数は,各学年とも1,050単位時間(1単位時間は,50分として計算するものとする。3において同じ。)を標準とし,特に必要がある場合には,これを増加することができる。この場合,各教科等の目標及び内容を考慮し,各教科及び総合的な学習の時間の配当学年及び当該学年における授業時数,道徳,特別活動及び自立活動の各学年における授業時数を適切に定めるものとする
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/youryou/tokushi/1284551.htm
文部科学省 指導要領より抜粋
もっと詳しく指導の基準を知りたい方は、上記のURLで調べてみて下さい。授業時間などは、普通校と同じようにはしていますが、カリキュラムや勉強内容は異なります。
特別支援学校の授業内容は、自立活動といった日常生活に必要なことも授業時間として組み込まれています。ですので、1年間にたとえ1050時間の勉強したとしても高卒の資格をもらうことはできません。
第8章にはこのように記載されております
特別支援学校の高等部について理解するために、こちらも見ておきましょう。第8章の「特別支援教育」第72条では、このように記載されております。
「特別支援学校は、視覚障害者、聴覚障害者、知的障害者、肢体不自由者又は病弱者(身体虚弱者を含む。以下同じ。)に対して、幼稚園、小学校、中学校又は高等学校に準ずる教育を施すとともに、障害による学習上又は生活上の困難を克服し自立を図るために必要な知識技能を授けることを目的とする」
つまり、特別支援学校の高等部も学校として定められております。ですので、特別支援学校を卒業をすれば、「特別支援学校高等部卒業」の学歴が認められます。
ただ、「特別支援学校」と普通鋼とで少し異なることがあります。「特別支援学校」の記述には、こう書かれております。
「幼稚園、小学校、中学校又は高等学校に準ずる教育」
ここでポイントとなってくるのは、「準ずる教育」と記載されており、「同等の教育」とは書いていません。
ということは、特別支援学校を卒業しても、中卒までの資格しか取得できないことになります。だから、「特別支援学校高等部卒業」の学歴は、高卒の学歴とは異なってしまうのです。
では、特別支援学校を卒業した人たちは、大学への夢は絶たれてしまうのでしょうか?
特別支援学校を卒業した人たちの大学入学資格について
特別支援学校の高等部では、「高卒の資格はもらえない」とおつたえしました。不安に思っている方もいらっしゃるかと思いますが、ご安心ください。特別支援学校の高等部を卒業しても「大学を受験する資格」は与えられるのです。
ちなみに、大学(短期大学を含みますが、大学院は除く)の入学資格は、以下のいずれかに該当する方に認められます。
- 高等学校又は中等教育学校を卒業した者(法第90条第1項)
- 特別支援学校の高等部又は高等専門学校の3年次を修了した者(法第90条第1項)
(http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/shikaku/07111314.htm
文部科学省より引用)
このように、特別支援学校の高等部を卒業したとしても、高卒扱いにはしてくれませんが、大学や短期大学を受験する資格は与えられます。
現在、特別支援学校に通っている方でも、大学や短大などの受験資格はありますので、夢を捨てずに頑張って下さい。実際に、特別支援学校の高等部を卒業して、大学や短大に進んでいらっしゃるケースもあります。
【障害学生支援室の取り組み】
特別支援学校について★追記★
ちなみにこの記事に関するコメントで、Twitterでは、このようなご意見をいただきました。
特別支援学校は
知的、病弱、肢体不自由、聾、盲と分かれていて、高等部には重複課程と通常課程が有り 通常課程は高校普通科と同等の単位取得が出来 大学進学者は普通にいますが…(´・_・`)
他にもこんな意見をいただきました。
これは知的障害をメインとした支援学校の場合ですね。すべての支援学校がこのような扱いではないです。
高卒に必要な授業を履修していれば、高卒扱いになる支援学校もあります。
(鍵付きのアカウントなので、アカウント情報は非公開)
私が特別支援学校で勤務していた際にも保護者さん方からよく質問をいただきました。 https://t.co/IOKsGfadfr
— 小柳津和博 (@oyaizu_k) 2019年2月6日
貴重なご意見ありがとうございました。こちらとしても、情報不足な点がありますが、高卒扱いになる支援学校もあるとのことです。(こちらの情報などありましたら、シェアしていただければ幸いです。)
下記、追記でいただいた情報です。
特別支援学校とは異なりますが、神奈川県綾瀬市にある「生蘭(せいらん)高等専修学校」が障害者も受け入れてくれる学校で、高校卒業の資格を得ることができます。
神奈川県綾瀬市に有ります
『生蘭高等専修学校』は
『向陽台高校』との技能連携により、
高校卒業資格が得られます。— まめ (@mamecyatora) September 22, 2019
Welsearchは、サイトの情報にも記載している通り、ライターさん・読者さんのみんなで作り上げていくサイトです。このようなご意見をいただくのは、非常に嬉しいです。
新しい情報が入り次第、こちらの記事にも追記していきます。
最後に、ウェルサーチで行っているイベント『ウェルトーーク!〜vol.2〜』にて、ゲスト出演させていただいた際のライブ配信動画を載せておきます。特別支援学校の教員という視点から、
- そもそも特別支援学校って何?どんなところ?
- 特別支援学校に来る親御さんはどのような悩みが多いのか?
- 特別支援学校に通う当事者はどのような悩みが多いのか?
- 卒業後はどんなところに行ってるの?
- 障害者雇用されるためのコツは?
- 親御さん、企業が支援するための抑えておくべきポイントは?
といった質問にお答えさせていただいております。
特別支援学校について、より知っていただくキッカケになれれば幸いです。
最新記事 by 柳澤智敬 (全て見る)
- 障害福祉サービスとは?教員が対象者や種類について紹介していきます! - 2020年7月18日
- 障害者のグループホームとは?3つの種類と入居費用や条件まとめ! - 2020年3月7日
- ディスレクシアとは?支援方法や付き合い方、相談先を知って正しい理解を! - 2019年9月2日