言葉がうまく話せない「吃音」
特に小さなお子さんには吃音自体が知られておらず、なんで自分だけ皆のように当たり前に話せないんだろう…」と一人で悩みを抱えやすい状況にあります。
小学生のうちから、自分の吃音のことを知ってもらいたい。そのために吃音に関する絵本を制作された団体があります。
今回は吃音に関する絵本「うまくしゃべれないぼくは、へん?」を制作された北海道吃音・失語症ネットワーク様へインタビューをさせていただきました。
北海道吃音・失語症ネットワークの紹介
僕は、吃音当事者ではありませんが、言語聴覚士として当事者の皆さんを応援しています。当事者ではないからこそできることがあるという点を大事にして、日々活動しています
年齢は26歳で、5~6歳くらいの頃からずっと吃音の症状があります。 普段は介護の仕事をしておりまして、この団体に入ったきっかけにも繋がるのですが、吃音当事者にしかできないこともあるのではないかという思いでいろいろ活動しています。
普段は北海道の病院に勤務していまして、そこで言語のリハビリなどを行っており、休日を利用し団体の活動をしております。
私は今社会人一年目で、当事者として団体に入ってまだ活動歴は浅いのですがよろしくお願いいたします。
それでは、北海道吃音・失語症ネットワーク様の紹介についてお願いします
その当時、僕が勤務していた病院で外来での治療に携わっていたのですが、医療機関の役割のみでは、当事者の悩みや葛藤に十分には応えられないという思いがありました。
吃音があることでの困りごと
ですので、当事者が主体的に、自分の生活が過ごしやすくなるように活動する団体が必要ではないかと思い、発足しました。
でも、当事者にしか見せられない姿や同じ経験をしてきたからこそ掛けられる声があると思っていたので、もっと当事者が思い切って活躍できる場所をつくりたいと思いました。
令和5年4月からは、NPO法人として活動し、今年度は吃音啓発のための絵本制作を一つの目標として北海道内にあることばの教室144か所に無料配布しました。
また、当然保護者の方々や学校の先生方も悩みを持っておられるので、気軽に相談できる機会を作っています。 医療機関と教育、福祉、行政がうまくつながれていない地域の課題もあるので、ひとつひとつ、みんなで一緒に考えるようにしています。
吃音に関する絵本について
まず吃音啓発のための絵本を作ろうと思ったきっかけについて教えていただければと。
その時期から、自分の吃音についてしっかりと考える機会をつくることは、その後の人生にとって大きな意味のあることなのではないか、と考えています。
吃音とどう付き合うかはかなり大事な部分だと思います。
その小学校低学年に刺さる、いい影響を及ぼせるような媒体は一体何だろうかと考えたところで絵本という媒体にたどり着きました。
吃音の絵本ができるまで
自分たちの力だけでできたわけじゃなくてイラストレーターさんの協力もあり、ようやく完成しました。この絵本は、吃音を知ってもらうだけではなく、吃音を持っている主人公がどうやって一歩踏み出すのか。 絵本の最後も、完全なハッピーエンドにはしなかったんですね。一人でも味方になってくれる人ができたとか、少しでも自分らしく自分が挑戦したいことを諦めないでチャレンジできたとかそういうところを描きたいなという思いがありました。
保護者の方も、自分のお子さんの吃音に対し、どのように関わっていいのか、どのように助けてあげられるのかと悩んでおられます。 家庭内でもその子の吃音に触れないような関わりではなく、一緒にその子が一番困っている部分に向き合える環境を作りたいですよね。
文中のちょっとした表現だとか、主人公のセリフの言葉尻一つとっても伝わり方が全然違ってくるかなという部分があるので、ここはどうしようと考えながらですね。 こうした体験談という部分で、気持ちに寄り添いつつ実際の場面ではどういう思いなのか、どういう言葉を使えば伝わりやすいかを積み重ねて作ったお話なので、読んでくださるさまざまな方に響くものになったのかなと思っています。
支援に活かされたという声も
その一つに、不登校になっていたお子さんに対して、親御さんと一緒に本を読んだ一歩から、勇気をだして登校を再開し、卒業を目標に現在も通い続けられているという報告をいただきました。
障害当事者への思い
自分の吃音に対して自覚し始めてはいたんですけど、その当時から人としゃべるのが結構しんどいなという思いもあったりしました。 小学校に上がると、授業中や日直などの際、言葉が詰まってしまい周囲の人からいじめられた経験もしてきているので、そのような経験が積み重なっていくことで、喋るのが本当に怖くなってしまって、自分の殻に閉じこもるようになってしまいました。
しゃべれるのが普通なのにと感じてしまいますよね。
それまでは日常生活、何をするにしても吃音がずっと頭に張り付いていて、吃音に左右されているような人生だったんですけども、今思い返してみると、それって本当に勿体ないと感じまして。 自分の人生のはずなのに、自分の人生を生きられていなかった感覚がありました。
吃音がある=不幸ではない
吃音があるからといって、幸せな人生送れないわけでもないですから。 小さい頃散々しんどい思いをしてきたからこそ、そういう思いに至ったというのも、今こういう環境に恵まれているというのもあります。 全てを受け入れきれているわけではないですけども、少しでもプラスの方に捉えられてはいるので、自分の経験を踏まえて吃音との付き合い方をを伝えたり、その人なりの人生を歩んでいけるようなお手伝いができたらいなと考えています。
