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視覚障害でも楽しめる音声ガイドとは?バリアフリーナレーター持丸あいさんインタビュー

持丸さんアイキャッチ

テレビや動画などで活躍されています、ナレーターさん。

 

そのナレーターという職業の中で、障害を持つ方に向けてバリアフリーナレーターとして活動をなされています「持丸あい」さん。

 

今回は持丸さんにお話を聞かせていただき、障害者に向けたナレーション。音声ガイドとは、どういうものなのか?

 

その仕事の魅力と音声ガイドの世界について迫ってみました。

持丸あいさんプロフィール

ジュン
まず、持丸さんご自身についてお聞かせください。

 

持丸
バリアフリーナレーターの持丸あいです。ナレーションをはじめとした声の仕事に加え、音声ガイドの台本を制作したり、リアルタイムのエンターテイメントに音声ガイドを実況中継しています。

 

主な仕事として、2021年は新国立劇場の演劇『イロアセル』や、東京芸術祭のダンス公演Baobab『ジャングル・コンクリート・ジャングル』、コンサート『ミュージック・イン・ザ・ダーク ~闇に響く音~』でなどで音声ガイドを担当。『しまじろうコンサート』のCMナレーションや、ブラインドサッカーの実況なども行いました。

 

ジュン
やはり、幅広く活動なされておりますね。そのナレーションの中で特に障害を持つ方に向けての活動について色々お聞かせいだたければと思います。

 

 

音声ガイドのナレーターとは?

ジュン
音声ガイドというのはよく耳にしますが、実際どのような活動をなされているのでしょうか?

 

持丸
音声解説とも言います。 主に視覚障害の方が、映画やアニメ、演劇などを鑑賞するときに利用するナレーションです。

 

台詞と台詞の合間や、周りの音の小さいときに、状況を説明します。 例えば、作業をしながらなど画面を見ないでドラマを観る時、会話のないシーンでは誰が何をしているかわからなくなったりしますよね。

 

そんな時にも便利です。 最近では、音楽祭にも音声ガイドをつけることが増えてきました。

 

音声ガイドなし

 

音声ガイド付

 

ナレーションと音声ガイドが一体になった動画

 

バリアフリーナレーターとは?

ジュン
そして、今回持丸さんを知って気になった一番の単語は『バリアフリーナレーター』という言葉なのですが、一般のナレーターとの違いはあるのでしょうか?

 

持丸
バリアフリーナレーターというのは造語です。実は自分で考えました。

 

一般的なナレーターは台本を語り伝えることが仕事ですが、私は障害の知識を活かした実況や台本制作もできます。

 

障害によって作品が楽しめない、なんてことがないよう、声でサポートする仕事です。

 

バリアフリーナレーターとして活動しようと思ったきっかけ

ジュン
一般のナレーターとしても活動する傍ら、なぜバリアフリーナレーターの活動をしようと思ったのでしょうか?

 

持丸
視覚障害のメンバーがいる映画サークルに参加したのがきっかけでした。

 

当時は映画に音声ガイドがなく、ボランティアが音声ガイドをつけていました。鑑賞後、視覚障害のメンバーがとても楽しそうだった!

 

あの風景は何だったのかしら、あの音はなぜ歪んでいたのかしら、監督はどうしてこうしたのかしら、と2時間以上盛り上がりました。音声ガイドがつくことでこんなに喜ぶ人がいるなら、私もつけてみようと思い始めました。

 

ジュン
視覚障害を持たれる方だと、どうしても映像作品を楽しむのが難しい。

 

だからこそそういう音声ガイドがあって、映像の世界を楽しめる。特に嬉しい事だろうなという感じますね。

 

ナレーションで特に意識している事

ジュン
ナレーションという部分で、特に何か特別意識している事はあるのでしょうか?

 

持丸
今何が必要とされているかを必ず意識しています。

 

説明する事なのか、盛り上げる事なのか、寄り添う事なのか、などです。

 

ジュン
映像をただ説明するだけでは楽しみが半減してしまう。説明不足であれば伝わらない。

 

その辺りの塩梅は難しそうですね。ただ伝えるだけではなく、しっかりと映像の世界の楽しみを伝えるからこそですね。

 

ナレーションをしていてよかった面

ジュン
ナレーターとして活動していて、よかったことはありますか?

