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なぜ義眼をつけるの?素材や形状・お手入れ方法など私の義眼事情を明かします

百合の花に隠れた青い目の女性

皆さん、こんにちは。

 

私は最近、あるものを買い換えました。

 

それまで使っていたものは本当によく働いてくれたのですが、古くなってきまして。そろそろ引退の時期かなという雰囲気だったんです。

 

結構高い買い物でしたが、私にとってとても大事なものなのでここは思い切りましたよ。

 

菜深子
さて、いったい何を新しくしたのか。

 

それは、眼です。私の眼。

 

こんなふうに言うと、「え、何それ……」とちょっと引かれてしまうでしょうか。

 

でも私にとっては本当に「眼を新しくした」という感覚があるんです。

 

というのも、実は私の眼、両方とも義眼でして。

 

いつまでも同じものを使い続けるわけにはいかないので、先日交換してきたというわけです。

 

皆さん、義眼ってどんなものかご存じですか?

 

多くの方にとってはなじみのないものですよね。

 

菜深子
ということで、この記事では30年近く義眼ユーザーをやっている私の経験を踏まえ、義眼のあれこれについてお教えいたします。

 

 

義眼ってどんなもの?

皆さんの中にある義眼ってどんなイメージでしょうか?

 

形は丸っこくて、キラキラしてる。

 

なんだか少し、怖い感じもする……。という感じでしょうか?

 

そもそも、なんで義眼を付けるの?

 

そういえば、義眼って何で出来てるの?

 

菜深子
そんな疑問がよぎった方もいるかも知れません。

 

なので、ここでは義眼に関する豆知識などをお伝えしようと思います。

 

 

義眼の形状

義眼というと、映画などで描かれているようなコロコロした球体を想像される方が多いのではないでしょうか。

 

菜深子
でも実は、そうではないんです。

 

眼球が萎縮している場合には眼球の上にかぶせる薄型のもの、眼球が欠損している場合には厚みのある半球状のものが用いられます。

 

実際の眼球は丸いですが、もし義眼が球体だったらうまく装着できません。

 

できたとしても安定しないはずです。

 

前述したような形状のものならそんな心配はないわけですね。

 

安定して装着できるので、簡単に外れるといったこともありません。

 

映画で見られるような、「義眼が急に飛び出しちゃって困った」みたいなことも起きないんですね。

 

多くの場合、義眼はオーダーメイドで作られます。

 

使用する人に合わせて型や虹彩の色などがきちんと調製されているため、安心して身に着けていられます。

 

虹彩色などが統一されたレディメイドの義眼もあるんですよ。

 

菜深子
数種類の中から、その人の状態に合うものを選んで使用できるようになっています。

結構おしゃれでしょ♪

 

 

 

義眼の素材

義眼は何で出来ているんだと思いますか?

 

きっと、ガラス製だと答える方が多いんじゃないでしょうか。

 

それもそのはず、以前はガラス製の義眼が主流だったんです。

 

初めてガラス製義眼が登場したのは1579年のこと。ベネチア人によって発明されたのだそうです。

 

それが日本にも伝わり、日本でもガラス製義眼が作られるようになったのですが、欠点がありました。

 

壊れやすく、加工も難しかったんです。

 

菜深子
なので今では、合成樹脂製が主流になっています。

 

現在日本では装用を目的としたガラス製義眼は作られていません。

 

ですが、現在でもヨーロッパなどでは合成樹脂製だけでなく、ガラス製のものも作られているのだとか。

 

ガラス製にはガラス製のメリットがあるようですね。

 

 

義眼装着の目的

義眼を装着したからといって、見えるようになるということはありません。

 

もしかしたら将来はそうなるかもしれませんが……。

 

それでも、義眼は重要な役割を担っています。

 

主な目的は、見た目の問題を解消すること。

 

義眼は本物のようによくできていますし、それを着ければ眼窩(がんか|眼球の入っている骨でできた空間)や瞼の状態を正常に保つことが可能になります。

 

私もこれのおかげで自信を持って人前に出ることができています。

 

また子どもの場合は、眼窩の発育を促すというのも義眼装着の大事な目的となっているんです。

 

 

 

 

 

