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災害時に役立つAIなどの最新美術|障害や病気を抱える方への災害避難マニュアル|第4回

備えていますか?障害や病気を抱える方向け 災害避難マニュアル 第4回 災害時に役立つ最新技術」と書かれたテキストと、災害準備のイラストが描かれている。

災害には備えが肝心!障害や病気を抱える方への災害避難マニュアルシリーズとして、お届けしております。

 

災害と障害者について、第4回目となります。今回のテーマは、「災害時に役立つ最新技術」

 

災害発生時、障害を持つ方特有の課題やニーズに直面することがあります。

 

視覚障害者は視覚情報へのアクセスが困難であったり、聴覚障害者は音声による緊急通知の受信が難しいケースがあったりと、それぞれ特有の悩みがあるでしょう。

 

肢体不自由な方々は避難活動に制約がある場合があり、知的障害をお持ちの方は状況把握が難しい場合も。これらの課題に対処するためには、特別なサポートが必要となります。

 

近年、技術の進歩により、これらの課題への解決策が多く生まれています。

 

例えば、AIを活用した災害予測システムや、スマートフォンアプリによる緊急通知システム、そしてドローンを使用した物資配送などこれらの技術によって、障害を持っていても、より安全に避難などを行うことができます。

 

ジュン
今回は、障害者の避難課題と技術による解決策、そしてそれらを実施するための課題紹介です。最後まで是非ご覧になってください。

災害時の障害者のニーズと現状

 

災害が発生すると、障害者は特有の困難に直面します。それぞれの障害特性に合わせた支援が求められるのです。前回の記事では、障害者への支援策を紹介してきましたが、改めて災害時に障害者や高齢者がどのような困難に直面するのかを見ていきたいと思います。

 

ジュン
障害者と一口にいっても、それぞれ困ること違いますので、ニーズに応じた対応策を考えていくことが大切です。

 

視覚障害者

視覚障害者が災害時に直面する課題は多岐にわたります。まず、避難する際の経路確認や安全な移動が困難ということ。通常の避難誘導標識が見えないため、居場所や避難方向の把握が難しくなります。

 

また、避難所内でも、段差や障害物の存在、トイレの位置などの把握が課題となります。日常生活用品の確保や、介助者不在時の自立した生活維持も大きな問題に。さらに、視覚情報に頼らざるを得ない災害関連情報の収集にも困難が伴います。

 

聴覚障害者

聴覚障害者が災害時に抱える主な問題は、視覚障害者と違う側面の情報取得の困難さです。避難指示や警報など、重要な情報が音声中心で発信されるため、聴覚障害者にはそれらの情報が伝わりにくくなります。

 

また、避難所でのコミュニケーションの問題も大きな課題に。手話通訳者の不在や、筆談などの情報共有手段の不備により、必要な支援を受けられないことがあります。

 

災害時の混乱の中で、聴覚障害者の存在が見逃されてしまう可能性もあります。周囲の人々の理解不足から、適切な介助が得られないことも危惧されます。

 

加えて、避難所での生活面でも、音声情報に頼らざるを得ない状況が生まれ、日常生活動作の遂行に支障をきたす可能性があります。

 

車椅子など使用の方

車椅子を使用されている方にとって、避難の際の移動手段の確保は大きな問題に。

 

段差や狭隘な通路など、車椅子では通行が困難な環境が多く見られ、一人での避難が極めて困難です。また、避難所内でも、狭い空間や段差の存在により、車椅子での移動や生活スペースの確保が難しくなります。

 

避難所における生活面での課題も多数あります。

 

手洗い場やトイレなどの設備が車椅子使用者に配慮されていないことが多く、基本的な日常生活動作の遂行に支障が出る可能性があります。加えて、医療機器の電源確保や、常備薬の入手など、健康管理面でも困難が伴います。

 

知的障害者

知的障害者が災害時に特に困難に直面するのは、状況の理解と適切な行動の取れなさです。

 

災害発生時の混乱した状況下では、避難の必要性や避難方法の理解が困難となります。また、避難所での生活においても、自身の行動を適切に管理することが難しくなる可能性も。

 

知的障害者は、災害関連情報の収集や理解にも課題を抱えています。警報や避難指示などの重要情報を十分に理解できず、状況の判断ができないという問題。加えて、避難所での他者とのコミュニケーションの問題も大きな障壁となります。

 

高齢者

高齢者が災害時に直面する主な問題は、身体機能の低下によるハンディキャップです。

 

避難の際の移動困難や、避難所での日常生活動作の遂行に支障をきたします。加えて、高齢者は災害関連情報の理解や、避難指示への素早い対応が困難な場合も。

 

