全盲の私には、悩みの種がありました。
それは、「運動不足が深刻」ということです。仕事などは在宅で行うことが多く、体を動かす機会があまりない。
「これはよくない、運動の機会を作らなければ」とは思っていたのですが、なかなかできないままだったんです。
その理由として挙げられるのは、まず「家で何かやってみようと思っても何をどのようにすればいいかわからない」ということ。
そしてもう1つ、これはかなり厄介なのですが、「運動が好きじゃないのでやる気が起きない」ということ。
「これでは健康でいられなくなるかもしれない。そんなのは嫌だ。どうにかしたい!」そう思い、いろいろ考えました。
あまり負担を感じることなく運動を続ける方法はないものか……と。
そうしてたどり着いたのが、「障害者スポーツセンターに通う」という方法でした。
昨年4月くらいから始めて、今もトレーニングなどに取り組んでいます。そう、続けることができているのです。「ゆるく」ではありますが。
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障害者スポーツセンターってどんなところ?
よし、ジムに通ってみよう!
そう考えた私が安心して利用できる場所として選んだのが、「障害者スポーツセンター」というところでした。
障害者の健康増進と社会参加を促進する、そんな目的で作られたスポーツ施設です。
大阪府内に住所を有する障害者は無料で利用できます。
水泳、ボウリング、卓球など、ここではさまざまなスポーツが楽しめるんです。
視覚障害者の卓球「サウンドテーブルテニス」もできます。ランニングマシーンなどを使ったトレーニングに取り組むことも可能です。
【サウンドテーブルテニスとは】
音の鳴るピンポン球を、アイマスクをした状態で打ち合い、点数を競うスポーツ。一般的な卓球と異なり、卓球台から4.2㎝上げたネットの下を、音の鳴るピンポン球を転がして打ち合います。
シングルとダブルスがあり、プレーヤーは公平を期すためアイマスクを着用します。
※アイマスクなしの種目もあります。
サウンドテーブルテニスの紹介動画
全国に障害者専用スポーツ施設はいくつあるの?
こういった施設は全国にあり、現在増加傾向にあるようです。
笹川スポーツ財団の調査、2021年度『障害者専用・優先スポーツ施設に関する研究(抜粋版)』によると、障害者が専用で利用あるいは優先的に利用できるスポーツ施設は全国に150あるのだそう。
笹川スポーツ財団のホームページに施設一覧が掲載されていますので、ご興味のある方はお近くのスポーツ施設をチェックされてみてはいかがでしょうか。
▼参照▼
実際に通ってみた感想とは?
障害者スポーツセンターで私が主に利用しているのは、トレーニング室とボウリング室です。
しばらく通ってみて、私にどんな変化があったのか。
今どんなことを感じているのか。
トレーニング室
タッタッタッタ、と走る音。熱意溢れる声。体を鍛えるみんなの頑張りが存分に感じられる、トレーニング室。
ランニングマシーン、エアロバイク、筋肉を鍛えるマシーン、ストレッチのためのマットや肋木など、さまざまなものがそろっています。
私もここで、ほんのちょっとですがそういったものを使ってトレーニングにいそしんでいます。
トレーナーの先生方はとても親切。
正しいトレーニングのやり方、それが身体のどの部分を鍛えるものなのかなど、丁寧に解説してくださいます。
例えばスクワットなど、自己流でも簡単に取り組めそうなものですが、やり方を間違えてしまうと膝を痛めることになります。
「せっかく頑張ったのに意味がなかった、むしろ逆効果だった」となると悲しいので、きちんと教えてもらえたら本当に助かります。
身体のちょっとした不調について相談すると、それを改善するためのストレッチを教えていただけたりもします。
「肩こりがひどいときにはこんなストレッチが有効です」というように。「来てよかった」と感じられる瞬間です。
発見!周りを気にせず歩ける
例えばランニングマシーンに取り組んだとき。「今日は腕を振ることを意識してやってみましょう」と先生から指示があったんです。
「普段は白杖を持ってるし、腕を振ることを意識して歩く機会は少ないでしょ?」とのこと。
確かにそうかもしれない、と納得しました。
ランニングマシーンを使えば、私も周りを気にせず腕を振ることに集中しながら歩ける。これは大きな発見でした。