義眼の交換時期

菜深子
顔、義眼を入れるスペースなど、身体の状況は変化していきます。

 

それに合わせて2年に1回くらいは義眼を作り替えることが望ましいようです。

 

私としては「2年って結構短いな」という印象を持ってしまうのですが、身体の一部として使用しているものなのだから当然なのかもしれませんね。

 

長い間使い続けていると、義眼は傷んできます。私も過去にそれをやらかしたことがありますが、かなり違和感が出てきました。

 

痛みを感じたり、目やにが増えたりして大変だったことを思い出します。

 

何かの病気なのかと思ったものですが、義眼の交換をサボっていたせいだったわけですね。

 

今後は早めに作り替えなければと痛感した出来事でした。

 

こんなことがないように、身体に合っているのか、傷んでいないかなど、最低でも1年に1度は業者のチェックを受けるようにすると安心です。

 

菜深子
特に成長の著しい時期は身体の変化が大きいので、半年に1度くらいチェックを受けられると良いでしょう。

 

義眼のお手入れ

良い状態で使い続けるためには、正しくお手入れする必要があります。

 

少なくとも1日1回は取り外して洗浄することが望ましいようです。

 

義眼の裏側には埃や黴菌がたまりやすいのだとか。私も注意しなければ…!

 

市販の「ハードコンタクトレンズ用洗浄液」を使用すると、よりきれいに洗浄できるのだそう。

 

 

 

義眼の費用と制作方法

費用は義眼の種類などにより変わってきます。

 

私の場合、先日作り替えたときは両眼オーダーメイドで17万円でした。やはり高額です。

 

ただ、視覚障害者、労働災害補償や生活保護などに該当する方は、公費で製作することができます。

 

製作を検討されている場合は、申請方法など詳しくは福祉事務所義眼製作業者にご相談くださいね。

 

補装具として義眼を製作する手続き

視覚障害者である私は、補装具(損なわれた身体機能を補完するための用具)として義眼の給付を受けています。そのときに行っている手続きの流れをご紹介します。

 

まず、以下3点の書類を準備します。

 

(1)補装具費支給申請書

(2)義眼製作業者による見積書

(3)医師による意見書(必要な場合のみ)

 

これを居住する市区町村の福祉事務所に提出します。

 

提出して数日経つと、補装具支給券が届きます。それを製作業者に提示すると、義眼の製作を開始することができます。

 

ちなみに私の今回の手続きでは、医師の意見書は不要でした。前回と同じタイプのものを作ってもらうということで、必要ないとのことでした。

 

補装具の場合、原則費用の1割を自己負担することになります。ただし所得により自己負担の上限があります。

 

厚生労働省によって定められている義眼の耐用年数は2年です。補装具として製作してから2年以上経過すれば、取り替えにかかる費用の給付が受けられます。

 

 

 

 

義眼ユーザーとしての体験談

義眼を使ってみてどう感じるのか。それはユーザーによってさまざまではないかと思います。

 

ここではいちユーザーとして私の事例を紹介します。

 

まずは、義眼を使ってみての感想を…どうぞ。

 

 

私の義眼デビュー

それは、私がまだ母の胎内にいたときのこと。風疹が原因だったとかで、トラブルが発生しました。

 

菜深子
私の2つの眼はうまく形成されなかったのです。

 

生まれてすぐに、手術を行うこととなりました。

 

もちろんそのときのことは全く覚えていません。どんな手術だったのかもよくわかりません。

 

でも眼に問題が起きるなんて結構な一大事。もしかしたら人生の始まりを迎えたばかりの私自身もびっくりしていたかもしれませんね。

 

とはいえ元気な赤ちゃんではあった私。手術を無事乗り切り、少しだけ存在する眼球を大事にしつつ、スクスクと育ちました。

 

義眼デビューが決まったのは、ある程度大きくなってからのこと。

 

具体的に何歳のときだったのかは覚えていませんが、4歳か5歳くらいだったでしょうか。

 

どのような経緯でデビューとなったのかもはっきり覚えていないのですが、とにかく嫌だったということは記憶に残っています。異物が入ってくる感じで不快感が半端じゃなかったんです。

 

当然、その義眼は私の状態に合わせて作ってもらったものでした。

 