避難所での生活環境の悪さも大きな課題です。

 

段差の多さや、寝具・トイレなどの設備の不備により、高齢者の基本的な生活に支障が出る可能性があります。また、医療依存度が高い高齢者にとっては、薬の確保や医療サービスの継続確保も大きな問題です。

 

内部障害者

内部障害者は、呼吸器疾患や循環器疾患、腎臓疾患などの慢性的な疾患を持つ方々です。災害時には、日頃の医療支援が途絶えたり、必要な医療機器の電源確保ができないなどの問題に直面します。

 

避難する際も、呼吸困難や低血圧などの症状が悪化し、一人での移動が困難になる可能性があります。

 

避難所生活では、酸素濃縮器や透析機器などの医療機器の確保が大きな課題です。また、避難所の環境が整わないことで、健康状態が悪化するリスクも。

 

内部障害者は見た目では分かりにくいため、周囲の理解が得られず、必要な支援を受けられないこともあります。避難所の職員や他の避難者に対する、内部障害の理解促進も重要な課題と言えるでしょう。

 

最新技術による支援の事例

近年、AIや最新技術の発展は目覚ましく、私たちの日常生活をより快適なものにしています。

 

同様に、障害者の方々の生活においても、これらの技術が大きな力を発揮しているのが現状です。そして最新技術は、災害時においても重要な役割を果たしつつあります。

 

ジュン
技術の進化と共に、災害時の被害が少しでも軽減されることが期待されますね。

 

技術の進歩と災害対策

 

近年AIとビッグデータの活用が障害者支援の分野でも進んできています例えば、AIを活用して障害の特性に合わせた情報提供や避難支援を行うシステムの開発などです。

 

また、災害時の被災状況をビッグデータから分析し、障害者の支援ニーズを迅速に把握する取り組みも行われています。

 

現在は、災害時における物資配送の手段としてドローンの活用が注目されています。

 

ドローンは狭い場所への配送が可能で、被災地の道路状況に左右されにくいため、避難所や移動困難な障害者宅への物資供給に活用されています。

 

 

スマートフォンやタブレットなどのスマートデバイスとそれに付随するアプリケーションも、障害者支援に活用されている事例も。

 

例えば、視覚障害者向けの音声ナビゲーションアプリや、聴覚障害者向けの字幕表示アプリなど。これらのアプリは日々進歩していて、災害時に力を発揮するようなものも開発されています。

 

技術を活用した具体的な支援事例

地震発生時の迅速な情報伝達は、障害者の安全確保に不可欠です。近年、地震速報アプリは音声や振動による警報機能に加え、字幕表示やバリアフリーデザインの採用など、障害者への配慮が進んでいます。

 

また、災害時には外国人向けの情報提供なども課題となります。その対策として、AIを活用した自動翻訳機能を備えたシステムの導入により、多言語・多様なニーズに対応した情報発信が可能になっています。

 

災害時に役立つ最新技術の紹介

技術の進歩に伴い、災害発生時により安全に避難できるようになっていることをご紹介しました。

 

今後は、最新のテクノロジーが災害時にどのように役立つかなどを紹介したいと考えています。

 

ジュン
これらの技術は災害時だけではなく、日常生活でも役に立つ物が多いので参考にしてください。

 

スマートグラス

 

最新の技術の中で注目されているのが、スマートグラスです。このデバイスは、メガネのような形状をしており、視覚障害者の移動をサポートすることが期待されています。

 

視覚障害者にとって、災害時の移動は大きな課題です。通常であれば、白杖などを使って障害物や段差を感知することができますが、災害時の混乱の中では、それも難しくなることがあります。

 

そこで活躍が期待できるのがスマートグラスです。

 

▼上半身の障害物を検知するスマートグラス▼

 

 

このスマートグラスは、周囲の環境を把握し、ユーザーに情報を提供することができます。

 

例えば、障害物の位置や段差の有無など、視覚障害者にとって重要な情報を伝えてくれます。そのため、介助者がいなくても、スマートグラスからの情報を頼りに移動することが可能になるのです。

 

避難誘導ナビゲーション

 

移動支援の最新技術は他にも開発されています。その中の一つとして、視覚障害者の誘導ナビゲーションがあげられます。

 

▼あしらせアプリ防災機能:災害時の避難所検索▼

 

危険な場所から一刻も早く避難しなければならない場合、視覚障害者にとって移動の助けになるものは点字ブロックなどですが、それらがない場合もあります。

周りをしっかりと確かめながらの移動が必要になりますが、それでは移動に時間がかかりすぎることもあり、対応策が必要です

 

