私は難治性ネフローゼ症候群という指定難病を患っており、薬の副作用で下肢機能に障害を持ち、現在車椅子ユーザーとして生活を行っている「まこ」と申します。
私はもともと健常者として生活していたこともあり、周りに障害を持つ知り合いがおらず、大学時代「障害者による就職活動」をどのようにしたらいいかわからないという壁にぶつかりました。
周りの健常者の友人が行っている就職活動とは少し異なる、そんな私の「障害者による就職活動」を皆様にお話しさせていただきます。また、本内容は私が2019年卒就活生として活動した際のお話になりますので、現在の状況と一部変わっている点がありましたらご了承ください。
※本記事は、2022年度の異能vation 破壊的な挑戦部門に採択された「これからメタバースで新たに生まれると予見される仕事にフォーカスした障害者の就労プロジェクト」の多様なスキルや障害を持つ参加者が日々の知見をご紹介する記事です。
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車椅子ユーザーの私が選択した採用方法は
障害のある人には就職をする際、「障害者採用」と「一般採用」の2つの選択肢があります。障害者採用は、あらかじめ自分の障害を企業へ開示する方を対象とした採用方法です。
また、「働く際に企業へ配慮をお願いする必要がある」「周りに自分の障害について知ってほしい」という場合に障害を開示して働くことを「オープン就労」といいます。
一般採用は障害の有無にかかわらず誰もが受けることができる採用方法となります。障害者が障害を開示をせずに一般採用を受けることもでき、これを「クローズ就労」といいます。
その為、私の選択としては自分の障害者を開示して企業に配慮をお願いできる「障害者採用」、障害を開示せずに健常者の方とともに選考を受けるクローズ就労としての「一般採用」の2つが選択肢がありました。
障害者採用のメリットとは何か
障害者雇用のメリットとしては、自らの障害に対して会社から必要な配慮を受けられることになります。一般採用の場合、障害を開示せずの就職活動になるため配慮を受けることをできず、障害を理由にやむを得ず退職を選択する人もおります。
しかし、障害者採用の場合は最初から配慮を受けることを前提とした雇用形態になるため、配慮と理解のある環境で働くことができるというメリットがあります。
- 障害に対した配慮を前提とした雇用になる
- 法定雇用率があるため、求人数が一定数ある
- 大手企業・有名企業での募集が多く、大手企業・有名企業への入社が一般採用より容易
- 残業制限等により無理のない仕事量の調整ができる
- 産業医等のサポート体制がつく場合がある
- クローズ就労に比べた際の定着率が高い
- 社内で障害に対して知識を持つ人が一定数いる可能性がある
- 障害をお持ちの社員が複数人在籍している場合もあり、企業内で情報交換ができる
- 障害開示していることから周囲からの助けも求めやすい
上記が自身が障害者採用として雇用されて感じた大まかなメリットになります。
私が障害者採用を選択した理由
結論から言うと、私は就職活動を「障害者採用」のみで行いました。
障害を持つ方の中では「障害者採用」と「一般採用」の2つを同時に行われる人もおりますが、私が「障害者採用」のみを選択したのには大きく3つの理由があります。
クローズ就労がそもそも難しい
1点目としては、自分には「クローズ就労」は難しいと感じたからです。
私は車椅子を利用していることもあり、パッと見た目でわかる障害を持っております。
「一般採用」の企業説明会に友人の付き添いとして参加した際に、すでに設置している椅子を取っていただく等、企業の方々にはたくさんのお気遣いをいただきました。
企業説明会でこのように配慮いただいている時点で、配慮をお願いする必要のある私には「クローズ就労」は難しいと判断しました。
企業側に配慮が必要だった
2点目としては、就職活動中に配慮をお願いしたかったからです。
一般採用とは異なり障害者採用は配慮を前提とした採用方法であるため、履歴書へ障害の状況や配慮事項を記載することができます。
- 2カ月に1回の通院が必要
- 車椅子のため階段等の段差の移動を行えない
- 社内での移動は車椅子になるため、車椅子の通行できる通路確保が必要
- 自席から椅子を抜く、または車椅子の置くスペースを確保してほしい