頻繁に通っているわけではありませんが、こうしてトレーニングの習慣を生活の中に取り入れたことで、これまで以上に生き生きと日々を過ごせるようになったのではないかと思っています。
見た目にも少し変化が表れてきたのか、先生からも「初めて来た頃とは全然違う」とお褒めの言葉をいただきました。密かにガッツポーズです。
「かなり頑張って自転車をこいだな」などと思っても、消費カロリーはそれほど多くない。
これがちょっと辛いところではあります。
先生から「今ので消費できたカロリーはおにぎり半分ぐらいかな」と衝撃の事実を告げられ、「なんだそんなものか」と力が抜けることもしばしばです。
ボウリング室
トレーニングに慣れてきてほかのスポーツにも取り組んでみたくなった私は、新たな扉を開けてボウリングにも挑戦することにしました。
「視覚障害者ボウリング」というスポーツをご存じでしょうか。
ルールは一般のボウリングと同じですが、障害の程度による不公平を少なくするためのクラス分けがあったり、「ガイドレール」の使用が認められていたりといった特徴があります。
ガイドレールには手すりがついていて、それに触れるなどすることで助走方向や投球方向の確認ができます。
またスコアやボールの軌道、残ピンの数など、視覚情報を補うサポートを受けることも認められています。
視覚障害者ボウリングの見どころ
視覚障害者ボウリングをやってみて
恥ずかしながら初めてこのセンターのボウリング室を訪れたときはもう、「ボウリングって何だっけ」状態です。
子どもの頃ボウリング場に行った記憶はあるのですが、ご無沙汰しすぎていて、何が何だかわかりませんでした。
まっさらな気持ちで、同行してくれているガイドヘルパーさんに助けてもらいつつ、右往左往するというスタートとなりました。
投げやすそうなボールを選び、投げ方の指導を受け、投球。
気持ちのいい「カコーン」という音が聞きたいのに、耳に飛びこんでくるのは寂しい音ばかり。
スコアが伸びる気配は全くなしでした。
ボールを投げると何かおかしい。どうしたのかと思ったら、何ということでしょう…そのボールは隣のレーンに飛んでいっているではありませんか。
というわけで、このダメな状態を抜け出すため、今はああでもないこうでもないと研究しているところです。ほかの方のプレイを参考にしながら、自分に合った投げ方などを探っています。
そうすることで、なかなかうまくはならないものの、楽しさは見えてきている気がします。
投げたボールが狙った方向に転がり、ピンが倒れる。
それを少しでも経験すると、もっと頑張ろうと意欲がわいてきます。
ボウリングは視覚障害者に向いているスポーツ
レーンの長さや幅、ピンの大きさなどのプレイ環境は常に一定。
重要になるのは身体の位置や動きの知覚であり、それを安定させることが上達への道のようです。
その点で言えば、ボウリングは視覚障害者に向いているスポーツ。
ボウリングの魅力は、一人ひとりがそれぞれの向き合い方でプレイできるところ。深く深く探求するのもいいし、ゆるく楽しむのもありです。
ハードなスポーツだったらきっと、今頃音を上げて逃げ出しているはず。
年齢や性別、障害の有無にかかわらず、みんなが同じルールでプレイできるのも大きな魅力。
時には隣のレーンの方と少し言葉を交わす機会があるのですが、さまざまな背景を持つ仲間とワイワイしながらのプレイというのもよいものです。
また言葉を交わしたことはなくても、よく見かけるエネルギッシュな方々には、いつも刺激をいただいています。
スポーツや運動は笑顔が一番
私の生活を支えてくれている重要な場所、障害者スポーツセンター。
こういった施設の果たす役割は本当に大きいと、日々感じています。
スポーツに興味がある。スポーツは嫌いだけど運動不足を解消したい。
そういった障害のある方々が技術を磨いたり楽しんだり、新たな世界に出会ったりする。そのための場所として、今後もますます発展していくことを願ってやみません。
「運動は笑顔でするのが一番ですよ」
トレーナーの先生は、いつもそうアドバイスしてくれるんです。
笑顔でやれば、よりよい効果につながるのだといいます。
運動嫌いの私にとっても、運動の機会はなくてはならないもの。
嫌になってやめてしまっては意味がないので、「気まぐれにゆるく」ではありますが、今後も自分のペースで取り組んでいくつもりです。
笑顔でいられるように、ということを意識しながら。
皆さんは運動、されていますか?
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