そこで誘導ナビが災害時にも役にたつ可能性も将来的に見えてきます。振動によるナビゲーションにより、スムーズに目的地につくことが出来、安全な場所に避難できることが期待できますね。

 

自動音声誘導ロボット

レストランなどでも、最近はロボット配膳を取り入れている店が多くなってきています。身近に感じるようになってきたロボット技術も、災害時の避難誘導に期待が高まっています。

 

▼ロボホン向け手話通訳アプリケーション▼

 

聴覚障害者の場合、災害時の情報収集が大きな課題となります。

 

そのような時、ロボットにカメラ機能を搭載し、得られた映像情報を字幕や文字情報として提示することで、聴覚障害者への情報提供を実現できるでしょう。

 

また、手話ができる方が周りにいない場合でも、ロボットによる通訳によってコミュニケーションがとれるようになります。

 

知的障害者にとっては、災害時の混乱が理解や判断の障害となることがあります。そこで、ロボットが優しい言葉かけや、分かりやすい案内を行うことで、落ち着いて行動できるよう支援することが期待されます。

 

肢体不自由者の場合、避難所への移動や生活環境の確保が課題となりますが、ロボットが移動を支援したり、生活用品の受け渡しを行ったりするなど、多様なニーズに柔軟に対応することが可能です。

 

このように、ロボット技術は障害特性に合わせて活用されることで、災害時における命の保護や生活支援に大きな力を発揮することが期待されています。

 

VRによる避難訓練

 

災害に備えるためには、日頃の訓練も大事な要素です。ですが、障害によって避難訓練になかなか参加できない方や、実際の災害を想定した訓練がなかなかできないという問題もあります。

 

そこで、期待される技術がVR(Virtual Reality-日本語訳:仮想現実です。

 

▼防災教育VR「B‐VR(ビーバー)」▼

 

仮想空間での訓練は、アニメーションなどによって本物さながらの臨場感の元、実際の訓練を場所を選ばず行うことができます。

 

災害といってもさまざまな種類がありますので、災害の種類によって避難をどうするか判断する訓練などもできるのは大きな利点ですね。

 

VR酔いの問題や、どこまで臨場感を出せるかなどの問題もありますが、安全に避難できる態勢を日頃から育てるにはとてもよい技術だと思います。

 

音を届ける技術

 

災害発生時のサイレンや緊急通報など、災害時において音は避難や危険度を判断するのに重要な情報です。

 

ですが、聴覚障害を持っているとそれらの情報から遮断され避難が遅れるなどの危険性が高くなります。そこで、聴覚障障害者にも音を届ける技術が日々研究されています。

 

 

音の判別を技術によって判別することにより、より重要性が高い情報を見逃さない。災害などに限らず、情報の判断は重要な項目です。この技術により、危険性が高い事態にもより早く対応できることが期待できます。

 

チャットボット

 

災害発生時、障害のある人々は情報の入手や避難行動に大きな困難に直面します。そこで近年、チャットボットなどの対話型AIシステムが、障害者の支援に活用されつつあります。

 

例えば、聴覚障害者向けに手話や文字で情報を提供するチャットボット。あるいは、視覚障害者向けに音声ガイダンスを行うチャットボット。

 

れらは、混乱した状況下でも迅速に情報収集や連絡ができるよう支援します。知的障害者向けには、分かりやすい言葉で避難手順を案内するチャットボットなども。

 

さらに、チャットボットと IoTデバイスを組み合わせた技術も注目されています。

 

車いす利用者の位置を検知し、安全な経路を音声で案内するシステムです。高齢者の健康状態をモニタリングし、異変を家族に通知するチャットボットも開発されつつあります。

 

このように、対話型AIは障害者の災害対応力を高める有効なツールとなってきています。今後も、ニーズに合わせた高度な支援機能を持つチャットボットの登場が期待されますね。

 

技術の普及と今後の課題

 

災害時の障害者支援に資する先進技術の普及には、関係者が一体となった取り組みが欠かせません。まず、政府や自治体における支援策が重要な役割を果たします。

 

その一方で、民間企業の積極的な取り組みも不可欠です。

 

各企業が障害者のニーズを丁寧に把握し、きめ細かい製品・サービスの開発を行うことが重要です。他には、福祉団体や研究機関との連携により、現場のニーズとのマッチングを図ることも有効でしょう。

 

ジュン
技術の普及などは今後ますます重要となりますが、普及に向けてどのような課題があるのでしょうか?