上記のような配慮が社会人として働く場合必ず必要になることがわかっており、こちらを就職活動の段階で企業様にはお願いしたいという思いがありました。
一般採用の場合、配慮を前提としていないので、企業説明会や面接等で自分の配慮をお願いする機会がありません。
障害者採用の場合は企業説明会の段階より一人一人と向き合っていただき、選考前に配慮について対応いただけるか確認する場を設けられている場合があります。その為、就職活動中に配慮をお願いしたい私は障害者採用に向いておりました。
心理的にも不安があった
3点目は障害者の自分が社会人として働くことに不安があったからです。
私は大学時代にアルバイトを行っておりましたが、持病もありフルタイムで社会人として働くことへの不安がありました。障害者採用では、企業説明会や面談時のご担当者が障害者を持ち活躍されている先輩社員の方であったり、障害に理解がある人事の方の場合がよくあります。
その為、不安をもっていた私としては企業説明会や面談で相談ができる環境があっておりました。
私の障害採用での就職活動とは
障害者採用として、就職活動をする中で私が求人を探すために行ったのは下記の4点です。
- 障害者のための就職サイトを利用し、サイト主催の合同企業説明会に参加する
- 障害者のための就職サイトから求人を探す
- 就職エージェント経由で求人を探す
- ハローワークで求人を探す
ただ、私にはハローワークでの求人を探すことは障害者採用での求人の数が少なかったこともあり、条件が合わないことが分かったのですぐに断念しました。
障害者のための就職サイトとは
障害者のための就職サイトとは、障害者採用に特化した就職サイトになります。全ての求人が障害者採用となっており、自分の障害状況や配慮内容等から求人を探すことができます。
また、定期的に就職サイト主催の合同企業説明会が開催され、就職サイトより参加応募を募集されます。私自身かなり多くの企業ブースに参加させていただき、たくさんお話をお伺いさせていただきました。中にはそのまま選考へ進んだ企業様も何社もあり、就活生への参加はかなりオススメになります。
説明会自体はかなり数多くの企業様がのご参加されており、各社の企業ブースでは1対1でご担当者から企業説明を受けたり、就活生から相談をしたりと有意義な時間を過ごすことができます。
障害者の就職エージェントとは
就職エージェント経由で就職活動をする場合は、「一般採用の場合も本人に代わって企業様とのやり取りを行っていただける」「就職相談にのっていただける」「履歴書等の提出書類の作成が容易」というというメリットがあります。
しかし、私は就職エージェントの利用をオススメしたい理由は下記3点になります。
- 就職サイトには掲載されていない「非公開求人」がある
- 新卒採用では就職エージェントの利用が定着しておらず、倍率が低い
- 就職エージェント主催の少人数の企業交流会がある
転職時にエージェントを利用して転職活動を行う方はいますが、新卒採用時からエージェントを利用して就職活動を行う人はかなり一定数になります。
私自身も就職エージェントを利用した就職活動というのは最初は考えておらず、就職についてどうしたらいいか悩んでいた際にネットサーフィンをして偶然見つけました。
就職エージェント主催の企業交流会では、就活生自ら企業のブースへ伺う企業説明会とは異なり、就活生のブースに企業が訪れ自社の説明を就活生1.2名に対して行うというイベントでした。
通常の大きな企業説明会とは異なり、就活生が企業に自分を売り込める大きなチャンスとなっており、就活生としてはかなり有意義な時間を過ごすことができました。
また、認知度が低いということもあり、出会う就活生のメンバーは毎回だいたい固定で、だんだんと仲良くなっていき就職活動の情報交換を行ったりと交流をすることができました。
障害者採用の情報がまだ少ない
障害者採用として就職活動を行った場合、一般採用と異なりネットや周りからの情報量が少なく苦戦することだと思います。知っていたらできることも増えてきますので、ぜひ皆様の就職活動に活かしていただけますと幸いです。
就活生、保護者の方、就活生の大事な方、皆様にとって最高の就職活動を行えますように祈っております。就活生自身にあった企業様とお会いできますように。それでは失礼いたします。
障害者の就労プロジェクト
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