一人一人の吃音に対する捉え方や関わり方も違うし、色んな人の考えに触れていく中で吃音という障害が面白いな、興味深いなという感じ方に変わっていったんですよね。 考え方を少し変えてみるとまた見えるものも違う。今後の自分の人生を少しずつ良い方向に向けていけるチャンスもあるのではないかと感じています。
中学校の頃から何をするにも吃音を理由に諦める、そういう癖が出てきてしまったんですけど、大学4年生の頃に注文に時間がかかるカフェという企画に参加しました。 その時に今の団体と知り合うきっかけがあり、吃音に関する啓蒙活動自体に興味があったので、自分でもやってみたいなと思いました。 活動を始める前までは、自分の吃音について結構ネガティブに捉えていたのですけど、活動を通して、吃音に対する思いもそんなに悪いものじゃない、自分の吃音に対して少し肯定できるようになりました。
全てを肯定できるわけではありませんが、少しずつでも心が楽になることはとても素晴らしいなと感じます。
応援者の立場から
今は小児外来に従事しておりまして、発達障害や言葉の遅れとか吃音以外も診ています。 この仕事をして思うのが、言語聴覚士が関われる吃音のお子さんがいかに少ないかということです。 言語聴覚士の数も足りないですし、小児外来自体かなり数が少なく、今困っているお子さんがかかれる医療施設などが少ないと日々実感しておりました。
ですので、団体に所属して土日を使い病院にかかれていない、すぐにでも相談したいような方と繋がって相談を受けたり治療ができればという思いです。
吃音も色んな症状がありますし、言葉に悩んでいても相談できる状況にない。自分で何でも抱えてしまう方がとても多いと思っています。 そういう子達が、自分の吃音に向き合ったり、周りに理解を求めていく方法を応援者と一緒に考えていけるような世の中になったら、一人で抱える子どもは減っていくと考えています。
昔から研究されているんですけど、確実かつ根本的な治療法というものは編み出せていない状況です。現状相談で終わってしまうようなことも多いかなと思っています。 訓練などもありますが、何をもって治療となるかというのも難しい部分で専門職としてはまだまだ力不足を感じている所です。
吃音当事者にしかできないことがある
その当たり前にみんながしていることが何で自分はできないだろうっていう思いが、吃音がない人には簡単には想像できないという点に、当事者の大変さがいっぱいあるんだろうと思っています。
僕は、もう一度吃音がある人生を送りたいという人に出会ったことがありません。そういう状況でも、その人にしかできない一歩一歩があると思うので、そこを応援したいなという気持ちでいます。
社会も、少しずつ変わっていくことを願っています。
活動を通じて達成したいこと
自分も昔から吃音を理由に諦めていたこともたくさんあるのでもったいないかなと今は思いますし、活動をしているからには吃音に負けないでこれからも生きていきたいなっていうのが自分なりの目標ではあります。 また、団体としては大きな話にはなってしまうんですけど、吃音そのものが社会に広く浸透して、それが当たり前で普通にお友達と話したりする中で、吃音が当たり前に受け入れられるようになっていければと思っています。
そこで吃音があるから話したいことを話せないなとか、仕事でお客さんの前で喋らなきゃいけない事など今もちょっと苦労しながらやってはいるんですけど、そういうことも含めてうまく吃音と付き合いながら頑張っていきたいなっていう風に思ってます。 団体として活動して行く中では、社会全体として吃音があっても大丈夫みたいな空気、そのような環境になってほしいと思っています。
また、団体の代表としては、当事者ひとりのために実際に多くの人がつながれる体制をつくって、悩みながらも当事者が生き生きと活躍できる場をつくっていきたいと考えています。
吃音治療を求めて来てくださる方は多いので、少しでも楽に話せる、改善に向かえるような治療を研究しながら行っています。 これは一生かけてやっていくことと思いますので、たくさんの方の話を伺いながら私達も育っていかなきゃいけないなと考えて頑張っております。 障害とどう向き合っていきたいか、対話の中で得られるその人の中の気づきがあると思いますので、対話を重ねることで実現したいことに気付くお手伝いをしたいと思っています。 社会生活の中で困っていることがあれば、助けを求めて少しでも困っていること減らしていけるようになればいいなと思います。
インタビューを終えて
絵本を始めさまざまな方法で吃音に関する啓蒙活動を続けていらっしゃる北海道吃音・失語症ネットワークの皆様にお話を聞かせていただきました。
吃音は小さなお子さんの状態から発症して、周りとの関係性にも影響することもありますが、当事者当人そして周りの人の理解があればそれを受け入れられる社会になっていくと感じられました。
最後までご覧いただきありがとうございました。
北海道吃音・失語症ネットワークについて
ホームページ | 北海道吃音・失語症ネットワーク |
住所 | 北海道札幌市北区北32条西12丁目1-15
NUビル6F 放課後デイサービス ふくろう内 |
メール | kitsu.net.2021@gmail.com |
電話 | 070-4539-7211 |
久田 淳吾
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