 

コスト面の課題 

先進の支援技術を広く普及させるうえで、大きな課題の1つがコスト面の問題です。これらの技術は、開発に多額の費用がかかるため、導入コストが高くなりがちです。

 

その結果、必要としている障害者や支援者が、技術を手に入れられないという事態に繋がる可能性があります。

 

この課題に対する解決策としては、まず公的支援による経費補助が考えられます。

 

政府や自治体による財政的な支援策を講じることで、ユーザー側の負担を軽減することができます。

 

さらに、量産化や標準化の推進により、製造コストの低減を実現することも重要です。これらのアプローチを通じて、より多くの人々が先進技術を活用できるようにしていく必要があります。

 

教育とトレーニングの必要性

先進技術の普及には、それらを適切に活用する人材の育成も不可欠です。障害者本人や支援者に対する体系的な教育やトレーニングが求められます。

 

使い方の習得はもちろん、技術の限界や危険性、メンテナンス方法など、テクノロジーに関する総合的な知識の獲得が重要です。

 

このために、行政や企業、福祉団体などが連携し、研修プログラムの整備や実践的な指導体制の構築を進めていくことが考えられます。

 

また、障害者やその家族に対する啓発活動も欠かせません。

 

支援技術の活用方法や、その効果的な活用方法を広く理解してもらうことで、より一層の普及が期待できるでしょう。

 

社会インフラや法整備

障害者の災害対応力を向上させるためには、単に先進的な技術を開発するだけでなく、それを支える社会環境の整備も肝要となっています。

 

具体的には、バリアフリー化の推進や、避難施設の充実など、ハード面での取り組みが求められます。

 

さらに、技術の導入を後押しする法整備なども不可欠です。

 

防災に関する法制度の整備や、障害者支援に関する予算の確保など、制度面での支援策が求められます。

 

また、企業への義務付けや補助金の活用など、民間の取り組みを促進する仕組みづくりも重要です。

 

こうした法制度の整備と社会インフラの充実により、障害者が安心して災害に備えられる環境が整備されることが期待されます。関係者が一体となって取り組むことで、技術の普及とともに、真に使いやすい防災システムの実現が可能となるでしょう。

 

行政、企業、福祉団体などの協力体制構築

障害者の災害対策に資する最新技術の普及には、関係者間の緊密な連携が不可欠です。行政、企業、福祉団体などが協力して、利用者ニーズと技術シーズのマッチングを図ることが重要となるでしょう。

 

具体的には、まず行政が中心となり、各主体の役割と責任を明確にした体制を構築する必要があります。地方自治体が中心となり、関係部署や専門家、地域の団体などを一堂に会し、定期的な意見交換の場を設けることで、より実効性の高い取り組みを実現できるでしょう。

 

次に、企業には、障害者のニーズを丁寧に把握し、それに応じた製品やサービスの開発が求められます。

 

同時に、福祉団体との連携により、利用者目線での改善を重ねていくことも重要です。こうした産学官の協力関係を築くことで、技術の適用性と実用性を高めていくことができます。

 

さらに、利用者である障害者や家族への教育・支援の取り組みも欠かせません。行政や企業、福祉団体が連携して、使い方の習得や安全な活用方法などを丁寧に指導していく必要があります。

 

このように、関係者が互いの強みを活かしながら、綿密な連携体制を構築することが、障害者支援技術の普及には不可欠です。関係者全員が一丸となって取り組むことで、真に使いやすい防災システムの実現が期待できるのではないでしょうか。

 

災害時に負けないために

4回に渡り、障害者と災害について紹介させていただきました。近年でも、大雨による土砂災害で尊い命が奪われるという悲しいニュースが耳に入ってきます。

 

災害大国とも言われる日本では、災害に遭わないことは難しいかもしれません。ですが、適切な知識を持つことで災害の被害を最小限に抑え、災害後の一歩を力強く進めるようになると考えています。

 

今なお災害で苦しむ方が少しでも日常に戻れますよう願いながら記事を終わらせいただきます。

 

最後までお読みいただきありがとうございました。

 

災害には備えが肝心!障害や病気を抱える方への災害避難マニュアルシリーズ

 

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久田 淳吾

発達障害(ADHD・ASD)と吃音を抱える40代男性。今まで発達障害の事は知らずに生きてきたが、友人の話を聞いて自分にも当てはまる事が多すぎる事を実感し、病院にて診断を受けると見事に発達障害との認定を受ける。自分に何ができるかと考えた時、趣味の写真でプロの先生に話を聞く機会があり、吃音が強く出ていたことに気がついた先生が『君は吃音持ちだね。だったら吃音の方の気持ちがわかるはず。それを活かして吃音の方の気持ちがわかるカメラマンになったらどうか』という言葉を思い出し、発達障害者として同じ気持ち、舞台に立てる人間として趣味のカメラ、動画編集技術を活かして情報発信をする事を決意。
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