それでも最初は慣れなくて、「なんでこんなもの着けないといけないの、要らない要らない!」と憤るばかり。

 

菜深子
どれほど重要なものなのか、子どもの私にはなかなか理解できなかったんです。

 

でもだからといって抵抗するわけにもいかず、頑張りました。

 

着けたり外したりを繰り返しながら、少しずつ着けている時間を長くしていく。そんなふうにして慣れていったのではなかったかと思います。

 

スポイトとの出会いで興味が湧く

そんな中、好奇心旺盛だった私を刺激してくれたものがありました。

 

義眼を着けたり外したりするときに使う「スポイト」です。

 

棒の先に吸盤がついているその道具に興味をそそられ、ワクワク。新しいものとの出会いは楽しいものです。

 

着けたり外したりするのに関しては最初母に任せていましたが、自分でもやってみたくなり、スポイトを使ってみるようになりました。

 

菜深子
眼を開けて、義眼表面に吸盤を押し付けて、取り出す。

 

うまくいったときは何とも気持ちがいい。

 

そういった体験を重ねているうちに、義眼はどんどん日常に溶け込んできました。身体の一部として受け入れられるようになったのです。

 

受け入れられるようになると、着け方や外し方も変化しました。

 

スポイトより手軽な指を使うようになったんです。自分の指を使うのには最初抵抗があったものの、慣れてしまえば楽なものです。

 

 

 

 

私の義眼事情

私の場合、右と左とでは眼の状態が違います。左は眼球がある程度残っているのですが、右はほとんど何もない状態です。そのため義眼の形も右と左では異なっています。

 

右側の義眼はずっと入れたままですが、左側は寝るときなどには外しています。(左側に関しては出かけるときに着け忘れて慌てるということも時々起こるんですけどね)

 

最初は不快感を抱いていたものの、もうそんなものは全くありません。自分に合ったものであれば着けていることなんて忘れるくらいです。

 

見た目の違和感もほぼないようで、以前「きれいな瞳ですね」と褒めていただいたことがあります。義眼とは気づかれなかったんですね。

 

菜深子
自分の眼がどう見えるのか自分ではわからないのであまりピンとこないところですが、褒められるのは嬉しいこと。

 

義眼も私の一部なわけだし、大いに喜ぶべきですね、きっと。

 

冒頭でも触れたように、今は作り替えたばかりの義眼が活躍中。

 

先日製作業者さんのところへ行ってきたのですが、以前と同様私の状態をじっくり見ながらその場で作ってくださって感激でした。

 

そのときは支払い手続きなども含めて2時間くらいで終了。本当にありがたい限りです。

 

義眼でも涙は出るのか?

ちなみに、「涙は出るんですか?」と聞かれることがあるのですが、この眼でも泣いたときなどには涙が流れますよ。

 

今までいっぱい流してきました。まあ人生いろいろありますからね。

 

でも私、玉ねぎを切ったときに涙が出ることはないんです。玉ねぎの刺激成分に触れないよう、義眼がガードしてくれているのかもしれませんね。

 

 

 

 

義眼ユーザーとして改めて

思い返すと、私には体の一部になりすぎているせいか、ついつい義眼をぞんざいに扱ってしまう傾向がありまして。

 

ダメですね。反省。

 

汚さないように、なくさないように、大切に大切に使わなければと気持ちを新たにしているところです。

 

この記事を書くにあたり、改めて義眼と自分との関わりについて見直すことができたような気がしています。良い機会になりました。

 

菜深子
ここまで読んでくださった皆さん、ありがとうございました。

 

 

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岡山出身、大阪在住の先天性全盲です。夫と二人で暮らしています。趣味は読書とぼーっとすることです。ゆるくマイペースな性格で、基本的に頑張らないタイプですが、「書くことで世界を変えたい」という熱い思いを持って活動中です。ブログやYouTubeで、全盲女子のリアルな日常を発信しています。またひそかに小説家を目指していたりもします。大学時代に社会福祉を学びました。障害を持つ当事者として、社会福祉士として(現場で働いたことはないのですが)、お役に立てるような記事が書ければと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。詳しいプロフィールはこちら→山田菜深子
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