「知的障害」という言葉は、よく耳にすることがあると思いますが、実際に知的障害がある子供と接したことがある人が少ないのではないかと思います。
私は、特別支援学校の教員として働いておりますが、接した人も知的障害とはどのような症状があり、対応していいのかわからない人が多いと感じています。
今回は、知的障害のことをより深く知ってもらい、簡単な支援の方法を記載しておきますので、今後の知識として読んでもらえれば幸いです。
例え、知的障害があったとしても同じ一人の人間ですので、知識を身に付け、怖がらずに接し、共生できる社会になってほしいと思います。
知的障害とは、わかりやすく言うと?
知的障害とは、いろいろな文献やサイトで難しく書かれていることが多いですが、わかりやすくお伝えすると、知的発達の障害のことを表します。
また、全般的に
「知的機能が同年齢の子供と比較して、明らかに遅滞し、適応機能の明らかな制限が18歳未満に生じる」
ものです。
具体的な知能指数(IQ)としては、70以下とされています。
上記は、わかりやすく要約したものとなりますが、e-ヘルスネットさんでは、もっと詳細に書かれておりますので、参考にしてみてください。
知的障害の3つの原因とは
知的障害の原因には、3つあると言われています。
まず、
- 生理的要因
- 病理的要因
- 心理・社会的要因
です。
1つずつ詳しくお伝えしていきます。
生理的要因
知能が低くなって疾患などがあるわけではないですが、知能指数が低くなって知能指数(IQ)が75以下の場合のことを指します。遺伝子の組み合わせによって偶然に生まれてきたことが原因と言われております。
病理的要因
脳に何かしらの異常があり、知的の発達に影響が出てしまうことを指します。
具体的には、
- 染色体異常
- 先天性の疾患
- 出産時の酸素不足
- 脳の圧迫等の周産期の事故、
- 生後の高熱の後遺症
などの疾患や事故が原因の知的障害を表します。
心理・社会的要因
両親の虐待や会話、愛情の不足等の発達に必要な環境が原因で発生する知的障害です。
この場合は、リハビリによって知能が回復するケースもあります。
知的障害の症状
知的障害の症状は、成長していくにつれ、言葉の遅れや体の動き方の不器用さなどによって徐々に現れてきます。次第に勉強にもついていくことができなくなったり、社会生活への適応も難しくなってきたりすることがあります。
知的障害がある方の特徴としては、
- 理解力や表現が乏しい
- 記憶できる量が少ない
- コミュニケーションをとることが苦手
- できるようになるまでに時間がかかる
などといったことも挙げられます。
知的障害の程度別の特徴
知的障害の程度は、
- 軽度知的障害
- 中度知的障害
- 重度知的障害
- 最重度知的障害
の4つに分けられます。
こちらも1つずつ詳しく説明していきます。
軽度知的障害
軽度知的障害は、おおむねIQが50~70の知的障害をさします。食事や衣服着脱、排せつなどの日常生活スキルには支障がありません。しかし、言語の発達がゆっくりで、18歳以上でも小学生レベルの学力にとどまることが多いです。
軽度知的障害の特徴としては、
- 清潔、服の着脱を含めた基本的な生活習慣が確立している
- 簡単な文章での意思表示や理解が可能
- 漢字の習得が困難
- 集団参加や友達との交流は可能
などが挙げられます。
中度知的障害
中度知的障害は、おおむねIQが35~50の知的障害をさします。言語発達や運動能力の遅れがあります。 身辺自立は部分的にはできますが、全てをこなすことは困難です。
中度知的障害の具体的な特徴としては、
- 指示があれば衣服の着脱はできるが、場合に合わせた選択・調整が困難
- 入浴時、自分で身体を洗えるが、プライベートゾーンなど洗い残しがある
- お釣りの計算が苦手
- 新しい場所での移動・交通機関の利用は困難
- ひらがなでの読み書きはある程度可能
などが挙げられます。
重度知的障害
重度知的障害は、おおむねIQが20~35の知的障害をさします。言語・運動機能の発達が遅く、学習面ではひらがなの読み書き程度に留まります。情緒の発達が未熟で、身の回りのことを一人で行うことは難しいので、衣食住には保護や介助が必要になる場合もあります。
重度知的障害の具体的な特徴としては、
- 着替え、入浴、食事などの生活に指示や手助けが必要
- 簡単な挨拶や受け答え以外のコミュニケーションが苦手
- 体の汚れや服の乱れをあまり気にしない
- 一人での移動が困難
などが挙げられます。
最重度知的障害
最重度知的障害は、おおむねIQが20以下の知的障害をさします。言葉が発達することはなく、叫び声を出す程度にとどまることがほとんどです。身の回りの処理は全くできず、親を区別して認識することが難しい場合もあります。
しかし、適切な訓練によって、簡単な単語を言えるようになるケースもあります。
最重度知的障害の具体的な特徴としては、
- 衣服の着脱ができない
- 便意を伝えられない
- 言葉がない。身振りや簡単な単語で意思表示をしようとすることもある
- 食事に見守りや介助が必要
などが挙げられます。
【知能検査について】
知的障害者への支援方法
知的障害者への簡単な支援方法を6つお伝えしていきますので、ぜひ参考にしていただければ幸いです。
1:理解できる分かりやすい言葉で伝える
長い文章ではなく、理解できる分かりやすい言葉で伝えて下さい。
言葉だけだと理解できない子供もいるので、絵や写真、ジェスチャー等を交えることも効果的です。
2:分かりやすく褒める
分かりにくいと褒められているのか怒られているのか分かりません。
褒めるときは、短い文章で伝えるよう心がけてください。
3:基本的にコミュニケーションが苦手
知的障害を持っていると、スムーズに言葉や表現することができない子供が多いですが、少し待って長い目で子供の気持ちに寄り添ってみてあげて下さい。
4:スモールステップで成功体験を積ませる
どんなことに対しても習得するまでに時間がかかります。でも、できない場合でも繰り返すことで覚えることができる場合もありますので、少しずつレベルをあげてください。
スモールステップで徐々に成功体験を積ませてあげてください。
5:様々なことを経験させてあげる
知的障害をある子を育てる親はとても大変だと思います。ですが、障害があったとしても、できるだけたくさんのことを経験したり体験させてあげて下さい。それが成長にも繋がります。
どんな子供も人生は一度きりですので、思いきり楽しませてあげて下さい。
6:問題行動がでてしまった場合には原因を考える
私はいわゆる「問題行動」だとは思わず、表現が苦手な子供が辛い気持ちを訴えている行為だと考えています。原因を探し、環境を変えてみてください。
子供の辛い気持ちを理解してあげることが大切です。
【感動ドキュメンタリー】
さいごに
知的障害がある子供を育てることは大変で、とても根気がいります。
できないこと、覚えられないこと等たくさんあります。大人が先に精神的・肉体的に疲れてしまうこともたくさんあると思います。
色々と親が責任を感じてか、限界まで頑張りすぎて体を壊してしまう親が多くいます。
知的障害がある子供の子育てをしているだけで、頑張っています。
楽しく子育てができるように、デイサービス、宿泊等も福祉のサービスでありますので、利用することも必要だと思います。
『頑張りすぎず、無理せずに行政や周りに早めに助けを出して下さい。』
家族だけで抱え込まずにみんなで協力して子育てをしていきましょう。
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