よく「障害がある人は寿命が短い」ということをいろんなところで目にします。
でも、実際に知的障害者の人たちは本当に寿命が短いのでしょうか?実際に平均でどのくらいの年齢まで生きていて、どのくらいの方がいらっしゃるのでしょうか?
この疑問は、気になる方も多いかと思います。そこで今回は、知的障害者の平均寿命はどのくらいなのかについて調べてみました。
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知的障害者の平均寿命
知的障害者の平均寿命を知る前に、まず日本の平均寿命から見てみましょう。
厚生労働省の「令和4年簡易生命表の概況」によると、2022年の日本の平均寿命は、
- 男性:81.05歳
- 女性:87.09歳
というデータがあります。WHOが発表したデータにおいて、日本は世界1位の長寿国となっております。
では、知的障害者の平均寿命はいったいどのくらいなのでしょうか?気になってみたので、調べてみました。
と思ったのですが、日本では公式に知的障害者の平均寿命を調べた調査報告や統計などは残念ながらありませんでした。ただ、明確ではないですが、知的障害者の平均寿命がわかるデータがありましたので、1つずつ見てみましょう。
障害者の数
平成28年のデータとなってしまいますが、厚生労働省が、障害者の数を公表していました。以下がその図となります。
(年齢別)
参照:障害者の数
上の図を見てもわかるように、平成28年度の知的障害者の数は、108.2万人(在宅96.2万人、施設入所12万人)となっています。
この資料によると、
- 65歳未満が84%
- 65歳以上が16%
統計によると、65歳以上の知的障害者は、わずか15%ほど。ちなみに、障害別の65歳以上は、
身体障害者:74%
精神障害者:38%
となっているので、他の障害と比べても知的障害者の寿命は短いといえるのではないでしょうか。
もう1つデータを見てみましょう。
知的障害者数の推移
もう1つのデータは、内閣府が出している令和5年度の『障害者白書「障害者の状況」』。その中の年齢階層別、障害者数の推移の図を見てみましょう。知的障害児・者(在宅)のデータです。
上の図は、全国で在宅の知的障害児者96万人の年齢階層を示したものです。ここでも先ほどのデータのとおり、65歳以上の知的障害者は、わずか15.5%です。
つまり、2つのデータを見てわかるように在宅の知的障害者のうち65歳以上の人は、15人に1人ほどということですね。ただ、入所施設などで生活していても、高齢になると老人介護用の施設に移動するという人もいます。
そのため、障害者福祉から老人介護福に移動となるので、高齢障害者の状況が分からなくなってしまうこともあります。
なぜ寿命が短いのか?
知的障害者の親の方が気にかかるのは、「今後の子供のこと」についてだと思います。
その中でも多い不安というのは
「私たち親が高齢になって、動けなくなったり
亡くなってしまった場合、残された子供はどうなるのでしょうか?」
という不安。
先に言っておきますが、今の時代では、医療技術の革新だったり、薬の質もアップしたことで極端に寿命が短くなるということはないようです。
また、昔よりも福祉施設や医療施設の環境が整っていたり、サークルやボランティア団体なども多くなってきました。そのおかげで利用できるサービスも増えているので、以前に比べると知的障害者の人達も生活がしやすくなって、寿命という意味でも伸びていると考えられます。
これは先ほどの図を見てもわかりますね。先ほどもお伝えしたように、日本では公式に知的障害者の平均寿命を調べた調査報告や統計などは残念ながらないようです。
子供たちは少なくても両親よりも長生きすることの方が多いです。ではなぜ、知的障害者の方は、寿命が短いと言われているのでしょうか?原因と言われているものを、1つずつ解説していきましょう。
服薬
知的障害を持っている人は、てんかんの予防薬や何らかの薬を利用している人が多いです。薬を飲むことは、治療するのに重要ですが、長い期間、服薬する場合や多量の薬を使用しているときには、副作用が出てしまいます。
ここら辺のことは、担当医と相談して、適切な量を処方してもらうようにしましょう。あとは、定期的に健康診断をして、身体の不具合がないかを検査しておきましょう。
ストレス
知的障害者の人たちは生活する中で、たくさんのストレスを抱えているといわれています。よく言われているものが、
- 社会的な孤立
- 社会生活での困難さ
- 他人との関係
- 学業
- 就労
などがあります。人はみんなそうですが、ストレスが溜まった状態が長引いてしまうと、精神的だけでなく身体的にも健康を害してしまいます。さらに、パニックや自傷・他害行為の原因となってしまったりしまいます。
偏食
食べられるものが限られていたり、食へのこだわりを持っている人は、偏食になってしまう可能性も高いです。偏食が極端になってしまうと、
- 栄養不足になってしまう
- 免疫力が低下する
- 肥満になってしまう
- 逆に痩せてしまう
- 生活習慣病になってしまう
などのようなことも。
てんかん発作
てんかん発作での転倒による事故や、入浴中に発生した発作による溺死も多くあると言われています。特に、重いてんかん発作の場合には嘔吐をしたり、呼吸機能が止まって、チアノーゼが出てしまう場合もあります。
また、子供の時にはてんかん発作がなかった場合でも、思春期や青年期以降に発生し始めることもあります。
運動不足
知的障害がある人は、自分から運動をするのが難しかったりする人が多いので、運動不足になりやすいと言われています。運動不足になると
- 免疫力が低下してしまう
- 生活習慣病になってしまう
- 慢性疲労になりやすい
- 不眠症になってしまう
など様々な事が起こりやすくなります。子供のうちは外に出る機会も多いかとは思います。自分もそうですが、大人になると運動ってしなくなってしまいますからね。
しかも、本人の為を思っていても、無理やり運動をさせてしまったら、時には「虐待」になってしまう可能性もありますので、注意が必要ですね。
睡眠障害
睡眠障害になってしまうと、昼夜逆転してしまったり、規則正しい生活ができにくくなってしまいます。
日常の生活リズムが崩れてしまうと、身体的なことだけでなく、精神的にも負担がかかってしまいます。
痛みが鈍感
知的障害の場合には感覚だったり、痛みなどに鈍感であるという特徴も多く見られます。
そのために、怪我や病気になってしまった時にも痛みだったり体調不良が気づけない場合も多いです。
体温調整が苦手
上記と似ていますが、知的障害がある人は、温度や気温の変化などの感覚が鈍いことが多いです。また、発汗作用が弱いので、体温調整が出来ないということも。
温度の変化に気付きにくいので、汗をかいていても、ずっと長袖を着たりします。その結果が、熱中症になってしまったり、低体温や風邪を引き起こしてしまうこともあります。
SOSが出せない
知的障害がある人は、中には会話が出来なかったり、意思の疎通が難しい方もいらっしゃいます。感覚が鈍いということもあり、調子が悪かったり、痛みを感じていても、周りの人にSOSを出せないことも多いです。
そのため、ケガや病気などを周囲の人が気づいたときには、重症になってしまっている…というケースももあります。
事故など
知的障害がある人は、ずっと支援されていることも多く、危険認識能力が低かったり、予測や対処が難しいこともあります。
そのため、交通事故などの突発的な事件や事故に巻き込まれてしまうケースも多いようです。
【心のバリアフリーを広めよう】
編集後記
いかがでしたでしょうか?
上記のように、寿命が短いと言われる原因はいろいろとあるかと思います。
ただ、今は福祉制度も以前より増えてきていますし、医療技術も向上しているので、平均寿命も今までより伸びていっているのでしょう。国全体の平均寿命は出しているので、障害者の平均寿命のデータもぜひ出してもらいたいですね。
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日野信輔
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