 

持丸
お客様が作品の感想を楽しそうに語っている時、とても嬉しいです。

 

また、クライアントにとっても無理のない提案を心がけているので「他の作品でも音声ガイドをつけよう、障害のある方への配慮を続けよう」と思っていただけた時、よかったと感じます。

 

ジュン
なかなか障害に対して関心がなかったり、知識がないと映像を配信してる側としても、障害がある方に向けての配慮は難しいですからね。

 

そういう需要がある、そういう世界があるということが多く知られるからこそ、周りへの理解が深まりますね。

 

 

バリアフリーナレーションで難しいと思う面

ジュン
バリアフリーナレーションは、個人的な印象ですが一般のナレーションとはまた違った難しさなどあると思いますが、その辺りお聞かせてください。

 

持丸
音声ガイドのつく作品は、出演者だけでなく、音や照明、小道具など、たくさんの人が作って出来た総合芸術です。

 

どれもこれも素晴らしいけれど、すべてを伝えると情報が多すぎて、分かりにくくなってしまいます。調整が必要です。

 

また、媒体や会場によって音の聞こえ方が変わるため、伝わりやすい言葉数も変わってきます。一度作った台本が、毎回ベストとは限らないところも難しいです。

 

ジュン
本当に、ただ伝えればいいという事ではないですね。

 

伝えるのは作品の世界観。楽しんでもらえる工夫と理解してもらう工夫。そのバランスは難しいですね。

 

今後やりたい活動

ジュン
今後、ナレーションを続けていく上でやりたい活動などございますか?

 

持丸
ミュージシャンのライブコンサートの音声ガイドを担当してみたいです。

 

今どんな衣装か、どんな舞台装置か、みんなが何に盛り上がっているのか、グッズはどこで何を売っているのかなどを声で伝えたら、もっと楽しめるお客様がいるはず!

 

ジュン
場の説明だけではなく、何が本当に楽しいのか伝えたい。

 

そしてグッズなどの案内なども楽しむという事では外せない要素ですね。障害を持つ方へ『楽しい』を伝える気持ちが凄く伝わります。

 

福祉に対する思い

ジュン
障害のある方へ向けての活動をなされています持丸さんですが、福祉に対してのお考えをお聞かせください。

 

持丸
エンターテイメントに対するバリアをなくすことで、人生を楽しめるお客様がいます。

 

障害のある人とない人が混じり合う場所に劇場やイベント会場も含まれるようになれば、もっと自然にお互いを理解でき、みんなが不自由なく生きることにつながると信じています。

 

私はそんな仕組みを支えていきたいです。

 

ジュン
障害があると、どうしてもイベントなどに参加する事に気おくれしてしまう。

 

楽しんでいけないわけがないのに、健常者の方に迷惑がかかるからという声も聴きます。誰でも楽しんでいい。エンターテイメントを通じて、理解が深まればそれはとても素敵な世界だと思います。

読者にメッセージ

ジュン
最後に、この記事を読んでくださる読者の方へのメッセージをお願いします。

 

持丸
障害のある方とない方が一緒にエンタメを楽しむ機会がもっと増える事を願っています。

 

どうぞ応援してください。

 

ジュン
ありがとうございました。

 

音声ガイドが当たり前の社会に

音声ガイドを手掛けるバリアフリーナレーターの持丸さんにお話を伺いました。

 

視覚障害に限らず、なかなか障害があると色々な場に参加する事に対して気おくれしてしまうという思いが何かしらあるなと思います。

 

でも、持丸さんのバリアフリーナレーションのように、障害があってもそれをサポートする体制があれば、健常者の方と同じように楽しめる。そしてその楽しみを通じて障害に理解のある社会が作れる。

 

そのような世界が来ると思います。

 

持丸さんの活動を応援させていただきます。

 

また映画のバリアフリー版を制作しているPalabra株式会社(パラブラ)さんのインタビューも併せて参考にしていただければ幸いです。

あなたは「バリアフリー映画」をご存知ですか? この言葉を聞いて真っ先に思いついたのは、階段のない車いすが通れる映画館だったりしませんか? 私も最初は、それが思いつきました。 でも、バリアフリー映画ってそうじゃないんです。  目の見えない方 見えにくい方 耳の聞こえない方 聞こえにくい方 など、多くの方が楽しめる映画のことなんです。 字幕がついていたり、音声ガイドがついていたりするのは当たり前! でもその前に絶対に必要なあることも含まれるんですよ。今回はそんな映画の...
バリアフリー映画を当たり前のものに|パラブラ代表の山上庄子さんインタビュー - WelSearch ウェルサーチ|福祉の専門家や当事者たちが発信する福祉情報サイト

 

バリアフリーナレーター持丸あいさん

TWITTER:https://twitter.com/mochimaruai

HP:https://www.mochimaruai.com/

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久田 淳吾

発達障害(ADHD・ASD)と吃音を抱える40代男性。今まで発達障害の事は知らずに生きてきたが、友人の話を聞いて自分にも当てはまる事が多すぎる事を実感し、病院にて診断を受けると見事に発達障害との認定を受ける。自分に何ができるかと考えた時、趣味の写真でプロの先生に話を聞く機会があり、吃音が強く出ていたことに気がついた先生が『君は吃音持ちだね。だったら吃音の方の気持ちがわかるはず。それを活かして吃音の方の気持ちがわかるカメラマンになったらどうか』という言葉を思い出し、発達障害者として同じ気持ち、舞台に立てる人間として趣味のカメラ、動画編集技術を活かして情報発信をする事を決意。
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